2016.05.30

消費税増税の再延期はアベノミクスの失敗を意味する

5月26日付の仏ルモンド紙の経済面に、こんな見出しが躍った。


「L’alarmisme de Shinzo Abe surprend le G7」


「L’alarmisme」は「デマ」とか「人騒がせ」という意味なので、「人騒がせな安倍晋三がG7を驚かせた」という意味になる。そして、この見出しの下には、伊勢志摩サミットで円卓を囲む各国首脳の写真が掲載されてた。で、記事の内容はと言うと、ザックリと、次のようなことが書かれている。


「5月26日(木)、日本の伊勢志摩で開催しているG7によるサミットで、議長をつとめる日本の安倍晋三首相が『世界経済の現状は2008年のリーマンショック前の状況だ』という悲観的で人騒がせな発言で、出席していた各国の首脳らを驚かせた」


そして、翌27日の英フィナンシャルタイムズ紙は、この安倍首相の発言について、次のように解説した。


「伊勢志摩サミットで議長の安倍晋三首相が『世界経済の現状は2008年のリーマンショック前の状況だ』と連呼したのは、消費税増税を再延期しないと政権が維持できない安倍晋三首相が、消費税増税を再延期するための理由として放った布石だ」


ようするに、これまで何度も「大震災やリーマンショック級の経済危機が訪れない限り、消費税の再増税は予定通りに行なう」と繰り返してきた安倍首相としては、G7の場で「今はリーマンショック前の状況だ」と言い散らかすことで、消費税増税を再延期するための布石を打ちつつ、うまいことEUの首脳たちを騙して財政出動さられれば御の字だ。さらには、自分が先に消費税増税の再延期を宣言することで、これを参院選の争点にさせないという、二重、三重の姑息な思惑のために、安倍首相は世界が失笑する幼稚な茶番劇を演じたというワケだ。

安倍首相にしても、ホントなら、アベノミクスが成功して、世の中の景気が回復して、予定通りに再増税をしたかったのだろう。でも、安倍首相が鳴り物入りで「アベノミクス」の看板を掲げてからと言うもの、円安の進行で食品や日用品などの生活に密着した物の価格が次々と値上げになるだけで、給料なんてぜんぜん増えやしない。何よりも「20カ月連続で実質賃金がマイナス」という現実がすべてを物語っているだろう。

ここまで政策が破綻しているのに、それでも口が裂けても「アベノミクスは失敗した」とは言えない安倍首相。しかし、すでに1年も前から、欧米の大半のメディアは「アベノミクスは失敗に終わった」とか「アベノミクスは完全に行き詰った」とかって報じてる。あたしの周りでもネットでも「アベノミクスのお陰で給料が上がった」とか「アベノミクスのお陰で生活が楽になった」なんて言ってる人には、未だかつて1人としてお目に掛かったことがない。農家のおじさんも、商店のおばちゃんも、タクシーの運転手さんも、みんな口をそろえて「安倍政権になってから生活が苦しくなった」と言ってる今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、2014年4月1日、それまで5%だった消費税は8%に引き上げられたワケだけど、この時、安倍首相は「増税後に一時的に消費が落ち込んでも、すぐにV字回復する」と断言した。しかし、増税直後の2014年4-6月期を過ぎ、V字回復するハズの7-9月期には、消費だけでなく、GDPから実質賃金に至るまで、ありとあらゆる面で前期より悪化してしまい、景気後退に拍車が掛かってしまった。

この時、当時の経済再生担当大臣だった甘利明は何と言ったのか?覚えてる人は少ないと思うので、ここでもう一度、声を大にして繰り返しておくけど、甘利明は、この年の10月の会見で、「今夏は天候不順だったのでGDPが下がった」とノタマッたのだ。はあ?自分たちの経済政策の失敗を、こともあろうに、お天気のせいにするのか?‥‥って、あたしは開いた口からエクトプラズムが出て来て幽体離脱しちゃいそうになったことをよく覚えてる。

で、この甘利明の噴飯モノの会見の約1カ月後の11月18日、安倍晋三首相は、2015年10月に決まっていた消費税の10%への引き上げを、2017年4月まで18カ月も延期すると発表した。そして、この決定についての是非を問うために、衆議院を解散して12月に総選挙を行なったワケだけど、この再増税の延期を発表した会見で安倍首相が言ったのが、次の言葉だ。


「来年10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる。私はそう決意しています」


ようするに、今回は延期するが、それを再び延期することはないと言ったのだ。それも、「景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします」とまで断言してるし、さらには「アベノミクスによって景気を良くする」という意味のことも断言してる。でも、この数カ月後、野党から「絶対に延期はないのか?」と質疑されると、安倍首相は「大震災やリーマンショック級の経済危機が訪れない限り」という枕詞を使い始めた。はあ?「景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします」って、またお得意のホラだったの?

ま、この人は昔から「何の根拠もなく、できもしないことをペラペラ垂れ流す」というのが持ち味なので、今さら驚かないけど、仮にも総理大臣なんだから、全国民に向けての会見で述べたこと、それも「断言いたします」だの「確実に実行いたします」だのとまで言って、それを理由に700億円以上もの国費を使って選挙まで行なったのだから、発言内容を変更するなら、国民に対してキチンと説明責任を果たすべきだろう。TPPの時もそうだったけど、選挙の前には大きなことを言い、選挙が終わったとたんに少しずつ表現を変えて行き、いつの間にか正反対の内容になってるってのは、どう見たって詐欺でありペテンだろう。

つーか、「アベノミクスの3本の矢を進めて、予定通りに消費税を再増税できる経済状況をつくり出す」と断言したんだから、もしも予定通りに再増税ができなかった場合は、つまりは「アベノミクスは失敗した」ということになるよね。何しろ、世界経済のGDP成長率はずっと右肩上がりで、リーマンショック級の状況なんてぜんぜん起こってないのに、安倍政権になってからの日本のGDP成長率だけが横ばいで、実質賃金は下がり続けてるんだから。


‥‥そんなワケで、2014年4月の消費税増税で、実際に生活が苦しくなったのはあたしたち庶民だけど、当初、「消費はV字回復する」とドヤ顔で連呼してた安倍首相こそが、誰よりも、この増税を「失敗した」と感じてるハズだ。それは、増税から2年が過ぎても、未だにV字回復どころか、景気は完全に横ばいの「足踏み状態」を続けてるからだ。内閣府の発表するGDPの速報値などでは、ナニゲに景気が回復してるように錯覚しちゃうけど、前回のブログで指摘したように、安倍政権になってからというもの、内閣府のGDPの発表は比較形式が変わり、庶民の実感とは正反対の数字が並ぶようになったからだ。

経済成長の指針となる日本のGDP成長率は、リーマンショックの起こった2008年がマイナス1.0%、2009年がマイナス5.5%とマイナスが続いたが、民主党政権に代わって初めての2010年はプラス4.7%と大きく成長した。そして、東日本大震災と原発事故が起こった2011年にはマイナス0.5%に下がったが、翌2012年にはプラス1.7%に戻した。そして、現在の安倍政権に代わってからは、2013年がプラス1.4%、2014年がマイナス0.0%、2015年がプラス0.5%、2016年の予測値が0.5%と、一度たりとも民主党政権時の数値には戻っていない。安倍政権に代わってからの日本のGDPの推移を見れば、小学生でも「アベノミクス」が成功したのか失敗したのかぐらい分かるだろう。

一方、世界経済のGDP成長率は、リーマンショックの起こった2008年がプラス3.0%、2009年がマイナス0.1%、2010年がプラス5.4%、2011年がプラス4.2%、2012年がプラス3.5%、2013年がプラス3.3%、2014年がプラス3.4%、2015年がプラス3.1%、2016年の予測値がプラス3.2%と、リーマンショックの翌年以外は、ずっと右肩上がりに推移している。
こんな状況なのに、G7の首脳たちに「世界経済の現状は2008年のリーマンショック前の状況だ」などと吹聴しても、完全に「寝耳に水」だろうし、[お前、オツム大丈夫か?]と心配されるのがオチだろう。そして、各国の新聞に「安倍晋三のデマがG7を驚かせた」とか「人騒がせな安倍晋三がG7を驚かせた」などと報じられてしまうのが関の山だ。

ま、安倍首相としては、G7の首脳たちが「世界経済の現状は2008年のリーマンショック前の状況だ」という説明を鵜呑みにしてくれて、G7が足並みそろえて財政出動をしてくれれば、日本の景気回復の後押しにもなるし、何よりも「アベノミクス」の足を引っ張ることウケアイの消費税再増税を再延期するイイワケにもなるから、ここ一番の三文芝居をうったんだろう。だけど残念なことに、サミットに集まっていたのは、全員が安倍首相よりも遥かに経済に長けている本物の首脳たちだった。こんなペテンを鵜呑みにするワケがない。

当然、「カネをバラ撒いて景気回復の足掛かりにする」という自民党政権の伝統芸、つまり、「未来の人たちに借金を背負わせて今の自分たちだけが楽をする」という無責任な政策などにも、マトモな国家のトップたちがホイホイと乗ってくるワケがない。結局、安倍首相は、ドイツのメルケル首相、フランスのオランド大統領、イギリスのキャメロン首相たちから、「財政出動より構造改革のほうが必要だ」とたしなめられてしまった。

表面だけを取り繕って景気が回復したように見せかける「アベノミクス」というペテンは、所詮は「その場しのぎ」であって、穿った見方をすれば「選挙のための支持率稼ぎ」であり「政権維持のための時間稼ぎ」でしかない。しかし、ホントに自分の国の経済をより良くしようと考えている首脳たちは、そんな無駄なことよりも、抜本的な構造改革を行ない、自分が首相や大統領を退いた後も安定した経済が続くことを望んでいるのだ。


‥‥そんなワケで、今回の伊勢志摩サミットでは、世界各国から集まった報道記者たちのために、とても立派なメディアセンターが用意されたが、驚いたことに、たった2日間のために建てられたメディアセンターの建設費は29億円だという。そして、サミット終了後は、10日間だけ一般公開してから、3億円も掛けて解体してしまうという。ちなみに、昨年開催されたドイツでのサミットでは、既存のオリンピック会場がメディアセンターとして利用された。この点を比較しただけでも、安倍首相とメルケル首相の違いが分かるし、国の借金を増やし続ける日本と、国の借金を返して財政を黒字化したドイツとの違いが分かると思う今日この頃なのだ。


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«GDPマイナス成長がプラス成長に変わってしまう安倍政権イリュージョン