2014.08.18

シリアでの邦人拘束事件について

「シリア北部のアレッポで、日本人と見られる男性が武装グループに拘束された」という第一報が飛び込んできたのは、8月16日(土)の夜だった。情報源はイスラム系組織「イスラム国(前ISIS)」の関係者と思われる人物がYOU TUBEにアップした動画だ。その動画には「Japanese carrying a hand gun and a camera caught by IS fighters.」(銃とカメラを所持した日本人をイスラム国の戦闘員が捕えた)という説明文が添えられていた。何故だか、その動画は今日までに削除されてしまったので、日本人がコピーしたものを紹介する。



武装グループに捕えられた男性は、「私は日本人だ」「私の名前はハルナ・ユカワだ」と言っている。どうやら銃を所持していたようで、武装グループのメンバーは「なぜ銃を持っているのか?」と執拗に詰問している。でも、この男性は英語があまり得意ではないのか、それとも恐怖で萎縮しているからか、「私はフォトグラファーだ」と言ってみたり「私は医者だ」と言ってみたり、回答が支離滅裂だ。

武装グループのメンバーは、「なぜ医者がそんな服装をしているのか?」「なぜ銃を持っているのか?」と詰問し続け、男性は「銃は死んでいた兵士のものを拾った」と答えているけど、完全に疑われている。そして、この動画を情報源として、翌17日(日)の夜、日本のマスコミもポツポツと報じ始めた。まだ、ハッキリしたことが分からないため、「シリア北部のアレッポで、日本人と見られる男性が、イスラム武装勢力「イスラム国」とみられる武装グループに拘束された。男性は「ハルナ・ユカワ」と名乗っていて「フォトグラファー」だと言っている」という感じのボンヤリした報じ方だった。


‥‥そんなワケで、今日は「いかがお過ごしですか?」は割愛して先へ進むけど、この動画がアップされた数時間後、たぶん武装グループのメンバーの弟と思われる人物が、ハルナ・ユカワ氏と思われる人物の画像をツイッターに投稿した。


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この画像には、「捕えた日本人の写真が兄から送られて来た。彼はアレッポで武装していたが、「フォトグラファー」だ「医者」だと主張しているそうだ」というコメントが添えられている。

で、今はネットで検索すればたいていのことは分かっちゃう時代だから、この男性が「医者」でも「フォトグラファー」でもなく、日本で民間軍事会社「PMC(Private Military Company)」 http://privatemilitary.jp/ の最高責任者をつとめている「湯川遥菜氏(42)」だということは、半日もしないうちに拡散し始めた。そして、日本人の中には「告げ口」が好きな人もいるようで、ある日本人が、このツイートに対して、わざわざ次のリプライをした。


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「この日本人の男は民間軍事会社のCEOです。彼が銃火器を持っている写真がアップされています」と英語で書かれ、湯川氏のブログのURL http://ameblo.jp/private-military/ がリンクしてある。このブログを見れば、たとえ日本語が読めなくても、湯川氏が民間軍事会社のCEOとしてイラクやシリアへ行き、銃の試射までしていたことが分かる。「フォトグラファー」でも「医者」でもないことは一目瞭然だ。

そして、「イスラム国」の広報と思われるツイッターにも、「ハルナ・ユカワは民間軍事会社のCEOだ。フォトグラファーではない」というコメントが投稿され、湯川氏が銃を構えている画像や試射している動画などがアップされ始めた。「ハルナ・ユカワは米国のスパイだ」とも書かれている。そして、湯川氏が航空自衛隊の元幕僚長の田母神俊雄氏と握手している画像や、田母神氏の幕僚長時代の画像などが次々とアップされた。


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湯川氏と田母神氏が笑顔で握手している画像に添えられたアラビア語をグーグル先生に自動翻訳してもらったら、「スパイと日本の空軍の元最高司令官」という意味だった。「イスラム国」にとっては、日本の自衛隊も「軍隊」という認識であり、それも、「憎き米国の傘下の軍隊」と見られているのだろう。

ちょうど10年前の2004年、イラクで日本人の青年が武装グループに拉致されて人質になった時、武装グループの要求は「イラクからの自衛隊の撤退」だった。そして、当時の小泉純一郎首相は「自衛隊は撤退させない!テロには屈しない!」と言い、日本人の人質を見殺しにした。あの時の武装グループが、その後、「ISIS」になり、現在の「イスラム国」になったのだ。

今回の事件を「イスラム国」の側からの視点で見てみると、自分たちが占拠しようとしている中東の紛争国に銃を持った日本人いて、捕えてみたら日本の民間軍事会社のCEOで、日本の軍の関係者とも懇意にしていた。これは間違いなく「米国のスパイ」だ‥‥ということになる。


‥‥そんなワケで、少し車線を変更して、湯川遥菜氏のブログを見てみると、これは「アメーバブログ」なので、お友達同士がお互いに登録し合う「アメンバー」というシステムがある。ミクシーの「マイミク」、ツイッターの「相互フォロー」みたいなものだけど、湯川氏の「アメンバー」 http://amember.ameba.jp/amemberListTake.do?oAid=yoshiko-kawashima には、「菅 義偉」「西田昌司」「田母神俊雄」などの名前が並んでいた。


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どうやら田母神氏とは、そうとう懇意にしているようだ‥‥ってことで、湯川氏のことをいろいろと調べてみたら、今年の1月に「PMC」を設立するまでは、米国や英国から軍事物資を輸入して自衛隊に納入する仕事に携わっていたことが分かった。そして、この「PMC」のほうを調べてみたら、とても不思議なことが分かったのだ。「PMC」の公式HPに記載されている江東区の本社の住所、ここにビルはあるんだけど、このビルの中には「PMC」なんて会社は入ってないのだ。何でだろう?

それから、「PMC」の顧問を調べてみると、最高顧問をつとめているのが、元茨城県議で自民党の水戸支部事務局長をつとめていた木本信男氏(70)だった。現在は、二世議員で自民党県連所属の長男、水戸市議の木本信太郎氏(36)が後を継いでるんだけど、これまた不思議なことに、この木本信太郎氏の事務所の住所と、湯川氏が立ち上げた「アジア維新の会」のシリア支援募金の住所とが、まったくの同一なのだ。その上、シリア支援募金の担当者の名前が「きもと」になっている。これは不思議な偶然なのだろうか?

続いて、2人目の顧問だけど、これもまた自民党の関係者だった。外務省でスリランカ大使、ベネズエラ大使、特命全権大使などを歴任して、2009年の衆院選では自民党から比例区の東京ブロックに出馬した国安正昭氏(76)が、この「PMC」の顧問をつとめていた。国安氏は安倍晋三首相と同郷の山口県の出身で、田母神氏と一緒に「日本戦略研究フォーラム」の評議員をつとめている。

湯川氏のことを調べたら、他にも次々と自民党の関係者、外務省の関係者、防衛省の関係者の名前が出て来た。まあ、そのくらいのパイプがないと民間軍事会社なんか経営できないんだろうけど、カンジンの本社がどこにもない。どこにもないって言うか、少なくともHPに明記されている「本社所在地」には存在していない。それなのに、自民党の関係者たちが顧問をつとめている「自民党の丸抱えの民間軍事会社」のようだ。まるで、安倍政権が強引に推し進める「集団的自衛権」によって、近い将来、自衛隊が海外の紛争国へ派遣されることを見越して立ち上げたような会社だ。


‥‥そんなワケで、今回の事件は、あまりにも根が深いようなので、現時点では中間報告的なことしか書けなかったけど、あたしが最初に疑問に思ったのが、時事通信の報道だった。時事通信は、「イスラム国」の「Haruna Yukawa is CEO for Private Military Company.He is not photographer.」というツイッターのメッセージを「ハルナ・ユカワは警備会社の責任者だ。写真家ではない」と訳して報じたのだ。「Private Military Company」は中学生だって「民間軍事会社」って訳すだろう。「警備会社」じゃ意味がぜんぜん違ってくる。こんなにもアカラサマな誤訳、あたしは、今の日本で大きな権力を持った誰かからの指示じゃないかと思って、とりあえず、湯川氏のブログの「アメンバー」の一覧でも見直してみようかと思った今日この頃なのだ。


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2014.08.16

風の谷のコシアブラ

今年の5月、長野県の長野市や軽井沢町などで採れた山菜の「コシアブラ」から、基準値を超える放射性セシウムが検出されたと報じられた。県が発表した実際の数値を紹介すると、軽井沢町のコシアブラが400Bq/kg、長野市のコシアブラが340Bq/kg、野沢温泉村のコシアブラが140Bq/kg、中野市のコシアブラが120Bq/kgだった。

長野県や山梨県では、野生のキノコ類からも放射性セシウムが検出され続けていて、これまでに何度か基準値を超えて「出荷自粛」になっていたから、同じような場所にある山菜から放射性セシウムが検出されても、特に不思議じゃない。だけど、あたしが気になったのは、この400Bq/kgだの340Bq/kgだのという高い数値だ。以下、これらの長野県のコシアブラと同じ時期、今年の5月から6月にかけての福島県の山菜類の数値を見てほしい。


葛尾村のウド 380Bq/kg
葛尾村のフキノトウ 290Bq/kg
葛尾村のワラビ 110Bq/kg
広野町のゼンマイ 700Bq/kg
広野町のワラビ 430Bq/kg
広野町の ウド140Bq/kg
川内村のウド 230Bq/kg
相馬市のウド 460Bq/kg
大玉村のゼンマイ 140Bq/kg
猪苗代町のネマガリタケ 200Bq/kg
猪苗代町のタラノメ 140Bq/kg
天栄村のフキ 140Bq/kg
天栄村のタケノコ 110Bq/kg


これらは、各市町村が計測して農林水産省がまとめたデータの中から、あたしが100Bq/kgを超えるものだけを抜粋したんだけど、最高が広野町のゼンマイの700Bq/kgで、他は500Bq/kg以下だ。福島県の山菜がこの程度の汚染度なのに、福島第一原発から遠く離れた長野県の山菜も同レベルに汚染されてるなんて、ちょっと不思議な感じがする今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、福島第一原発からの直線距離は、長野県軽井沢町が247km、長野市が266kmだ。東京五輪招致委員会の竹田恒和委員長は、招致活動の中で、世界に東京の安全性をアピールするために「東京は福島から250kmも離れているので安全です」と発言したけど、長野県軽井沢町も、福島第一原発からの距離は「安全な東京」と同じだ。

それなのに、原発事故の直後ならともかく、もう3年も経ってるのに、250kmも離れた長野県の山菜から400Bq/kgもの放射性セシウムが検出されるなんて、やっぱり不思議だ。それで、同じ日に計測された軽井沢町の他の山菜の数値を見てみた。


軽井沢町のコシアブラ 400Bq/kg
軽井沢町のゼンマイ 230Bq/kg
軽井沢町のタラノメ 140Bq/kg
軽井沢町のフキノトウ ND(検出限界以下)


ゼンマイやタラノメなど、他の山菜からも基準値を超える放射性セシウムが検出されてるから、このエリアがそれなりの濃度に汚染されてることは間違いないと思うけど、それでも、コシアブラの汚染度は突出してると感じた。そこで、あたしは、農水省の同じ今年の5月と6月のデータから、コシアブラから基準値を超える放射性セシウムが検出されてる他県の市町村を探して、同時期の他の山菜類の数値との比較をしてみた。そしたら、どの地域でも、コシアブラの汚染度だけが突出してるということが分かった。以下、抜粋したデータを見てほしい。


【宮城県】
栗原市のコシアブラ 1200Bq/kg
栗原市のタラノメ 500Bq/kg
栗原市のコゴミ 480Bq/kg
栗原市のタケノコ 77Bq/kg

【山形県】
最上町のコシアブラ 200Bq/kg
最上町のワサビの葉 31Bq/kg
最上町のコゴミ 20Bq/kg
最上町のワサビ 8.8Bq/kg

【栃木県】
高根沢町のコシアブラ 240Bq/kg
高根沢町のタケノコ 7.5Bq/kg
高根沢町のサンショウ 2.3Bq/kg

【群馬県】
みなかみ町のコシアブラ 530Bq/kg
みなかみ町のフキ ND(検出限界以下)
みなかみ町のタケノコ ND(検出限界以下)
みなかみ町のウワバミソウ ND(検出限界以下)


まったく同じ種類の山菜ばかりじゃないので、細かいことを言ったら正確性に欠けるかもしれないけど、どの地域でもコシアブラが最高値を記録してることだけは共通してる。山形県最上町や栃木県高根沢町は、コシアブラ以外は基準値を大きく下回ってるし、群馬県みなかみ町に至っては、コシアブラは基準値を超えてるのに、他の山菜はすべて「ND(検出限界以下)」だ。

ちなみに、福島県にはコシアブラのデータがないけど、これは去年2013年5月に、福島県田村市のコシアブラから山菜としては過去最高の12000Bq/kgが検出されたのを始め、多くの市町村で高濃度の検出が相次いだため、現在も「出荷自粛」が続いてるからだ。


‥‥そんなワケで、今回は、この「コシアブラの汚染度の高さの謎」に迫ってミルコ・クロコップ‥‥なんてのも織り込みつつ、まずは、この「コシアブラ」の説明をしとこうと思う。「コシアブラ」というのは、本来は「木の名前」で、この木の枝の先に出る新芽が山菜として食べられる。だから、タラノキの枝の先の新芽を食べる「タラノメ」と同じパターンの山菜だ。

コシアブラは、平均して10m以上、大きなものは30mの高さにまで成長する木で、落葉樹だから秋から冬にかけて葉を落とす。そして、裸木の状態で冬を越し、春になって枝先から新芽が出てくると、美味しそうなサイズになったところを摘んで、天ぷらにしたりして食べる。とっても高い木だから、コシアブラの新芽を摘むには、脚立や高枝伐りバサミや枝を引っ掛ける特殊な道具を使う。


他の山菜の多くは、地面の低い場所に生えてるので、腰をかがめて手で摘んだりする。必要なのは軍手くらいだ。だけど、このコシアブラだけは、脚立に乗って高枝伐りバサミを使わないと摘めないほど高い場所にある‥‥ってなワケで、あたしは最初、この高さの違いが汚染度の違いに関係してるんじゃないかと考えた。つまり、地上から10m以上の髙さを吹いてる風に、高濃度の放射性セシウムが混じってるんじゃないかってことだ。

だけど、木の枝の先の小さな新芽を何百ベクレルも汚染するほどの風が吹き続けてたら、コシアブラよりも先に、人間や他の動物に影響が出るだろう。それに、現在、福島第一原発から放出し続けてる毎時1000万ベクレルの放射性物質は、周囲にジンワリと放出してるから、それほど広範囲は汚染していない。東電の発表では、約12km離れた福島第二原発の敷地内にも新しい放射性物質が降下し続けてるそうだから、少なくとも10km以上は飛んでるけど、さすがに長野県までは飛んでないと思う。

また、去年8月に福島第一原発のガレキを処理した時に飛散した高濃度の放射性物質を含んだ粉塵によって、約20km離れた場所の水田の稲が汚染され、その後の調査によって、この時の粉塵は約50kmくらいまで飛散したことが分かったけど、これも長野県までは飛んでないだろう。だから、あたしの推測は現実的じゃない。

で、あたしが次に考えたのが、外側から汚染されたんじゃなくて、内側から汚染された説だ。越冬した葉のない木の枝の先に、春になって初めて吹き出る新芽なのだから、コシアブラ的には最重要な案件であって、木としての全精力を注ぎ込むはずだ。根から吸収した水分や養分をそれぞれの枝先へどんどん送り、新芽の成長を促すだろう。そして、この時に、原発事故によって野山の降り注いだ大量の放射性物質も、一緒に吸い上げて枝先へ送っているのだ。

こっちのほうが、遥かに現実的な推測だよね?‥‥ってなワケで、この件について、ツイッターで少しだけつぶやいてたら、緑楓山荘さんという人から重要なリプライをいただいた。


緑楓山荘 @ryokufu_sansou
@kikko_no_blog コシアブラは土壌中のマンガンを特異的に吸収~この辺にヒントがありそうですね。国立環境研究所【研究ノート】毒を貯める植物 -植物はなぜ重金属を貯めるのか?-玉置 雅紀 http://www.nies.go.jp/kanko/news/26/26-6/26-6-03.html


あたしは、さっそく教えていただいたリンク先のレポートを読んでみた。このレポートを書かれた玉置雅紀さんという人は、リンク先の「独立行政法人 国立環境研究所」の主任研究員で、農学博士だそうだ。レポートの末尾には「生物圏環境研究領域 生態遺伝研究室主任研究員」と書いてある。「ハイパーメディアクリエイター」よりも遥かに破壊力のある肩書きだ♪‥‥ってなワケで、このレポートは、ぜひ皆さんに全文を読んでほしいんだけど、とりあえず、冒頭の部分だけ引用させてもらう。


「植物は土壌中に存在する様々な無機物を根から吸収し、それらを栄養分として自身の生育に利用しています。その過程で重金属を始めとする土壌中の汚染物質も一緒に吸収してしまうため、普通の植物は土壌汚染物質濃度の高い場所では生育することができません。ところが植物の中には汚染物質、特に金属類が多く含まれる場所に好んで生育し、さらに汚染物質を高いレベルで吸収・蓄積するものがいます。例えばウコギ科のコシアブラは土壌中のマンガンを特異的に吸収し、樹皮や葉に10,000ppm近く蓄積することが知られています。」


この冒頭の部分を読んだだけで、あたしは「おおっ!」っとなった。その上、読み進めると、コシアブラのように土壌中の汚染物質を吸い上げる植物のことを「ハイパーアキュミレーター植物」と呼ぶとのこと。これまた「ハイパーメディアクリエイター」よりも遥かに世の中の役に立つじゃん♪(笑)


‥‥そんなワケで、コシアブラが自分から進んで土壌中の放射性セシウムを吸い上げてるのかどうかは、玉置雅紀さんのような専門家に調べていただかないと分からないことだ。だけど、現実として、どこの地域でも山菜類の中でコシアブラの含有する放射性セシウムの数値が最も高いというデータがある。それも、複数の山菜の中で、コシアブラだけが突出して高いのだ。

今年の5月と6月の数値は前半に挙げたけど、去年なんて福島県のコシアブラは軒並み数千ベクレル、栃木県の那須でも3000Bq/kgという恐ろしい数値のコシアブラが計測された。そして、この時、コシアブラ以外の山菜はと言えば、どれも数十ベクレルから数百ベクレルだった。やっぱり、コシアブラだけが突出してたのだ。

だから、コシアブラが、土壌中の放射性セシウムをマンガンと勘違いして吸い上げてるのか、単なる「異物(毒物)」と判断して吸い上げてるのか、はたまたマンガンを吸い上げる過程で一緒に吸い上げてしまっているのかは分からないけど、他の植物よりも遥かに大量に吸い上げ、そして、新芽を始めとした「自分の体内」に蓄積してるということだけは間違いないだろう。

ちなみに、マンガンの中で最初から自然界にある安定同位体はマンガン55だけで、他の18種のマンガンはすべて放射性同位体(核種)だ。だから、コシアブラが「特異的に吸収」する土壌中のマンガンというのは、通常はこのマンガン55を指す。だけど、1970年代後半に、敦賀原発、浜岡原発、福島第一原発の周辺で採取した松葉から、放射性同位体のマンガン54とコバルト60が検出されて大騒ぎになったことがあるそうだから、もしも原発事故などで放射性マンガンが放出されたら、コシアブラは、他の植物よりもセッセと放射性マンガンを吸い上げてくれると思う。

で、セシウムの場合も、自然界にある安定同位体はセシウム133だけで、セシウム134や137を始めとした他の38種のセシウムはすべて放射性同位体だから、核兵器を使用されたり原発が事故を起したりしない限り、土壌や海を汚染することはない。だけど、原発利権によるカネ儲けに目がくらんでしまった一部の日本人たちは、識者たちの忠告に耳を貸さずに欠陥原発を動かし続け、とうとう福島第一原発の大事故を起こしてしまった。

数度の爆発によって、自然界には存在しない大量の放射性物質が放出された。中でも放射性セシウムは「水に溶けやすい」という特性も手伝って、日本の広いエリアの土壌を汚染してしまった。そして、事故から3年半が経っても、事故を収束させるどころか、増え続ける放射能汚染水を止めることすらできない人間と、人間が汚染してしまった土壌の放射性物質をセッセと吸い上げ続けてくれているコシアブラ‥‥ってなワケで、あたしは、「風の谷のナウシカ」のあるシーンを思い出した。


ユパ 「ナウシカ!これはどういうことだ!腐海の植物ではないか!」

ナウシカ 「私が胞子を集めて育てたんです。大丈夫、瘴気は出していません」

ユパ 「毒を出さぬ!?確かにここの空気は正常だが‥‥、何故だ?猛毒のヒソクサリが花をつけておるのに!」

ナウシカ 「ここの水は、城の大風車で地下500メルテから上げている水です。砂は、同じ井戸の底から集めました。綺麗な水と土では、腐海の木々も毒を出さないと分かった‥‥。汚れているのは土なんです!この谷の土ですら汚れているんです!‥‥何故?誰が世界をこんな風にしてしまったのでしょう‥‥」

ユパ 「そなた、それを自分で‥‥」

ナウシカ 「ええ、父やみんなの病気を治したくて‥‥でも、もうここも閉めます。さっき水を止めたから、やがてみんな枯れるでしょう‥‥」

ユパ 「ナウシカ‥‥」


‥‥そんなワケで、「風の谷のナウシカ」の世界では、人間たちは猛毒の瘴気を出す植物たちによって構成された森、「腐海」を忌み嫌い、何度も焼き払おうとした。しかし、巨大な虫たちに守られた腐海を焼き払うことなど、人間ごときには叶わなかった。それでも腐海を忌み嫌い、伝説の巨神兵を復活させてまで焼き払おうとする人間たち。

でも、「風の谷」の姫さま、ナウシカは真実を知る。人間たちが忌み嫌っていた腐海の植物たちは、本当は毒など持っていなかったのだと。腐海の植物たちは、人間が汚してしまった大地を浄化して元に戻すために、一生懸命に土壌に染み込んだ毒を吸い上げていたのだと。そして、その神聖なる森を守っていたのが、王蟲(オーム)を始めとした巨大な虫たちだったのだ。

自分たちの暮らす大地を汚し、自分たちの飲む水を汚した上に、その大地を元に戻そうとしている森を焼き払おうとする人間たち。さらには、私利私欲のために他国の人間たちを相手に戦争まで始めてしまう。なんという愚かさだろう。だけど、たった1人の少女、ナウシカの愛が、「風の谷」を救ったのだ。ナウシカの愛は、人間に対する愛じゃない。人間に対する愛、動物に対する愛、植物に対する愛、大地に対する愛、水に対する愛、そして、風に対する愛‥‥自分を生かしてくれているすべての相手に対するナウシカの深い愛が「風の谷」を救ったのだ。


‥‥そんなワケで、原発は安全ではない、一度でも原発が事故を起こしたら簡単には収束させることなどできない、ということが分かったのに、それでも原発の再稼動を進める安倍政権。カネ儲けのためなら、危険な原発でも人殺しの武器でも何でも輸出しようとする安倍政権。多くの希少生物たちが暮らす、かけがえのない美ら海を埋め立てて、人殺しのための米軍基地を造ろうとしている安倍政権。69年間も日本の平和を作ってきた大切な平和憲法を踏みにじり、よその国へ武装した軍隊を送り込もうとしている安倍政権。安倍政権のやろうとしていることは、すべてが「ナウシカの愛」と正反対の方向を向いていると感じた今日この頃、このまま進めば日本は必ず腐海に飲みこまれてしまうだろう‥‥。


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2014.08.10

マスカラとマラカスのお話

夏と言えば「夏フェス!」って人も多いと思うけど、この「夏フェス」や「野外フェス」の「フェス」ってのは、当然のことながら「フェスティバル」の「フェス」だ。英語だと「festival」だから、正確には「フェスティヴァル」って表記すべきなんだろうけど、さすがに、ここでの「ヴァ」は「やりすぎ感」が強いから、今日は普通に「フェスティバル」って書かせてもらう。

で、この「フェスティバル」、「フェスタ」って略す場合もあるけど、日本では「夏フェス」のブームで「フェス」って略すのが一般的になった。だけど、この「フェスティバル」って、いったい何なんだろう?正確に説明できる人っている?たいていの人は「なんかお祭り的なこと」っていうザックリとした把握しかしてないと思うし、中学生くらいまでは、あたしもそうだった。

だけど、高校生の時、『とんねるずのみなさんのおかげです』に「仮面ノリダー」が登場して、多くの敵を必殺技の「ノリダー・カーニバル&フェスティバル」で倒すようになると、あたしには「カーニバルとフェスティバルってどう違うんだろう?」っていう疑問が湧いてきた。「フェスティバル」しかないならザックリとした把握でもいいんだけど、似たような言葉が2つ以上出てくると、その違いを知りたくなるのが人情であり、知的好奇心ってもんだ。

世の中に「アザラシ」しかいなけりゃ別にいいんだけど、その隣りに「アシカ」がいると、「アザラシとアシカってどう違うの?」って気になり始めちゃうし、さらにその隣りに「オットセイ」まで出てくると、アザラシとアシカとオットセイの違いが気になって気になって夜も眠れなくなって朝まで文化放送「走れ!歌謡曲」を聴くことになっちゃう。そして、アザラシとアシカとオットセイの違いが分かると、今度は、ゾウアザラシとトドとセイウチの違いが気になってくる今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、あたしは、「仮面ノリダー」のせいで‥‥って言うか、「仮面ノリダー」のおかげで、「フェスティバル」と「カーニバル」の違いを知ることになった。「フェスティバル」とは、もともとは「宗教的な祝祭」のことで、それが転じて、宗教とは無関係な一般的な祝祭にも使われるようになり、さらには、祝祭ではない世俗的なイベントにも使われるようになった、というもの。

一方、「カーニバル」とは、もともとはカトリックなどの西方の宗教文化圏で、仮装してパレードを行なったりする「謝肉祭」のことで、それが転じて、宗教とは無関係な一般的な祝祭にも使われるようになり、さらには、祝祭ではない世俗的なイベントにも使われるようになった、というもの。

つまり、両方とも同じような変遷をたどってるんだけど、イメージで大別すると、「フェスティバル」は広い敷地などで移動せずに行なわれるお祭り的なイベントのことで、「カーニバル」は「リオのカーニバル」に代表されるように、大通りなどを移動しながら行なうお祭り的なイベント、「パレード」をメインにしたイベントということになる。だから、「フジ・ロック」などを「フェス」と呼ぶのはバッチリなワケで、これらの音楽イベントは「カーニバル」には当たらない。


日本で「カーニバル」と言えば、「浅草サンバカーニバル」のように最初から「カーニバル」の名を冠したものもあるけど、これは、あくまでも本場の「リオのカーニバル」を模したものだ。日本には、もっと日本的で、日本を代表する「カーニバル」がたくさんある。たとえば、青森の「ねぶた祭り」や弘前の「ねぷた祭り」だ。弘前の「ねぷた祭り」は、今年は残念ながら事故があって中止になってしまったけど、どちらも日本を代表する素晴らしい「カーニバル」だ。

秋田の「竿灯祭り」、岩手は盛岡の「さんさ踊り」、山形の「花笠まつり」、福島は郡山の「うねめまつり」、富山は越中八尾の「おわら風の盆」、大阪は岸和田の「だんじり祭り」、徳島の「阿波踊り」、福岡の「博多どんたく」や「博多祇園山笠」、長崎の「おくんち」、沖縄の「エイサー」、数え出したらキリがないほど、日本には素晴らしい「カーニバル」がある。また、日本三大祭である東京の「神田祭」、京都の「祇園祭」、大阪の「天神祭」などのように、「フェスティバル」の要素と「カーニバル」の要素を兼ね備えたお祭りも日本にはたくさんある。


‥‥そんなワケで、「フェスティバル」に「パレード」の要素を加えたものが「カーニバル」ってワケだけど、「フェスティバル」と「カーニバル」が「バルつながり」であるように、「パレード」と「レードつながり」なのが「マスカレード」だ。マーマレードのように甘くもなく、マスタードのように辛くもなく、どんな味がするのか分からない「マスカレード」だけど、そろそろ50歳に手が届きそうな3人組の少年たちに直訳してもらうと、「仮面舞踏会」って意味になる。

「マスカレード(masquerade)」の「masque」は「mask」のことで、「仮面、仮面劇」の意味だ。「カーニバル」のもともとの意味である「謝肉祭」は、仮面をつけたり仮装したりしてパレードをするワケだから、ここでも意味がつながってくる。だけど、「マスカレード」は仮面をつけて街を練り歩くワケじゃなくて、広い室内でダンスパーティーをするワケだから、立地的には「カーニバル」じゃなくて「フェスティバル」ってことになる。ああ、ややこしい。

で、せっかくだから、ついでに書いちゃうけど、「キン肉マン」世代の人がジグソーの「スカイ・ハイ」を聴くと一瞬で思い出すメキシコのプロレスラー、ミル・マスカラスは、「ミル(Mill)」が英語の「Million」、「1000」という意味で、「マスカラス(mascaras)」が「マスク(mascara)」の複数形、つまり、「千の仮面」という意味だ。だから、そのまま「千の顔を持つ男」というキャッチフレーズで呼ばれてた。

ケーキの「ミルフィーユ」は「千の葉」という意味なので、千葉県の名物にしようなんて動きがあるけど、これも一種の「ミル・マスカラス現象」と言ってもいいだろう。で、ミル・マスカラスの弟のドス・カラスは、「ドス(Dos)」が「2」、「カラス(caras)」が「顔(cara)」の複数形なので、「2つの顔」という意味だ。

ミル・マスカラスやドス・カラスは、メキシコ人なので、もちろんスペイン語だけど、あたしはスペイン語なんてチンプンカンプンだから、こうして興味の湧いたことを調べながら、ナニゲに小さな発見があったりする。今回は、この2人の名前から、スペイン語では「顔」が「cara」で、「マスク(仮面)」が「mascara」だということを知った。だから、ここでは便宜上、「mascara」を「マスク」と訳したけど、さらに正確に訳すと、「マスクをつけた顔」って意味になるんだと思う。


‥‥そんなワケで、女性の皆さんはウスウス気になってたと思うけど、ミル・マスカラスの「マスカラス」は、マスク(仮面)を意味する「マスカラ」の複数形‥‥ってワケで、そう、まつ毛に塗る、あの「マスカラ」だ。化粧品の「マスカラ」と、ミル・マスカラスの「マスカラ」は、偶然に同じになったワケじゃなくて、語源も同じなのだ。

もともとは、「覆う」という意味のイタリア語、「maschera」が語源で、これが英語の「マスク(mask)」や、スペイン語の「マスカラ(mascara)」になった。だから、ミル・マスカラスが、もしもアメリカ人のプロレスラーだったに、「ミル・マスクス」になってたワケだ。で、このスペイン語の「マスカラ(mascara)」は、最初は語源のイタリア語と同じに、「覆う」「変装する」などの意味も持っていたため、女性が、まつ毛を太く長く見せるために塗る化粧品のことも「マスカラ(mascara)」と呼ぶようになったのだ。

ちなみに、世界で最初に「マスカラ」を使った女性は、スペインの貴族の娘で、ナポレオン三世のお妃様になったウジェニー・ド・モンティジョ妃だと言われてる。ウジェニー妃は、1826年に生まれて1920年に亡くなっているので、今から150年くらい前には「マスカラ」が誕生してたようだ。

で、「マスカラ」と言うと、必ずセットで思い出すのが楽器の「マラカス」だけど、これも「マスカラ」と同じスペイン語で、マンボやサルサなど、スペイン語圏のラテン音楽で使われる。「マラカス(maracas)」は、「マラカ(maraca)」というウリ科の果実の中身をくり抜いて干して、タネを入れて作る。だから、両手に1つずつ持って振って、初めて「マラカス」という複数形になるワケで、片手に1つしか持ってない時は「マラカ」になっちゃう。


‥‥そんなワケで、「マラカス」は基本的に2個で1セットの楽器なので、1個だけを使うことってほとんどないと思うけど、カラオケとかで、右手にマイク、左手にマラカス‥‥みたいな状況の時は、無理してでも左手に2個のマラカスを持たないと、「マラカ」になっちゃうから注意してほしい。「マラカ」になっても、特に困ることもないだろうけど‥‥。逆に、全身に1000個のマラカスを装着して、「ミル・マラカス」を名乗るのはアリだと思う。こっちも、これと言って特にメリットもないだろうけど、1000個のマラカスを鳴らしながら派手に空中殺法を繰り出せば、1回目だけはウケると思う。どこかの街の「カーニバル」とかで‥‥なんて思ったのもトコノマ、今回のブログはあっちこっちに空中殺法を連発しすぎて、完全に着地点を見失ってしまった今日この頃なのだ(笑)


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2014.07.28

「機関車先生」に見る本当の強さと本当の優しさ

マレーシア航空機の撃墜事件で最も多くの犠牲者を出したオランダで、「オランダ軍をウクライナに派遣して、ウクライナ軍との共同作戦で親ロシア派を殲滅しろ!」という世論が高まっているという。もちろんこれは、あくまでも一部の過激な層の声であって、日本のネットウヨクがネット上で韓国や中国を攻撃してるようなレベルだと思う。だから、真面目に取り合うこともないんけど、あたしは、とっても悲しい気持ちになった。

他にも、イスラエルによるガザのパレスチナ人の虐殺、ISISによるイラクでの虐殺、ボコ・ハラムによるナイジェリアでの虐殺、アサド政権によるシリアでの自国民の虐殺、ケニア、エジプト、チュニジア‥‥って、挙げて行ったらキリがないほど、世界のあちこちで、何の罪もない人たちが殺され続けてる。あえて言わせてもらえば、大人の男たちが始めた戦争で、何の罪もない子どもたちや女性たちが殺され続けてる。

だから、あたしは「何か書かなきゃ!」って思ってるんだけど、ロシアの問題にしても、イスラエルとパレスチナの問題にしても、他の国々の問題にしても、多くの専門家が書き尽くしてきたことを、シロートのあたしが繰り返しても意味はない。そして、これらの問題に絡めて、戦争へと突き進む安倍政権を批判することを書いても、それはそれで、あまり意味はない。やっぱり、あたしは、あたしらしい書き方で、自分の伝えたいことを表現して行こうと思った今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、前回のブログの「きっこさんのつぶやき」の中に、こんなツイートがあったことを覚えてる人もいると思う。


瀬戸内海の島を舞台にした小説と言うと、壺井栄の「二十四の瞳」、横溝正史の「獄門島」、角田光代の「八日目の蝉」などから、最近ブームの村上水軍モノに至るまで何十作もあるけど、あたしが一番好きなのは伊集院静の「機関車先生」だ。アニメもドラマもイマイチだったけど原作は本当に素晴らしい。
2014.07.23 11:55


で、今日は、この『機関車先生』(講談社文庫)を紹介しようと思うんだけど、あたしが伊集院静さんの作品を読むようになったのは、阿佐田哲也さん(色川武大さん)の麻雀小説『牌の魔術師』の後書きを読んだことがキッカケだ。伊集院静さんが、まだ作家になる前、阿佐田哲也さんと一緒に全国の競輪場を旅打ちしたり、麻雀を打ったりしてた時代のことが短く書かれてるんだけど、この後書きの素晴らしさにシビレちゃったあたしは、伊集院静さんの作品をいろいろと読むようになった。そして、この『機関車先生』にも出会った。


‥‥そんなワケで、敗戦から十数年後の昭和30年代、山口県の瀬戸内海の小島、葉名島(はなじま)が舞台のこの小説は、島に1つだけの小学校に、1人の体の大きな男の先生が赴任してくるところから始まる。全校生徒が5人だけの小学校は、それまで佐古周一郎という校長先生が1人で教えていたんだけど、春から新入生が2人入学して7人になる。そこで、先生の数を増やすことにしたワケだ。

赴任してきた先生の名前は吉岡誠吾、子どものころの病気が原因で、言葉を話すことができない。口を「きかん」先生、D51のように体の大きな先生、それで、子どもたちから「機関車先生」というアダ名をつけられる。そして、校長先生との二人三脚の授業で、子どもたちと仲良くなって行く‥‥って、この調子で書いてくとキリがないし完全なネタバレになっちゃうので、アレもコレもソレもドレもみんな割愛して、あたしの伝えたい場所へ、クルリンパとワープしちゃう。

海に面した崖の中腹に、人工的な横長の窪地があった。そこを指差して、校長先生が機関車先生に話し出す。あそこは戦時中に海軍が弾薬庫を造ろうとした跡だと。そして、そのすぐ下にある尖った四角い岩が「八子部(ヤコブ)の裏切り岩」と呼ばれていたことを。

この島の女が、本土の遊郭で働いていた時、1人のドイツ人に見染められて、子どもを産んだ。でも、そのドイツ人は国に帰ってしまったので、その女は子どもを連れて、この島に帰ってきた。その子の名前が、ヤコブ。ヤコブは髪が赤かったので、他の子どもたちから虐められた。石を投げられた。でも、とてもやさしい心を持った子どもで、よくお母さんの手伝いをしていた。

敗戦が色濃くなってきた昭和20年、岩国の海軍基地から、突然、兵隊たちがやってきて、あの場所に弾薬庫を造り始めた。島の男たちも工事に駆り出された。でも、上空には頻繁に米軍の偵察機が飛びまわっていて、弾薬庫の建設は敵に筒抜けだった。あんなところに弾薬庫を作ったら、この島も必ず爆撃されてしまう。島の人たちは不安になった。中には島から出て行く者もあらわれた。

そんなある日の夜、弾薬庫を建設している場所のすぐ下の岩の上で、大きな火が燃えているのを兵隊の1人が発見した。誰かが焚火をしているらしい。兵隊は焦った。これでは米軍の偵察機に「ここに弾薬庫がありますよ」と教えているようなものだからだ。でも、その岩までは、波が荒くて近づくことができない。

朝になって見てみると、岩の上には誰もいなかった。でも、夜になると、また誰かが焚火を始めた。そして、3日目の夜、また焚火が始まったので、兵隊たちは焚火に向かって機関銃を撃ちまくった。朝になると、岩の上で血まみれになったヤコブが死んでいた。ヤコブのお母さんは岩国基地に連行され、島の人たちも取り調べを受け、結局、ヤコブが敵のスパイだったということで事件は終わった。そして、その岩は「八子部の裏切り岩」と呼ばれることになった。

スパイのヤコブによって、この場所は米軍にバレてしまったという見方がなされたため、海軍は、この場所に弾薬庫を造ることを諦めた。結局、ヤコブのお陰で、葉名島は米軍の爆撃を受けずに済んだのだ。

実は、校長先生は知っていた。夜遅くに、小舟を漕いで岩へと向かうヤコブの姿を目撃していたのだ。それで、何のために焚火などするのか?軍に知れたら殺されてしまうぞ!とヤコブに言ったのだ。でも、ヤコブは、「これは自分のすべきことだ」と言って焚火を続け、そして、殺されてしまった。ヤコブは、この島に弾薬庫など造らせない!この島が爆撃を受けるようなことだけは止めたい!その一心で、自分の命と引き換えに島の人たちを戦災から守ったのだ。


‥‥そんなワケで、これが「八子部の裏切り岩」の概要なんだけど、それから十数年後、校長先生は、機関車先生と一緒に、子どもたちと海を見ている。そして校長先生は、子どもたちにも、この「八子部の裏切り岩」の話をした‥‥ってワケで、ここからは、本文を引用させてもらう。


<引用ここから>
「どうして戦争をしたんじゃ」
 修平が言った。
「どうしてだと思う?修平」
 (校長の)周一郎が修平に聞いた。
 修平が首を横にふった。
「人間は昔から戦争を何回もしてきたんじゃ。その度に大勢の人が死んだ。葉名島からも何人もの人が戦争に連れて行かれて帰って来なんだ。そんな馬鹿なことを二度とくり返さないぞ、と思うのに、またどこかで戦争がはじまる。人間はそれをくり返して来た」
「どうして悪いこととわかって、同じことをくり返してきたんですか」
 妙子が聞いた。
「それはな、皆がヤコブのように人と人が争うことが醜いこととわかっとらんからだ。ヤコブはこの島で髪の毛が赤かっただけで石を投げられた。修平、もし君がそんなことで石を投げられたら、どうする?」
 周一郎が修平に聞いた。
「わしは、そいつに石を投げ返したる」
 修平が怒ったように言った。
「そいつがまた石を投げ返したらどうする?」
「また投げ返してやる」
「そうか、投げ返すか‥‥。なぜ投げ返すか?」
「そりゃそいつが憎ったらしいからじゃ」
「憎いか」
「憎いに決まっとる」
 修平が本気で怒り出した。
「それが戦争のはじまりじゃ」
「戦争の?」
「そうじゃ、人が人を憎いとか、悪い奴じゃと決めたところから戦争がはじまるんじゃ。戦争はな、国と国が争うように見えるが、本当は人間のこころの中からはじまっとるんじゃ」
「ようわからんの」
「君たちが大人になって、日本という国がまた立派になった時、誰かがあそこの国が悪いとか、憎ったらしいとか言い出した時に、本当にそうなのかをよく考えられる人間になっとらねばいかん。自分が正しいと思ったら、それを実行できる人間になることじゃ。ヤコブがなぜ何も言わずに死んだのかを考えてほしい」
「なぜなの?」
 洋子が聞いた。
「それはな、あの時代に、ヤコブが戦争はいけない、と言い出したら、きっとひどい目に遭わされたからじゃ。島の人間もこころの奥では戦争はいけないこととわかっとった者もおる。けどそれを口にしたら、皆からいじめられ、石を投げられたんじゃ。いいか、君たちが大人になった時、正しいと思ったらそのことをはっきり口に出して言える人に、私はなってほしい。相手に石を投げられたり、蹴られても、それをすぐやり返さずに我慢ができる人になってほしいんじゃ。本当に強い人間は決して自分で手を上げないものじゃ」
 子供たちが一斉に誠吾の方を見た。
 誠吾は黙って、うつむいていた。
<引用ここまで>
※伊集院静著『機関車先生』(講談社文庫)P.178~P.180より


‥‥そんなワケで、この少し前に、この地域の小学校の子どもたちの描いた絵の展覧会が本土で行なわれたので、校長先生と機関車先生は、子どもたちを連れて連絡船で本土での展覧会を観に行っていた。その時、チンピラたちにからまれている女学生を助けた機関車先生は、チンピラたちに殴られても蹴られても手を出さずに、ずっと我慢をしていた。

剣道の達人で、体も大きくて、子どもたちにとってはスーパーマンのような存在だった機関車先生だから、チンピラの2人や3人、あっと言う間にやつけてくれると思っていた子どもたちは、殴られても蹴られても、顔にツバまでかけられても手を出さずにジッとしている機関車先生の情けない姿に失望してしまった。そして、「機関車先生は弱虫じゃ」と言って、島に帰って来てからも、あれほど大好きだった機関車先生と、距離を置くようになってしまった。

だけど、今の校長先生の話を聞いて、子どもたちは分かったのだ。機関車先生が、なぜチンピラたちを殴り返さなかったのか。なぜ我慢し続けたのか。それは、機関車先生が本当に強い人間だったからこそ、本当に優しい人間だったからこそ、憎しみの連鎖の発端となる「反撃」を我慢することができたのだと。言葉を話すことができない機関車先生は、自らの体を使って、子どもたちに「人と人が争うことの醜さ」を、「戦争の愚かさ」を教えてくれたのだ。


‥‥そんなワケで、この子どもたちと同じくらいの年齢の「戦争を知らない世代」が大人になり、政治家になり、今、この国を動かしてるワケだけど、残念なことに、今、この国の舵を握っている船長は、「あそこの国が悪い」とか「あそこの国が憎ったらしい」という気持ちだけで船を進めてるようにしか見えない。だから、せめてあたしたち乗組員だけでも、半世紀前の校長先生の言葉をしっかりと胸に刻んでおき、この船が間違った方向へ進まないようにしたいと思う今日この頃なのだ。


「君たちが大人になって、日本という国がまた立派になった時、誰かがあそこの国が悪いとか、憎ったらしいとか言い出した時に、本当にそうなのかをよく考えられる人間になっとらねばいかん。自分が正しいと思ったら、それを実行できる人間になることじゃ。ヤコブがなぜ何も言わずに死んだのかを考えてほしい」


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2014.07.27

お知らせです♪

今日は「ロートこどもソフト」の新作CMをご紹介します!

「ワンピース」の麦わらの一味がプールで遊んだら、水が苦手なチョッパーの目が真っ赤に!



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