2018.09.22

安倍政権による名目GDP成長のカラクリ

最初から安倍晋三の3選が決まっていた今回の自民党総裁選だったけど、スクリーンに安倍晋三と石破茂の得票数が映し出されると、その数字を見た安倍晋三は苦虫を噛み潰したような顔になり、隣りにいた選対事務総長の甘利明は顔面蒼白になった。一方、負けた石破茂は満面の笑みで、自身の獲得票数を見ながら何度も「うん。うん」とうなずいていた。

自民党の総裁選は、405票の議員票と、405票の地方票(党員算定票)の計810票の奪い合いなので、最初から「人事と恫喝」という「飴と鞭」で議員票の大半を手中に収めていた安倍晋三が勝つことは決まっていて、あとは石破茂がどこまで善戦するかという点に注目が集まっていた。安倍晋三は、過去に地方票で石破茂に負けたことがあるため、今回は議員票だけでなく地方票でも石破茂に大差をつけて勝ち、これまでの独裁を継続することが目的だった。

しかし、結果は、安倍晋三が議員票329票と地方票224票の計553票、石破茂が議員票73票と地方票181票の計254票だった。トータルの得票数だけを見れば、安倍晋三がダブルスコアで勝ったのだから「大勝」と言えるが、石破茂は、安倍陣営が事前に「50票前後」と予想していた議員票を20票以上も上積みした上、安倍陣営が「最低でも6割以上、できれば7割」を目指していた地方票で、45%、約半数の票を集めた今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、「人事と恫喝」でどうとでもなる議員票では、お得意の卑怯な手段を使って石破茂に圧勝した安倍晋三だが、地方票では「ほぼドロー」という結果になり、これが開票時の両者の表情、苦虫を噛み潰したような安倍晋三と満面の笑みの石破茂という対照的な画(え)を生み出したのだ。そして、この結果こそが、安倍晋三にくっついていればオコボレが頂戴できる中央の国会議員たちと、いつまで経っても景気など良くならない地方の議員や党員たちとの感覚の違いを表わしているのだと思う。

今回の総裁選では、両者による街頭演説やテレビ討論などがそこそこ行なわれたけど、暗黙のルールでもあったのか、石破茂はモリカケ問題や公文書偽造問題など、安倍晋三の不正に関する問題にはほとんど触れなかった。だけど、その一方で、この5年間のアベノミクスに関しては舌鋒鋭く切り込んでいた。そんな中で、あたしが特に印象深かったのが、次のようなツッコミだった。


安倍晋三 「この5年間の経済政策によって、景気の暖かい風がやっと地方に届き始めた」

石破茂 「嘘を言ってはいけない。中央と地方は違うメカニズムで経済が動いている。地方それぞれの地域の生産性、付加価値を最大限伸ばして行かなければ地方創生は実現しない」


事実、石破茂が言うように、特別な一部の地域を除いて、日本の多くの地方は、この5年間のアベノミクスによって経済が疲弊してしまった。それは、何でも中央に集めて大企業を優先し、その大企業が儲かれば地方や中小企業にも儲けが滴り落ちる「トリクルダウン」などという最初の説明が、完全に「絵に描いた餅」だったからだ。安倍晋三は何かにつけて「アベノミクスによって有効求人倍率は全国47都道府県すべてで1を上回った」などとドヤ顔でノタマッているけど、東京や大阪などの大都市はともかく、地方の大半は、労働力の中央集中によって人手不足が慢性化しただけで、間違っても景気が良くなって求人が増えたワケじゃないのだ。自分の大バカ政策によって地方を疲弊させておいて、それを自慢するなんて厚顔無恥にも程がある。

その上、大企業が利益を上げたのだって、実際に景気が良くなって製品がたくさん売れたからじゃない。日銀が湯水のようにカネをバラ撒いて円安を誘導して輸出製品の利益が増えるように仕組んだ上に、法人税を引き下げたからだ。ようするに、いかにもアベノミクスによって景気が回復したかのように、ヤラセの演出をしていただけだ。

そして、このヤラセの最たるものが「GDPの改竄」だ。安倍晋三と言えば森友学園との交渉を記録した公文書から「安倍昭恵」に関する記載部分を削除させるなど「改竄」が十八番だけど、安倍政権は、政府が公式に発表している日本の総生産、GDPの数字まで盛りまくり、あたかもGDPが順調に成長しているように演出して国民を騙していたのだ。


‥‥そんなワケで、今年のお正月、恒例の「年頭所感」の中で、安倍晋三はドヤ顔で次のように公言した。


「6年前、日本には、未来への悲観論ばかりがあふれていました。しかし、この5年間のアベノミクスによって、名目GDPは11%以上成長し過去最高を更新しました。生産年齢人口が390万人減る中でも、雇用は185万人増えました。いまや、女性の就業率は、25歳以上の全ての世代で、米国を上回っています。有効求人倍率は、47全ての都道府県で1倍を超え、景気回復の温かい風は地方にも広がりつつあります。あの高度成長期にも為しえなかったことが、実現しています。」


これが安倍晋三の得意技で、必ず毎年の「年頭所感」では前民主党政権のことを間接的にDisって来た。たとえば、昨年2017年には「私たちが政権を奪還する前、『日本はもはや成長できない』、『日本は黄昏を迎えている』といった、未来への不安を煽る悲観論すらありました。」などと述べている。ま、それはそれとして、何よりも問題なのは、目の前の現実を無視し、自分にとって都合のいいデータや捏造したデータだけを並べて、嘘の「景気回復」を連呼していることだ。

安倍晋三は「この5年間のアベノミクスによって、名目GDPは11%以上成長し過去最高を更新しました。」などど抜かしているが、そもそもこれがペテンなのだ。まず初めにザックリと説明しておくけど、GDPには、国民総生産の伸び率だけを数値化した実質GDPと、物価変動などを加味した名目GDPがある。つまり、実質GDPが伸びたとしても、製品を製造するのに必要な原材料や燃料などが高騰したら利益は伸びないので、実際の景気を判断する場合には、こちらの名目GDPを指針とする。

そして、安倍晋三は、この名目GDPがアベノミクスによって11%も成長したと述べたのだ。だけど、これは、ペテンと言うか、完全に詐欺レベルのイカサマなのだ。内閣府が発表している過去数年間の名目GDPの推移を見ると、民主党政権最後の年の2012年には約495兆円だった名目GDPが、昨年2017年には約544兆円になっているから、約10%ほど伸びているし、これを少し盛って「11%」だと言うくらいなら可愛げがある。でも、この「約544兆円」という内閣府が発表した数字自体が、そもそもイカサマなのだ‥‥ってなワケで、もうちょっと遡るけど、安倍晋三は2年前の2016年の「年頭所感」で、次のように述べている。


「そして、20年近く日本経済を低迷させる原因となってきたデフレとの闘い。この3年間、経済の再生に全力を挙げてきました。その結果、雇用は100万人以上増え、17年ぶりの高い賃上げ。昨年、青森、秋田、徳島、高知、福岡、熊本、沖縄の7県で、有効求人倍率が過去最高を記録するなど、地方創生も着実に進んでいます。もはやデフレではない。私たちは、3年間で、そういう状況を創ることができました。「戦後最大のGDP600兆円」、「希望出生率1.8」、「介護離職ゼロ」という3つの明確な「的」を掲げ、新しい「三本の矢」を放ちます。いよいよ「一億総活躍・元年」の幕開けです。」


新年早々「もはやデフレではない。」などと大見得を切ったのはいいとしても、問題なのはその先だ。安倍晋三は、この2016年の「年頭所感」で、何の具体策も根拠も示さずに、「戦後最大のGDP600兆円」「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」という、できもしない大風呂敷を3枚も広げてしまった。どれも今の安倍政権では絶対に達成不可能な目標だけど、この1番目の「戦後最大のGDP600兆円」、これを何とかするために安倍晋三が真っ先に指示を出して内閣府に取り組ませたのが、「名目GDPの計算方法の変更」というイカサマだったのだ。

名目GDPとは、簡単に言えば「消費+投資+政府支出」なので、このうちどれかを増やせば数字が上がる。そこで内閣府は、これまでは「経費」と見なしていた各企業などの「研究開発費」を「投資」と見なして名目GDPに加えることにしたのだ。これだけで年間約20兆円の「研究開発費」が名目GDPに上乗せされた。他にも、これまでは加算しなかった「特許使用料」や「不動産仲介手数料」なども名目GDPに加算することにして、これが年間約5兆円の上乗せになった。

現在の安倍政権がスタートしてからの5年間、内閣府が発表した名目GDPを見てみると、2013年が約503兆円、2014年が約513兆円、2015年が約532兆円、2016年が約537兆円、2017年が約544兆円と、右肩上がりに成長しているし、安倍晋三が宣言した「戦後最大のGDP600兆円」という目標に向かって着実に近づいているように見える。だけど、これは、2015年から名目GDPの計算方法を「水増し方式」に変更したことによるペテンなのだ。

試しに、「水増し方式」を導入した最初の年、2015年の「約532兆円」という名目GDPを、2014年までと同じ従来の計算方法で算出してみたところ、なんと「約500兆円」だったのだ。つまり、安倍政権は、これまでは加算しなかったアレやコレやを次々と加算して、盛りに盛って、総額で約32兆円も水増しして、あたかも名目GDPが大きく成長したかのように演出していたのだ。もしも、従来通りの計算方法であれば、2015年は、前年2014年の約513兆円から13兆円も下落しているのだから、完全に「マイナス成長」だ。


‥‥そんなワケで、2014年4月に消費税増税を強行した時、安倍政権は「一時的に消費が落ち込んでも一期でV字回復する」と、何の根拠もない説明で国民を欺いた。だけど、フタを開けてみたら、一期どころか、年末を迎えても翌2015年になっても消費は冷え込んだままで、結局は2015年の年末になっても回復しなかった。2014年は4月の消費税増税までの「駆け込み消費」で自動車や高級家電などがそれなりに売れたため、年間を通してみれば前年2013年よりも10兆円ほど名目GDPが伸びている。

でも、2015年は年間を通して消費が冷え込んだままだった上に、輸出も振るわなかったので、それに連動して生産はガクッと落ちてしまった。それなのに名目GDPが20兆円近くも伸びるなど考えられない。だけど、水増しのイカサマ計算などせずに、従来通りの計算で出た「前年度から13兆円下落の約500兆円」という名目GDPであれば、当時の日本の景気状況とも合致する。

そして、当然、2016年の約537兆円も、2017年の約544兆円も、すべて「水増し方式」によるペテンであり、数字の盛り方も年々大きくなって行った。そうしないと、名目GDPが成長しているように演出できないし、自分の掲げた目標に近づいているようにもアピールできないからだ。2017年までの名目GDPを従来の計算方法で算出してみると、僅かに微増で推移しているが、ほとんど2013年と変わらない「横ばい」なので、とても「成長」などと呼べる状況じゃない。事実、世帯当たりの消費は前期割れが続いているし、輸出産業が利益を上げているのは円安のおかげで、輸出量はまったく増加していない。国内でも海外でも製品が売れていないのに、生産だけが順調に増加し続けることなどありえないだろう。

黒字なのは一部の大企業だけで、日本の全企業の99.7%を占める中小企業のうち約7割が赤字だと言うのに、こうしたイカサマの計算方法に変更しただけで、黙っていても数十兆円が名目GDPに上乗せされるのだから、あたかも景気が回復して経済が成長しているかのように演出できるのだ。その上、減税をエサにして大企業への政府支出を拡大し続けているため、実際の国民総生産は横ばいのままで、大半の国民は景気回復など実感などしていないのに、こうして机上の名目GDPだけが手品のように伸び続けているのだ。


‥‥そんなワケで、このイカサマには、安倍政権にとって、もう1つのメリットがある。それは、インフレを演出できるという点だ。インフレかデフレかを判断するには、名目GDPを実質GDPで割って100を掛けた「GDPデフレーター」の数字を使うんだけど、この数字が100を下回ればデフレ、100を上回ればインフレということになる。後は毎年の推移を見て判断するんだけど、この数字を見てみると、民主党政権時の2010年は「101.69」と若干のインフレで、東日本大震災が発生した2011年に「99.99」と100を下回り、翌2012年も「99.23」と僅かにデフレになった。

だけど、安倍政権に代わって安倍晋三がアベノミクスを提唱した2013年は、「98.90」と民主党政権時よりもデフレが進んでしまい、アベノミクス2年目の2014年も、何とか少しは持ち直したけど、それでも「100.63」と民主党政権時よりも低い数字だったのだ。鳴り物入りで「アベノミクスの三本の矢」を放ってもこのアリサマだったのだから、当時、欧米の経済紙などが軒並み「アベノミクスは失敗に終わった」と報じたのも当然だろう。

でも、安倍晋三の指示によって2015年から内閣府が名目GDPを大幅に水増しするというイカサマの計算方法を導入したことで、2015年は「102.71」、2016年は「102.99」、2017年は「102.79」と、机上の「GDPデフレーター」だけは若干のインフレが続くようになったのだ。分母である実質GDPは横ばいのままなのに、分子である名目GDPを大幅に水増ししたのだから、名目GDPを実質GDPで割って100を掛けた数字が100を超えるのは当たり前で、これなら安倍晋三も「年頭所感」で、堂々と「もはやデフレではない。」と言えるだろう。つまり、このイカサマによって、嘘の「経済成長」だけでなく、安倍晋三が九官鳥のように繰り返してきた「デフレからの脱却」も演出できたってワケだ。


‥‥そんなワケで、こうした安倍政権のイカサマを知らずに、内閣府が発表する毎年の名目GDPの数字と成長率だけを見て来た人たちの多くは、「こんなにGDPが成長しているのに、どうして私の給料は上がらないんだろう?」とか「数字ではこんなに景気が良くなっているのに、どうしてぜんぜん実感がないんだろう?」と不思議に思っていただろうけど、それもそのハズ、すべては安倍晋三によるヤラセであり、机上のイカサマ計算による演出だったからだ。だけど、今回の総裁選で3選を果たした安倍晋三は、今後も今まで通りの経済政策を続行して行くと明言した。つまり、「あと3年くらいならバカな国民を騙し通せる」とでも思ったのだろう。そして、この5年間のアベノミクスによって完全に疲弊してしまった地方だけでなく、あたしのような低所得家庭やひとり親家庭、要介護のお年寄りを抱える家庭や生活保護家庭などにとっては、これから「地獄の3年間」がスタートする今日この頃なのだ。


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