F1をつまらなくする人たち
いよいよ、最悪のF1が始まった。何で最悪なのかと言えば、去年の10月12日の日記、「音速のキッコ」や、10月29日の日記、「良い子のレース」あたりを読んでくれてる人なら、F1に興味のない人でも知ってると思うけど、今までの度重なるアホ丸出しのレギュレーション変更なんか足元にもおよばないほどの、F1史上、最低最悪な新レギュレーションによって、レースが行なわれるからだ。細かい変更はたくさんあるけど、その中でも開いた口からエクトプラズムが出ちゃうのが、「予選から決勝までタイヤを交換しちゃダメ」ってのと、「エンジンは2レースで1機」って言う、お話にもならないバカルールだ。細かいことは、過去の日記に書いてあるので、ここでは省くけど、FIAのモズレー会長って、ある意味、エビジョンイルよりも非常識で、ナベツネよりも傲慢で、イノシシ社長よりも頭が悪い。これまでは、決勝だけでも何度もタイヤ交換をしてたのに、今シーズンからは、予選2日間でツルツルに磨り減ったタイヤで、決勝を走ることになる。予選2日目にエンジンがブローしたら、決勝は走れない。こんなバカなレースなんかあるか!
結局、予選では、タイヤが磨り減らないように、エンジンが壊れないように、抑えに抑えたタイムアタックしかできないワケだ。その上、今シーズンからは、予選の1回目と2回目の合計タイムでスターティンググリッドを決めることになったから、去年までのように、1回目にいいタイムを出せたから2回目は走らない、ってことができなくなった。タイヤもエンジンも交換できない上に、さらに、いっぱい走らなくちゃならないのだ。だから、去年まで5年連続の王者、ミハエル・シューマッハなんか、今回は、1回目のタイムがすごく悪くて、どんなに2回目をがんばってもそれほど上位に行けない結果になったから、2回目のタイムアタックを辞退して、決勝に向けてエンジンを温存する選択をした。そのために、決勝は18番グリッドって言う、最悪のポジションだった。去年までのレギュレーションだったら、1回目のタイムが悪ければ悪いほど、シューマッハは燃えちゃって、まるでアゴの先からジェット噴射でもしそうなイキオイの走りを見せてくれて、2回目のタイムアタックでそれまでのトップを簡単に抜き去り、ポールポジションを奪い取ってたのに‥‥なんて思う今日この頃、皆さん、オーストラリアGPは見ましたか?
‥‥そんなワケで、去年までは、決勝だけじゃなくて予選だって面白かったF1も、今年からは、夜中の2時や3時の誰も起きてないような時間に放送するのがピッタリな、あまりにもつまらないルールに変わり、ますます、ニポンのモータースポーツファンが減って行くことだろう。今回の予選は、王者シューマッハですら、そんなアリサマだったから、どーでもいい佐藤琢磨なんか、1回目のタイムアタックの前にスピンしてクラッシュ、ノータイムに終わり、2回目はパスして、決勝は最後尾からのスタートとなった。でも、そのオカゲで、毎回、放送中ずっと、「タクマ!タクマ!タクマ!タクマ!」って、あびる優のひとつ覚えみたいにわめいてるフジテレビのバカアナウンサーが静かになってくれて、少しはレースに集中できる。
そんな佐藤琢磨と比べて、今年からルノーに乗ることになったジャンカルロ・フィジケラ、愛称フィジコは、シューマッハよりも25秒も速いラップを叩き出して、ミゴトにポールを取った。これは、予選の日のお天気によるもので、フィジコがタイムアタックした時は晴れてたのに、シューマッハや琢磨の時は、滝のようなどしゃ降りになったからだ。だから、去年までのルールなら、こんなふうに1回目の予選が不運に見舞われても、次の日の2回目にいいタイムを出せば、逆転することも可能だったけど、今シーズンからは、2回目に相手に不運が訪れない限り、1回目のタイムが悪かったドライバーは、絶対に逆転はできない。やっぱり、本当の意味での公平性を重んじるのなら、2日間でトライした中の最速ラップでグリッドを決めるべきだろう。
まあ、いつまでも文句を言ってても仕方ないので、カンジンの決勝はと言うと、ポールのフィジコ(ルノー)がそのまま優勝、2位には、あたしの大好きなバリチェロ(フェラーリ)が入り、3位には、フェルナンド・アロンソ(ルノー)が入り、今季のルノーの強さを見せつけた‥‥って言うのは、F1を知らないスポーツ紙の三流記者あたりが書きそうなセリフであって、F1ファンとしては、今シーズンからのレギュレーション変更に対するマニアックな視点として、予選から換えることのできないタイヤの問題があった。
つまり、マクラーレン、ルノー、BARを初めとするトップチームが、みんなミシュランのタイヤを使ってるのに対して、フェラーリはブリジストンを使ってて、このどっちが今季からのレギュレーションにマッチしてるのかってことに注目が集まってた。そして、結果は、シューマッハは接触してリタイヤしちゃったけど、バリチェロが余裕で2位に入ったので、ブリジストンもなかなかやるな!ってことが分かって、あたし的にはホッとしたのだ。それから、人情的な部分では、何よりも不運続きだったフィジコが優勝できたことが、ホントに良かったし、すごく感動した。チェッカーを受けてからのウイニングランで、右手で小さくガッツポーズしたのと、会見の最後に見せた白い歯が、とっても印象的だった。
フィジコは、1994年のイタリアのF3のチャンピオンで、1996年にF1デビューした、今年でちょうど10年目のドライバーだ。走りには定評があるし、いつもいいところまで行くんだけど、マシントラブルに見舞われたり、他車のスピンに巻き込まれたりして、ずっと優勝できずにいた。おととし、2003年のブラジルGPで、初優勝したんだけど、これは、チェッカーも受けてないし、表彰台に上ってないのだ。この時のレースは、決勝のスタート直前に大雨が降って、セーフティーカーに先導されてのスタートになり、雨は上がったけど、アップダウンの多いブラジルのコースは、3コーナーが川みたいに水が溜まり、次々にスピンしてリタイヤするマシンが続出した。フェラーリのシューマッハを始め、BARのバトンも、ウィリアムズのモントーヤも、みんな次々にスピンして、ぜんぶで6台のマシンが、3コーナーの餌食になった。その他にも、接触やエンジンブローなどで、合計10台ものマシンがリタイヤすると言う、大波乱のレースだった。そして、チェッカーを受けたのは、マクラーレンのライコネンだった。でも、後からレースのVを検証した結果、レッドフラッグが振られた時点で、フィジコは56周目に入っていて、54周目には、すでにトップに立っていたため、繰り上げの優勝となったのだ。この時は、裁判にまで持ち込まれ、フィジコにとってはデビューして8年目の念願の優勝だったのに、とても後味の悪いものになった。
だから、今日の優勝は、実績としては2度目の優勝だけど、トップでチェッカーを受けたのも、ウイニングランで何万人もの観衆から祝福されたのも、表彰台の一番上に上ったのも、優勝者としてシャンパンを撒き散らしたのも、フィジコにとっては、すべて初めてのことだったのだ。10年目にして初めての感激は、フィジコがクールに構えてたぶん、あたしの胸にジーンと来た。
だけど、あたしの大好きなバリチェロだって、1993年にデビューして、初優勝できたのは、念願のフェラーリのシートに座ることのできた2000年のドイツGPだった。つまり、デビューして8年目の初優勝、フィジコと同じなのだ。この時、表彰台の上で、ボロボロと大泣きしたバリチェロを見て、あたしは言葉にならないほど感動して、この時から、バリチェロを応援するようになった。フェラーリと言えば、天下のシューマッハ様がふんぞり返ってるから、たとえどんなに優秀なドライバーと契約したって、それは必然的に、セカンドドライバーって扱いになる。分かりやすく言えば、2機のエンジンがあれば、調子のいいほうがシューマッハのマシンに載せられるってことだ。そして、もっとも屈辱的なのは、バリチェロが前、シューマッハが後ろのワンツーフィニッシュが確定していて、チームポイントに変動がない状況で、ドライバーズポイントでシューマッハが他チームの誰かと競っていたとしたら、バリチェロは1位をシューマッハに譲らなくちゃならないのだ。
だから、2002年のアメリカGPで、バリチェロが優勝した時は、ホントにカッコ良かった。バリチェロとシューマッハが横に並んだ状態でチェッカーに向かったんだけど、バリチェロは一歩も譲らず、ほぼ横一線のままゴールした。そして、ホントに僅かな差で、競馬で言えば鼻の差って感じで、バリチェロが優勝したのだ。表彰台に立ったバリチェロは、コンディションの悪いほうのマシンで、チームメイトのシューマッハに勝った自信が満ち溢れてたし、そのバリチェロに対して、自分のことのように喜んでたシューマッハも、すごくステキだった。
‥‥そんなワケで、史上最悪のレギュレーションになっちゃったけど、バリチェロがF1に見切りをつけて、インディカーのシートに移るまでは、とりあえず、F1ファンの気持ちをまったく理解してないフジテレビの放送をガマンして見続けようと思う今日この頃なのだ。
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