あと1周の悲劇
前回のモナコGPは、市街地をコースにして走るから、道幅も狭いし、周囲はガードレールに囲まれてて、目線の低いドライバーたちは、ガードレールしか見えない。そんな中でのレースだから、危険度も高いし、テクニックだけじゃなくて、根性とか気合いとかも必要で、チキン野郎は勝つことができない。もちろん、F1のドライバーにチキン野郎なんかいないと思うけど、とにかく、あたしは、F1の全レースの中で、一番好きなのが、ハラハラでドキドキの、このモナコGPなのだ。それなのに、フタを開けてみたら、今回は、あまりにもつまらないレースだった。予選では、トヨタのシューマッハ弟が、左のガードレールに突っ込んで、そのまま右のガードレールに飛ばされて、マシンがメチャクチャになって、さらに、その様子をオンボードカメラで映した映像が流れたから、まるで、自分の運転する車が事故を起したみたいで、フロントタイヤがもぎ取れながら滑って行く様子は、スローモーションみたいに見えて、あたしは、すごくコーフンした。
だから、あたしは、決勝も命がけの熱い走りが見られると思って期待してたのに、腰抜けのアロンソ(ルノー)が、ガソリンを減らさないようにノロノロと走りやがって、抜く場所のないモナコだから、みんなアロンソの後ろを行儀良くつながって走ってるだけで、まるで、カルガモの親子の行進みたいだった。ホントは、アロンソが悪いワケじゃなくて、チームの作戦として、「ワザとノロノロと走って、ガソリンを減らさないようにして、一度もガソリン補給のピットストップをしないで、最後まで走り切る」ってことだったんだけど、あたし的には、「そこまでしてポイントが欲しいか?」って感じだった。結局、アロンソ渋滞のオカゲで、最後までダンゴ状態で、たくさんのマシンがまとまってフィニッシュへ向かったもんだから、最後のとこでちょっとでも順位を上げようなんて考えたセコ過ぎるアゴ男、シューマッハ兄(フェラーリ)が、周りの迷惑をカエリミズに、「ジョジョの奇妙な冒険」のオラオラ状態って言うか、「サイボーグ・クロちゃん」のガトリング砲みだれ撃ち状態って言うか、「犬夜叉」の散魂鉄爪状態って言うか、「3×3EYES」の八雲の「出でよ!光牙(コアンヤア)!」状態って言うか、「ドラクエ8」のヤンガスの蒼天魔斬状態って言うか、とにかく、デタラメに暴走しちゃった今日この頃、皆さん、まだF1には興味ありませんか?(笑)
‥‥そんなワケで、マトモな良識を持ち合わせた人間なら、それまでずっとダンゴ状態で走って来たんだから、そのままの順位でフィニッシュするのが当たり前なのに、X-JAPANの恐怖の洗脳アゴ男‥‥じゃなくて、フェラーリのアゴ男は、最後の一瞬で、ちょっとでも前に出るために、スポーツマンにはアルマジロ行為で、周り中に大メイワクをかけて、大ヒンシュクを買ったのだ。シューマッハ兄は、チームメイトのバリチェロと接触しそうになりながら、バリチェロのちょっと前に出て、7位でフィニッシュした。
だけど、これって、あまりにもふざけた行為なのだ。F1は、8位までがポイント圏内で、7位は2ポイント、8位は1ポイントがもらえる。だから、バリチェロとシューマッハのどっちが7位でも8位でも、フェラーリのチームポイントは3点で、何も変わらないのだ。だから、普通なら、そのままフィニッシュして、その3点を確実に守ることが、チームとして最優先される。それなのに、シューマッハは、2台ともクラッシュしてチームポイントをゼロにしてしまう危険を冒してまで、テメエのドライバーズポイントを1点から2点にアップさせることを優先したってワケだ。
これには、サスガのバリチェロもブチ切れちゃって、レース後に、「あのスリッパみたいなアゴをしたバカ男の強引なやり方は、絶対に納得できないぜ!今のフェラーリチームには、たった3ポイントだって大事なのに、あのバカは、テメエの個人成績のために、すべてをパーにするような無謀な運転をしやがったんだ!2002年のオーストラリアGPの時は、ヤツを年間優勝させるために1位を譲ってやったけど、オレだっていつまでもお人好しじゃないぜ!次のヨーロッパGPじゃ、テメエなんかチームメイトとは思わねえから、覚悟しとけよ!」って、大爆発した。
でも、もっとブチ切れたのが、トヨタのシューマッハ弟だ。シューマッハ兄は、最後に無理な追い越しをかけて、バリチェロと接触しそうになっただけじゃなくて、フィニッシュラインを過ぎる瞬間に、弟のマシンも抜こうとして、狭いコースのイン側に、ムリヤリにノーズを突っ込み、弟のマシンと接触しちゃって、あわやクラッシュの大惨事になるところだったのだ。シューマッハ弟は、「冗談じゃないよ!アニキは頭がイカレてるんじゃないか?ボクのマシンとコンクリートウォールの間に、ムリヤリにマシンを突っ込んで来たんだぜ!あと1ミリでも間違えば、ボクたちのどっちかは、確実に死んでたよ!アニキの脳みそは、思考回路のスイッチがオフになってるとしか思えないね!車の運転をする時には、脳みそのスイッチを入れてからステアリングを握って欲しいよ、まったく!」ってな感じで、これが、また、あたしが大ゲサに訳して書いてると思われそうだけど、限りなく直訳に近い文章なのだ。
だけど、非常識極まりないモータースポーツの皇帝、シューマッハ兄は、これらの批難に対して、「私たちは、公園で遊んでいるんじゃない。サーキットでレースをやっているんだ。あの時は、僅か100分の1秒と言う世界で、何台ものマシンが戦っていて、あと少しで前に行けると思ったら、前に行こうとするのが本物のレーサーだよ。私は、レーサーとして当然のことをしただけで、それが、F1と言うものさ。」と、平然と言ってのけた。サスガ、ドイツ人だけのことはある。
‥‥そんなワケで、くだらない兄弟ゲンカで幕を閉じたモナコGPから、たった1週間後と言う、ハードスケジュールの今回のヨーロッパGPは、2レースの出場停止が解けて、BARホンダが復帰するために、予選の段階から、フジテレビは、「タクマ!タクマ!」の大騒ぎで、あたしは、決勝の前からウンザリ気味だった。だけど、ホンダ嫌い、ニポン人嫌いのモズレー会長は、どんなに汚い手を使っても、F1からBARホンダを排除したいみたいで、徹底的にBARホンダに嫌がらせをしてたので、サスガのあたしも、バトンとタクマがちょっと気の毒になった。
通常、レース前の車両検査って言うのは、ランダムに選んだチームのマシンをランダムに検査する。たとえば、AチームとDチームのマシンのガソリンタンクを検査して、BチームとFチームのウイングを検査するって感じだ。それが、今回は、他のチームは何の検査も無しなのに、BARホンダの2台のマシンだけが、ガソリンタンクの燃料の抜き取り検査から、ウイングをはじめとした各部のサイズの細かい測定、挙句の果てには、車載コンピューターのデータまで抜き取って検査して、何日にも渡って徹底的に調べられたため、マシンの調整などもほとんどできずに、予選を迎えることになったのだ。モズレー会長のあまりにもひどいBARホンダいじめに対して、今回は、ライバルチームからも、同情の声が相次いだそうだ。
結局、どこにも規定違反が見つからなかったため、無事にレースには出場することができたけど、規定によって、1ヶ月以上も前のサンマリノGPでのエンジンで走らなくちゃならないから、予選でも決勝でも、パッとしなかった。まあ、あたし的には、BARホンダなんかどうでもいいし、そんなことよりも、シューマッハにムカついてるバリチェロが、どこまでがんばってくれるかが、あたしの観戦テーマだった。
一応、例によって、サラッと、スターティンググリッドだけは流しとくけど、ポールがマッカートニー‥‥じゃなくて、ポールが珍しくハイドフェルド(ウィリアムズ)、2番がモナコで勝ったライコネン(マクラーレン)、3番がウェバー(ウィリアムズ)、4番がトゥルーリ(トヨタ)、5番がモントーヤ(マクラーレン)、6番がアロンソ(ルノー)、7番がバリチェロ(フェラーリ)、8番がシューマッハ弟(トヨタ)、9番がフィジケラ(ルノー)、10番がシューマッハ兄(フェラーリ)、11番がマッサ(ザウバー)、12番がクルサード(レッドブル)、13番がバトン(BARホンダ)、14番がリウッツィ(レッドブル)、15番がヴィルヌーブ(ザウバー)、16番が佐藤琢磨(BARホンダ)、17番がモンテイロ(ジョーダン)、18番がフリーザッハー(ミナルディ)、19番がカーティケヤン(ジョーダン)、20番がアルバース(ミナルディ)って言う、順当と言えば順当なスタートだけど、それよりも、頭のおかしいモズレー会長のセイで、20台揃ってのレースが久しぶりなので、それだけでもワクワクする。
とにかく、バリチェロは、十分に表彰台が狙える7番グリッドだし、モナコと違って、どこでも抜きまくれるコースだから、期待は高まる。それに、アップダウンの多いコースだから、タイヤに距離以上の負担が掛かるため、減りやすいミシュランよりも、グリップは悪くても長持ちするブリジストンのほうが、最終的には有利になる。だから、あたしだけじゃなく、全世界のフェラーリファン、バリチェロファンは、ヒソカに期待してたはずだ。
‥‥そんなワケで、あたしの期待を乗せて、バリチェロの真っ赤なフェラーリはスタートしたワケだけど、フィジケラのギアが噛んじゃったか何かで、スタートできなくて、フォーメーションラップを2周してからのスタートになった。そしたら、1コーナーにみんなが一度に突っ込むから、モントーヤとウェバーが接触して、それに巻き込まれた数台のマシンが、コースアウト。後ろのほうでも、シューマッハ弟が別口で接触して、避け切れなかったタクマが、フロントウイングを飛ばされた。このシーンは、上からのカメラで映してたので、全体のクラッシュやコースアウトの様子が、すごく良く見えた。
ハデな多重クラッシュだったのに、幸いにも、リタイヤしたのはウェバーだけで、あとは何とかコースに戻ることができた。このドサクサで、バリチェロは9位に落ちちゃったけど、そんなことよりも、バリチェロのマシンが無傷だったことのほうが嬉しいし‥‥なんて思ってたら、バリチェロは、水を得た魚のように、前を走るバトンをガンガンと攻めまくり、5周目か6周目くらいに、チョーカッコ良くブチ抜いた。このバトルは、ずっとカメラが追ってくれてたので、すごく良かった。
細かいことを色々と書くのも大変なので、ここで一気に最後へ飛んじゃうけど、色んなことがありつつ、あと2周でフィニッシュって時には、トップがライコネン(マクラーレン)、2番手がアロンソ(ルノー)、3番手がハイドフェルド(ウィリアムズ)、そして、バリチェロは、4番手につけていた。バリチェロは、このままフィニッシュしても、憎っくきシューマッハには勝てるワケだけど、あたしとしては、何とか、あと1台をパスして、表彰台に上って欲しかった。そして、表彰台の上から、シューマッハを見下ろして欲しかった。
もちろん、あたし以上に、そう思ってたのはバリチェロ本人だから、最後の最後まで諦めずに、前を走るハイドフェルドをパスしようと、がんばり続けた。だけど、ついに最終ラップに入り、もう、ハイドフェルドを抜いて3位に入ることは無理だと思った瞬間、ナナナナナント! トップを走ってたライコネンの右のフロントタイヤが吹っ飛び、マシンは回転しながらコースアウト! そして、それまでの2位、3位、4位は、ひとつずつ繰り上がって、バリチェロは表彰台に上がれたのだ! こんな、タナボタの表彰台でも、低迷中のフェラーリにとっては何よりも嬉しいし、そして、ドライバーズポイントでも、バリチェロがシューマッハを逆転して、モナコでの借りを返すことができたのだ。
ちなみに、何でライコネンのタイヤが吹っ飛んだのかって言うと、F1界のバカ殿様、モズレー会長が作った史上最悪の新レギュレーションによって、タイヤの交換ができなくなったからだ。ライコネンのタイヤは、残り10周あたりで、すでに限界になっていた。ブレーキングの時に、タイヤをロックさせたために、タイヤにフラットスポットって言う平らな部分ができちゃって、ゴツゴツしながら走ってたのだ。もちろん、タイヤ自体の磨耗も限界に近くて、いつ、タイヤのトレッドが剥がれてもおかしくないような状態だった。実際、ライコネンと同じミシュランタイヤを履いてるマッサ(ザウバー)のマシンは、55周目に、左のフロントタイヤのトレッドが剥がれちゃって、それが、タイヤと一緒に、SMの女王様のムチみたいに回転しながら走ったから、フロントウイングの左側を叩き壊しちゃって、大変だったのだ。
だから、ライコネンのマシンも、いつタイヤのトレッドが剥がれても、いつバーストしてもおかしくない状態だった。でも、ライコネンの場合は、フラットスポットができたために、激しく震動しながら走り続けてたから、タイヤがダメになる前に、その震動でカーボン製のフロントサスペンションに亀裂が入り、最後の最後で、サスペンションが折れて、タイヤごと吹っ飛んじゃったのだ。スピンしながらも、うまい具合に止まれたから良かったけど、あとちょっとで、コーナリング中のバトンのマシンに突っ込むとこだった。もしも突っ込んでたら、大変な事故になってたはずだ。
‥‥そんなワケで、今シーズンからの新レギュレーションを発表した時に、モズレー会長は、ひたすらに、「安全なレース」ってことを繰り返し強調してた。2レースで1基しか使えないエンジンも、予選から決勝まで1セットのタイヤしか使えないのも、すべては安全なレースのためだって、何度も言っていた。ようするに、モズレー会長の言いぶんは、「1セットしかタイヤを使えなくすれば、すり減らないようにスピードを抑えて走るだろう。だから、安全なのだ。なのだったら、なのなのだ。」って言う、バカボンのパパも呆れ果てるような理屈だった。そして、その結果が、すり減ったタイヤが原因で、コースアウトするマシンが続出して、すり減ったタイヤが原因で、リタイヤするマシンが出て、すり減ったタイヤが原因で、あと1周で優勝できるはずだったマシンが、事故を起したのだ。誰でもいいから、1日でも早く、この頭のおかしいオヤジを何とかしないと、今に、人命に関わるような、取り返しのつかない大事故が起こりそうな気がする今日この頃なのだ。
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