めちゃめちゃイケてません
5月14日に放送した、フジテレビの「めちゃ×2 イケてるッ!」で、奈良の「騒音おばさん」こと、河原美代子(58)のパロディーをやっていた。極楽とんぼの山本が、あのおばさんとソックリなメークをして、カツラをかぶり、ワイドショーで繰り返し流されてたのと同じ、薄いピンクのニットと変なスパッツみたいなのをはいてたんだけど、もともとの体つきが似てるから、本物と見間違えるほどの出来ばえだった。それで、99の矢部の案内で、お台場を巡る「めちゃイケ」メンバーたちに対して、行く先々で嫌がらせをするって設定で、陸橋の手すりだとか、色んなところにマットをかけて、それを布団叩きでバンバン叩きながら、撮影のジャマをする。
嫌がらせをする山本おばさんに対して、矢部だの、岡村だの、鈴木沙理奈だのが、順番にツッコムんだけど、聞く耳持たないおばさんは、「今日も朝から嫌がらせぇ〜!」って叫んで、リズム良くマットを叩き続ける。メンバーたちが、その場を離れようとすると、火をつけた発炎筒を持って追いかけ回し、その発炎筒を投げつける。最後には、山本と似た体型のエキストラを何人も使い、全員に同じカッコをさせた「騒音おばさん軍団」が登場して、みんなでマットを叩いて、嫌がらせの総攻撃。
そこまで、ずっと、何で自分達が嫌がらせを受けるのか分からなかったメンバーは、最後に、「結局、おはさんは、何が言いたいんですか?」って聞くと、山本おばさんが、「さっさと引越しぃ〜!」って叫ぶって言う、オチって言うか、何て言うか、そんなような放送だった。それで、山本お得意の逆ギレで、「オレだってなぁ〜こんなこと、やりたくてやってんじゃねえよ! 昨日言われて今日ロケで、考えてるヒマなんかなかったんだよ!」って言ったのに対して、沙理奈が、「そやなぁ〜タイムリーだもんなぁ〜」って言っていた。ようするに、騒音おばさんの話題が世の中から消えないうちにと、急いで立ち上げた企画だったってことだ。でも、それにしちゃあ、新聞のテレビ欄だけじゃなく、2週間に1回発行のテレビ雑誌の「めちゃイケ」の欄にも、「お台場に奇妙なおばさん出現」って書いてあったけど‥‥なんて不思議に思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、この騒音おばさんは、その異常な行為もさることながら、それを繰り返し繰り返し、民放各局が放送し続けたことによって、大きな話題になった。同じ局で、朝のワイドショー、お昼前のニュース、午後のワイドショー、夕方のニュース、そして、深夜のニュースと、同じ映像を流し続け、ニポン全国に、「奈良の騒音おばさん」の異常さを流布したのだ。
そして、このおばさんの叫ぶ「引越し!引越し!さっさと引越し!」って言う言葉をサンプリングして、着メロまで作られてしまったほど、ある意味、ブームになってしまった。この着メロのことは、TBSの「きょう発プラス」で紹介してて、あたしは、それを見てビックルを飲んだんだけど、今では、「騒音おばさん、着メロ」で検索すると、パンクだとかメタルだとか、色んなバージョンが作られているみたいで、世の中にはヒマな人が多いんだなぁ〜って思った。
それで、あたしが見た「きょう発プラス」では、こう言った着メロを作る人に対して、山田五郎とか、コメンテーターの知らないおばさんとかが、「あまりにも非常識ですね」って言って、すごく否定的な発言をしてた。だけど、一般人が個人的に着メロを作るのが非常識なら、騒音おばさんのソックリさんを登場させて、お笑いのネタにして、全国ネットで放送したフジテレビはどうなるんだろう?
騒音おばさんは、10年にも渡り、隣家に嫌がらせをして来て、隣家の主婦は、精神的にも肉体的にも被害をこうむっている。そして、他の判例から推測すると、この騒音おばさんは、傷害の罪で実刑になる可能性が高いと言われている。こう言う立場の加害者をギャグのネタにしてもいいのなら、少女を監禁して逮捕された小林泰剛(24)のことだって、ギャグのネタにしてもいいってことになる。
「水10!」あたりで、小林泰剛ソックリにメークした宮迫が、薄気味悪いナルシストの異常者に扮して、少女役のゴリを監禁して、自分のことを「ご主人様」って呼ばせて、色んな変態プレイを繰り広げる。犬の首輪をつけ、鎖で引きずりまわし、床に置いた食べ物を四つん這いで食べさせる。キャプテンハーロックみたいな、襟の立った真っ赤なロングコートを着た宮迫が、ゴスロリのワンピを着たゴリを連れて美容院に行き、ゴリの髪をザクザクに切るように、美容師に指示する。ゴリは、宮迫のことを「カスミ様」って呼び、言われるがままに変なヘアスタイルにされる。
実際に、こんなコントを放送したら、フジテレビには、苦情の電話やファックス、メールが、大量に舞い込むだろうし、場合によっては、警察からも指導があるかも知れない。そんなことは、フジテレビが一番良く分かってるんだから、こんなコントをやるはずがない。
だけど、それなら、何でフジテレビは、騒音おばさんならギャグのネタにしてもいいって判断したんだろう? 騒音おばさんに、10年間も嫌がらせを受けて来て、今でも頭痛や不眠症に悩まされながら通院を続けている被害者が、この放送を見ていたとしたら、どんな気持ちがしただろうか? また、加害者側の立場に立てば、今は、まだ、「容疑者」の段階なのだ。だから、これから起訴されて「被告人」になり、裁判の結果、有罪になって、初めて「犯罪者」になる。もちろん、犯罪者だからって、ギャグのネタにしていいワケはないけど、これから無罪になる可能性もある「容疑者」の段階でギャグのネタなんかにしたら、それこそ人権問題になると思う。
ようするに、コレと言った明確な線引きなどなく、番組制作に直接関わっているプロデューサーやディレクターの考えだけで、「このネタは行けるな」「このネタはヤバイな」って判断してるだけなのだ。だから、フジテレビ内では、それなりの高視聴率を上げている「めちゃイケ」だけど、テレビ朝日の「ロンドンハーツ」には負けっぱなしで、最近、アセリ気味の中嶋優一プロデューサーは、この騒音おばさんの企画に、「GO!」を出したんだと思う。
なぜかって言うと、「めちゃイケ」の視聴率がいいのは、番組が面白いからじゃなくて、ロクな裏番組がないからなのだ。そのことは、誰よりも、中嶋P自身が、一番良く知っている。そして、中嶋Pは、「めちゃイケ」のレギュラー企画自体が、すでにマンネリ化してて、「数取団」だの「期末テスト」だのが、完全に飽きられて来てることにも気づいてる。新しい企画をやったところで、変わりばえのないメンバーがやるだけだから、ちっとも新しく感じないことにも気づいてる。だから、犯罪をネタにしてまで笑いを取ろうってとこまで、落ちちゃったんだろう。
裏番組に競争相手のいない大名番組、「めちゃイケ」と違って、「ロンドンハーツ」は、火サスや細木数子、人気ドラマなど、裏番組は強敵ぞろいだ。それでも、企画の内容だけで、同時間帯トップの視聴率をもぎ取った。そして、出川哲郎のプロポーズや、青木さやかのカレシの盗撮などで、高視聴率を上げた「ロンドンハーツ」を見て、「めちゃイケ」の中嶋Pがやったことは、よゐこの有野の結婚式と言う、あまりにもパンチ不足の企画だった。それでも、それなりの数字を稼ぐことができたので、局内での株は上がった。
しかし、この先、マンネリ化したメンバーによるマンネリ化した企画を繰り返しても、数字の低下は避けられない。そこで登場したのが、今回の「騒音おばさん」なのだ。毎週見てくれてる固定ファンに対しての、一種のサービス的なネタだったとしたら、新聞のテレビ欄などには載せずに、番組を見た人だけが面白がるって言う形にしたはずだ。しかし、今回の場合は、新聞のテレビ欄どころか、テレビ雑誌の番組欄にまで、その内容を載せている。これは、雑誌の校正の最終段階での飛び込みの差し替えで、その必死さがうかがえる。
‥‥そんなワケで、フジテレビのオフィシャルサイトの「めちゃイケ」のコーナーを見ると、「『めちゃイケ』は毎回が新企画のお笑い番組。今後もドキュメンタリーもの、スポーツもの、コント、などなど、『守ったら負け』の精神でジャンルにこだわらない新しい『笑い』の可能性を追及していきます。」って書いてあるけど、犯罪をネタにして、現在、取調べ中の容疑者のソックリさんで笑いを取るのが、「ジャンルにこだわらない新しい『笑い』の可能性」なのかどうか、そこまでして視聴率が欲しいのか、あたしは、疑問に思う今日この頃なのだ。
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