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2005.05.20

五月の風 前編

朝、6時に起きて、ベランダに面したカーテンを開けると、昨日のメイストームは北へと去り、眩しいほどの青空が広がっていた。まさしく、五月晴れだ。
今日は、夏物のワンピにショート丈のカーデなので、顔だけじゃなくて、全身にクマなく‥‥ってのは大ゲサだけど、肩から腕、首から胸、脚と、日焼け止めを塗りたくる。塗りたくる。塗りたくる。塗って塗って塗りたくる。このまま温泉に入ったら、化学反応を起こして泉質が変わっちゃうんじゃないかって思えるほど、塗って塗って塗りたくる(笑)

 

なんて、いつもの調子で書いてると、すごく長くなりそうだから、ササッとお化粧して、水槽に、いつもより多めにエサを入れて、7時過ぎにお家を出た。駐車場に降りると、マイケルとマックスがいたんだけど、抱いてお洋服が汚れると困るので、頭をグリグリしただけで、トットと出発した。母さんを迎えに行くと、母さんはバッチリとオシャレしてて、あたしのテンションもグンと上がった。

 

あたしは、オシャレしてる母さんが大好きだ。あたしが子供のころ、母さんは、毎日、夜遅くまで働いていたので、日曜日には、疲れて横になってることが多かった。だから、たまに、どこかに連れてってくれることになると、あたしは、朝早くからずっとソワソワしてた。母さんが、朝の家事を済ませ、鏡台でお化粧を始めると、あたしは、「いよいよ出発だ!」って思って、ワクワクして来た。そして、キレイになった母さんと出かけると、それがデパートの屋上でも、すごく嬉しかった。

 

 

‥‥そんなワケで、用賀インターから東名に乗って、とりあえず、厚木を目指す。厚木までは、時速100kmくらいでノロノロ走っても、わずか20分くらいだ。ここで小田原厚木道路に乗り換えるんだけど、何でかって言うと、東名で御殿場まで行くと2500円、小田原厚木道路を使うと、厚木までが1250円で、その先が700円なので、500円以上も安いからだ。それで、前は、終点の小田原で、いったんコマーシャル‥‥じゃなくて、いったん下の道に降りないと、その先の箱根新道には行けなかったんだけど、今年の3月に、小田原厚木道路と箱根新道をつなぐ小田原箱根道路ができたので、箱根へ抜けるのがラクチンになった。

 

でも、小田原厚木道路は、制限速度が70kmって言う中途半端な道路で、厚木から乗って、すぐのとこでやってるネズミと、ケッコー走ってる覆面は、15kmオーバー程度でも捕まえるセコさがマンマンなので、気をつけて走らないとならない。あたしは、前方のネズミだけじゃなくて、後方の覆面に対してのレーダーもつけてるから、ワリと安心だけど、最近の覆面は、スピードガンの電源をオフにして走ってるヤツもいるので、レーダーが反応しない。だから、高速では、常にルームミラーで、後方に怪しい車がいないかどうかをチェキする必要がある。覆面は、必ず2人乗ってるけど、助手席を倒して、運転手1人を装ってる車もある。

 

なんて豆知識もはさみつつ、厚木から40分くらいで、箱根新道の山崎インターに着いたので、ここで下の道に降りる。なぜかって言うと、ここまではタダで、ここから先に進むと、250円の別料金が掛かるからだ。どっちにしても、山崎インターから芦ノ湖までは10kmくらいだし、その中間地点にある小湧谷の蓬莱園(ほうらいえん)のツツジを見たかったので、別に、ケチッてるってワケじゃなくて、ちゃんと理に適ってるのだ。それに、何の面白みもない有料道路を1、2、3、ダーッて走るよりも、ここまで来たら、観光気分タップリの一般道を走ったほうが、色んな意味で楽しめる。その上、御殿場まで東名を使うよりも、往復で1000円以上も安く済むんだから、言うこと無しだ。

 

 

‥‥そんなワケで、景色を楽しみながら、山道をのんびりと走り、お目当ての蓬莱園に到着した。駐車場が無いみたいなので、ちょっと先の公園みたいなとこの脇に路駐して、母さんと坂道をテクテクと登って、蓬莱園の入り口に戻って来た。蓬莱園は、三河屋って言う旅館の庭園で、なんと2万坪もある。今の時季はツツジ、秋には紅葉が楽しめるんだけど、何よりなのは、入園が無料ってことだ‥‥なんて、セコイことばっかり言ってるみたいだけど、あたしだって、この先、使うとこでは、ちゃんと気前良く使ってるからね(笑)

 

蓬莱園に入り、のんびりと歩いて行くと、赤、白、ピンク、紫などのツツジが咲き誇り、まるで、夢のような美しさ‥‥って言いたいとこなんだけど、なんと、ツツジは、ほとんどが散っていた。お掃除をしていた人に聞いてみたら、おとといまでは満開だったのに、昨日の雨と強風で、ぜんぶ散っちゃったそうだ。それで、ツツジは散ったし、サツキはこれからだし、ちょうど、お花のシーズンの谷間に当たっちゃったみたいだった。

 

 

 山躑躅メイストームに攫はるる  きっこ

 

 

でも、ツツジは散っちゃったけど、色々な若葉が瑞々しくて、とっても気持ちがいい。木の種類によって、同じ緑でも、濃い色や薄い色があって、グラデーションがすごく美しい。こうして、新緑の中を母さんと一緒に歩けるなんて、ホントに夢みたいだ。

 

 

 母さんへ重なつてゆく若葉かな  きっこ

 

 

しばらく進むと、お花のシーズンの「谷間」だからか、山百合が咲いていた。バルザックの「谷間の百合」は、主人公の青年、フェリックスが、アンドル川をはさんで暮らす人妻、モルソフ夫人を愛してしまう物語で、そのモルソフ夫人のことを「谷間に咲いた美しい百合」に見立てるんだけど、「恋にも人生と同じように思春期があり、その間は自分だけで満ちたりていられるのです。」って言う文中の言葉から、あたしは、「百合」には、「思春期」って言うイメージを持っている。

 

 

 山百合や母も娘も思春期と  きっこ

 

 

母さんの体調も万全で、ふたりとも元気マンマンなので、ちょっと先にある「千条(ちすじ)の滝」も見に行くことにした。あたしは、果敢にも、ピンヒールのミュールで、急階段や足場の悪い道を進み、コケることなく、10分くらいで到着した。千条の滝は、高さが3m、幅が20mほどで、その名の通り、細い滝が何筋も落ちていた。空気はひんやりとしてて、アルファー波がいっぱい発生してそうだったから、とりあえず、母さんと深呼吸をしてみた。

 

 

 とりあへず千条の滝で深呼吸  きっこ

 

 

しばらく、滝を見ながらボーッとしてから、足元に気をつけながら、ゆっくりと車に戻った。車の中で、保温の水筒に入れて来たコーヒーを飲んで、リトル休憩。時計を見ると、11時近かったし、朝ごはんも食べてなかったので、どこかで、ちょっと早めのお昼ごはんにしようと思い、車を発進させた。夜は、宿で美味しいものをいっぱい食べるから、お昼は軽めに、おそばか何かにしようってことになって、おそば屋さんを探しながら走ってたら、すぐに、箱根そばのお店を発見した。観光客相手のお店なんだろうけど、とってもいい雰囲気のお店で、自分のとこで粉を挽いて手打ちしていた。普通のせいろにしようと思ったんだけど、天ぷらが山菜だって言うので、ここは一丁、ゼイタクに、天せいろを食べてみることにした。おそばも腰があって美味しかったし、タラの芽、ミョウガ、タケノコの天ぷらも、バツグンに美味しくて、母さんもすごく喜んでた。

 

 

 蕎麦猪口をはみだしてゐる茗荷天  きっこ

 

 

‥‥そんなワケで、お腹がいっぱいになった母さんとあたしは、芦ノ湖に行ってみることにした。県道をクネクネと下って行くと、5kmほどで元箱根に着く。芦ノ湖を左足の足跡の形だとすると、小指に当たる部分が、元箱根だ。芦ノ湖って、湖畔を周回してる道路が無くて、湖を眺めながらのドライブができない。そのぶん、遊覧船の発着場所が何ヶ所もあって、どこからでも芦ノ湖を1周できる。それで、遊覧船に乗ってみることにした。桟橋の端っこにしゃがんで、水の中を見てみると、すごく透明で、15cmくらいのブラックバスが何匹か泳いでるのが見えた。

 

 

 足元をブラックバスの過ぎゆけり  きっこ

 

 

シッカリと割引クーポンを使って乗った遊覧船は、700人も乗れる立派な船で、船室もステキだったけど、何よりも景色を楽しみたかったので、展望デッキに座ることにした。展望デッキには、階段状にイスが並んでて、一番上に座ったら、芦ノ湖も、周りの新緑も、ひとり占めって感じだ(笑)

 

 

 芦ノ湖へ溢るる青葉若葉かな  きっこ

 

 

ちょっと雲が多かったけど、空は青空だし、富士山も見えた。あとから聞いた話によると、ここ1週間くらい、お天気が悪くて、ずっと富士山が見えなかったそうだ。それで、今日の富士山は、1週間ぶりらしい。母さんは、帽子を飛ばされそうになって、素晴らしい反射神経で頭を押さえた。

 

 

 甲板に五月の風の逆巻けり  きっこ

 

 

わずか30分ほどの周遊だったけど、富士山や、あふれるほどの新緑の山々、湖面に立つ箱根神社の真っ赤な鳥居などを見て、気持いい風を全身に感じて、母さんもあたしも大満足だった。景色も風も最高だったけど、それを母さんと一緒に感じられたってことが、何よりも嬉しい。

 

 

 母さんの手をひく遊覧船乗り場  きっこ

 

 

遊覧船を降りたのが、1時半くらいで、宿は2時にチェックインなので、そのまま向かうことにした。泊まるのは、仙石原にある宿なので、のんびり行けば30分くらいかかる‥‥って言うか、実は、あたしは、1分1秒でも早く、ビールを飲みたくて飲みたくて仕方なくて、ホントなら、遊覧船の上で飲みたかったんだけど、今日は母さんと一緒だから、運転があるうちはガマンしてたのだ。

 

 

‥‥そんなワケで、明日へ続く♪

 

 

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