痛い話
ニポンの場合、ふた昔前は、男性がピアスをしてるのは珍しかったし、ピアスしても、片方だけのパターンが多くて、両耳にしてる人はメッタにいなかった。それで、左だけにしてるとノーマルで、右だけにしてるとホモとかって言われてた。でも、あたしが小学生のころのことだから、ハッキリは覚えてない。もしかしたら、右がノーマルで左がホモだったかも知れないけど、別にどっちでもいいや(笑)
それから、ひと昔前になると、男性でも両耳にピアスをする人も増えて来たし、右だけでも左だけでも、自分のセンスで好きなほうに開けるだけで、ホモだとか何だとかってのは言わなくなった。そして、耳だけじゃなくて、鼻とか、眉とか、口とか、色んなとこに開けるようになって来たし、耳でも、複数開けるのが普通になって来た。
あたしが、始めてピアスを開けたのは、中学の卒業式の次の日だった。ホントは、中学のうちに開けたかったんだけど、サスガに、あたしの時代は校則がヤバかったから、中学の卒業式が終わったら、高校の入学式までの間に開けようって決めてた。それで、卒業式の1ヶ月くらい前から、一緒に開ける約束をしてたお友達と、あちこちにピアスを見に行ったりして、1週間前には、先輩からピアスガンも借りて来て、万全の準備が出来ていた。
「ピアスガンなんか使わなくても、耳たぶを氷で冷やしておいて、消毒した安全ピンをブスッて刺して、そのまま安全ピンをしばらくつけときゃOKだよ」って言う人もいたけど、あたしは、とにかく、ビビリ屋なので、自分が刺される時はいいとしても、お友達に刺すのが怖くてできそうもなくて、それで、ホチキスみたいに、バチッて一瞬で終わるピアスガンのほうが、まだ怖くなかった。
それで、2人とも、何とか無事に、ピアスが開いた。あたしは、ぜんぜん痛くなかったし、化膿もしなかったし、左右の位置もピッタリと同じだったし、そして、誰でもが聞いたことのある、「引っぱると失明する白い糸」も、おかげ様で、穴から出て来なかった(笑)
そして、初めてのピアスは、ごく普通に左右1個だったけど、高校生になってから、左にもう1個開けて、そのあと、右が2、左が3になり、高校を卒業して専門学校に入学してからは、右3、左4になり、社会人になってからは、だんだんと減らして来て、今では、右1、左2に落ち着いてる今日この頃、皆さん、いくつ開けてますか?
‥‥そんなワケで、今や、男性でも当たり前のオシャレになり、ジャイアンツのお荷物、清原までもが、似合いもしないピアスを両耳にするようになったけど、どこまでがオシャレで、どこからがマニアかって言えば、あたしの感覚では、耳と鼻とおへそまでがオシャレで、それ以外は、マニアの世界だと思う。まあ、多少ガマンして、口とか眉とかまでは許せるけど、ベロだとか、乳首だとかは、完全にマニアの世界だ。
それにしても、マニアの人たちのピアスは、ビビリ屋のあたしから見ると、想像を絶する世界だ。ベロだの乳首だのは当たり前で、手の指と指の間とか、鎖骨の上とか、首の後ろとか、挙句の果てには、性器にまでピアスをする。それも、皮の部分じゃなくて、一番痛い「そのもの」の部分に、麻酔も無しで、自ら、ぶっとい針を突き刺して、血だらけになって作業をする。こう言うのは、誰が考えても、すでにオシャレとかじゃなくて、自らの肉体を傷つけることを快楽としてる部類の人たちなので、あたしには、とても理解できない世界だ。
それでも、顔中、体中にピアスをしたり、あちこちにタトゥーを入れたりしてる程度で満足できてる人たちはいいけど、もっとエスカレートして行くと、腕や足に大きな穴を開けて、とてもピアスとは言えない、直径が1cm以上もあるようなボルトとナットを装着してみたり、「スプリットタン」って言って、自分のベロを先端から真ん中くらいまでメスで切り裂いて、ヘビの舌みたいに改造してみたり、オデコや頭皮の下にインプラントを入れて、悪魔の角みたいにしてみたり、「ボディーサスペンション」って言って、マグロを釣るみたいな大きなフックを体中に刺して、皮膚が引きちぎれそうになりながら空中に吊り下がってみたりと、想像を絶する自己虐待の世界へと進んで行く。そして、さらに、究極のとこまで行っちゃうと、自分の手足の指を1本ずつ切断し始めて、腕や足まで切断してしまう。医学的には、ナントカ障害とか言う精神病の一種らしいんだけど、洗い物をしてて、コップを割って、指が5mm切れて血が出ただけでも顔面蒼白になっちゃうあたしとしては、今、この文章を書いてるだけで、貧血を起しそうな気分なのだ。
‥‥そんなワケで、自分の体を切り刻むことが好きな人たちと比べれば、ボディーピアス程度なら、それが、たとえ、性器であっても、まだマトモだと思えて来る。それで、ピアスマニアの人たちは、体中のありとあらゆる場所に穴を開け続けるワケだけど、唯一、開けることのできない場所があった。それは、目玉だ。そして、何で、「場所があった」って過去形で書いたのかって言うと、ついに、眼球ピアスが登場しちゃったのだ。正直、あたしは、眼球にピアスをした人の写真を見て、気持ち悪くなって、倒れそうになった。
これは、オランダの眼科の研究所で開発された「ジュエル・アイ」って言うピアスで、サスガに、どんなツワモノでも、目玉だけは自分で針を刺すワケには行かないから、専門の医師にやってもらうんだけど、黒目の横の白目の部分に、特殊な技術で宝石を埋め込むそうだ。今までに、10人くらいの人がやっていて、たくさんの人が順番を待ってるらしい。ちなみに、費用は、10万円前後だそうだけど、あたしなら、1億円もらってもイヤなことなのに、それを逆に10万円も払ってでも、やって欲しいって思う人たちがたくさんいるなんて、やっぱり、人の感性って人それぞれなんだなって思う。
こんなに感性の違う人たちが、同じ地球の上で暮らしてるんだから、いつまで経っても戦争が無くならないのも当然だろう。人間同士の争いって、ホントは、民族の違いでも、宗教の違いでも、歴史の違いでもなくて、一国のトップに立ちたがるような人間が、他人を支配することや傷つけることに快感を覚えるようなジャンルの人たちだからじゃないんだろうか。ブッシュしかり、ブレアしかり、金正日しかり、フセインしかり、コイズミしかり、そして、ライブドアのイノシシ社長しかり、支配欲に満ち溢れた独裁者たちの考えることは、規模の大小はあっても、やってることは、力で相手をねじ伏せて、欲しいものを奪い取るって図式に何ら変わりない。
‥‥そんなワケで、今日の日記をここまで読んで来て、何度も「痛い!」って感じた人は、正常な感覚の持ち主だと思う。もちろん、この「痛い!」って言うのは、「あいつは痛いヤツだよな」の「痛い」じゃなくて、ホントの肉体的な「痛さ」のことだけど、書いてるあたし自身が、ベロを切り裂くだの、目玉にピアスだの、もうこの「痛さ」に耐えられないので、この辺で、方向を変えようと思う。
この「痛い」って言葉には、色んな意味がある。たとえば、「痛い話」って言っても、さっきの「あいつは痛いヤツだよな」の「痛い話」だったら、みんなが気づいてるのに、本人だけが気づかずに、大勢の前で恥をかいた話とかになる。そして、一般的な「痛い話」の場合は、急いでる時に、タンスの角に足の小指をぶつけちゃった話とかになる。
その他にも、自分の会社が自転車操業してる時に、取引先が倒産したって言う話が舞い込んで来れば、それは、「頭の痛い話」ってことになるし、会社に遅刻ばっかりしてる人の前で、上司が、遅刻するヤツのせいで会社が倒産しそうだって話せば、それは、「耳の痛い話」ってことになる。
この、色んな意味のある「痛い話」の中で、王道を行くのが、やっぱり、少し戻っちゃうけど、ホントに肉体的に痛い話だ。「とり・みき」って言うマンガ家の「愛のさかあがり」って言う、マンガとエッセイが合体したみたいな本の中に、「イタイ話」って言うシリーズがあって、「朝、寝ぼけて歯を磨いたら、歯ブラシと間違えてカミソリを使っちゃって、口の中が血だらけになった話」とか、「コンビーフの缶のフタを踏んじゃって、足の裏にそのまま刺さった話」とか、ようするに、自分が体験してなくても、聞いただけで、思わず「痛い!」って感じちゃう話が書かれている。
ちなみに、「とり・みき」って言うのは、本名の鳥越幹夫(とりこしみきお)を縮めただけで、大した意味はないペンネームなんだけど、あたしの愛読書、「テレビブロス」の、今、おおひなたごうが、「特殊能力アビル」を描いてるページに、「遠くへ行きたい」って言うマンガを描いてた人だ。それで、古本屋さんの100円コーナーで、「愛のさかあがり」の上巻と下巻を見つけて、パラパラ見たら面白そうだったから、ずいぶん前に買って来た。
‥‥そんなワケで、ホントに「痛い話」ばかりになっちゃった今日の日記なので、最後にホッとしてもらうために、精神的に「痛い話」をひとつ。「笑点」で座布団を運んでる山田君て、もうじき「50才」になるそうだ。これって、ある意味、目玉にピアスするよりも痛いことだと思う今日この頃なのだ(笑)
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