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2005.06.21

石橋を叩き忘れたミシュラン

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F1の第9戦、インディアナポリスでのアメリカGPは、フジテレビの中継で何度も繰り返してた月並みな言葉を借りれば、「前代未聞の最悪のレース」ってことだった。観てなかった人のために簡単に説明すると、インディアナポリスは、特殊なバンクを持つオーバルコースなので、他のサーキットよりもタイヤに負担が掛かる。それで、ブリジストンタイヤなら何とかギリギリで持つんだけど、ミシュランタイヤだと、まったくお話にならない。

去年までは、タイヤ交換が許されてたから、ミシュランでも走ることができたけど、予選から決勝までを1セットのタイヤで走らなきゃならない今年からの新レギュレーションだと、決勝どころか、予選を走るのも危険な状態なのだ。そして、アンノジョー、2回目のフリー走行で、F1界の貴乃花、トヨタのシューマッハ弟が、タイヤトラブルが原因で、コンクリートウォールに突っ込んで、大クラッシュしちゃった。幸いにも体は無事だったけど、目に異物が入ったため、決勝を辞退して、サードドライバーのリカルド・ゾンタと交代した。そしたら、今度は、そのゾンタが、同じタイヤトラブルが原因で、またまたクラッシュ。

結局、ミシュラン勢は、このままのタイヤだと決勝は危なくて走れないって結論に達して、一番危険な最終コーナーにシケインを設けるようにと、FIAに要望した。だけど、なんせ相手はF1界のナベツネ、モズレー会長だから、そんな要望など聞く耳持たずだ。それで、ミシュラン勢は、みんなで口裏を合わせて、表向きは「ドライバーの安全を最優先する」、本音は「FIAに対する抗議」ってことで、決勝をボイコットすることにした。だけど、最初からレースに出ないと、ペナルティーを科せられて、ワッキーが芝刈り機になっちゃうから、最初のフォーメーションラップだけを走り、スタート直前に、ミシュラン勢の7チーム、14台のマシンが、ゾロゾロとピットへと消えて行った。

そして、スターティンググリッドに残ったのは、ブリジストンを履いている、フェラーリ、ジョーダン、ミナルディの3チーム、6台だけになった。F1の規定では、マシンが12台以下だとレースが成立しないんだけど、フォーメーションラップを走ったあとのリタイヤは、レースに参加したことになるため、たった6台なのにレースは成立し、フジテレビが言うところの「前代未聞の最悪のレース」がスタートした今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、前回のカナダGPでは、モズレー会長のトンチンカンな新レギュレーションのオカゲで、前を走るマシンが次々とリタイヤしてくれて、最後尾からのスタートだったのにも関わらず、タナボタで3位に入り、2位のシューマッハ兄と並んで表彰台に上がっちゃったバリチェロは、今回もモズレー会長のオカゲで、7番グリッドからのスタートだったのが、一気に2番手からのスタートになった。そして、5番グリッドからのスタートだったシューマッハ兄は、実質的にはポールってことになって、すんごく久しぶりに、赤いマシン2台が、先頭で1コーナーへと入って行くって言う、素晴らしい映像を観ることができた。

とにかく、F1は8位までがポイント圏内だから、コースを走ってる6台のマシンは、完走さえすれば、すべてポイントがもらえる。クジで言えば「ハズレ無し」、雑誌のプレゼントで言えば「全プレ」ってワケで、その上、1番手を走るシューマッハ兄と2番手を走るバリチェロの他は、ジョーダンとミナルディって言う、力の差の歴然としたチームなので、よほどのマシントラブルでも発生しない限り、フェラーリのワンツーパンチは水前寺清子‥‥じゃなくて、ワンツーフィニッシュは確実だ。だから、最悪って言えば最悪なレースだったけど、フェラーリファン、バリチェロファンのあたしとしては、嬉しい限りで、ここでルノーのポイントに迫っておけば、今シーズンの残りのレースが楽しくなることウケアイだ。

でも、年に1度のレースを楽しみに、サーキットを訪れていた観客たちからは、もちろん、ブーイングの嵐。コースには、中身の入ったペットボトルが投げ込まれ、シューマッハ兄は避けたけど、バリチェロは踏んじゃって、中身が飛び散った。他にも、テレビには映らなかったけど、缶ビールなども投げ込まれたようで、レース後のインタビューで、シューマッハ兄は、「走ってたらビール臭かったよ」って話していた。

あたしは、今まで、ずっと言って来たように、モズレー会長は大っ嫌いだし、今季からの新レギュレーションは、レース自体をつまらなくするだけじゃなく、ドライバーにとって危険極まりないものなので、大反対だ。だけど、今回のミシュラン勢の「集団ボイコット」に関しては、チーム側のほうが絶対に間違ってると思う。だって、ブリジストンタイヤを履いてた6台は、新レギュレーション下で、すべて完走できたからだ。つまり、一番の問題は、コースに耐えられないタイヤを持ち込んだミシュランなのだ。

あたしの個人的な見解は、ミシュランが、十分なテストもせずに、実績のない新構造のタイヤをインディアナポリスに持ち込んだことが最大の原因だと思う。それも、タイヤは2種類持ち込めるんだから、普通なら、新タイヤだけでなく、実績のある安全な構造のタイヤも持ち込むべきなのに、ミシュランは、新タイヤによほど自信があったのか、すべて新タイヤしか持って来なかったのだ。それに比べ、ブリジストンは、あらゆる状況を考えて、2パターンのタイヤを持ち込んでいた。だから、最後まで走ることができたのだ。サスガ、石橋を叩いて渡るブリジストンタイヤだ(笑)

ミシュランは、フリー走行でのシューマッハ弟のクラッシュを目の当たりにして、新タイヤの構造に問題があったことを知った。そして、「今回の事故は、タイヤの構造上の問題が原因であり、同じタイヤを使用している他のマシンも、安全の保証はできない」って、ハッキリと声明を発表した。つまり、7チーム、14台のマシンが、すべて、このままのタイヤで走ったら、事故を起す可能性があるって断言したワケだ。そのタイヤを開発したメーカーの人間から、「あんたのタイヤは、いつ破裂するか分からないよ」って言われて、それでも400キロ近いスピードで走れるヤツなんかいるワケがない。

それで、ミシュラン側は、FIAに対して、タイヤの危険性を説明した上で、今回だけ特別に、別のタイヤに交換できるようにして欲しいとの申し入れをした。でも、FIAは、それを受け入れなかった。だけど、そりゃあ当然だろう。たとえば、コースの路面に問題があって、ミシュランもブリジストンもみんな危険だって言うのなら、そう言った特別のケースも考えられるかも知れないけど、今回は、ミシュランの、単なるタイヤのセレクトミスなのだ。自分たちが十分なテストもせずに、新しく開発したタイヤを持ち込み、やっぱりそれがダメだったから、他のタイヤに換えさせてください‥‥だなんて、そんな虫のいい話があるか!

そして、タイヤの変更を認められなかったミシュランは、今度は、タイヤの負担を減らすために、最終コーナーに臨時のシケインを設置してくれって言い出した。これについて、FIAは、安全対策として臨時のシケインを作ることにはOKした。だけど、もしもそうするのなら、コースの形状が変わってしまうため、今回のレースは、正式なチャンピオンシップとは認められなくなり、入賞してもポイントが加算されない未公認レースになるって言った。これも、当然のことだ。

そして、これに対して、フェラーリチームが猛反対をした。フェラーリとしては、このサーキットに合わせて、タイヤのチョイスを含め、すべての調整をして来たワケだ。それを他のチームのタイヤの都合だけで、勝手にコースを変えられた上に、ノンタイトルレースなんかにされちゃったら、今までの努力がパーになっちゃう。だから、フェラーリチームが猛反対したのも、当然のことだ。そして、結果として、FIAは、フェラーリチームの意見を聞き、そのままのコースでレースを行なうことにした。もちろん、このFIAの判断、対応も、極めて当然のことだ。

そしたら、ヘソを曲げちゃったミシュラン勢が、7チームで談合をして、全員でレースをボイコットするって言う、まるで、どっかの会社の労働組合みたいなことをやったってワケだ。だから、煎じ詰めれば、1番いけないのは、がんじがらめのレギュレーションを作ったモズレー会長であり、FIAだってことには変わりないんだけど、「悪法も法なり」なんだし、その悪法の下でも、ちゃんとレースをやって、ちゃんと6台のマシンが完走してるって言う現実を考えれば、今回の問題の元凶が、ミシュラン側のワガママであることは一目瞭然だ。

たとえば、レースに参加したブリジストンの6台も、次々にタイヤのアクシデントでクラッシュ、リタイヤをしたって言うのなら、FIAや新レギュレーションを糾弾する方向へと動いたかも知れない。だけど、この結果じゃ、とてもFIAに落ち度があるとは思えない。それどころか、サーキットを73周もするレースなのに、ミシュランの新開発したタイヤが、たった10周しか耐えられなかったって言う現実が、ミシュラン製品に対する完全な逆宣伝効果になっちゃったってワケだ。

‥‥そんなワケで、広いサーキットをのびのびと走れて、まるでフリー走行みたいなレースだったけど、たった1ヶ所だけ、ヒヤリとするシーンがあった。それは、51周目に、2回目のピットインを終えたシューマッハ兄が、コースへ飛び出した時に、ちょうどバリチェロが来てて、お互いにラインを譲らずに、淡谷のり子‥‥じゃなくて、あわや接触って感じになっちゃって、バリチェロがコースアウトしちゃったのだ。バリチェロは、何とか無事にコースに戻れたから良かったけど、「めざましテレビ」でオナジミの、やる気の無いミツユビナマケモノみたいな顔をした伊藤利尋アナが、何をトチ狂ったのか、この危険なシーンに対して、「さみしいアメリカGPに、一輪の花を添えてみせましたぁ〜!」って叫んでた。

F1を完全にスタレさせようとしてるバカ会長。自分たちの用意したタイヤが問題なのに、ナンでもカンでも主催者のセイにして、世界中のモータースポーツファンを裏切ったバカチームの面々。レース中のコース内に、ペットボトルや缶ビールを投げ込んだアメリカのバカ観客ども。あわや大惨事のシーンを「一輪の花」に喩えたバカアナウンサー。そして、それらを見て、この日記を書いてるバカキッコ(笑)

‥‥そんなワケで、優勝はシューマッハ兄(フェラーリ)、2位はバリチェロ(フェラーリ)、3位はモンテイロ(ジョーダン)、4位はカーティケヤン(ジョーダン)、5位はアルバース(ミナルディ)、6位はフリーザッハー(ミナルディ)って言う、スタートした時と同じような順位で、レースとしては、ホントにつまらないものだった。表彰台に上がったシューマッハ兄とバリチェロは、あまりにも不本意なレースでの入賞だったために、笑顔もなく、用意されたシャンパンも撒かずに、そのまま裏へと引っ込んでしまった。だけど、思わぬタナボタで3位入賞を手に入れたモンテイロだけが、ひとりでハシャイでいた。

そこで、これだけのランキングじゃつまんないので、あたしは、今回のレースで損をした人、気の毒だった人に順位をつけて、逆ランキングを発表したいと思う。F1第9戦「気の毒グランプリ」の優勝は、何と言っても、せっかく初めてのポールをとったのに、走ることができなかったトゥルーリ(トヨタ)だろう。そして、2位は、いつまで経ってもマトモに走ることができず、今回、ジョーダンとミナルディまでがポイントをとったために、すべてのチームの中で唯一の0ポイントになったタクマだ。チームメイトのバトンも0ポイントだけど、来季にはマクラーレンのシートが約束されてるバトンと、このままBARホンダに乗り続けるしかないタクマとでは、将来性に雲泥の差がある。続いての3位は、クラッシュに次ぐクラッシュの上に、「馬鹿乃花」並みの兄弟ゲンカが未だおさまらないシューマッハ弟(トヨタ)‥‥って、ここまで書いて気づいたんだけど、気の毒グランプリの表彰台は、すべてニポンのチームじゃん。ようするに、モズレー会長は何もしてなかったのに、結果として、またまたニポン嫌いのモズレー会長の思惑通りに、コトが運んじゃったってワケだ。

‥‥そんなワケで、一時は仲直りしたように見えたシューマッハ兄とバリチェロなのに、たった6台しか走ってないレースで、バリチェロの走行をジャマしてコースアウトさせたシューマッハ兄は、またまたバリチェロに恨まれることになった。そして、まるで弘兼憲史のマンガみたいに、様々な人間模様が見え隠れするF1の世界に、また、新たな伝説が作られちゃった今日この頃なのだ(笑)

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