七夕の夜
今日、7月7日は「七夕」なので、あたしは、朝の7時に起きて、7月7日7時に、確率変動の1日がスタートした‥‥なんてことも言ってみつつ、七夕と言えば、誰でも知ってるように、織姫と彦星が年に一度だけ会える日だ。だけど、この七夕の物語って、あまりにもヒドイ話だ。だって、ハタオリ娘のオリヒメちゃんと、牛飼いのケンギュウ君が、恋に落ちて結婚する。そして、2人はラブラブな毎日を送るんだけど、ケンギュウ君に夢中で、すっかりハタオリをしなくなっちゃったオリヒメちゃんを見て、天の神様が怒って、2人を引き裂き、天の川の両側に置いて、二度と会えなくしちゃう。それで、2人は、悲しくて毎日泣いて暮らしてたんだけど、それを見た天の神様は、ちょっとかわいそうだったかなって思って、毎年、7月7日に、年に一度だけ会ってもいいってことにしてあげた‥‥って、コレって、あまりにもヒドイ話だと思わない?‥‥って言うか、天の神様って、何様?(笑)
たとえば、せっかく結婚したのに、オリヒメちゃんは若いホストに入れ込んで夜な夜な遊びまわり、ケンギュウ君は会社のお金を横領して、愛人のレースクイーンのマンションで覚醒剤をやってたって言うんなら、天の神様じゃなくても、検察庁が厳しい罰を下すと思うけど、ただ、ハタオリをさぼってたってだけで、夫婦としては幸せに暮らしてたのに、それを引き裂くなんて、松田優作じゃなくても、「なんじゃこりゃ〜!」って感じの物語じゃん。
まあ、そんなことは置いといて、オリヒメちゃんの星は、琴座のベガ、ケンギュウ君の星は、鷲(わし)座のアルタイルで、これは、両方とも1等星なので、都会でも、晴れていれば見ることができる。だから、今夜は、晴れてる場所の人は、ぜひ、夜空を見上げて、この2つの星を探してみて欲しい。この2つの星に、あと、白鳥座のデネブが加わると、「夏の大三角」って言って、夏の星座を探す時の目印になる。どの星も明るいけど、特に明るいのがベガ、次がアルタイルだ。どれも白く光ってるけど、良く見ると、アルタイルだけはちょっと黄色っぽい。やっぱり、牛飼いのケンギュウ君は、狂牛病の牛をムリヤリに売りつけようとしてるアメリカの圧力で、気分的にも黄ばんじゃってるんだろうか?‥‥なんて思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?(笑)
‥‥そんなワケで、夜の8時ころだったら、東の空を見て、一番目立ってる白くて明るい星が、ベガ、つまり、オリヒメちゃんで、その右ナナメ下のほうに、何となく黄色っぽい白に光ってるのが、アルタイル、ケンギュウ君だ。そして、時間とともに上に登って行くので、夜の10時を過ぎたころには、頭の真上くらいに移動する。だから、夜の10時から深夜0時ころの間に見る人は、窓からだと見えない。めんどくさくても、外に出て、何も無い場所で、真上を見上げてみて欲しい。頭の真上で、一番明るく光ってるのが、オリヒメちゃんだ。
さて、この「七夕」ってのは、奈良時代に始まった「五節句」のひとつで、1月7日の「人日(じんじつ)」、3月3日の「上巳(じょうし)」、5月5日の「端午(たんご)」、7月7日の「七夕(しちせき)」、9月9日の「重陽(ちょうよう)」ってのが五節句だ。何で、他はぜんぶゾロ目なのに、1月だけ「1月1日」じゃないの?‥‥って思うだろうけど、1年のうち、1月1日から6日までは、神様が地上に戻って来る特別な日で、人間の節句に神様の日は使えないって言う考えから、1月だけ、人間の日に戻る「1月7日」にズラしたってワケだ。こんなとこにも、天の神様って何様?‥‥って感じが見え隠れしてるけど、まあ、それは置いといて、「七夕」ってのは、ニポンに昔からあった民間伝承と、中国から伝わって来た宮廷の行事とがコラボレートして出来たハイブリッドなフェスティバルだったのだ。
この、中国から伝わって来た宮廷の行事ってのが、「乞巧奠(きっこうでん)」て言う行事で、「はにょ〜ん」とか「ひにょ〜ん」とか言ってる、ワケの分かんないアキバ系アイドルの名前と、あたしの名前をコラボレートして出来たハイブリッドなフェスティバル‥‥って、ちょっとデジャブっちゃったけど、あたしが、90才以上のお年寄りだけを対象にした「冥土喫茶」でバイトすることになったら、「乞巧奠きっこ」って言う名前にしてみようと思う。
‥‥そんなワケで、琵琶湖の近くに、余呉湖(よごこ)って言う小さな湖がある。周囲が6.4kmほどなので、おととい、NASAのディープインパクト号が子機を撃ち込んだテンペル1彗星と同じくらいの大きさだ‥‥って言っても、何の参考にもならないけど、とにかく、そんな湖がある。古くから、和歌にも詠まれてる湖で、たとえば、源頼綱の歌で、こんなのがある。
ころもでに余呉の浦風さえさえてこだかみ山に雪ふりにけり 頼綱
「ころもで」って言うのは、着物の袖のことで、余呉湖の湖畔に佇んでいたら、冷たい風が袖のあたりに吹きつけ来て、ふと見上げてみたら、己高山(こだかみやま)には雪が降っていた‥‥って歌だ。ようするに、それほど冬が深くなる前で、まだ辺りには晩秋の色あいも残っているころに、冬の到来を実感したって言う、季節に対する存問の歌だ。
そんな余呉湖のほとりには、衣掛柳(ころもかけやなぎ)って言う、とっても大きな柳ジョージが、フェンスの向こうのアメリカに向かって、ボーッと立っている。これは、余呉湖に伝わる「天女伝説」に出て来る柳で、どんな物語なのかって言うと、昔々、天女が、余呉湖に降りて来て、この柳に羽衣を掛けて、水浴びをしてた。そしたら、それを見た地元の男が、その天女に一目ぼれしちゃって、柳に掛けてあった羽衣を隠しちゃう。それで、天に帰れなくなった天女は、仕方なくその男と結婚して、1人の子供をもうける。だけど、天女は、天に帰りたい気持ちがずっとおさまらずに、毎晩、声を殺して泣いていた。その姿を見た子供が、お父さんの隠していた羽衣を見つけ出して、お母さんに渡し、お母さんは、大喜びで羽衣をまとって、子供に、「お母さんは、毎年7月7日に余呉湖に水浴びに来るから、その時に会おうね」って約束して、天へと帰って行った‥‥ってストーリーだ。
‥‥そんなワケで、またここで、ちょっと「七夕」の匂いがして来たと思うけど、この伝説は、余呉に昔からあった「天女伝説」と、その後、中国から伝わって来た「七夕」とがコラボレートして出来たハイブリッドなレジェンドで‥‥って、ちょっとシツコイ?(笑)
とにかく、ニポンの各地にある「天女伝説」は、柳じゃなくて松に羽衣を掛けたり、岩に掛けたり、色んなパターンがあるけど、基本的なストーリーはどれも似通ってるから、もともとは1つの物語だったものが、少しずつシチュエーションを変えながら、各地へと広まって行ったんだと思う。有名なとこでは、「美保の松原の羽衣伝説」や「丹後の八乙女伝説」などがあるし、ストーリーの酷似した昔話だと、誰でも知ってる「鶴の恩返し」がある。そして、これらは、すべて、発祥は同じだと考えられる。現在、分かっている中では、余呉の「天女伝説」が最も古いとされているから、古くから余呉に伝わっていた伝説が、少しずつ形を変えながら、ニポン各地へと広まって行ったって考えるのが妥当だろう。
でも、ここで、ひとつ問題がある。この「天女伝説」ってのは、ニポンだけの物語じゃないのだ。中国や韓国は当然として、マレーシア、フィリピン、ベトナムと、アジア一帯に似たような物語が残っているのだ。それどころか、チャイコフスキーの「白鳥の湖」だって、基本的なストーリーはすごく似てるし、「アラビアンナイト」の中にも、同じような設定の話が出て来る。人間の考えることなんて、たかが知れてるから、これらすべてが、たまたま偶然に同じような話になっちゃったのかも知れないし、世界各地に点在する、安倍なつみスピリッツを持ったヤツラのシワザかも知れないし、自然に広まって行ったのかも知れない。
中国の「天女伝説」は、北斗七星を7人の天女としていて、そのうちの1人が地上に降りて来て、羽衣を隠されて天に帰れなくなるってストーリーだ。これが、「七夕」の語源になっている。だから、中国では、「天女伝説」と「七夕」とは、もともと1つの物語の中のことなのだ。だけど、ニポンの場合は、昔から「天女伝説」だけがあったところに、中国から「七夕」が伝わって来て、その2つがコラボ‥‥じゃなくて、合体して、今の物語になったワケだ。だから、もしかすると、中国の「天女伝説」と「七夕」とは1つのものだったのに、そのうちの「天女伝説」の部分だけが初めにニポンに伝わって来て、余呉湖をはじめ、ニポン各地に広まって、それからずっとしてから、残りの「七夕」の部分も伝わって来て、まるで、7月7日に、オリヒメちゃんとケンギュウ君がやっと出会えたように、「天女伝説」と「七夕」とが出会って、もともとの物語に戻ったんじゃないだろうか?
‥‥そんなワケで、現代の「七夕」と言えば、願いごとを書いた短冊を笹に吊るすくらいで、正直、あとは何をするんだか分かんない人もいっぱいいるだろう。雑誌に書いてある通りの行動しかできないマニュアルカップルは、雑誌に書いてある通りのアホなデートでもしてるだろうし、他には、飲んで騒いだり、いつもと変わらずにテレビを見てたりと、どーってことない夜を過ごしてると思う‥‥なんてエラソーに言ってるあたしだって、ホントのとこは良く分かんないから、発泡酒、もしくは、その他の雑酒でも飲みながら、「とんねるずの皆さんのおかげでした」とか「ダウンタウンDX」とかを見てるかも知れない。だけど、いつもとちょっとだけ違うのは、夜の10時ころになったら、外に出て、真上を見上げてみようと思う今日この頃なのだ。
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