恐怖のテュポン
ちょっと前に、台風5号が南の島を直撃して、沖縄本島はそうでもなかったけど、八重山、宮古、与那国などの離島は、大きな被害を受けた。風速55mの強風は、長年、与那国に住んでいる人でも、初めての体験だったと言う。風だけでなく、雨もすごかった上に、時速20kmと言うゆっくりな台風だったので、長い時間をかけて通過して行き、それが被害を倍増させた。海に近い畑は高波をかぶって、作物はほとんどがダメになり、道路は冠水し、3日間も外に出られなかったそうだ。その間、何度も停電になり、家は飛ばされそうなくらい揺れ、テレビの電波受信施設が停電していたため、テレビからの情報は入らず、防災無線の台風情報だけが頼りだったそうだ。だけど、離れた場所に住んでいる人たちにとっては、対岸の火事。中には、こんな台風があったことすら、知らない人もいるだろう。
だけど、今回の台風7号は、首都圏を襲う可能性があったため、報道での扱いは5号の時の100倍以上で、昨日のうちから、テレビではガンガンと警告を伝えていて、「絶対に外に出るな」とか言ってたけど、ニート君たち以外は、そうも行かないだろう。あたしは、午前中は新宿に用事があって、午後からは渋谷と六本木でお仕事があったので、1日中、外にいた。外って言っても、移動の時以外は建物の中だったけど(笑)
だけど、移動中も、時々大雨が降ったりしただけで、これと言って何でもなかった。あとから知ったんだけど、台風はリトル右側を通ったみたいで、東京は直撃しなかったようだ。でも、静岡とか神奈川とか千葉とかは、ケッコーすごかったみたいで、ニュース映像を見て、あらためて自然の力を認識するとともに、荒れ狂う茅ヶ崎で、平然と波乗りをしてたサーファーたちが、テレビのインタビューにヘラヘラと答えてるのを見て、こんなヤツラが溺れても税金を使って救助するのかな?‥‥って思った今日この頃、皆さん、台風は大丈夫でしたか?
‥‥そんなワケで、「台風」と言うニポン語の語源には、色んな説がある。中国で、強い風のことを「大風(タイフーン)」と言い、それがヨーロッパに「typhoon」として伝わり、そしてニポンで「台風」になったと言う説、アラビア語の「回転する」と言う意味の言葉、「tufan」が、「typhoon」になり、「台風」になったと言う説、ギリシャ神話の風の神、「typhon(テュポン)」が、「typhoon」になり、「台風」になったと言う説など、どれもモットモらしい。まあ、どれが語源だとしても、英語の「typhoon」から「台風」と言うアテ字が生まれたって部分は一緒だから、どれでも好きなのを信じればいいと思う。
ちなみに、あたしの場合は、ダンゼン、ギリシャ神話説を信じてる。何でかって言うと、あたしは星座を見るのが好きなので、星座と深くつながってるギリシャ神話が好きだからだ。ギリシャ神話って、やたらとダラダラと長くて、複雑なんだけど、じっくりと読むと、旧約聖書と同じくらいに面白いSF一大スペクタクル作品で、あたしの場合は、「ドラクエ」や「風の谷のナウシカ」も好きだから、色んな共通点があって、一段と楽しめる。
チョー複雑なギリシャ神話だけど、思いっきり簡単に言うと、女狂いのゼウスって神様が、自分のお姉さんだの娘だのと近親相姦をしまくり、やりたい放題に大暴れするって言うハチャメチャな物語だ。それで、色んな神様が出て来るワケだけど、その中で一番強いのが、全知全能の神、ゼウスで、その次に強いのが、「台風」の語源になったテュポンなのだ。
ギリシャ神話は、とにかく古いものだから、色んな訳(やく)があって、ストーリーも複数ある。この風の神、テュポンも、テュポーン、テュフォン、テュポエウスなど、訳者によって呼び方が違うし、その誕生にしても、複数の説がある。でも、ビジュアルはほとんど同じで、基本的には、上半身がマッチョな男性で、下半身がトグロを巻いてる大蛇で、両肩から100匹のドラゴンが生えている。そして、主な攻撃は、イナヅマ攻撃、ファイヤー攻撃などで、その大きさたるや、頭は天に届き、手を伸ばすと、右手は東の海に、左手は西の海に届くと言う。だから、ガチンコなら、ゼウスよりも完全に強いと思う。
‥‥そんなワケで、とりあえず、ギリシャ神話の最初の部分は、どの訳でもほとんど同じで、まずは、光も闇も天も地も何も無い状態、カオス(混沌)から始まる。そして、このカオスから、最初に誕生したのが、大地の女神「ガイア」だ。ガイアは、4人の子供、天の神「ウラノス」、海の神「ポントス」、暗黒の神「エレボス」、愛の神「エロス」を産む。それから、ガイアは、自分の子供、ウラノスと結婚して、男6人、女6人の子供を作る。この12人の子供は、全員、すごく強くて、「ティターン(巨神)」って呼ばれるようになる。
だけど、ウラノスは、自分の子供たちを嫌い、子供たちにひどいことをする。それにムカついたガイアは、12人の子供のうちの末っ子のクロノスに大きなカマを渡して、ウラノスをやっつけるように言う。それで、クロノスは、寝てるウラノスに忍び寄り、こともあろうに、ウラノスのオチンチンを切り落としちゃう。それで、オチンチンを切り落とされたウラノスは、捨てゼリフを残して逃げて行った。ここで、良く考えて欲しいのは、すべての登場人物‥‥って言うか、登場する神様は、みんな親子関係にあるってことだ。つまり、ギリシャ神話ってのは、壮大な近親相姦と家庭内暴力の物語なのだ(笑)
さて、オヤジのオチンチンを切り落としたクロノスは、オヤジの捨てゼリフが頭から離れずに、ノイローゼみたいになっちゃって、自分の5人の子供、ヘスチア、デメテル、ヘラ、ハデス、ポセイドンをみんな飲み込んじゃう。その上、12人の兄弟と一緒になって、世界中で大暴れしちゃう。それで、クロノスの奥さんのレアは、クロノスに薬を飲ませて、5人の子供を吐き出させて、助けた。ここからが、ギリシャ神話の最初の大戦で、クロノスたち12人の兄弟、ティターン軍と、クロノスの子供たちの戦いになるんだけど、子供たち5人じゃ勝ち目が無いので、この時に子供たちのほうに加勢したのが、ゼウスなのだ。
もちろん、ゼウスが味方についたくらいじゃ、まだダメなので、大地の底に閉じこめられてた巨人、3人のヘカトンケイルと3人のキクロペを救い出して、この6人も味方につけた。これで、12対12になったってワケだ。ヘカトンケイルは、100本の腕を持つ巨人なので、一度に50個の大岩を投げることができる。それが3人もいるワケだから、ものすごい岩石攻撃で、キチキチマシンの岩石オープンも真っ青だろう。それから、3人のキクロペは、助け出された時に、大地の底から持って来たカミナリとイナヅマをゼウスに授けた。これで、ゼウスの戦闘力は、格段にアップした。ドラクエで言えば、最強の攻撃魔法を一度に2つも手に入れたようなもんだ。
そして、ものすごい戦いの末に、ゼウスたちは勝ち、負けたクロノスたち12人の兄弟は、暗黒世界に閉じ込められた。この時から、ゼウスは全知全能の神になり、クロノスの5人の子供たちは、ハデスは地底世界の神、ポセイドンは海の神って感じに、それぞれに世界を分け与えた。
‥‥そんなワケで、ここまでが、ギリシャ神話の最初の部分で、ここから先は、オリンポスの神々の平和な物語へと進んで行くのもトコノマ‥‥じゃなくて、チョイノマ‥‥じゃなくて、ツカノマ、今度は、この、ゼウス率いるオリンポス一族と、色んな敵との壮絶な戦いが始まるのだ。だけど、全部を書いてたら、いくらハショッテも、ものすごい長さになっちゃうから、興味のある人は、図書館でギリシャ神話を借りて来て自分で読んでもらうとして、大相撲ダイジャスト的に行ってみると、たとえば、ギガス族。これは、「Gigas」って書いて、「ジャイアント」の語源になってる名前だ。ギガス族は、全身が獣の毛に覆われていて、両足にヘビのウロコが生えている巨人族で、オリンポスの神々と壮絶な戦いを繰り広げるんだけど、複数形になると、「ギガンテス」になる。これは、ドラクエファンには、オナジミの名前だろう。
さて、いつまで経っても、カンジンの「台風」の語源、テュポンが出て来ないので、この辺でムリヤリにワープさせちゃうけど、ある日、ナイル川の河原で、ゼウスたちが飲めや歌えやのドンチャン騒ぎをして楽しんでたら、そこに、ドカーンとテュポンが登場した。テュポンは、最初に書いたように、天にまで届くほどの怪物で、火は噴くはイナヅマは落とすはで、とてもタチウチできなくて、ゼウス以外の神様は、みんな動物に姿を変えて、エジプトまで逃げてっちゃった。だから、エジプトの神様は、みんな動物の姿をしてるって言われてるのだ。
たったひとり残ったゼウスも、がんばって戦ったんだけど、テュポンの圧倒的なパワーの前にはナススベもなく、両手両足のスジを切られちゃって、洞窟に閉じ込められちゃう。それで、ここからが、また複雑なので、大幅にハショルけど、色々とあって、ゼウスは仲間に助け出される。そして、態勢を立て直したゼウスは、新しい武器も手に入れて、ツバサの生えた戦車に乗って、今度は空から攻めて行き、持てるすべての力をふり絞って、カミナリとイナヅマの連続攻撃を繰り出した。ドラクエで言えば、ゼシカにタンバリンを叩かせながらのメラゾーマとイオナズンの乱れ撃ちみたいなもんだ。
それで、形勢の危うくなったテュポンは、海の中へと逃げて行ったんだけど、追いかけて行ったゼウスは、テュポンに大岩を投げつけ、下敷きにしたのだ。その大岩は、そのまま島になり、現在では、シチリア島って呼ばれてる。だけど、テュポンは、今でも生きていて、大岩の下から炎を吐き続けてる。それが、ヨーロッパ最大の大火山、エトナ火山なのだ。
‥‥そんなワケで、全知全能の神、ゼウスですら、色んな武器を使わなかったら勝てなかったギリシャ神話最強の怪物、テュポン。そんなモンスターの名前を語源とした「タイフーン(typhoon)」が、昔の人たちには、どれほど恐れられてたかってことが分かる。そして、もうひとつ、昔の人たちに恐れられていた伝染病、「チフス(typhus)」も、「テュポン(typhon)」が語源なのだ。でも、今は、世界中の人々が恐れているのは、テュポンよりも、何でもアメリカの言いなりになって、世界中に大迷惑をかけまくってるニポンなのかも知れないって思う今日この頃なのだ(笑)
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