ブライダルなお仕事
先週から4回に分けて撮影してたブライダルのヘアメークカタログのお仕事が、ようやく今日で終わった。あたしが担当したのは、全体の5分の1くらいなんだけど、それでも、モデルの半分が、撮影に慣れてない「限りなく一般人に近い読者モデル」だったので、リトル大変だった。ヘアメークカタログって言っても、ブライダルだから、バストアップのショットのためには、ウエディングドレスを着せなきゃならない。もちろん、それはあたしのお仕事じゃないけど、ドレスを着せるのにも時間が掛かる上に、ヘアの作り込みにも時間が掛かるから、ワンパターンの撮影に掛かる時間が長いのだ。さらに今回は、挙式からお色直しや、披露宴へのヘアアレンジを一連の流れで撮って行ったので、一番凝ったパターンは、3時間以上も掛かった。
今回のカタログは、ベーシックスタイルじゃなくて、各ヘアメークアーティストのオリジナルスタイルの紹介なので、アームの見せどころだし、カタログの用のスチールを自分の作品リストにも使えるので、気合の入り方が違った。実際のブライダルでは、ヘアメークはドレスに合わせるのが鉄則だし、何よりも新婦さんの顔立ちや好みで決めるから、あたしのオリジナルが使われることはそんなにない。だからって、ベーシックしか作れないようじゃ、プロとしてはやって行けない。特に、きちんと作り込んだ挙式用のヘアから、マリアベールやティアラを外して、パパッとアレンジして披露宴のヘアを作るためには、色んな裏ワザを持ってないと成り立たない。
最近は、ドレス1着で通すようなカジュアルな挙式が増えて来たので、ヘアもダウンスタイルが多くなって来たけど、あたしは、やっぱり、挙式ではアップスタイルを提唱‥‥って言うか、オススメしてる。それは、純白のウエディングドレスには、何と言っても「ウナジ」がポイントだからだ。それも、「直接ウナジ」じゃなくて、マリアベール越しの「間接ウナジ」には、女性が一生で一番輝く瞬間にふさわしい厳かな美しさを感じるからだ。さらに言えば、「ウナジ+鎖骨」の魅力こそが、花嫁を何倍にも美しくする。だから、あたしは、できるだけアップスタイルをオススメしてるし、ダウンスタイルを希望する新婦さんには、挙式でアップにして、披露宴でダウンにアレンジするプランを出してる今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、同業者にパクられるとイヤなので、あんまり詳しくは書かないけど、あたしのオリジナルのアップスタイルは、夜会巻をアレンジしたのと、高さの違うシニヨンを2つ作るのがメインで、他にも色んなバリエーションがある。それで、どれも、ほんのちょっとのアレンジで、ダウンスタイルに変化させられるのがポイントだ。たとえば、シニヨンを2つ作るデザインは、バックをナナメに取り分けて、センター寄りの高めと、逆側の低めにそれぞれシニヨンを作るんだけど、髪の量は6対4にして、高いほうを多くする。バングスが右流しの場合は左側のシニヨンを高くして、左流しの場合は右のシニヨンを高くする。
あとは、お花やヘアアクセのパターンが色々あるんだけど、そこは割愛して、ポイントとしては、センター寄りの高いシニヨンは毛先だけ解いて垂らして、低いほうのシニヨンはぜんぶ解いて、ねじりながらピンでとめて、後れ毛を引いて、アシンメトリーなダウンスタイルに変化させる。ボリュームや長さが足りない場合は、部分ウィッグやエクステを使う。そして、お花を変えて、メークを変えて、約10分って感じだ。これは、ブライダルオンリーのヘアメークなら、15分から20分は掛かるだろう。あたしの場合は、もらえるお仕事なら、何から何まで選ばずにやってるから、基本的なスピードが違うのだ。言うなれば、ヘアメーク界のバリチェロ‥‥って、それじゃ遅いじゃん!(笑)
じゃあ、ヘアメーク界のデラロサにしとこうかな?‥‥なんて思いつつ、おとといのトルコGPは、あまりにもクタクタに疲れてて、色んなマシンが次々にパンクする様子を見てるうちに、ソファーで寝ちゃって、録画もしてなかったので、日記に書くことができなかった。最近、ケッコー、あたしのF1日記を楽しみにしてるって言うメールをいただくので、一応、こんなイイワケも書いてみつつ先へ進むけど、あたしは、今回の撮影では、このシニヨンスタイルに力を入れてたので、リストアップされてるモデルの中から、アゴから首へかけてのラインが一番がきれいな子を選ばせてもらった。そして、髪の長さがちょっと足りなかったんだけど、部分ウィッグを使って作り込んで行った。
メークのバリエーションも撮りたかったので、カタログに必要なのは3パターンだけだったんだけど、無理を言って、あと2パターン撮らせてもらった。これで、結局、3時間以上も掛かっちゃったんだけど、これが今日のラストの撮影で、スタジオの時間も余裕があったので、みんな気持ち良く協力してくれて、ちょっとジーンと来た。シニヨンスタイルだけじゃなく、今回は、夜会巻をアレンジしたスタイルは、首の細くてきれいなモデルを使えたし、サイドから編み込んで行く可愛いスタイルは、丸顔で矢田亜希子に似た可愛いモデルだったし、お仕事的にもあたし的にも、すごく良かった。とにかく、いいスタッフが揃ってて、みんな、技術はもちろんのこと、プロ意識が高くて、いい緊張感を味わうことができたし、ホントに満足の行くお仕事ができた。
ここんとこ、通販カタログや、モデルをメインにしない企業パンフとかのお仕事が続いてたから、もちろん、どんなお仕事でも緊張して望むようにはしてるんだけど、勝手知ったるいつものメンバーでのお仕事だと、どうしても気がゆるむ。それに比べて、アーティストとしての意識が高い人たちとのお仕事は、それぞれが自分の役割を完璧にこなしながら、ひとつの作品を作り上げて行くって言う、言わば、チームとしての感覚が強くなるので、ほんの一瞬でも気を抜くことができないし、妥協もできない。だから、緊張感のレベルで言えば、「山ちゃん、サクッと片づけて早く飲みに行こうぜ!」なんて言う現場とは、雲泥の差だ。
‥‥そんなワケで、あたし的には、ホントに満足の行くお仕事ができたんだけど、たったひとつ気になるのは、他のヘアメークアーティストたちの作品をまだ見てないってことだ。今回、一緒に掲載される中に、あたしがすごく尊敬してる人もいるし、新進気鋭の人もいるし、人のデザインを平然とパク‥‥これは言わないでおくけど、とにかく、気になる人たちがいるので、別に争ってるワケじゃないけど、他の人たちの作品を見てみるまでは、あたしも、小さいきっこたちも、ちょっとソワソワしちゃってる今日この頃なのだ(笑)
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