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2005.09.19

リバーサイドストーリー(後編)

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さてさて、昨日の続きってワケで、あたしは、自転車を引きながら多摩川の上流に向かって行ったんだけど、どこまで行っても同じような景色だったので、10分くらいでヘコタレちゃって、そのヘコタレちゃった場所でバードウォッチングをすることにした。こう言うのって、悪く言えば「優柔不断」てことになるけど、良く言えば「フレキシブルな発想」ってワケで、あたしの場合、職業上、良く思わないものに対して心にもない言葉でホメチギらなくちゃならないケースが多々あって、たとえば、ジミで暗くてパッとしない対象に対しては、「シックで奥ゆきを感じますね」なんて言ってみたり、恥も外聞もない下品な原色使いの対象に対しては、「次世代のウォーホールですね」なんて言ってみたりする。つまり、「言い訳上手」って言うか、「言い替え上手」って言うか、知らず知らずのうちに黒いものを白って言い切るワザが身についちゃったから、政治家にでもなれそうな気がする。だから、あたしは、たった10分でヘコタレちゃって、最初に言った公約を守らなかったワケだけど、公約破りでオナジミの自民党的に言わせてもらえば、これは、あくまでも「フレキシブルな発想」なのだ。

まあ、悪いほうの「優柔不断」てことにしても、ANNAちゃん直伝の「Happy Go Lucky」、ニポン語で言うところの「行きあたりばったり」のスピリッツだってことで、自分勝手に納得してみたりもする。ちなみに、「行きあたりばったり」で思い出したけど、「行きあたりばっ旅」のシェルパ斉藤さんは元気かな?‥‥なんてことも言ってみても、こっちが覚えてても、向こうが覚えてないか。さらにちなみに、シェルパ斉藤さんと言えば、ゴールデンレトリバーの「ニホ」と「サンポ」を連れて旅をする人だけど、ゴールデンレトリバーの「レトリバー」ってのは、「回収する」って意味の「レトリーブ」の「er」ってことで、「回収する者」って意味で、それが転じて、「ハンターが撃ち落した獲物を回収して来る猟犬」って意味になったのだ‥‥なんて言ってみた今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、あたしは、ヘコタレちゃった場所に自転車を停めて、1段目の河原の様子を見に行った。そしたら、護岸のテトラポッドのとこで、魚釣りをしてるオジサンがいた。多摩川で魚釣りしてる人を見かけるのは、別に珍しくはないんだけど、たいていは、アユ釣り、コイ釣り、ヘラブナ釣りのうちのどれかで、たまにブラックバス釣りをしてる人がいるくらいだ。だけど、そのオジサンは、すごく短くて細い釣り竿を持って、テトラポッドとテトラポッドの隙間に釣り糸を垂らして、水中を覗き込むようにして釣りをしてた。

あたしは、何を釣ってるんだろうと思って、しばらく眺めてた。オジサンは、時々釣り竿をピッて上げて、そのたびに、何かちっちゃいお魚がキラキラと光ってるんだけど、ちっちゃすぎて何だか分からない。それで、あたしは、コンクリートブロックを降りて行って、思いきってオジサンに聞いてみた。そしたら、オジサンは、タナゴを釣りに来たんだけど、今日はタナゴが釣れなくて、クチボソばかりだって言いながら、ビニールバケツを見せてくれた。透明のビニールバケツの中には、3cmから5cmくらいのちっちゃいクチボソが、20匹くらい泳いでた。だけど、ちょっと前に来たばかりで、まだ30分くらいしか釣ってないって言う。たった30分で20匹も釣っちゃうなんて、もしかしたら、名人なのかも知れない。

それで、すごく面白そうなので、オジサンに、近くで見ててもいいか聞いてみたら、ナナナナナント! 「簡単に釣れるから、やってみるか?」って言われちゃった! あたしは、予想もしてなかった答えにビックルを飲んじゃって、思わず、「え?」って言ったんだけど、オジサンは釣り竿を差し出して、「あそこのテトラの隙間に落としてごらん」って言って、釣り針に新しいエサをつけてくれた。エサは、「アカムシ」って言うすごくちっちゃい虫で、その名の通り赤くて、5mmくらいの長さのイトミミズみたいなのだった。

あたしは、ミミズは触れないんだけど、イトミミズなら何とか触れる。イトミミズって言えば、玲奈ちゃんが子供のころに、ひとみ(玲奈ちゃんのママ)に食べさせられたことでオナジミだけど、オナジミなのはコアなMAXファンだけで、普通は誰も知らないと思うので、何もなかったことにして、先へと進む。で、とにかく、あたしの場合は、魚釣りには興味シンシンなんだけど、ミミズとか虫系が触れないので、お団子みたいなネリエを使った釣りか、ルアー釣りに限られちゃう。だから、なかなかチャンスに恵まれない。

でも、今回のアカムシは、すごくちっちゃいから触れるし、それより何よりすごいのは、指でアカムシを持たなくても、釣り針につけられるようなワンダホーなシステムになってたのだ。どんなのかって言うと、ダイコンの輪切りの上にアカムシが置いてあって、釣り針を持って、ダイコンの上のアカムシを引っ掛けるみたいに刺すって方式だ。ダイコンは白くてアカムシは赤いから、すごく見やすいし、さらに、アカムシと一緒にダイコンまで刺しちゃっても、ダイコンはやわらかいからアカムシだけが釣り針について来る。その上、ダイコンの水分で、アカムシが弱らないそうだ。なんて合理的&理想的なシステムなんだろう。あたしは、リトル感動しちゃったんだけど、よくよく聞いてみたら、別にそのオジサンが発明したワケじゃなくて、小物釣りをする人たちの間ではジョーシキなんだそうだ。

‥‥そんなワケで、オジサンに言われた場所にエサを入れたら、すぐに小さなウキがピクピクし始めて、それからスッと水中に消えた。あたしは、この前、釣り堀の「わんぱく太郎」で研究したばっかりだったので、反射的に釣り竿を持ち上げた。そしたら、5cmくらいのクチボソが釣れた。たった5cmのクチボソとは言え、釣り堀じゃなくて、自然のお魚を釣ったのは久しぶりなので‥‥って言うか、今までの人生で3回目くらいなので、あたしは、すごく嬉しかった。

そしたら、あんまり喜んでるあたしを見て、そのオジサンは、「好きなだけ釣ってていいよ。もう1本、釣り竿を持ってるから」って言って、予備の釣り竿を用意し始めた。それで、あたしは、お言葉に甘えて、しばらく魚釣りをさせてもらったんだけど、これが、次々と釣れちゃって、すごく楽しかった。結局、1時間くらいやらせてもらって、15匹くらい釣れたので、最後にあと1匹釣ったら終わりにしようかなって思ってたら、ウキが一気に消えた。それで、パッと釣り竿を持ち上げたら、今までとは比べものにならない引っぱられ方で、水中を見たら、何か大きなお魚がジタバタしてる。それで、エイ!って感じで引いたら、10cmくらいのフナだった。オジサンも、「おおっ!すごい!すごい!」って言ってくれた。

10cmなんて、フナにしたら小さいんだろうけど、バケツの中はちっちゃいクチボソばっかりだから、そこに入れたら、チョー大物って感じになった。そのオジサンは、5cm以上のクチボソが釣れると、バケツに入れないで川へ返してたから、バケツの中はヨリスグリの小物ばかりだったのだ。何でかって言うと、オジサンが言うには、「小物釣りの面白さって言うのは、どれだけ小さい魚を釣れるかってこと」だそうで、他の魚釣りは、ちょっとでも大きいお魚を釣るために色々と工夫をしたり腕を磨いたりするんだけど、オジサンのやってるタナゴ釣りの世界では、小さければ小さいほど記録になるそうだ。

それで、「手のひら100匹」って言って、片手の手のひらの上に100匹並べられるってのが、タナゴ釣りのひとつの理想の形だって教えてくれた。そのために、市販の釣り針の最小のものをさらにルーペで見ながらヤスリで磨いて細くしたり、ウキとかも自作したり、色々と手作りするそうだ。あたしは、そんな魚釣りの世界があったなんて、目からカラーコンタクトが落ちるほどのカルチャーショックを受けたんだけど、あいにく、カラーコンタクトはしてなかった(笑)

だけど、あたしは、思わず自分の手のひらを見ちゃったんだけど、いくらちっちゃなタナゴでも、手のひらに100匹も並べるなんて、どう考えても無理だと思った。だから、「針の穴を通すコントロール」みたいに、無理なことを大ゲサに言ってる喩え話なのかと思ったんだけど、オジサンは、「手のひら100匹」はホントの話だって言う。1cmくらいのタナゴを100匹釣れば、人差し指に10匹、中指に10匹って感じで並べて行って、5本の指に50匹、そして、手のひらの部分に50匹で、合計100匹並べることができるって言われた。

「それなら、手のひら50匹じゃん!」ってツッコミがノドまで出かかったんだけど、そのオジサンはとってもいい人だったので、あたしはその点には触れずに、お話を聞いていた。そしたら、オジサンは、自宅に大きな水槽がいくつもあって、タナゴやクチボソをたくさん飼ってるって言うので、あたしも黒メダカとクチボソを飼ってるってことを言ったら、飼育上のアドバイスを色々としてくれた。それで、色々と知りたかったことを教えてもらえて、すごく勉強になった。

‥‥そんなワケで、オジサンのアドバイスによると、あたしの60cmの水槽に「クチボソ5匹」ってのは、ちょっと少ないそうで、クチボソの場合は、ある程度の数をマトメて飼わないと、クチボソ特有の集団行動の特性が養われないって言われた。それで、釣ったクチボソの中から、10匹をビニール袋に入れてくれて、一緒に飼うようにって渡された。この前、お友達のクチボソ10匹の里親を拒否したって言うのに‥‥なんて思いつつも、自分で釣ったクチボソに愛着も感じてたので、飼ってみることにした。だから、今、あたしの水槽は、エサの時間になると、15匹ものクチボソが乱舞して、まるで水族館みたいな状況になっちゃった今日この頃なのだ。

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