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2005.11.23

和歌の心

aki 日本テレビの夕方の「ラジかる」は、毎週月曜日がMAXのナナさんのレギュラーの日なので、あたしは月曜日だけ録画してる。それで、昨日の放送ぶんを見てみたら、19日のタイのプーケットでのライブの様子をチョコっと話してて、日焼けした玲奈ちゃんとりっちゃんの写真が映って、ナナさんは「レイナとりっちゃんは日焼けしてるから現地の人に間違えられてました〜」って言ってた。それから、30日にリリースされる新曲「あなたを想うほど」のPVを1分くらい流してくれて、バドミントンのネットの部分がアミみたいになったラケットで遊んでる玲奈ちゃんが映ってアップになったんだけど、それがもうこの世のものとは思えないほどのビューティホー&ワンダホーで、MAXから届いたバースデーカードとともに、素晴らしいお誕生日プレゼントになった。ちなみに、MAXの新曲「あなたを想うほど」のPVは、明日23日から無料パソコンテレビ「Gyao」で観ることができるので、皆さんも、美しい4人の女神様の素晴らしい映像をご堪能ください‥‥って、ナニゲに折り込んでみたんだけど、今日はあたしのお誕生日ってことで、お祝いのメールをくださった皆さん、どうもありがとう♪

 

で、せっかくのお誕生日なので、あたしは朝から母さんと一緒に‥‥‥‥病院に行って来た(笑)‥‥って言うか、今日は、あたしも母さんも病院の日だったので、朝、車で母さんを迎えに行って、一緒に行って来た。それで、母さんは何も問題なかったんだけど、あたしのほうは予想通りに、「1週間のメニュー」を見たお医者様から色々と言われた。ま、あんな内容じゃ当然と言えば当然だけど、今はもうちょっとマシな食生活になってるので、そのうち、「朝・キャビア、昼・フォアグラ、夜・トリュフ」みたいな、ものすごい一覧表をお見せしようと思う。

 

それで、今日の病院は、思ったよりも早くお薬ももらえて、お昼過ぎには開放されたので、どこかでお昼ごはんを食べることにした。だけど、すごくお天気もいいし、母さんに紅葉を見せてあげたかったので、遠くに出かけることはできないけど、お弁当でも買ってどこか広い公園に行ってみることにした今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?

 

 

‥‥そんなワケで、あたしは、お誕生日ってことで、ちょっとゼイタクをすることにした。世田谷通り沿いのリトル高級なお惣菜屋さんで、ウナギとか錦糸卵とかが入ってる1300円もするお弁当を2つ買って、「おーいお茶」の限定宇治茶も2本買って、駐車場が「有料!」の砧(きぬた)公園に向かった。お弁当やお茶はともかく、駐車場代だけはバカバカしいんだけど、このライオン‥‥じゃなくて、このキリン‥‥じゃなくて、このサイ、しかたない‥‥なんてギャグの寒さで冬の到来を感じてもらってるうちに、母さんを乗せた車は、元ジャイアンツの槙原の自宅の前を過ぎて、砧公園の駐車場に到着した。

 

砧公園は、東名高速の東京インターの近くにあって、世田谷美術館が併設してるとっても広い公園だ。あたしのマンションからは、歩いて行けない距離じゃないんだけど、ずっと上り坂なので、歩きでも自転車でもちょっと厳しい。だけど、車だと駐車場代が掛かるので、ひとりで行く時はいつも原チャリで行く。この公園は、東京で一番空気の汚いカンパチ(環状8号線)に沿ってるんだけど、とにかくすごく広いのと、木がたくさんあるので、奥のほうまで歩いてくと、静かだし、ナニゲに空気もキレイな気がする。公園の中央には芝生の広場があって、森のエリアにはバードウォッチングのエリアもある。

 

それで、母さんと一緒にのんびりと園内に入っていくと、木々は黄色や赤に色づいてて、すごくキレイだった。砧公園には、1000本ものケヤキがあるんだけど、黄色いものと赤いものと中間のものがあって、グラデーションが美しかった。他にも、イチョウの並木もあるし、ところどころにモミジもあるし、周りをグルッと囲む森もある。周りの森は常緑樹が多いんだけど、中には紅葉する木も混じってて、赤、黄、緑のコントラストがレゲエ気分にさせてくれる。

 

そう言えば、「銀杏」って書くと「イチョウ」とも「ギンナン」とも読むけど、「紅葉」も「コウヨウ」と「モミジ」って読み方があるから、書く時に気を使わなくちゃならない。たとえば、「紅葉山」って書けば、「コウヨウヤマ」じゃなくて「モミジヤマ」だってことは雰囲気で分かると思うけど、ただ「紅葉」って書いてあると、「コウヨウ」なんだか「モミジ」なんだか分からなくなる。だから、前後の文章とかで、どっちに読ませたいんだかをナニゲに伝えなくちゃならない。そんなこと以前に、「紅葉」は秋の季語だけど、今はもう立冬を過ぎて「冬」になっちゃってるから、正式には「冬紅葉」って言わなくちゃならない。で、これも、「紅葉山」と同じで、「フユコウヨウ」じゃなくて「フユモミジ」だってことは分かると思うけど、まあ、せっかくの紅葉なんだから、細かいことは抜きにして、「秋の紅葉」として楽しむことにした。

 

‥‥そんなワケで、普通のベンチじゃなくて、ちゃんとテーブルもついてる場所があるので、そこでお弁当を食べることにした。周りは背の高いイチョウに囲まれてて、やわらかい日差しがとっても気持ちいい。お弁当も美味しいし、母さんは喜んでくれたし、いっぱいおしゃべりもしたし、とっても楽しいお誕生日の午後になった。それで、世間話がいつの間にか和歌の話になった。それは、たまたまお弁当を食べてた場所が黄色いイチョウに囲まれてたので、母さんが、「何だか万葉の時代みたいだね〜」って言い出したからだ。

 

何でかって言うと、ニポンで「紅葉(こうよう)」を愛でるようになったのは中世ごろからで、それまではどっちかって言うと、「黄葉(おうよう)」のほうを愛でていたのだ。だから、「万葉集」には100首以上のモミジの歌があるんだけど、そのほとんどは「黄葉」を詠んだもので、「紅葉」を詠んだものはちょっとしかない。つまり、「黄葉」って書いて「もみじ」って読んでたのだ。それは、古代の人たちが「黄色」に秋のワビしさを感じたからで、ハデな紅葉の色は「秋っぽくない」って思われてたからなのだ。万葉集の「黄葉」の歌だと、たとえば、柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)の歌でこんなのがある。

 

 

 「秋山に落つる黄葉しましくはな散り乱ひそ妹があたり見む」

 

 

これは、「秋山に、落つる黄葉(もみぢば)、しましくは、な散り乱ひそ、妹(いも)があたり見む」って読むんだけど、「しましく」ってのは「暫しく」って書いて、「しばらくの間」ってことだ。それから、「な散り乱ひそ」ってのは、「散り乱ひ」を「な」と「そ」でサンドイッチにしたもので、これは「散り乱れないでください」って意味になる。たとえば、「行き」を「な」と「そ」でサンドイッチにして「な行きそ」ってすれば、「行かないでください」ってことになるのだ。そして、「妹(いも)」ってのは、妹のことを指す場合もあるけど、もっと広い意味での「女性」を指す言葉で、この歌の場合は「奥さん」のことを指している。

 

だから、全体の意味としては、「秋の山に落ちるモミジよ、しばらくの間は散り乱れないでください。もう少し妻のいるほうを見ていたいから。」ってことで、これは、人麻呂が奥さんと離れて暮らしてる時に、奥さんのいる方向を見て詠んだ歌なのだ。これが、真っ赤なモミジだったら、会えない奥さんを遠くから思う人麻呂の気持ちとはイメージがズレて来る。やっぱり、はらはらと散り続ける黄色いモミジだからこそ、人麻呂の思いと景とがオーバーラップするんだと思う。

 

‥‥そんなワケで、母さんは黄色いイチョウを見て、万葉の人たちの心を感じたみたいで、2人で順番に好きな和歌を言いっこしたりして、楽しい時間は続いて行った。それで、2004年10月31日の日記、「母さんのかるた」にも書いたように、母さんは「小倉百人一首」が大好きなので、いつしか百人一首を一首ずつ順番に言ってって、言えなくなったほうの負けって言う遊びに発展しちゃった。もちろん、すべてを完全に暗記してる母さんに勝てるワケはないけど、あたしも半分くらいは覚えてるし、残りの半分も、出だしだけ言ってもらえれば思い出すから、あたしはヒントをもらいつつ、なんとかついて行った。そんな中で、母さんが、「じゃあ私はモミジの歌を行くね」って言って、次の歌を言った。

 

 

 「小倉山峰のもみぢ葉心あらば今一度(ひとたび)のみゆき待たなむ」

 

 

これは、藤原忠平の歌だけど、亡くなったあとに「貞信公(ていしんこう)」って言う名前をもらってるから、歌には貞信公って書かれてる。ちなみに、「みゆき」ってのは「行幸」って書いて、「天皇がお出かけする」って意味だ。だから歌としては、「小倉山の峰のモミジよ、もしもあなたに心があるのなら、今は散らずに、もう一度天皇が出かけて来るまで待っていてください。」って意味になる。

 

それから、この歌が「小倉山」の歌だから、ついでに書いておくと、「百人一首」ってのは1種類だけじゃなくて、もともとは何百種類もあったのだ。それで、その中のひとつが「小倉百人一首」ってワケで、選者だった藤原定家が晩年を過ごした別荘があったのが京都の小倉山なので、その地名をとって「小倉百人一首」って呼んで、他の百人一首と区別したってワケだ。間違っても、「こりん星」で作られた百人一首ってワケじゃないので、お間違いなく(笑)‥‥なんてプチ情報も折り込みつつ、あたしは、紀貫之(きのつらゆき)の歌で、母さんに対抗した。

 

 

 「人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける」

 

 

これは、「人の心は時間とともに変わるものだけど、故郷の梅の花の香りだけは、いつまでも変わらないですよ。」って歌だ。そう言えば、百人一首からはダッフンしちゃうけど、紀貫之にも面白い「小倉山」の歌がある。

 

 

 「小倉山峰たち鳴らしなく鹿のへにけむ秋を知るひとぞなき」

 

 

これは、「古今集」に収められてる歌だけど、この歌のどこが面白いのかって言うと、この歌を「5・7・5・7・7」に区切って、それぞれの最初の文字を並べると、ある言葉が現われるのだ。「をぐらやま/みねたちならし/なくしかの/へにけむあきを/しるひとぞなき」、それぞれの最初の文字を並べると、「をみなへし」ってなる。今の仮名づかいで書くと「おみなえし」、つまり「女郎花」のことだ。こんなふうに、歌の中に別の言葉を詠み込むことを「折句(おりく)」って言って、オシャレな昔の人たちは、こんなに楽しい遊びをしてたのだ。平安時代の福山雅治、在原業平(ありはらのなりひら)にも、有名な折句があって、こっちは「かきつばた」が詠み込まれてる。

 

 

 「唐衣(からころも)きつつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ」

 

 

これらの歌の場合は、「をぐらやま」の「を」、「みねたちならし」の「み」って感じで、それぞれのパーツの頭の文字を並べて読むので、折句の中でも「冠(かむり)」って呼ばれる形だ。逆に、それぞれのパーツの最後の文字を並べて、後ろから前へ読むものを「沓(くつ)」って呼ぶ。これは「靴」のことだ。そして、すごいハイレベルな折句になると、「沓冠(くつかむり)」って言って、それぞれのパーツの最初の文字も最後の文字も意味を持ってるようなのもあるのだ。有名な歌では、こんなのがある。

 

 
 「夜も涼し寝覚めの仮庵(かりほ)手枕(たまくら)も真袖(まそで)も秋に隔てなき風」

 

 「夜は憂しねたく我が背子果ては来ずなほざりにだにしばしとひませ」

 

 

これは、「徒然草」の作者としてもオナジミの吉田兼好が、親友だった頓阿(とんあ)法師に送った歌と、頓阿法師からの返歌なんだけど、ものすごい折句が隠されてるのだ。何も考えずにこの歌だけを読むと、普通の男女の恋の歌みたいなんだけど、これを分解してみると、次のようになる。

 

 

 「よもすずし/ねざめのかりほ/たまくらも/まそでもあきに/へだてなきかぜ」

 

 

それぞれのパーツの「冠」を並べると、「よねたまへ」ってなる。これは、「米給え」ってことで、つまり、「食べ物に困ってるからお米を分けてくれ」って意味なのだ。そして、それだけじゃなくて、それぞれのパーツの「沓」を並べると、「しほもにぜ」ってなる。そして、「沓」は逆から読むから、「ぜにもほし」、つまり、「銭も欲し」って意味なのだ。ようするに、「すごく困ってるから、お米とお金を貸してくれ!」ってことなのだ。そして、この歌に対する頓阿法師からの返歌は、こうなってる。

 

 

 「よるはうし/ねたくわがせこ/はてはこず/なほざりにだに/しばしとひませ」

 

 

この歌の「冠」は「よねはなし」、つまり、「米は無し」、そして「沓」は、「せにずこし」、つまり、「銭少し」ってことだ。ようするに、頓阿法師もそんなに裕福じゃなくて、お米も無いし、お金もあんまり持ってないけど、少しくらいのお金だったら貸すことができるよって返事なのだ。

 

食べるものにも困ってるギリギリの情況だってのに、現代人みたいに、「おい!金貸してくれよ!」「わりい、オレもあんまり持ってないんだよ」‥‥なんて言う、アジもソッケも無いやり取りじゃなくて、オシャレな恋の歌に乗せて、こんなに粋なやり取りをしてたなんて、ホントにうらやましくなる。前にも書いたけど、文明が発達して、ニポンは便利な国になったのかも知れないけど、こう言った素晴らしいニポン古来からの文化は、どんどん失われて行って、マトモなニポン語を話せる人も少なくなって来たのは、すごく悲しいことだ。

 

‥‥そんなワケで、今日は久しぶりに母さんと和歌で遊んで、とっても楽しかったし、とっても豊かな気持ちになれた。その上、折句の話をしてたら、突然、母さんがメモ帳を取り出して、しばらく考えてから何か書き始めて、そのページをちぎって、あたしに渡してくれた。そこには、こんな歌が書いてあった。

 

 

 「お弁当目でも楽しむ田園の時を止めたる美しき木々」

 

 

母さんは短歌が上手なのに、何だか変な歌だな?‥‥って思ったら、「お・め・で・と・う」って言う折句だった! あたしは嬉しくなって、しばらく考えてから、こんな折句を母さんに返した今日この頃なのだ。

 

 

 「青空へ両手ひろげる画家ひとり遠きあの日を写したる画布」

 

 

 

 

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