担当医の証言
昨日の日記に、警察庁刑事局長の縄田修や国家公安委員長の沓掛哲男の答弁をひっくり返せるだけの証言が得られているって書いたけど、その証言のホンの一部だけ、ご遺族から公開の許可が出た。それで、今回は、少しだけ書くことにする。ご遺族は、2月13日に沖縄を訪れ、野口さんの解剖を担当した医師や警察の担当者から、直接、詳しい説明を受けているんだけど、これらの証言の中には、すでに報道されている内容と、大きく食い違う点がたくさんあった。
まず最初に断わっておくけど、これから挙げる担当医の説明は、発言通りに一字一句を書いたものじゃなくて、あくまでも、説明を聞いた奥様やご遺族が記憶していたものをノートに書き出し、その内容の要点を文章化したものだ。だから、本来はカギカッコで括るべきものじゃないんだけど、あたしの文章と担当医の説明とがゴッチャになっちゃうので、それを避けるためにカギカッコで区別した。その点を踏まえた上で、読んで欲しい。
「東京23区の場合であれば、きちんと『監察医制度』と言うものが確立されていて、警察の要請で行なう司法解剖にしても、それ以外の行政解剖にしても、専門の監察医が行なうことになっている。しかし、沖縄県には、この監察医制度が無いので、監察医が1人もいない。このように、監察医のいない地域では、私のような普通の医師が解剖を依頼されて行なうので、厳密に言うと、『準行政解剖』と言う扱いになる。事件性がある場合には、監察医が行なう司法解剖、行政解剖ということになるが、今回のように事件性がないと言われた場合には、ご遺族の承諾がいる。」
あたしは、この担当医の説明を読んで、愕然とした。「沖縄県には監察医が1人もいない」と言う説明には、言葉も出なくなった。今まで、警察の発表も、テレビや新聞などの報道も、すべては、「専門の医師による正式な行政解剖が行なわれ、その結果、自殺と断定された」って言うような内容だった。だけど、野口さんの遺体を解剖したのは、司法解剖や行政解剖を専門にしている監察医じゃなくて、普通の医師だったのだ。そして、正式な行政解剖じゃなくて、「準行政解剖」だったのだ。
3月1日の質疑で、国家公安委員長の沓掛哲男は、「琉球大学医学部の教授で、経験のある人が行政解剖を行い、どの点を見てみても『自殺以外は考えられない』と言う結論になった」と答弁してるけど、大前提として、野口さんの遺体は、正式な「行政解剖」はされていなかったのだ。専門の監察医ではなく、一般の医師による「準行政解剖」しか行なわれていなかったのにも関わらず、今までの警察側の発表は、この点にはいっさい触れていない。それどころか、あたかも正式な行政解剖が行なわれ、その結果、専門の監察医が「自殺」と断定したような報告がなされている。
まあ、百歩譲って、専門の監察医でなくても、正式な行政解剖でなくても、それでも、それなりの経験のある医師が解剖をして、確実に「自殺」だと断定したのなら、まだ納得はできる。だけど、この担当医は、次のように説明している。
「解剖医の仕事は死因を調べることであって、死亡に至った原因を調べるのは警察の仕事だ。たとえば、海に落ちて水死した人の場合、誰かが突き落としたら他殺、自分から飛び込んだら自殺、酔っ払って落ちたら事故死と言うことになる。この場合、医師の責任で判断するのは、海に落ちてから水を飲んで死んだのか、それとも、落ちる前に心臓が止まっていたのか、という部分であり、他殺か自殺か事故死かということは、医師には分かるわけがない。これを捜査して判断するのは警察の仕事だ。だから、我々は、検死書の自殺に丸をつけるか他殺に丸をつけるか、それともその他に丸をつけるかについては、警察に聞き、警察の指示通りに丸をつけている。」
これが、沓掛哲男の言うところの「琉球大学医学部の教授で、経験のある人」本人が、ご遺族に説明した内容だ。つまり、この医師は、「どの点を見てみても『自殺以外は考えられない』」などとは、まったく言っていないし、「自殺」と断定したのは、医師ではなく警察なのだ。それなら、この医師はどのように判断したのかって言うと、次のように話している。
「野口さんの場合は、確かに傷は自殺に見えるが、自殺に見せかけたんじゃないかと言われれば、そう言えなくもない。しかし、私は断定する立場ではないので、書類のどの項目に丸をつけるかは、警察の指示に従った。」
そして、次のようにも言っている。
「我々の解剖は、死因の種類が、内因か外因かを調べるものだ。内因と言うのは、病気など内部の疾患などによるもの、外因と言うのは、刺し傷や切り傷などの外部からの要因によるもの。野口さんの場合は、明らかに外因によるもので、ここまでが私の責任で判断することだ。医師は、内因か外因かを判断するだけで、検死書の死因の種類の中の分類(11番まである)を医師の責任だけで分類するというのは無理な話だ。」
「野口さんの場合は、80%か90%は自殺だと思うが、判断が難しかったために、捜査が終わった時点で、警察は『自殺』ではなく『11番』につけるように指示したのだと思う。そして、一度『11番』につけたら、それを別の項目に変更すると言うことは、許されない部分もある。」
これらの説明を聞くと、沓掛哲男の答弁がいかにデタラメなのか、そして、翌日の記者会見での漆間巌の発言が、いかに現実とかけ離れたものなのかってことが、すごく良く分かるだろう。単純に解釈すれば、警察は、「行政解剖を行なった担当医が『自殺』と判断したのだから自殺に間違いないし事件性もない」と言っていて、一方、その担当医のほうは、「自分の仕事は死因を調べることであり、原因や事件性を調べるのは警察の仕事だ。書類の項目も警察の指示で丸をつけた」と言っていることになる。
また、この医師は、民主党の細川議員が、「最初から事件性がないって判断したんでしょう」と言ったことについての反論も述べている。太平洋戦争敗戦後に、たくさんの日本人が餓死や不審死で亡くなっていたため、マッカーサーが監察医制度を作らせたと言う話や、石垣島のトリカブト殺人事件の時の行政解剖の例などを折り混ぜながら、結論として、次のように言っている。
「警察が、本当に事件性がまったくないと判断したら、最初から解剖はしない。しかし、行政解剖の本来の目的は、事件性の有無を調べることではなく、正しい死因を調べることなので、行政解剖によって事件性が確認されると言うことは、とても稀なことだ。東京では、年間に3000くらいの行政解剖が行なわれているが、その中で、解剖中に事件性が確認されて司法解剖に切り替わるものは、ほんの数例しかない。しかし、そう言った事例がある以上、『最初から事件性が無いと判断したから司法解剖をしなかったんだろう』と言う見解は違う。」
そして、同じ行政解剖でも、専門の監察医が行なう行政解剖と、普通の医師が行なう準行政解剖とのスタンスの違いについて、次のように述べている。
「専門の監察医が行政解剖を行なう場合には、常に事件性を考えながら解剖を行なうが、普通の医師が準行政解剖を行なう場合には、事件性よりも、学問的な興味から執刀することが多い。もちろん、事件性をまったく考えないわけではないが、事件性を念頭に置いた専門の監察医と違って、我々の場合は、学問的な興味も含めたトータルな面での解剖と言うことになる。」
ここまでに紹介したのは、ご遺族が担当医から聞いた膨大な説明のうちの5%ほどで、他にも、刺し傷と切り傷の違いについてとか、警察からの具体的な指示内容など、重要な証言が数多くある。また、警察からの説明では、ツジツマの合わない点もたくさんあり、ノート1冊ぶんにビッシリと書かれた説明を読むと、警察や政府に対する不信感は倍増するばかりだ。何しろ、ホテルの従業員や商店の人など、一般の人の証言ではなく、仮にも、解剖を担当した医師と、事件を担当した刑事からの証言なんだから、その重要性は遥かに高い。
‥‥と言うことで、このノートに書かれてる内容をすべて公開することができたら、今まで、野口さんは自殺だ、事件性は無い、と思っていた人たちも、全員、考え方が変わるだろう。だけど、昨日の日記に書いたように、色々な事情によって、ここに公開できる情報は制限されている。ただ、ひとつだけ言えることは、担当医や警察からの説明を聞いたご遺族が、「自殺ではないと確信した」と言うことであり、心から再捜査を望んでいる、と言うことなのだ。
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