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2006.12.06

オーマイニュースのボツ原稿

「オーマイニュース」って言うニュースサイトがあるんだけど、10月の上旬に、そのサイトの市民記者の石川さんから、インタビュー依頼の連絡があった。それで、すごく熱心で誠意を感じられたので、お受けすることにした。で、10月の中旬にインタビューを受けたんだけど、2回に分けて掲載するって言うお知らせをいただいた。でも、それから2ヶ月近くも経つのに、いっこうに掲載されないので、「どうしたのかな?」って思ってたら、昨日、石川さんから、「オーマイニュース側が理由不明で原稿を保留し掲載を見送った」って言う説明と謝罪のメールが来た。それで、「原稿を送りますので、きっこさんがご使用になっても構いません」って言うので、ここに掲載することにした‥‥てなワケで、他じゃ見ることのできない「オーマイニュースの理由不明のボツ原稿」をお楽しみください♪


「きっこの日記」に学ぶ
日本におけるアルファブロガーとは

アルファブロガーという人々をご存知でしょうか? 日本ではまだそれほど使われていない言葉ですが、米国において大きな影響力のあるブログの筆者のことです。ブログも書ける芸能人や他の有名人のことではありません。一つの判断基準として、そうしたブログはアクセス数よりも「いかにほかのブロガーから参照され、言及され、話題を生み出すことができるか」という点がより重要(http://www.new-akiba.com/news/0603/06/01/index.html)だとみなされています。

ネットそのものの利用度や重要度や浸透性の違いもあるのでしょう、日本では米国のような政治や経済や世論にダイレクトに影響を及ぼすほどの国民的ブロガーはまだ存在しないようです。とはいえ以前に出版された「11人の人気ブロガーが語る成功するウェブログの秘訣とインターネットのこれから」という本(http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/book/051110_alphabloggers/)からも分かるように、ことネット上で大きな影響力を持つブログを書いている、日本のアルファブロガーと呼ぶに相応しい人々がいます。

日本におけるそれらアルファブロガーと呼ばれる人々は、一体どういうスタンスやポリシーでブログを書いているのでしょうか?

今回はそんなアルファブロガーの一人として、アルファブロガー2005(http://alphabloggers.com/modules/weblog/details.php?blog_id=9)の投票において多くの支持を受け、日本ブログ大賞2006(http://www.blogaward.jp/2006/)で「今、日本で一番読まれているブログ」と評された「きっこの日記」のきっこさんにお話を伺ってみました。

×××××

石川(以下I):きっこさんはそもそもどんなきっかけでブログを書き始められたのですか?

きっこさん(以下敬称略): まず初めにお断りしておきたいのは、あたしは、自分の書いているものがブログだと思っていませんし、自分のことをブロガーだとも思っていない、ということです。ブログというものは、見ず知らずの人からのコメントを無差別に受け付けたり、あたしは何のためのものなのか分かりませんが、トラックバックというシステムを利用したりしてるもののことを指すようで、あたしが書いているのは、単なるWEB日記です。ただ、「きっこの日記」のミラーサイトとして、ニフティのココログも利用しているので、どちらが本家か分からなくならないように、便宜上、ココログのほうには「きっこのブログ」という名称をつけているだけです。ですから、「ブログを書き始めた」という感覚はなく、普通の日記をつけるように、WEB日記を書いているだけです。書き始めたきっかけは、そのサイトに登録して簡易ホームページを作ると、大好きなMAXのラジオ番組にダイレクトにメールを送れるようになるからで、当初は、MAXに関する情報や、自分がどれほどMAXを好きかということを書いていただけです。

I:普通のウェブ日記という。とても分かりやすいです。今は以前に比べて大勢の人がネットをしています。ネットと今の世の中についてどんなことを思いますか?

きっこ:何かが便利になると、その裏で、必ず失われて行くものがあります。たとえば、自動的に平仮名を漢字に変換できる携帯電話やパソコンでばかりメールを打っていると、漢字が書けなくなってしまいます。先日、何かのテレビ番組を見ていたら、現役の大学生100人のうち、「拝啓」という漢字が正しく書けたのは、わずか3割弱だったと伝えていました。インターネットが普及して、便利な世の中になることは良いことだと思いますが、その反面、歴史ある大切な文化が失われて行かないように心がけたいものですね。

I:漢字のど忘れ。確かに身に覚えがあります(笑)。巷ではWeb2.0が話題になっています。こうしたネット界の動きをどう見ておられますか?

きっこ:ごめんなさい、ネットの情報には疎くて…「Web2.0」とは何のことですか?あたしは、数人の友人のブログ以外は、ほとんど見ていないので、ネットの情報には疎いのです。有名な2ちゃんねるやヤフー掲示板なども、5年以上はまったく見ていません。特に、2ちゃんねるは、6年前に、あたしの本名や携帯電話の番号などを書き込まれて、とても嫌な思いをしたことがあるので、それ以来、一度もアクセスしたことがありません。それから、あたしは「アルファブロガー」という言葉も、自分が2005年度のアルファブロガーに選ばれてから初めて知ったほどで、ネット上の有名なブロガーという人たちのことも、まったく知りません。でも、「切り込み隊長」という人だけは、1週間くらい前に知りました。あたしが参加しているネット上のコミュニティに、「切り込み隊長がきっこさんのことを書いてます」という書き込みがあり、そのブログのURLが貼られていたので、ちょっと覗いてみました。でも、あたしは、この人が有名な人だとは知らず、他の人たちから「ネットではわりと有名なブロガーですよ」と教えてもらいました。このような状況なので、この人以外の有名なブロガーのことを聞かれても、あたしは、名前すら知りません。他にも、時々読者から、「2ちゃんねるにきっこさんの悪口が書いてありました」といってメールでURLが送られてくることもあるのですが、わざわざ自分の悪口を見に行くほどヒマでもないので、そういったものもすべて無視しています。

I:ご自分のウェブ日記とご自身の事に注力しておられると。これからのネットはどうなっていくと思われますか? あるいはどうなってほしいでしょうか?

きっこ:自民党がコイズミ時代から推進して来た「政府が国民1人1人を監視するシステム」が、アベの時代には確立すると思います。共謀罪の導入によって、「テロ対策」の名のもとに、国民1人1人を監視するシステムがネット上に張り巡らされると思います。そして、反権力的な言動や活動をしている人たち、市民団体などは、魔女狩りのように逮捕されて行くことになると思います。そして、アベの言う「美しい国」、つまり、お国のためなら喜んで自らの命を投げ出す国民ばかりの「戦争のできる国」へと進んで行くのでしょう。今でさえ、自民党の人間が一般人に成りすまして、反自民のブログやサイトに嫌がらせの書き込みや脅迫メールなどを繰り返しているような世の中なのですから。既成の新聞やテレビなどの報道機関が、政府の宣伝機関へと堕落してしまった今、真実の情報を発信できるのはインターネットだけなので、このツールだけは、絶対に政府の手に渡したくないですね。

I:きっこさんらしいですね。はっきり物を言っておられる(笑)。(つづく)

×××××

きっこさん一人をして日本のアルファブロガーの方々すべてを推し量るのは当然無理があるものの、「普通の日記をつける」感覚、ネットという現代の便利品へのやや冷めた見方、人の目を気にすることなくひたすら精力的また継続的に自分発信、そして率直な(時に率直過ぎるかもしれない)歯に衣着せぬ主張、こうした点には興味を惹かれます。特に最後の点は、ネットと匿名性によって日本の精神文化また国民性の隠れた部分がもしかしたら明らかになりつつあるのでは、と思えてなりません。

太古の聖徳太子による「和をもって貴(尊)となし」から近代の本居宣長を経て戦中の国家神道の興隆と衰退を経た今も、日本人は仏教、神道そして儒教によって強化された特有の精神文化また国民性のもとにあります。しかし非常に流動的で不確実性の強い激動する現代にネットが登場し匿名の情報発信が可能になった結果、簡単な言い方をすれば、押さえつけられていたものがはけ口を得たかのような状態になったのかもしれません。

別の言い方をすれば、平成もあと2年で成人式という日本人は、外見ではそれまでの精神性や国民性を引き続きある程度とどめながらも、その内面ではもう叫ばずにはいられない。きっこさんの日記の人気の背後には、良かれ悪しかれ彼女の辛口トークが関係しているように思われ、それは心の中でなんとなくそう思ってはいるものの、もやもやしていてそこまでの率直な情報発信には至らないかもしれない相当数の人々の共感を得たように見受けられます。

こうした事例について考えると、日本でアルファブロガーを目指される皆さんは、まず文章力や情報収集力や継続性が求められるに違いないでしょうが、あるいは人が言いたい叫びたいと思うことを素早く的確にキャッチしてキレとコクのある代弁また熱弁ができるようになれば、もしかしたらその仲間入りは近いのかもしれません。

ところで、このインタビューには続きがあります。きっこさんの日記は先頃ついに書籍化され出版された一方で、一部報道では、きっこさんは本音本音と口では言っているが建前があるのではないか、と揶揄されています。次回記事ではこうした点も含め、引き続ききっこさんにインタビューに答えていただきつつ、きっこさんを通してアルファブロガーと呼ばれる人々の素顔に迫ってみます。

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きっこのホンネとタテマエ
きっこさんの言い分から考えさせられること

あの「きっこの日記」が出版されました。きっこさんの辛口トークには確かにそれなり需要がある、ということなのでしょう。それは前の記事(前の記事のURL)にも触れたように、もしかしたらある人々の-あるいは相当数の人々の-本音の代弁、という面が関係しているのかもしれません。

もっとも、その本音の炸裂をすべての人が歓迎している、というわけでもなさそうです。顕著な例としては、J-CASTニュース(http://www.j-cast.com/)では「きっこの日記」 知られたくない?削除部分(http://www.j-cast.com/2006/09/07002875.html)と題する記事で、きっこさんとていつも本音というわけではない論が展開されています。

きっこさん自身にこの記事についてお聞きしたところ、J-CASTニュースできっこさん関連の記事を書いている記者様は、「もともとあたしのことが気に入らないようで、以前から、あたしのイメージを悪くするような偏向的な書き方ばかりする人なのです」とのことです。J-CASTニュースの記者様が「アンチきっこ」なのかどうかは分かりませんが、こうした記事からうかがわれる「アンチきっこ」派の人々の言い分は恐らく、きっこさんは口上が率直過ぎはしないか、自分は読んで傷ついた、他の人も傷つくに違いない、あたりなのかもしれません。先の記事はきっこさんの止むことのない辛口トークを揶揄して、きっこさんは本音で率直に語ると言っておきながら自分に都合が悪くなると建前が出る、と言いたいのでしょう。

ではきっこさんの本音と建前とはどのようなものなのでしょうか? 以下、先のインタビュー(前の記事のURL)の続きの部分で、きっこさんご自身に語っていただきましょう。

×××××

石川(以下I):きっこさんの日記の削除部分が云々、といった記事(http://www.j-cast.com/2006/09/07002875.html)を以前に見かけたことがあります。きっこさんの日記は本音本音と言いながらも実際はホンネとタテマエじゃないかと。普通の人のように更新/削除をするのも如何なものかとは、注目されていると大変ですね。

きっこさん(以下敬称略): 本当ですね(笑)いくらアクセス数が多いと言っても、所詮は個人のWEB日記なのに、現在も書いてあることならともかく、間違えてアップしてわずか2時間で削除したものまで、キャッシュを探してきてまで大騒ぎするようなヒマ人がいるのですから、この国もホントに崩壊寸前なのかもしれませんね。まあ、自分のブログにあたしの悪口を書いて自己満足してるような惨めな人たちは、あたしのことを書けば自分のブログやサイトのアクセスが伸びると思っている寄生虫のようなものですから、あたしは、まったく相手にしていませんし、有名税だと思っています。

I:有名税ですか! いやはや庶民でよかったです(笑)。きっこさんは今度「きっこの日記」を出版されましたね。ご自身のブログが本になったわけですが、これにはどんないきさつやエピソードがあったのですか?

きっこ:今回、「きっこの日記」を出版したのは、あたしにとって、とても大切なものを守るための手段であり、また、パソコンのない人たちにも「きっこの日記」を読んで欲しかったからです。

I:なるほど。インターネットが普及したとは言え、まだまだパソコンのない人もたくさんいますからね。最後に、きっこさんにとってブログとは?

きっこ: ストレス発散のためのツールです。でも、「ブ」「ロ」「グ」を折り込んで、「葡萄酒にロレツ回らぬ愚痴ばかり きっこ」なんてことにならないように、これからも楽しく続けていけたらと思っています。

I:ぜひ頑張ってください(笑)。本日はお忙しいところをインタビューに応じていただき、本当にありがとうございました。

×××××

きっこさんはこのインタビューの後、「あたしは、今まで、他のサイトやブログを褒めたことは何度もありますが、実名をあげて批難したことは一度もありません。それは、「その人にはその人の考え方がある」ということと、「自分の考えを自分のブログに書くことは何も問題ない」と思っているからです。言いたいこと、書きたいことがあるのなら、自分の日記やブログに好きなだけ書けば良いのであって、自分と違う考え方の人のコメント欄を荒らしたり、嫌がらせをしたりするというのは、小学生のイジメと何ら変わりません」とも語っておられました。

こうしてご本人から直接お話をお聞きする限りにおいて、きっこさんにはある人々の言う「ホンネとタテマエ」があるのではなく、辛口(時に激辛)の語り口であるからこそ、自分なりにお考えになってブログの文章を訂正したり取り下げたりすることにより、むしろ自身の発言(この場合は最終稿として公開されているブログ上の文章)に責任を持とうとしているように見受けられました。

これは突き詰めれば、他者への配慮ということになります。

思えば日本人は古くは「恥の文化」論に代表されるように、自身の面子を立てるための建前を非常に重要視することで知られてきました。ところがそのような恥による抑制は、恥を恥とも思わなければ実は実質がありません。端的、人が見ていなければ気にしなければ、また怒ったり罰したりする人がいなければ、あるいはたとえば匿名であれば、少しも拘束力がないのです。

一方で、他者への配慮というベクトルは国民性や民族性を超えた、人類社会のさらに根底を流れている社会生活上必須の事柄なので、この抑制をかなぐり捨ててしまうと社会そのものが成り立たなくなるでしょう。

だから建前はもういいから本音で語りましょう、という意見は、こと日本においては歓迎されるべきものでしょうが、一方で本音は他者への配慮をもって調整されて然るべきで、それは建前や面子や繕うといったこととは全く無関係です。

平成の日本人であるわたしたちは幸いにも、ネットがより身近になるにつれ、本音で語ることに慣れてきたのかもしれません。「もはや本音で叫ばずにはいられない」相当数の人々が既におり、そうでなくとも「井戸端会議や居酒屋論議がブログという場で続行されるのはごく自然な流れ(であって)、家庭に埋没しそうな主婦、リタイア団塊、ニート近辺、会社帰りのサラリーマン、野心的な若者(等等、これからブログを)書きたい人はいっぱい居そう」(http://q.hatena.ne.jp/1160700120/49361/#i49361)という意見もあります。

その一方で、その言動(特に自分の言動)は他者の存在によってそれなりに調整されているのか-こうした点は実社会のみならず、ここ数年であっという間に拡大したこの仮想社会上でのさまざまな形の情報発信においても、まだまだ健全な議論の余地がありそうです。

追記:
「きっこの日記」がウェブ上のあの辛口を失っている、との意見(http://www.janjan.jp/media/0610/0610100544/1.php)は、ある意味予期されるものでした。きっと、きっこさんご自身の他者への配慮が働いた部分もあることでしょう。ただ、これが出版社側の前時代的な体面、面子、繕いに起因、あるいは出版社にそれを強いているのかもしれない旧体質の業界のそれに起因している部分があるのかどうか。もしわたしたちがいまだに「恥」の一字のみをもって動いているとすれば、それこそがもしかしたら一番恥ずかしいことなのかもしれません。

以上


‥‥そんなワケで、あたし的には、この記事のどこにも別に問題になるような点はないと思うんだけど、なんでこの原稿がボツになったんだろうか?‥‥って思ってたら、石川さんが少し教えてくれた。なんでも、前回、松永さんて言うブロガーの記事を掲載したら、その記事のコメント欄に、嫌がらせの書き込みが繰り返されたそうだ。それで、「オーマイニュース」は、その記事のコメント欄を閉鎖して、松永さんの記事の続編の掲載も見合わせたそうだ。で、その続編のあとに、あたしの記事が掲載される予定だったんだけど、それも一緒にボツになったみたいだ。ようするに、ネット上の幼稚な嫌がらせに「オーマイニュース」側が負けたってことみたいなんだけど、そんなら、あたしみたく、最初っからコメントなんか受け付けなきゃいいのに‥‥なんて思う今日この頃なのだ。


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