絶対の愛
このごろ、最初の「エヴァンゲリオン」を最新機種だと思い込んで打ってみたり、あまりにもホゲホゲなあたしだけど、またまた、自分で自分がイヤになっちゃうほどのホゲホゲが炸裂しちゃった。シメキリを過ぎたと思って、寝る時間を削ってまでがんばってた確定申告なのに、シメキリを1ヶ月カン違いしてたのだ‥‥って言うか、あたしの頭の中のカレンダーが、1ヶ月狂ってたのだ。それで、パソコンのほうのスケジュール表を見たら、ちゃんと3月15日に赤いマークがつけてあるし、毎年のことなのに、何でカン違いしちゃったんだろう? 思い当たるフシとしては、毎年シメキリに間に合わないから、今年こそは絶対に間に合わせようって思って、いつもより早めに準備に取り掛かったってことくらいだ。それで、チョコチョコと領収書をマトメたりしてるうちに、どっかでカン違いして、「ああ、あと1週間しかない!」って思っちゃったみたいだ。とにかく、教えてくださった皆さん、どうもありがとうございました♪
おかげ様で、あたしは、ものすごく気持ちに余裕ができて、時間的にも余裕ができたので、3月10日に公開になる、大好きなキム・ギドク監督の最新作、「絶対の愛」をひと足先に観ることができた。感想としては、とにかく期待してた以上に面白かったんだけど、いつも思うのは、映画を観て面白かった時とか、本を読んで面白かった時に、そのことを日記に書くのが難しいってことだ。だって、ストーリーを書くワケには行かないし、どんなシーンが良かったのかを書くワケにも行かないし、だけど、面白かったってことは伝えたいから、どうしても奥歯にモノがはさまったみたいな書き方になっちゃう。
おんなじキム・ギドク監督の作品でも、「きっこの日記2」にも掲載した「魚と寝る女」の場合は、何年も前に公開された映画だったから、多少は気がラクだった。でも、やっぱり、これから観る人のことを考えて、公式サイトに書かれてた紹介文を参考にして、それ以上のことは書かないように注意した。だけど、今度の「絶対の愛」の場合は、これから公開される映画で、関係者や試写会に行った人以外は、まだ誰も観てないワケだから、ものすごく気を使っちゃう今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、今回も、映画の公式サイトに書いてあることを参考にして書くと、絶対の愛を手に入れるために、美容整形で自分の顔を変えちゃう女性の物語だ。だけど、自分の顔に不満があって整形するんじゃなくて、もともと、それなりにキレイな女性で、何のために整形するのかって言うと、残念ながら、ここから先は書けない。で、この映画のストーリーの背景にあるのは、現在の韓国の美容整形事情だ。韓国は、世界有数の美容整形大国で、無免許医などの闇の世界まで入れると、年間に4000億円から5000億円もの市場だという。若い女性が、周りに目がある喫茶店などで、普通に整形の話題を口にして、良い病院を紹介しあったり、友達に整形を薦めることも日常的だという。ニポンだと、「あなた、目を整形したほうがいいわよ。いい病院を紹介してあげるから」なんて言ったら失礼なことだけど、韓国だと、言われた人は感謝して、「ありがとう」って言うそうだ。
美容整形と言えば、どの国でも女性が多いけど、韓国では、ここ数年、男性の二枚目スターの人気が高くなって来たことから、美容整形する男性も急増したらしい。何しろ、2年前には、ノムヒョン大統領までが二重マブタの手術をしたほどだし、そのあとには、ノムヒョン大統領の奥さんも整形したし、側近の経済補佐官も整形したし、挙句の果てには、大統領の後援会長までもが整形 しちゃった。ニポンで言えば、アベシンゾーや出しゃばり女房だけじゃなくて、アパの元谷会長までもが整形したってことなんだから、ものすごいことだと思う。ま、アベシンゾーの場合は、もう完全に末期だから、整形したって支持率は戻らないと思うけど、「ネプリーグ」で、アベシンゾーと出しゃばり女房の写真を見て、「ノッポさんと増田明美かと思ったよ」って言った関根勤に、座布団を5枚あげたいと思う。
で、韓国の美容整形は、値段も安くて、目を二重にして鼻を高くする手術が、だいたい15万円から20万円程度で、ニポンの半分から3分の1ほどだ。それで、腕が良くて人気のある医者は、何ヶ月も先まで予約が埋まってるそうだから、ようするに、多くの医者が数をこなしてるワケで、数をこなせばそれだけ上手くなるんだと思う。だから、中国からは、年間に1万人以上の人たちが、韓国への美容整形ツアーに参加してるそうだ。
‥‥そんなワケで、韓国のこんな背景を知った上で、この「絶対の愛」を観ると、いろんな意味で、より深く楽しむことができる。ニポンでは、美容整形に対して、「非日常的」なイメージ、「美容整形は人に隠れてやるもの」「美容整形は悪いこと」っていうイメージを持ってる人のほうが多いと思うから、韓国の美容整形事情を知らずに観ると、設定は現代なのに、異世界の物語みたいに感じて、フィクション性が強くなっちゃう。だけど、現代の韓国が美容整形大国であること、美容整形外科が立ち並ぶ「整形ストリート」なんて言う通りまでがあり、どこも大繁盛してることなど、ニポン人にとっては「非日常」である「自分の顔を変える」という行為が、極めて「日常的」に行なわれてる国だって認識を持って観ると、キム・ギドク監督が表現したかった核心に到達することができると思う。逆に、韓国の人たちがこの映画を観ても、ストーリーの展開の面白さを追うだけで終わってしまい、この作品が啓蒙してくれてる本質的な部分までは理解されないんじゃないかって思った。
あたしは、キム・ギドク監督の持ち味って、自分の意図するものを作為的に扱わないことだと思ってる。ようするに、伝えたいことを過剰に演出したりせず、ただ淡々と撮り続けて、「分かる人だけ分かればいい」ってスタイルなんだと思ってる。だから、どの作品にしても、ものすごく評価が分かれる。10人のうち10人が70点をつける作品じゃなくて、5人は100点なのに、残りの5人は0点みたいな、極端に言えば、観る人マカセな作品が多い。あたしの大好きな「魚と寝る女」にしても、あたしとしてはサイコーだと感じてるけど、GyaOで配信された時にレビューを見たら、何人かに1人はものすごく低い評価をつけてて、「何が言いたいのか意味不明」とかって書かれてた。だけど、満点をつけてる人たちも多くて、その人たちの感想は、あたしの感じてる感覚と近かった。
まあ、「魚と寝る女」の場合は、主人公の女性のセリフがまったく無いっていう、ちょっと変わった作品だから、観る側の感性とか、映像を読み取る力とかによって、評価が分かれるのはジンジャエールだけど、今回の「絶対の愛」は、誰が見てもキチンと分かるストーリーだし、起承転結もハッキリしてるし、何も考えずにボーッと観てても、すごく楽しめる。そして、韓国の美容整形事情などを知った上で観ると、もっと深い部分まで感じることができる。さらに言えば、キム・ギドク監督の他の作品も観た上で、この「絶対の愛」を観ると、もっともっと楽しむことができる。
1996年に「鰐(わに)」で監督デビューして以来、異常なハイペースで作品を作り続けてるキム・ギドク監督は、2000年に4作目の「魚と寝る女」を発表して、ニポンでも注目されるようになった。そして、翌年の2001年には、「コースト・ガード」「受取人不明」「悪い男」と、1年間に3本もの作品を発表してる。これは、他の監督じゃ考えられないことだ。「低予算で短期撮影」ってのは、キム・ギドク監督の売りの1つだけど、だからって、決してザツに作ってるワケじゃない。ようするに、自分の頭の中のイメージが生きてるうちに作品を完成させたいから、短期集中の制作スタイルを取ってるワケで、その証拠に、2004年に発表した2本の作品、「サマリア」と「うつせみ」は、「サマリア」がベルリン国際映画祭銀熊賞の「監督賞」を受賞し、「うつせみ」がベネチア国際映画祭の銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞し、現在では、世界三大映画祭制覇にもっとも近い監督だって言われてる。莫大な予算を使って、何年もかけて撮った作品でも、ノミネートすらされない映画がマウンテンなのに、低予算で短期間で撮った作品が、年間に2本も受賞するなんて、やっぱり、最初は異端児扱いされてたキム・ギドク監督に、時代のほうが追いついて来たんだと思う。
‥‥そんなワケで、「韓国映画」って聞くと、多くのニポン人は、最近までの韓流ブームを思い浮かべると思うし、そのイメージは、ペ・ヨンジュンを始めとした、通称「韓流スター」って呼ばれてる人たちが出て来る陳腐で時代遅れな恋愛映画だろう。だけど、あんなものをありがたがって観てるのは、ニポンの一部の人たちだけで、世界じゃ誰も相手にしてない。その証拠に、ペ・ヨンジュンの去年の年収は、約44億円だそうだけど、そのうちの40億円は、ニポンで稼いだぶんだそうだ。もちろん、この40億円てのは、ペ・ヨンジュンのフトコロに入ったお金であって、この何倍ものお金が、ニポンから韓国へと流れてる。あたしは、前にも書いたけど、あんな「竹島は韓国の領土です」なんて言ってるヤツなんかに、ホイホイとお金を払うニポン人の気持ちが理解できない。
まあ、電通が作った「韓流ブーム」も、そのカラクリに気づく人たちが増えて来て、ようやく静かになって来たけど、あたしが何よりも残念なのは、ああいったくだらないブームを捏造されたことによって、キム・ギドク監督のような、本物の監督が作った本物の作品までもが、「どうせ韓国映画だろ?」って目で見られちゃうことだ。あたしは、「魚と寝る女」をこの日記で取り上げた時に、次のように書いた。
「三流のカンフー映画しかないように思われてる香港映画界にも、鬼才、ウォン・カーウァイ監督が存在しているように、キムチ臭い三流恋愛映画しかないように思われてる韓国にだって、独自の感性で映像美を追求し続けているキム・ギドク監督が存在しているのだ。」
そして、ウォン・カーウァイ監督は、香港映画に対するニポン人の先入観を消し去ってくれたけど、残念なことに、韓国映画に対するニポン人の先入観は、まだまだ健在だ。それは、電通が絡んでることを見れば分かるように、ほとんどの外国映画は、「商売」としての対象でしかなく、その作品の価値は、「この映画で儲けられるかどうか」ってことで決められてるからだ。つまり、映画ってものは、「映画芸術」ではなく、あくまでも「映画産業」ってワケで、人気の韓流スターさえ主役にすれば、それがどんなにくだらない茶番映画でも、ニポンでは大儲けができるってワケだ。
だけど、こういった、産業としての韓国映画とは、対極にいるのがキム・ギドク監督だ。キム・ギドク監督に関する名著、「キム・ギドクの世界~野生もしくは贖罪の山羊~」に掲載されてるインタビューの中で、2001年の「コースト・ガード」について、インタビュアーのチャン・ジョンイル氏は、要約すると、次のような意味の質問をしてる。
「この映画は、韓国の地方ならどこでも起こっている日常的なことを扱っています。コネもなく、お金もなく、学もない若者同士が争うだけです。どうして監督は、韓国社会の最たる弱者集団のみを抽出して、お互いに闘わせるのでしょうか? こういった若者を取り上げたとしても、それが最終的に成功するという映画的なカタルシスがあれば分かるのですが、監督の映画はそのまま終わってしまいます。キム・ギドク映画が『商業性ゼロ』と言われているのは、まさにこの点に起因するのではないでしょうか?」
そして、この質問に対して、キム・ギドク監督は、次のように答えている。
「だから私は他の韓国映画が面白くないのだろうか? そうだ。正直言って、ほとんどの韓国映画はつまらない。チャンさんの質問を読んでその理由がわかった。私はまったく反対側で映画を撮っているようだ。他の監督たちにとっても、私の映画はつまらないだろう。」
‥‥そんなワケで、まだキム・ギドク監督の作品をちゃんと観たことのなかった人たちに、嬉しいお知らせがある。渋谷のユーロスペースで、3月10日の「絶対の愛」の公開にともなって、ひと足早い2月24日から「スーパー・ギドク・マンダラ」と銘打ったスペシャルイベントが開催されるのだ。夜の9時からなんだけど、劇場未公開の作品を含む過去の作品を連日上映してくれて、土日には、朝の9時からの回もある。以下、その上映スケジュールなので、興味を持った人は、この機会に、ぜひ、本物の韓国映画を味わって欲しいと思う今日この頃なのだ。
「スーパー・ギドク・マンダラ」 渋谷ユーロスペース
連日 9:10 pm~
2/24(土)ワイルド・アニマル
2/25(日)弓
2/26(月)うつせみ
2/27(火)サマリア
2/28(水)春夏秋冬そして春
3/1(木)コースト・ガード
3/2(金)コースト・ガード
3/3(土)悪い男
3/4(日)悪い男
3/5(月)魚と寝る女
3/6(火)魚と寝る女
3/7(水)リアル・フィクション
3/8(木)リアル・フィクション
3/9(金)リアル・フィクション
3/10(土)受取人不明
3/11(日)受取人不明
3/12(月)悪い女 ~青い門~
3/13(火)悪い女 ~青い門~
3/14(水)ワイルド・アニマル
3/15(木)ワイルド・アニマル
3/16(金)ワイルド・アニマル
モーニングショー
2/25(日)ワイルド・アニマル 9:30am~
3/3(土)悪い女 ~青い門~ 9:30am~
3/4(日)悪い女 ~青い門~ 9:30am~
3/10(土)リアル・フィクション 9:50am~
3/11(日)リアル・フィクション 9:50am~
「絶対の愛」 公式サイト
http://zettai-love.com/
「絶対の愛」 公式ブログ
http://zettailove.exblog.jp/
「ユーロスペース」
http://www.eurospace.co.jp/
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