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2007.02.10

差別用語もTPO

Izariuo
女性を「産む機械」に喩えたカメムシ大臣や、子供を増やすことを「生産性」と言った民主党の菅直人から、イラクへ派遣した自衛隊員が1人も死なずに還って来たことを「野球で言えばノーヒットノーランみたいなもんだ」と言った麻生太郎や、「小型であれば原子爆弾の保有も問題ない」「北朝鮮など核攻撃で焦土にしてペンペン草1本生えないようにしてやる」と言ったアベシンゾーに至るまで、政治家の失言や問題発言は枚挙にイトマがないけど、今回の揚げ足取り合戦のヒキガネになったカメムシ大臣を擁護した1人に、時代錯誤の暴言王、石原慎太郎がいる。だけど、あたしは、カメムシ大臣を擁護する石原慎太郎を見て、「お前が言うな!」って思った。

カメムシ大臣は、「女性は子供を産む機械だ」って言ったんじゃなくて、「機械」って言葉を比喩に使っただけなんだから、「喩えが不適切だった」ってことだ。ようするに、頭が悪くて適切な比喩を思いつかなかった、そして、こんな酷い比喩をオオヤケの場でポロッと言っちゃうほどデリカシーがなかったってことだ。だけど、石原慎太郎は、過去にこう言ってる。


「文明がもたらした最も悪しき有害なものはババァなんだそうだ。女が生殖能力を失っても生きてるってのは、無駄で罪。男は80、90才でも生殖能力があるけど、女は閉経してしまったら子供を生む力はない。そんな人間が、きんさん、ぎんさんの年まで生きてるってのは、地球にとって非常に悪しき弊害。」


この石原慎太郎の暴言こそが、「女性は子供を産むことしか意味のない機械」って言ってるワケで、さらには、子供を産めない女性が生きてることが「無駄で罪」「地球にとって非常に悪しき弊害」とまで言っている。こんなことを平然とノタマッちゃうような大バカから見たら、カメムシ大臣の失言なんか、なんでみんなが怒ってるのか、ぜんぜん理解できないんだろうね‥‥なんて思う今日この頃、皆さん、東京都知事選では、絶対にこの恥知らずを叩き落としましょう!


‥‥そんなワケで、最近、国会で流行りの「失言の揚げ足取り合戦」だけど、失言や暴言がなんでいけないのかって言うと、その言葉によって、誰かが傷つくからだ。だから、あたしたちみたいな一般人の場合と、公人の場合とでは、おんなじ言葉を言ったとしても、責任が大きく違って来る。カメムシ大臣の「産む機械」にしたって、現職の厚生労働大臣て立場の人間が、オオヤケの場で言ったからこそ問題になったんであって、そこらの居酒屋さんで、酔ったサラリーマンが同僚に向かって言ったとしたら、別に何も問題になんないだろう。つまり、おんなじ言葉であっても、誰が使うか、どんな場で使うかによって、意味が違って来る。

そして、おんなじ人が、おんなじ場で使っても、聞く人によって、傷つく人もいれば、傷つかない人もいる。たとえば、あたしも良く使うけど、「バカ」って言葉がある。これは、関東と関西ではニュアンスが違うそうで、東京では深い意味もなく、「何、バカなこと言ってんのよ~」なんてふうにも使うし、言われたほうも何とも思わないけど、関西の人にとったら、ムカッとするらしい。逆に、関西では、「何、アホなこと言ってんのや~」ってのが普通で、これは、関東の人にとってはムカッとする。ようするに、関東と関西では、「バカ」と「アホ」のニュアンスが逆ってことになる。

たとえば、恋人同士の場合、東京だったら、彼氏が彼女のオデコを指をつついて、「こいつ~バカだな~♪」なんて言うのも、愛情表現の1つだし、言われたほうの彼女も、嬉しくなって彼氏の胸に顔を埋めたりする。でも、これが、「こいつ~アホだな~♪」って言われたんだとしたら、誰でも軽くムカッとする。だけど、大阪のカップルの場合なら、「こいつ~アホやな~♪」のほうが愛情表現になって、「こいつ~バカやな~♪」のほうがムカッとするんだと思う。だから、エヴァンゲリオンのアスカに、「あんた、バカァ~?」って言われたら、東京のアニメヲタクは嬉しくなるけど、大阪のアニメヲタクはムカッとするんじゃないかな?

だけど、東京でも、「このバカ!」って怒鳴られれば、それは罵倒されてることになるし、言われたほうだって、自分が怒られてるってことをちゃんと認識する。逆に、「このアホ!」って怒鳴られたら、「バカ」よりも怒りのレベルが低くて、なんか、からかわれてるっぽい感じがする。ようするに、「バカ」って言葉は、ものすごく複雑で、シチュエーションや言い方によって、愛情表現から罵倒まで、いろんなふうに使える便利な言葉ってワケで、トランプのジョーカーみたいなもんなんだと思う。で、ちょっと前のことだけど、「日本魚類学会」が、2月1日付で、次のような公式リリースを出した。


関係者各位

日本魚類学会では、「メクラ、オシ、バカ、テナシ、アシナシ、セムシ、イザリ、セッパリ、ミツクチ」の9つの差別的語を含む魚類の標準和名について議論を重ねてきました。その結果、1綱2目・亜目5科・亜科11属32種を含む51タクサ(分類単位)の標準和名を改名すべきであるとの結論に達しました。
関係者各位におかれましては、今後、これらの標準和名の普及にご協力くださいますようお願い申し上げます。
なお、改名の目的や経緯、学会員からの意見とそれらへの回答、会員以外の方から寄せられたご意見等への考え方を本会HPに公開しています。これらをご参照いただき、この問題への理解を深めていただければ幸甚です。

日本魚類学会
会長 松浦啓一
http://www.fish-isj.jp/index.html


‥‥そんなワケで、最初のとこに「関係者各位」って書いてあるから、黒メダカとクチボソを飼ってる上に、「釣り番組ウォッチャー」でもあり、さらには、お魚を食べるのが大好きなあたし的には、完全に「関係者」だと思うので、このリリースの内容を良く読んでみた。で、このリリースは、「日本魚類学会」の中だけで一方的に決めたワケじゃなくて、外部からの質問や意見などにも耳を傾けて、総括的に判断したものだってことが分かった。たとえば、「バカのように判断の難しい差別的語をどうするのか? これを差別的語とすると、チビ、ブタ、ハゲなども同様とせざるを得なくなるのではないか?」って質問に対しては、次のように回答してる。


「バカ」は個人の能力を否定する言葉であり、差別的語であることは疑いようがありません。ただし、ご指摘のように、その受け止め方に個人差があることも事実です。このように判断が人により大きく分かれるような語についてどこまでを改称の範囲とすべきかは難しい問題で、線引きは恣意的にならざるをえません。当委員会では改称の範囲は最小限にとどめるという方針の下に検討を進めてきました。チビ、ブタ、ハゲなどの語は、「バカ」よりも文脈により意味合いが異なる度合いが大きいこと、これらの語は「バカ」と異なり、語源が形態的特徴に基づくものであり、語源そのものに差別的意味合いはないこと、「バカ」の語が使用された唯一の和名バカジャコは、日本における分布が限られており、しかも一般にはほとんど知られておらず、名称が変わったとしても混乱のおそれがほとんどないことなどを総合的に勘案して改称の対象に含めました。


‥‥こんな感じで、いろんな疑問や意見に対して、きちんと見解を示してるし、「こういった改名は言葉狩りじゃないのか?」って意見に対しても、ちゃんと回答してる。もちろん、人の考えは人それぞれだから、この「日本魚類学会」のすべての見解に賛同できる人ばかりじゃないと思うし、あたしとしても、「?」の部分もあった。だけど、このリリースは、あくまでも、「日本魚類学会としては、こういった結論に達したので、新しく定めた標準和名の普及にご協力ください」っていう「お願い」のリリースであって、何の強制力もないものだ。だから、このリリースに従わなくて、今まで通りの呼び名を使い続けても、別に、「事実無根だから名誉毀」で訴訟する」なんて脅されることもない(笑)

で、どんなお魚の名前が、どんなふうに改名されたのかと、新しい名前の由来を簡単に書いてみる。


「クロメクラウナギ」→「クロヌタウナギ」
1998年より「ヌタウナギ」が新参異名とされているので、ここではその見解に従った。

「オシザメ」→「チヒロザメ」
深海性のサメであることから、深い海を表すチヒロ(千尋)を採用。

「メクラアナゴ」→「アサバホラアナゴ」
種名はホラアナゴ科魚類としては、比較的生息深度浅いことによる。

「セムシウナギ」→「ヤバネウナギ」
日本産本科魚類はヤバネウナギ1種のみであることから、科名についてもこの名称を採用。

「バカジャコ」→「リュウキュウキビナゴ」
本種は日本では沖縄県のみに分布することから。

「テナシハダカ」→「ヒレナシトンガリハダカ」
胸びれがないことから。

「セムシイタチウオ」→「セダカイタチウオ」
他属に比較して体高が高いことから。

「イザリウオ」→「カエルアンコウ」
本亜目魚類の形態がカエルを連想させ、また英名がfrogfishであることから本科の基幹名としてカエルアンコウを採用。

「セムシクロアンコウ」→「クロアンコウ」
日本産本属魚類は本種のみであることから、属の既存和名を採用。

「セムシカサゴ」→「ニライカサゴ」
2004年に改名済み。

「セッパリホウボウ」→「ツマリホウボウ」
近縁種に比較して前後に短縮した体形をしていることから。

「セッパリカジカ」→「ヤマトコブシカジカ」
日本産本属2種のうちの他種コブシカジカの名称を属名に採用。種和名は日本海に固有であることから。

「セッパリサギ」→「セダカクロサギ」
同属他種に比較して体高が高いことによる。

「ミツクチゲンゲ」→「ウサゲンゲ」
ウサは兎の意。顔つきの印象から。

「アシナシゲンゲ」→「ヤワラゲンゲ」
体が寒天質で柔らかいことから。

「テナシゲンゲ」→「チョウジャゲンゲ」
チョウジャは長者の意。属の学名の由来であるロシアの碩学アンドリアシェフに対する褒詞(ほうし)。

「セムシダルマガレイ」→「オオクチヤリガレイ」
近縁属のヤリガレイ属やヒナダルマガレイ属に比べて口が大きいことから。

「セッパリハギ」→「セダカカワハギ」
同属他種に比較して体高が高いことから。


‥‥で、51種類もないじゃん‥‥ってことに関しては、「イザリウオ」の中にも、「ボンボリイザリウオ」とか「クマドリイザリウオ」とか「ウルマイザリウオ」とか、他にもたくさんの種類があって、それらがみんな、「ボンボリカエルアンコウ」とか「クマドリカエルアンコウ」とか「ウルマカエルアンコウ」ってふうに改名になったってワケだ。それで、この改名の一覧を見て、あたしが最初に思ったのは、果たして、これらのお魚の名前を見てみて、すぐにどんなお魚なのかパッと分かった人がどれくらいいるんだろうか?‥‥ってことだ。たとえば、「メクラアナゴ」や「セムシウナギ」なら、ハッキリとは分かんなくても、アナゴやウナギの一種だから、ニョロニョロしてるってことくらいは想像できる。だけど、「テナシハダカ」とか「アシナシゲンゲ」とかって言われても、想像もつかない人も多いと思うし、それどころか、これがお魚の名前だなんて分かんない人も多いと思う。

だから、さかなクンみたいな特殊な人ならともかく、一般のほとんどの人たちは、もともと、こんなお魚の名前なんか知らないワケで、当然、日常生活でも使わない。「あなた、今夜のおかずはテナシハダカの煮つけでいいかしら?」なんて言わない。つまり、ハッキリと言わせてもらえば、「現代的に不適切な差別用語を使ってるお魚の名前を改名しよう」っていうスタート地点からして、ちょっとズレてるってことになる。

それに、あたしの場合は、「イザリ」や「メクラ」や「セムシ」が差別用語だってことは知ってたけど、「セッパリ」が差別用語だなんて知らなかった。先週の「釣りロマンを求めて」で、潮来(いたこ)のプレスリー、こと、村田基(はじめ)が、ロシアのオハタ川でシルバーサーモンを釣ってたけど、背中が盛り上がって真っ赤な体色になったサーモンを釣り上げて、次のように説明してた。


「赤くなりセッパリが出てくると遡上体勢です」

「ものすごいセッパリが出てくるんですね~」

「セッパリの出たサーモンのことをセッパリマスとも呼びます」


この他にも、村田基は、番組の中で、何度も「セッパリ」って言葉を連発してたけど、そしたら、村田基は、公共の放送で、差別用語を連発してたってことになる。だけど、あたしは、ぜんぜん不快に感じなかったし、村田基にしたって、差別用語を使ってるような認識なんて感じられなかった。逆に、こんな言葉を差別用語だって大騒ぎして、「セッパリホウボウ」や「セッパリカジカ」の名前を変えるような人たちの感覚のほうが、神経質すぎるように感じる。だから、あたしは、どうせ改名するんなら、こんな誰も知らないようなマニアックなお魚の名前を改名するよりも先に、「バカ貝」とか「アホウ鳥」とかの名前を改名するほうが先だと思う。

たとえば、「バカ貝」を辞書で引くと、「赤い足を殻から出した様子を、馬鹿が舌を出した姿に見立ててこの名がある」って解説してある。つまり、この名前は、貝のことをバカにしてるだけじゃなくて、馬鹿のこともバカにしてるってワケだ。まあ、バカにされるから馬鹿なワケで、馬鹿をバカにすることが悪いことなのかどうかは分かんないけど、破綻した北海道拓殖銀行のキャラクター、サンリオの「みんなのたあ坊」みたいに、口を開けてただけで、その表情が知的障害者を連想させるとかって難癖をつけられて、廃止に追い込まれたようなケースもあるんだから、この、「馬鹿が舌を出した姿に見立てて」ってのも、どっかの団体から文句を言われそうな気がする。

そんな「バカ貝」だけど、食べると美味しいし、食べる場合には「アオヤギ」って呼ばれてる。これは、良く、「バカ貝」の別名が「アオヤギ」だとカン違いしてる人がいるけど、それは間違いで、正確に言うと、食用にする上での「バカ貝の身」のことを「アオヤギ」って呼ぶだけだ。だから、海にいる状態の生きてる「バカ貝」のことは、「アオヤギ」とは呼ばない。つまり、ニポン中から「バカ貝」って呼ばれてる気の毒な貝は、殻から身を取り出されて、人間に食べられる段階になって、初めて、この不愉快な名前から脱却できるっていう皮肉な運命を背負ってるのだ。

だけど、もっと気の毒なのは、やっぱり、「アホウ鳥」だろう。「アホウ鳥」は、国際保護鳥で、特別天然記念物で、その上、絶滅危惧種にまで指定されてんのに、それでも、「アホウ」って呼ばれてる。関西の人だったら、「アホウ」って呼ばれてもそんなにムカッとしないだろうけど、あたしは東京生まれの東京育ちだから、「バカ貝」よりも、遥かに酷いネーミングだと思う。

‥‥そんなワケで、ニポン人のほとんどの人が知ってると思う「バカ貝」や「アホウ鳥」の名前をそのまんま東にしといて、誰も知らないような「テナシハダカ」や「アシナシゲンゲ」の名前を改名するってのも、それこそ「片手落ち」みたいな感じだけど、こんなことを「日本魚類学会」に対して言ったところで、きっと、「それは日本貝類学会と日本鳥類学会に言ってください」とかって言われちゃうだろう。そんな学会があるかどうかは知らないけど。

どっちにしても、「バカジャコ」を「リュウキュウキビナゴ」に改名したところで、「バカ貝」を改名しなきゃ意味ないと思うし、「イザリウオ」を「カエルアンコウ」に改名したところで、ニポンには、他にもたくさん、「イザリ」って言葉を使ったものがあるんだから、ほとんど意味がないと思う。たとえば、足で操作するハタオリ機で、「イザリバタ」ってのがある。この「イザリ」も、漢字で書けば「躄」、つまり、足の不自由な人を指す言葉だ。他にも、「躄松(いざりまつ)」っていう松があって、これは、最近では、「這松(はいまつ)」って呼ぶようになってるから、きっと、「日本松類学会」か何かが改名したんだろう(笑)

だけど、どこの学会が提唱しようとも、たとえ創価学会が公明党の議員を使って根回しをしようとも、絶対に改名できないものがある。それは、歴史のある固有名詞だ。たとえば、歌舞伎や浄瑠璃(じょうるり)の演目として有名なものに、「箱根霊験躄仇討(はこねれいげんいざりのあだうち)」ってのがある。どんなストーリーなのかっていうと、時は天正、今から400年ちょっと前のこと、自分の父(一説には兄)の仇討ちをするために、仇の侍、佐藤剛助を探しまわってる飯沼勝五郎って男がいた。だけど、来る日も来る日もあちこちを探し回るんだけど、どうしても佐藤剛助を見つけることができなかった。

そんなある日、勝五郎は、初花(はつはな)っていう女性と知り合い、恋に落ちて、夫婦になった。それで、勝五郎は、幸せな日々を送りつつも、父の仇討ちを忘れたワケじゃなかったんだけど、突然、原因不明の病気にかかり、足腰の立たない体になってしまう。それで、勝五郎は、「こんな体では仇討ちができぬ」って苦悩するんだけど、恋女房の初花が、「私があなたの手足となって佐藤剛助を探し出し、きっとお父上の仇討ちをします」って言って、勝五郎を「いざり車」に乗せて、仇討ちの旅に出る。

この時点で、勝五郎は、「いざり勝五郎」って呼ばれてて、この演目を知ってる人なら、みんな、「飯沼勝五郎」じゃなくて、「いざり勝五郎」として認識してる。で、旅に出た2人は、苦難の旅路の果てに、とうとう箱根山で、仇の佐藤剛助を見つけることができた。だけど、勝五郎は、立ち上がることも歩くこともできないから、愛するダンナに代わって、初花が、白装束と白ハチマキ姿で、小太刀を抜いて佐藤剛助に立ち向かった。


「それなる御仁は佐藤剛助に相違あるまい! 私は奥州棚倉の生まれ、飯沼勝五郎の妻、初花! 夫に代わってお父上の仇を討ちまする! さあ尋常に勝負!勝負!」


だけど、相手はお侍だ。勝五郎の身の回りの世話をしてた筆助も、文字通り、初花の助太刀をしたんだけど、それでも勝てるワケがない。


「何をこしゃくな! 返り討ちにしてくれる!」


そう叫んだ佐藤剛助は、サッと刀を抜くと、アッと言う間に、初花と筆助を斬り捨ててしまった。「いざり車」に乗ったまま、自分は動くこともできず、父の仇の佐藤剛助に、愛する初花や子分の筆助までも目の前で斬られてしまった勝五郎は、怒りが頂点に達し、天に両手を広げて叫んだ。


「地球のみんなぁ~! オラに元気を分けてくれぇ~!」


そうすると、不思議なことに、勝五郎の体は、少しずつ青白く輝き出して、ナナナナナント! スックと立ち上がることができたのだ! そして、勝五郎は、今まで歩くことができなかったのがウソのように、「いざり車」から飛び降りて、刀を抜きながら佐藤剛助に向かって猫まっしぐら! そして、エヴァンゲリオンのマゴロク・ナントカ・ソードみたく、父と初花と筆助の憎っくき仇、佐藤剛助のATフィールドをぶち破り、ミゴト、仇討ちのミッションを完遂することができたのだ!


‥‥って、途中から、ドラゴンボールとかエヴァンゲリオンとかが混じっちゃったけど、結局は、箱根の権現さまの霊験によって、勝五郎は立ち上がることができたってワケで、それも、勝五郎のために、自分を犠牲にしてまで尽くした初花の愛と、主人のために忠誠を尽くした筆助の心があったからこそってワケだ。だから、このお話は、「仇討ちの美談」として、すごく有名になった。そして、今でも、箱根に行けば、仇討ちの場所はちゃんと残ってるし、箱根の鎖雲寺(さうんじ)には、勝五郎と初花のお墓が並んで建ってる。

‥‥そんなワケで、あたしは、いくら「日本魚類学会」が「イザリウオ」のことを「カエルアンコウ」って名前に改名しようが、この「箱根霊験躄仇討」を改名することはできないと思う。そして、この演目の中に出て来る「いざり」って言葉をすべて別の言葉に置き換えることもできないと思う。今の言い方なら、「足の不自由な人」って言うんだろうけど、「いざり勝五郎」のことを「足の不自由な勝五郎」、「いざり車」のことを「足の不自由な人用の台車」だなんて言ったら、歌舞伎も浄瑠璃もできなくなっちゃう。それに、あたしの感覚だと、こんな言い方をするほうが、ヨケイに不適切なような気がする今日この頃なのだ。


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