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2007.03.16

春の風邪

風邪をひいて、3日ほど、動けなかった。それも、ものすごく重い風邪みたいで、動けるようになった今でも、まだすごく苦しい。この前、全身が冷たくなって、体が動かなくなったのは、別に苦しくはなかったから、寝ながらいろんなことを考えたりする余裕があった。だけど、今回は、ただの風邪だと思うんだけど、今までの風邪の中でもトップクラスの苦しさで、ようやくパソコンの画面を見れるようになった今でも、すごく苦しい。全身が寒くてブルブルと震えが止まんないのに、目玉は熱で膨張してるみたいな感じで焼けるようにヒリヒリしてるし、頭が割れるほどガンガン痛いし、全身の間節と背骨がミシミシ鳴ってるみたいに痛いし、とにかく、全身がすべてが苦しい。さらには、セキがおさまってる時はいいんだけど、いったんセキが出始めると、ずっと止まんなくなって、そのセキが、頭とか間節とかに響いて何倍も痛くなる。あまりにも痛くて、苦しくて、涙がいっぱい出て、気が遠くなって来る。

 

だから、今も、そんな状態で書いてるから、ここまで書くだけでも、いつもの何倍も時間が掛かってる。そして、全身が苦しいのも困るけど、脳みそがちゃんと動いてくれないのが何よりも困る。いつもなら、頭で考えながらキーボードを打ってるから、指がキーを打ってる瞬間には、脳みそはその先のことを考えてる。たとえば、頭が「Aについて」を考えて、指が「Aについて」を打ち始めたら、脳みそは、その先を「B」にするか「C」にするか「D」にするかってことをシミュレーションして、その中で1番いいものを選んでる。だけど、今の状態だと、先のことどころか、今のことを考えてる余裕もない。5分打ったら10分休む‥‥って感じの繰り返しで、横になって目をつぶって休んでる間は、少しはモノを考えられるんだけど、目を開けてキーボードを打ち始めると、苦しくて何も考えられなくなる今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?

 

 

‥‥そんなワケで、あたしは、風邪をひいちゃったワケだけど、それが、思ったよりも重くて、今も苦しんでる。それで、普通の風邪の場合なら、寒気がしたり、クシャミが出たりって、何らかの前ブレがあるハズなのに、今回は、何もなかった。お布団に入って寝るまでは、別にどこもおかしくなかったのに、何時間かしたら、苦しくて目が覚めた。ノドがカラカラで、熱っぽくて、寒気がして、セキが出て、頭が痛くて、風邪の症状がいっぺんにドドーンと起こってた。だから、何の対応もしてなくて、気づいた時には、ヒドイ状態になってたってワケだ。

 

何しろ、ノドがカラカラなのに、自力でお水を飲みに行くこともできなかったし、何にもできなくて、ホントにマイッタ。あたしの気持ちとしては、1番欲しいものが「シーシーレモン」、2番目が「ノド飴」、3番目が「アイス」で、この3つを誰かが買って来てくれて、口に入れてくれたら、どんなに嬉しいことか‥‥って思い続けながら、丸1日くらい動けなかった。それで、もう脱水症状になりそうな限界のとこで、思いきってベッドから降りてみた。そしたら、天井と壁がグルグル回って、キッチンまで行くのが大変だった。

 

そして、そんな状態が2日ほど続いて、何とかパソコンが使えるようになったのが、「今」ってワケだ。だけど、今でも苦しいのはおんなじで、全身がミシミシ鳴ってるのと、雲の上を歩いてるみたいにフワフワしてるのと、セキが出始めると頭が割れそうに痛くなるのは変わらない。それで、あたしは、ここ何年か、寝込むほどの風邪なんかひいたことがなかったから、「風邪ってこんなに苦しいもんだっけ?」って思った。冬の本格的な風邪と比べると、春の風邪とか夏の風邪って、ナニゲに軽い感じがするからだ。俳句でも、春の風邪を詠んでる句って、軽いイメージのものが多い。

 

 

 布団着て手紙書くなり春の風邪  正岡子規

 

 うたかたの記を読み返す春の風邪  山内年日子

 

 鉛筆を短くもちて春の風邪  岡田史乃

 

 また橋に戻るあやとり春の風邪  森久子

 

 

手紙を書いたり、日記を読み返したり、あやとりをして遊んだりなんてのは、あたしみたいに苦しんでる本格的な春の風邪じゃなくて、「ちょっと風邪気味」って程度の話だろう。あたしの場合は、目玉が破裂しそうなほど痛くて、幻覚が見えたり、変な耳鳴りがしたりで、目を開けることもできないほど苦しかったんだから、ぜんぜんレベルが違う。どっちかって言うと、こんな感じだ。

 

 

 春の風邪眼の奥破片ばかりなり  岡本政雄

 

 春の風邪まぶたのうらに蝶無数  伊藤凍魚

 

 太陽の黒点増ゆる春の風邪  小澤實

 

 真つ白な犀が来てゐる春の風邪  齋藤愼爾

 

 

サスガに、あたしは、白いサイは登場しなかったけど、目玉が焼けるように痛かった時には、まぶたの裏にギラギラの粒子みたいなのが渦巻きになって見えた。それで、冷たくなってる手の甲をまぶたに乗せると、少しはラクになるんだけど、ドクン、ドクンていう心臓の鼓動が、目玉から手の甲に伝わって、そのたびに目玉に圧力が掛かるみたいで、ギラギラの渦巻きの色が変わってチョウチョの群みたいだった。

 

それにしても、昔から、シンナーを吸ってラリッちゃうと「ピンクのゾウ」がやって来るとか、徹夜続きのマンガ家が限界に達すると「白いワニ」がやって来るとか、外国人の講師がマリファナ吸いながら授業をやってると「ピンクのノバウサギ」がやって来るとか、いろいろと言われてるけど、たかが風邪でも「白いサイ」がやって来るなんて、「春の風邪」って、シンナーの幻覚や徹夜続きのマンガ家みたいにヘビーな状況なんだろうか?

 

 

 鴎ひとつ舞ひゐて春の風邪心地  安住敦

 

 砂浜に日あたれば憂き春の風邪  山口誓子

 

 どんよりとまんばうのゐる春の風邪  奥坂まや

 

 右脳のうつらうつらと春の風邪  野木桃花

 

 

最初の句でカモメが1羽飛んでるのは、「舞ひゐて」って言ってんだから、夢の中だとか幻覚だとかの話じゃなくて、窓の外に実際に飛んでる本物のカモメのことだ。2句目みたく、風邪をひいてるってのに、ノンキに海岸をお散歩してるような人もいるんだから、カモメが飛んでるくらい、たいしたことじゃない。だけど、サスガに、3句目みたく、巨大なマンボウが眼の前に現われたら、これは、「非現実的だから夢か幻覚」‥‥って感じる人も多いだろう。

 

でも、たとえば、風邪気味で具合が悪かったのに、楽しみにしてたデートだったから、無理して出かけてって、水族館に行って、巨大なマンボウが泳ぐ水槽を見ているうちに、だんだんに気が遠くなって来た‥‥って読むこともできる。つまり、大切なことは、それが「現実なのか夢なのか」ってことなんかじゃなくて、「そこにマンボウがいた」ってことなのだ。それが、本物のマンボウであろうと、熱のためにうなされて見た幻覚のマンボウであろうと、どっちでもいいのだ。だって、本物のマンボウだろうと、幻覚のマンボウだろうと、風邪をひいた作者の眼の前にどんよりと存在してたことはマギレもない事実であり、それを確認したのが、本人の「右脳」なんだから。

 

‥‥そんなワケで、「右脳」に幻覚が見えたりするのも、高熱が出る春の風邪ならではってワケで、そのオカゲで、ふだんは会えない珍しい生き物に会えたりするんだけど、そこまで重症じゃなくても、風邪気味だと、世界がカラフルになって来る。

 

 

 もも色の薬まろばせ春の風邪  森本節子

 

 うがひぐすりの薄紫や春の風邪  百瀬虚吹

 

 あかあかと灯して春の風邪ごこち  西山誠

 

 春の風邪夢まぼろしもセピア色  石田静

 

 深海の蒼さと思う春の風邪  和泉真樹

 

 春の風邪会議に青き海見えて  神尾季羊

 

 病にも色あらば黄や春の風邪  高浜虚子

 

 

4句目は、春の風邪は「深海のような蒼さ」だと言い、5句目は、風邪をひいているのに無理して会議に出たら、会議中に「青き海」が見えて来たってんだから、そろそろヤバイ状態だろう。そして、高浜虚子は、「病気に色があるんなら、春の風邪は黄色だ」ってトドメを刺してる。虚子にそう言われちゃうと、白いサイがやって来るのも、マンボウがどんよりと迫って来るのも、「黄色い病気」ならジンジャエールだって思えて来る。ただ、あたしの場合は、そんなノンキなことは言ってらんないほど苦しかったし、今でも、それなりに苦しんでるので、次の句のほうが共感できる。

 

 

 春の風邪土星に輪あること思ふ  掛井広通

 

 音は皆水の中より春の風邪  能勢京子

 

 七十にちときつ過ぎる春の風邪  上原一郎

 

 安全ピン床に広がる春の風邪  木村みかん

 

 水槽をつつくささ魚春の風邪  坂ようこ

 

 動くたび骨が鳴るなり春の風邪  田中藤穂

 

 

あたしが、1番共感できたのが、最後の句だ。ナニゲに、子規の「柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺」を思い出しちゃう感じの句だけど、あたしは、ホントに、この句のように、全身の関節がミシミシ、メリメリって鳴ってて、ちょっと動くだけでも、悶絶するくらいの激痛が走る。そして、動かないようにジッとしてても、セキが出始めたら、もう終わりだ。ポロポロ泣きながら、ひたすら激痛に耐えながら、セキがおさまるのを待つしかない。

 

他にも、「春の風邪をひいて夢の中で恋人に会った」だの、「春の風邪をひいて静かに雨音を聞いている」だの、「春の風邪をひいて買い物に出かけた」だの、いろんな句があるんだけど、自分が実際に春の風邪をひいてみたら、こんなに苦しい状態で、恋人だの雨音だの買い物だのなんて、言ってらんなくなると思う。ホントに、一度でも自分が春の風邪をひいて苦しんだことがあれば、こんなキレイゴトなんか言えるハズがない。あたしですら、こんなに大変な思いをしてるんだから、これがお年寄りだったら、「七十にちときつ過ぎる春の風邪」ってのが本音の言葉であって、間違っても、恋人だの雨音だのだなんて出て来るワケがない。

 

‥‥そんなワケで、ここまで書いて来て、あまりの苦しさにフト考えてみたんだけど、もしかしたら、あたしって、春の風邪なんてノンキな病気じゃなくて、肺炎とかインフルエンザとかかも?って思えて来た。最近は、鳥インフルエンザも人間に感染するそうだし、宮崎県知事になった性犯罪者が、無責任にインフルエンザの鶏肉をあちこちに配って歩いてるみたいだから、そこから感染した恐れもある。だから、月曜日まで様子を見ても良くならなかったら、川崎のマツモトキヨシに1000円以内のお薬を買いに行こうと思う今日この頃なのだ。

 

 

 春の風邪ならいいんだけども不安  きっこ

 

 

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