ジュゴンの気持ち
多摩川まで、思いっきりテレテレと寄り道しながら歩いて3分、ワキ目も振らずに競歩みたくスタスタと歩いて1分、頭の中をカラッポにして欽ちゃん走りで30秒‥‥って感じの世田谷区に住んでるあたしとしては、今だと「松葉杖で10分」て感じなんだけど、それでも、多摩川は子供のころから親しんで来た大好きな川だ。中学生、高校生のころは、数え切れないほどジャイアンツの練習を見に行ったりもした。あたしは、みんなに「え~?」って言われてたけど、当時のジャイアンツのピッチャーの中では、桑田が好きだった。「投げる不動産屋」とか揶揄されても淡々と投げ続ける姿勢とか、バツグンのコントロールで大勝負を制した時の小さなガッツポーズとか、ピッチャーのクセにバッティングセンスもいいとことか、すごく好きだった。
それで、あたしは、自転車に乗って、多摩川の練習場に通ってたんだけど、当時の練習場の前の土手沿いに「グランド」って名前のおでん屋さんがあって、ジャイアンツの練習日には、見に来たファンやスポーツ紙の記者で混雑してた。おでん屋さんて言っても、おでんの他にもお菓子とかジュースとかいろいろと売ってる売店みたいな感じなんだけど、みんなが利用してた。それで、桑田が好きだったあたしは、「グランド」のおばちゃんに、「桑田さんも来るんですか?」って聞いたことがある。そしたら、やさしいおばちゃんは、「桑田さんは良く来るよ。桑田さんはコーヒーガムが好きで、いつも必ずコーヒーガムを買ってってくれるよ」って教えてくれた。
それで、あたしは、ロッテのコーヒーガムを買って、いつでも桑田に会った時に渡せるように、学校のカバンの中に入れて持ち歩いてた。そして、その次の練習日の時に見に行ったら、ラッキーなことに桑田が来てたから、あたしは桑田のBMWのとこで待ってたんだけど、そしたら、グラウンドのほうからものすごい打球が飛んで来て、何台か先に停めてあった藤田監督のベンツに激突した。藤田監督のシルバーのベンツは、左後ろの窓の後ろの部分のピラーって言うのかな?‥‥そこがミゴトにボールの形に凹んだんだけど、その玉を打ったのが、そのころ不調だった原だったから、やさしい藤田監督は、凹んだ愛車を見てもぜんぜん怒らなくて、逆に笑顔で、原のバッティングを褒めてた。あたしは、そんな藤田監督と原とのやり取りを目の前で見てたから、大好きなジャイアンツがますます大好きになっちゃった今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、あたしは、無事に桑田にコーヒーガムを渡すことができて、握手もしてもらって、サインもしてもらったんだけど、選手たちの車を停めてる場所は立ち入り禁止だったから、見張り役みたいなオジサンから怒られちゃった‥‥なんて、リトル胸がキュンとする思い出なんだけど、そんなあたしも、今じゃ、タビ重なるナベツネのゴーマンな独裁政治と、原監督のセンスの無さにイヤケがさして、数年前に、ついにジャイアンツファンを辞めたってワケだ。だけど、愛する多摩川は、いつもおんなじにサラサラと流れてるから、多摩川を見に行くたびに、当時のジャイアンツのこととか、土手で親友と2人で大泣きしたこととか、第3京浜の橋の下でバンド仲間とケンカしたこととか、いろんなことを思い出す。
だから、あたしにとって多摩川は、やっぱり「故郷の川」ってワケで、どんなに悲しいことがあっても、どんなにイヤなことがあっても、土手に座ってキラキラ輝く流れを眺めてると、いつの間にか元気になって来る。で、多摩川がこんなに大好きな上に、最近は辺野古のジュゴンにも注目してるあたしは、5月11日の読売新聞の次の記事に、目がクギヅケになった。
「ジュゴンの仲間・海牛の全身化石、新種か…東京・多摩川」(5月11日)
ジュゴンなどの仲間の大型海牛(かいぎゅう)類の全身骨格化石が、東京都狛江市を流れる多摩川の約120万年前の地層から発見された。化石は、子供ながら全長5~6メートルと推定され、約200年前に絶滅した史上最大のステラー海牛に進化する途中の新種の可能性がある。大型海牛の化石は北海道など寒冷地で主に見つかり、関東の都市圏での発見は異例だ。化石は三鷹市の私立明星学園高教諭、薬師大五郎さんと小林英一さんが昨年9月、教材研究のため鉱物採取をしようと多摩川に入って発見。川底に大きな動物の骨がいくつも露出しているのを確認した。現場は、世田谷区や川崎市にも近く、貝などの化石が見つかって、地元の子供たちも立ち入る場所。化石は川底に露出したまま、これまで大型哺乳類のものとは気づかれずに残っていた。薬師さんらは休日などを利用して現地に通い化石を掘り出した。
‥‥そんなワケで、もしもこの化石が、ステラーカイギュウに進化する過程の新種だとしたら、当然、世界的な大発見てことになるし、ステラーカイギュウだとしても、これまた大発見だ。だって、ステラーカイギュウは、北海道よりもずっと北の「冷たい海にしか住めないカイギュウ」なんだから、その化石が東京で発見されたってことは、いろんな意味で地球の歴史や生物の進化を解明するヒントになるからだ。
ステラーカイギュウは、今から250年以上前の1741年の11月に、ロシアの探検家、ビータス・ベーリングによって発見された。当時、ベーリング御一行様が乗る探検船、セントピーター号は、太平洋の一番北にあるアリューシャン列島の辺りを進んでたんだけど、カムチャッカ沖500kmのとこにある無人島で座礁して動けなくなっちゃった。それで、今だったら、ヘリコプターとかですぐに助けに行くこともできるんだけど、当時は助ける手段がなくて、とにかく、この島で行き抜いてくしかなかった。つまり、ベーリング御一行様は、氷に囲まれた孤島で、まずは越冬しなきゃなんなくなったってワケだ。
で、当時は、長期保存できる栄養食品や食料とかもなかったから、多くの乗組員たちが、ビタミン不足による壊血病にかかっしまい、次々と亡くなって行った。そして、座礁してから1ヶ月後の12月には、隊長のベーリングも亡くなってしまった。著名な探検家だったベーリングが最期を迎えたってことで、この無人島は、後に「ベーリング島」って呼ばれることになるんだけど、ベーリング亡きあと、残りの乗組員たちを救ったのが、この船に乗っていたドイツ人の医師、ゲオルグ・ステラーだった‥‥ってとこで、賢明なる「きっこの日記」の愛読者諸兄は、すぐに「このステラー博士の名前が、ステラーカイギュウの名前になったんだな」って気づいたと思うけど、卓球の愛ちゃんも「サー!」って叫んじゃうほど、ピンポンな推測だ。
何名もの死亡者を出したとは言え、多くの乗組員たちが10ヶ月にも及んだ厳しいサバイバル生活を乗り越えられたのは、ステラー博士の的確な指示があったからだ。医師というだけでなく、自然科学の学者でもあったステラー博士は、この島の周辺を調査してたんだけど、ある日、島の近くを泳ぐ巨大なカイギュウの群を発見した。それは、1頭が7~10mもある大きさで、今で言えば、大型の乗用車2台をタテに並べたほどもある。それで、その巨大なカイギュウは、浅瀬の岩についた海藻などを食べていておとなしそうだったので、ステラー博士はボートで近づいてみたんだけど、まったく逃げる気配もなく、モグモグと海藻を食べ続けてた。そして、食料が無くなって困ってた乗組員たちは、人間が近づいてもまったく逃げないこのカイギュウを捕獲して、飢えをしのぐことができ、生き残ることができたってワケだ。
つまり、ステラーカイギュウを発見したのは、その名の通り、ゲオルグ・ステラー博士だったってワケで、それは、ベーリング隊長が亡くなったあとのことだ。だから、最初に、「ステラーカイギュウは、ビータス・ベーリングによって発見された」って書いたけど、これは、「ビータス・ベーリングの探検によって発見された」って意味だ‥‥なんてフォローもしてみつつ、ステラー博士と乗組員たちは、ステラーカイギュウのオカゲで食料に困らなくなり、壊れた船の材料などを使って新しい船を造り、やっとのことでロシアへの生還を果たした。この時も、ステラーカイギュウの肉や脂を保存食料として、ロシアまでの長い船旅を乗り切った。
そして、ロシアに戻ったステラー博士は、さっそく、このステラーカイギュウのことを報告したんだけど、1頭が5~12トンもある上に、その肉が子牛の肉のように美味しく、毛皮も利用できるって話を聞いた人たちは、一攫千金を求めて、「ステラーカイギュウ狩り」へと乗り出しちゃった。そして、近くに船や人間が近づいてもまったく警戒しないことから、巨大なステラーカイギュウたちは次々と人間たちのライフルやモリで殺されて、アッと言う間に狩り尽くされちゃった。
‥‥そんなワケで、1741年に発見されたステラーカイギュウは、欲深い人間の手によって、わずか27年で狩り尽くされて、1768年に絶滅させられたのだ。その後も、どこかでステラーカイギュウに似た動物を見たっていう報告もあるので、一説には、「まだどこかに少数が生存してるかもしれない」って言われてるけど、どの目撃報告も信憑性が低くて、一般的には「絶滅した」って認識されてる。ステラーカイギュウは、一夫一婦制で、妊娠期間が1年と長い上に、1回の出産で1頭の子供しか産まない。つまり、1組のカップルからは、1年に1頭しか子供が生まれないから、なかなか数が増えなかった動物で、それを欲に目がくらんだ人間が乱獲しちゃったから、アッと言う間に絶滅させられたってワケだ。
ステラーカイギュウが絶滅させられたことによって、この地球上に生息してる「カイギュウ目ジュゴン科」の動物は、マナティーとジュゴンだけになった。マナティーは、フロリダ半島に生息してるアメリカマナティー、アフリカの西側の大西洋岸に生息してるアフリカマナティー、アマゾン川に生息してるアマゾンマナティーの3種類で、ジュゴンは1種類だけだ。それぞれの個体数は全世界で1000頭から3000頭って言われてて、当然、絶滅危惧種だ。そして、中でも絶滅の危機に瀕してるのが、生息域の海で、人間が「開発という名の破壊」を続けてるアメリカマナティーで、現在、毎年数百頭ずつが死に続けてる。アメリカマナティーの研究をしてる海洋生物学者は、「このままだと、あと10年以内には絶滅する」って言ってる。そして、そのアメリカのイイナリになって、かけがえのない辺野古の海に人殺しのための基地を作り、ジュゴンを絶滅させようとしてるのが、今のニポンの政府なのだ。
沖縄でも、昔は、ジュゴンを捕獲してた。沖縄が、まだニポンじゃなくて、琉球王国だった時代には、ジュゴンは王様に献上する大切な貢物だった。琉球王国では、ジュゴンは「ザンノイオ」って呼ばれてて、海の彼方のニライカナイから、ジュゴンの背中に神様が乗ってやって来るって言われてたのだ。今、城みちるさんは、イルカの代わりにキャンピングカーに乗って、全国の老人ホームなどを無料で回って、お年寄りたちに夢と希望を与えるミニコンサートをしてるけど、琉球王国では、ニライカナイからやって来るジュゴンこそが、作物の豊穣や漁の安全を意味する大切な使者だったのだ。だから、住民たちが私利私欲のために乱獲してたワケじゃなくて、必要最小限のものを神様に感謝して捕獲、献上してたってワケだ。つまり、沖縄の人たちにとって、ジュゴンとは神様の使いであり、ジュゴンの住む海を守り続けて来たからこそ、琉球王国から続く沖縄の歴史が守られて来たってことになる。
‥‥そんなワケで、おんなじ「カイギュウ目ジュゴン科」で、おんなじ草食動物であっても、レタスでもニンジンでも何でも食べるマナティーと違って、アマモやアジモなどの決まった海藻しか食べないジュゴンは、人間が飼育することは極めて難しい。ニポンでは、世界で唯一、鳥羽水族館がペアのジュゴンの長期飼育に成功してるけど、オスの「じゅんいち」とメスの「セレナ」の食べるアマモは、韓国から空輸してる。そして、1頭が1日に30kgものアマモを食べるので、そのエサ代は、年間に3600万円も掛かってる。このように、エサを確保するだけでも莫大なお金が掛かる上に、音や光などに敏感で、とても神経質なジュゴンは、人間が飼育するのは極めて難しい。現に、世界中で30以上の飼育例があるけど、すべて短期間で死なせてしまってる。
つまり、野生のジュゴンを絶滅させないために、何よりも大切なことは、そのエサ場である海域を守ることだ。辺野古の海の海底には、ジュゴンが海藻を食べたあとにできる筋、「ジュゴン・トレンチ」が数多く見られ、この海がジュゴンにとっての大切なエサ場になってることが分かる。そして、鳥羽水族館の企画室長、中村元さんは、「人魚の微熱」(パロル舎)という著書の中で、ジュゴンにとってエサ場の海を守ることがどれほど大切なのかを訴え、こう言っている。
「逆に言えば、ジュゴンを絶滅させるなら、その狭い海草の茂る場所を破壊してしまえばいい。‥‥それはとても簡単なことではないか?それほど海牛類というのは弱く、限られた場所にしか生息しない動物なのだ」
そして、まさに、その場所に、人殺しのためのアメリカ軍の滑走路や巨大な海上へリポートを作ろうとしてるのが、今のニポンの政府なのだ。音や光に敏感なジュゴンの生息域の上を戦闘機や爆撃機が飛び交ってるだけでも言語道断なのに、そのエサ場を埋め立てて基地を作るなんて、ジュゴンだけでなく、地球にとって取り返しのつかないことになる。ジュゴンが絶滅するだけじゃなく、他にも数多くの生き物が、あたしたちの兄弟である「地球の仲間たち」が、次々と絶滅して行くのだ。
ステラーカイギュウを始めとして、人間の欲や都合によって絶滅されられた動物は、他にもたくさんいる。モーリシャス島などにいたドードー鳥も、北アメリカのリョコウバトやヒースヘンも、ニューファンドランド島のオオウミガラスも、すべて、その肉やタマゴ、羽毛などがお金になったため、欲に目がくらんだハンターたちに乱獲され、短い期間で絶滅させられた。もちろん、このニポンにも、人間によって絶滅されられた動物がいる。たとえば、ニホンアシカだ。世界的に見てもニポンの領土であることは歴然としてるのに、口だけ番長のアベシンゾーが見て見ぬふりを続けてる竹島には、かつて、数多くのニホンアシカが生息してた。だけど、ニポンの漁師たちによって絶滅させられた。
他にも、「危険な動物」だってことで、政府が懸賞金まで出して絶滅させたのが、タスマニアやオーストラリアに分布してたフクロオオカミだ。その肉や毛皮を売りさばくための殺戮も、懸賞金を目当てにした殺戮も、どっちにしたって、欲に目がくらんだ人間の残酷な行為であることに変わりはない。そして、そういった人間の欲が、かけがえのない「地球の兄弟たち」を絶滅させ続けて来たことは事実なのだ。
‥‥そんなワケで、今、このニポンでは、60年前の愚かな戦争を繰り返すために、200年前に絶滅させられたステラーカイギュウの弟にあたるジュゴンが、また、戦争を商売にしてる一部の愚かな人間の欲のために、絶滅の危機を迎えてる。それも、200年前は、その動物の肉や毛皮を売りさばくための乱獲だったけど、今回は、ベトナム戦争やイラク戦争で何万もの人たちを殺して来た戦争大国アメリカの手先となり、極東最大の軍事島である沖縄をさらに強化するための基地建設なんだから、ニポンの政府が強行してることは、もはや、戦争犯罪と言っても過言じゃないだろう。ベトナム戦争やイラク戦争を「対岸の火事」だと思ってた人は、ベトナムに枯葉剤を撒いたアメリカ軍の爆撃機や、イラクに劣化ウラン弾を落としたアメリカ軍の爆撃機が、このニポンの沖縄の基地から飛び立って行ったってことを知らないのだろうか? 沖縄のオジィやオバァたちの「これ以上、戦争の加害者にはなりたくない」っていう思いは、あたしたちすべてのニポン国民が感じるべきなんじゃないだろうか? この国から飛び立って行く爆撃機や戦闘機が、世界中で殺戮を繰り返してるんだから‥‥なんて思う今日この頃なのだ。
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