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2007.05.14

あたしの日

今日は、全国的に「母の日」だった。それで、あたしは、ホントは母さんと日帰り旅行に行くつもりで、スケジュールを調整して、いろいろと下調べして、準備もしてたんだけど、ケガをしちゃったから、ダメになった。今回のケガは、体の痛みもヒドイけど、長いことお仕事ができなくなったこととか、多くの人に迷惑をかけちゃったこととか、精神面での凹みが大きい。その中でも、何よりも凹んだのが、母さんとの日帰り旅行がダメになったことだった。たとえば、今日の旅行はダメになったけど、代わりに、ケガが治ってから旅行に行くとか、今日の旅行はダメになったけど、代わりに、何かいいものをプレゼントするとか、そういうことができるんなら、こんなに凹まない。

何しろ、1ヶ月以上も現場のお仕事ができなくなったから、2ヶ月後、3ヶ月後には、ほとんど収入がなくなる。その上、会社勤めの人みたいに、「ケガが治ったから明日から出勤します」ってワケにも行かない。今回のケガで、ずっと続けてた何本かのお仕事は、みんな、無理を言って他のヘアメークに代わってもらった。だから、ケガが治ったからって、ホイホイと戻ることはできない。今の感じだと、不定期のスポットのお仕事には戻れると思うけど、週1と週2のスタジオのお仕事のほうは、たぶん戻れない。だから、これから先のことを考えると、今から、できる限りの節約生活をしとかないと、ヤバイ状況に陥っちゃう。

それで、ホントなら、旅行に行けなくなった代わりに、母さんに何かプレゼントでもと思ったんだけど、お金を使うのは恐いし、「安くていいもの」って考えても、お買い物に行くことができない。歩けるんなら、本屋さんに行って、母さんの喜びそうな本を探して来ることができたんだけど、松葉杖で遠くに行くのは、まだ恐い。だから、あたしは、今の自分にできることをしようって思って、カードだけでも手作りすることにした。それで、長時間イスに座ってると足がズキズキして来るから、ハシタナイけど、誰も見てないし、床に大マタびらきで座って、カードを作ることにした今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、あたしは、「母の日」のカードを作ろうと思ったんだけど、何かテキトーな紙が無いか探してたら、小型の色紙(しきし)が見つかった。ちなみに、なんで「しきし」って読み仮名を書いたのかって言うと、もしかすると、「いろがみ」って読んじゃうようなジャニタレ並みの国語力の人がいたら大変だと思ったからだ。で、その色紙は、タテヨコ15cmくらいの大きさで、とっても可愛らしい。ずっと前に、ある人に「俳句の色紙を書いて欲しい」って頼まれた時に、余分に用意したものだった。それで、あたしは、その色紙をカード代わりにすることにしたんだけど、硯(すずり)を用意して墨を磨るのは厳しかったから、ズルをして墨汁を使った。ちなみに、「墨汁」に「ほくじゅう」って読み仮名を振らなかったのは、サスガに、「すみじる」なんて読む人はいないと思ったからだ(笑)

それで、色紙が小さいから細めの筆を用意したんだけど、色紙は1枚しかなかったから、失敗したら取り返しがつかなくなる。だから、あたしは、チラシの裏を使って、何を書こうか考えながら練習をした。文字だけだと味気ないから、何か絵も描くことにしたんだけど、いろいろと考えて、猫のマックスが丸くなって寝てるとこを書くことにした。何でかって言うと、マックスは白黒のブチだから、墨汁だけで描けそうだからだ。

だけど、実際に描いてみると、小さい色紙の中のハシッコに描くワケだから、猫の大きさは5cmくらいで、なかなか難しかった。特に、耳とかヒゲとかの細かい部分が難しくて、タワシみたいになっちゃったり、ツチノコみたいになっちゃったり、うまく描けても、白黒のブチが、ナニゲに牛っぽくなっちゃったりした。

だけど、大マタびらきの体勢がだんだんつらくなって来たから、ある程度のとこで練習は「よし!」ってことにして、本番に取り掛かることにした。そして、色紙の右下に描いてみたんだけど、これがなかなかうまく行って、それまでに練習したどの絵よりも猫っぽく描けた。やっぱり、思い切って描くと、うまく行くみたいだ。実は、失敗したら、黒く塗りつぶして、黒猫のジジにしちゃおうって考えてたワケで、この作戦が、あたしに精神的な余裕を与えてくれたんだと思う‥‥って自己分析しつつも、どんどん想像が膨らんでダッフンしちゃうあたしとしては、さっきの「猫っぽく描けた」の部分で、「猫」と「描」って漢字が似てるってことについてダッフンしたくなっちゃったし、「黒く塗りつぶして」の部分で、ローリングストーンズへとダッフンしたくなっちゃった。

‥‥そんなワケで、何とかマックスの絵が描けたあたしは、母さんへの1句を書いて、「母さん、ありがとう」って書いた。これで、制作費0円のプレゼントが出来上がった。あとは、今日のお昼ころに、母さんが来てくれるって言ってたから、一緒にご飯を食べて‥‥って、ここで、お見舞いを送ってくださった皆さんに、心からお礼を言わせていただきます。先週までに、白夜書房宛てに届いたお手紙やお見舞いは、すべて担当者さんが届けてくださったんだけど、皆さん、ホントにありがとうございました♪

心のこもったお手紙の数々、可愛らしいイルカの絵葉書、ケガに効く漢方薬、ままかりのセット、煮魚のセット、お漬物のセット、梅干し、お味噌やお醤油、レトルト食品のセットなどなど、動けないあたしにとって、ホントに助かりました。ただ、カン違いしないで欲しいのは、不特定多数の人たちに「なんか送ってくれ~!」って意味で書いてるんじゃなくて、白夜書房の担当者さんからはお礼状を送っていただいたけど、あたしからは1人1人にお礼状を送ることができないので、「ちゃんと受け取りましたよ」って意味で書いてる。だから、そこんとこを理解して欲しい‥‥なんてことも言ってみつつ、ナニゲにモトの文体に戻しつつ、たくさんのお見舞いをいただいたオカゲで、お金もないし、どこにもお買い物に行けないのに、母さんを迎える準備はオッケーだった。

で、これまたいただきもののご飯を炊いて待ってたら、母さんがやって来た。母さんは、肉じゃがを作って、大きなタッパーに入れて持って来てくれた。そういえば、あたしがあんまりお肉を食べないようにしてるってこと、母さんには言ってなかった。ま、あたしの場合は、出されたら何でもありがたくいただく「フレキシブルなベジタリアン」だから、何でもいいんだけど、母さんの肉じゃがなんて、何年ぶりだろう?‥‥って、ここでも、どんどん想像が膨らんでダッフンしちゃうあたしとしては、さっきの「黒く塗りつぶして」の部分で、ローリングストーンズへとダッフンしとけば、この「肉じゃが」のとこで、うまくつなげられたのに‥‥なんて思いつつも、お見舞いの煮魚セットの中から、サバの味噌煮を選んで、真空パックを空けて、温めてた。それから、お見舞いのお漬物セットの中から、ショウガの紅梅漬けを選んで、お小皿に出した‥‥って言うか、それをぜんぶ母さんにやってもらった。

つまり、あたしは、何の苦労もしないで、それどころか、「母の日」なのに母さんを使って、ご飯の用意をしてもらったってワケだ。それにしても、こんなにオカズがある食事なんて、久しぶりだ。そして、ご飯のあとも、母さんに洗い物をしてもらって、さらには、溜まってたお洗濯もしてもらって、ずっとお掃除できないでいたリビングのフローリングの拭き掃除もしてもらって、挙句の果てには、水槽のお魚たちのエサやりまでしてもらっちゃった。これじゃあ、「母の日」じゃなくて「あたしの日」だ。だけど、楽しみにしてた旅行に行けなくなったことや、いっぱい迷惑を掛けちゃったことを謝るあたしに、母さんは、いつもの笑顔で、こんなことを言った。


「いつもいつもきっこに助けてもらってるばかりで、私は何もしてやれないだろ? 体調のいい時くらい何かしてやりたいってずっと思ってたから、今日は少しでもきっこの役に立てて、何よりの母の日だったよ♪」


‥‥そんなワケで、あたしは、この母さんの言葉を聞いて、素直な気持ちで、「母さん、ありがとう♪」って言って、用意してた色紙を渡すことができた。それで、母さんは喜んでくれたんだけど、ただ1つだけヒザカックンだったのは、自信のあった猫のマックスの絵を見た母さんから、「これ、ウズラのタマゴなの?」って聞かれたことだ(笑)‥‥って、こんな軽いオチでカンベンして欲しい。何しろ、今日は「あたしの日」なんだから‥‥なんて感じでシメてみた今日この頃なのだ。


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