黒く塗りつぶせ!
那覇空港で爆発事故を起こした中華航空のボーイング737だけど、事故の調査終了後に、機体の横に大きく描かれてた「CHINA AIRLINES」っていう社名と、垂直尾翼の「紅梅の花のマーク」が、中華航空の作業員によって白いペンキで塗りつぶされた。これは、事故後の機体がテレビなどで毎日のように報道されるため、中華航空が企業イメージの低下を恐れて行なった対策らしいけど、あたしは、「アホか?」って思った。だけど、あたしが何よりもビックル一気飲みだったのは、社名やマークを塗りつぶしたことに対して、中華航空の広報部が、「国際慣例に従ってのことです」ってコメントしたことだ。
あたしは、こんな「国際慣例」があっただなんて、初めて知った。大事故を起こした旅客機が、企業イメージの低下を回避するために機体の社名をペンキで塗りつぶすことが「世界的な慣例になってる」だなんて、あたしは初耳だった。それなら、今までに起こった同様の事故の時にも、中華航空に限らず、世界中の航空会社が、大慌てで事故機の社名やマークをペンキで塗りつぶしてたんだろうか?
1960年代には、ローリングストーンズのミック・ジャガーが「Paint It, Black!(黒く塗れ!)」って歌ったし、1970年代には、それを受けた矢沢永吉が「黒く塗りつぶせ!」って歌ったし、時が流れて2000年を過ぎると、「桃太郎電鉄」にブラックボンビーが登場して、必殺ワザの「ペイント・イット・ブラック」で、マイナス駅と目的地以外を黒く塗りつぶして「ブラック駅」にしちゃったし、たいていの場合は「塗りつぶす」っていうと「黒」なんだけど、何かヤマシイ気持ちのある場合は、あえて「白」に塗りつぶすもんなんだろうか?‥‥なんて思った今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、ミック・ジャガーが「黒く塗れ!」って言ってんのは、「部屋のドア」だったり「車」だったり「太陽」だったりするワケだし、矢沢永吉が「黒く塗りつぶせ!」って言ってんのは、「シャクなこの世界」だったり「シャクな恋の夢」だったり「シャクな金持ちども」だったりするワケだし、どこにも「ボーイング737」なんて出て来ない。でも、ここでのポイントは、「塗りつぶす」ってことで、つまり、ドアならドア、車なら車をぜんぶ真っ黒に「塗りつぶしちゃえ!」ってことなのだ。対象が何であっても、重要なのは、対象をすべて「塗りつぶす」ってことであって、部分的にペンキを塗っても意味がないってワケだ。
一方、事故を起こした中華航空のボーイング737の場合は、白だ黒だっていう色の問題はともかくとして、塗った面積の問題で言えば、ぜんぜん塗りつぶしてはいない。白いペンキを塗った目的は、あくまでも「中華航空の旅客機だと分からなくする」ってことであって、ペンキを塗ったのは「社名」と「マーク」だけなのだ。じゃあ、中華航空の作業員は「塗りつぶす」って行為をしてないのかっていうと、そんなことはない。ようするに、「ボーイング737」が対象じゃなくて、ボーイング737に描かれた「自社の社名とマーク」が対象だって考えれば、ミゴトに「塗りつぶす」って行為を達成してるのだ。
そして、何で「黒」じゃなくて「白」なのかって言えば、機体の色や文字の色に合わせたのと、白いペンキが1番安いからなんだと思う。もしも、機体が黒だったとしたら、どんな色で社名が入ってたとしても、少々ペンキ代が高くついても、きっと黒いペンキを使っただろう。ま、どっちにしても、ミック・ジャガーや矢沢永吉の場合には、対象が何であれ、「黒」であることと「塗りつぶす」ことが両方とも重要だったのに対して、中華航空の場合には、色はどうでもいいから、とにかく社名を隠すってことが目的だったワケだから、行為はおんなじでも主旨が正反対ってことになる。
‥‥そんなワケで、ミック・ジャガーや矢沢永吉は、自分の気に入らないものを自分の視野から消すために「黒く塗れ!」「黒く塗りつぶせ!」って言ったワケだけど、中華航空は、自分に都合の悪いものを世間の目から隠すために「白く塗りつぶした」ってワケだ。そして、誰が見たって「え?」って思う、この、完全にムダな努力じゃん!‥‥っていうか、そんなことしてる場合か!‥‥っていうか、他にやることがあんだろ!‥‥って感じのアホな行為が、ホントかウソかしんないけど「国際慣例」だって言うんだから呆れ返っちゃう。
こんなの、単なる幼稚なゴマカシとしか思えないし、ウソをついたヤツが、そのウソがバレそうになって、さらにウソを重ねてるみたいに感じちゃう。仮病を使って巡業をサボッた横綱が、その仮病がバレそうになって、さらに別の仮病を言い出したみたいで、なんか、毎日こんなに暑いのに、シラケちゃって寒々として来る。それに、今回の場合は、さっきも書いたように、タマタマ機体の色に合わせて「白」にしたんだろうけど、この「白」って色が、何だか自分たちの潔白を言わんとしてるみたいにも感じられちゃって、ヨケイに寒々として来る。やっぱり、良きにつけ悪しきにつけ、塗りつぶすんなら「黒」だよね。
で、黒く塗りつぶすのはいいんだけど、大変なモノを黒く塗りつぶしちゃった人たちがいる。今年の4月に、イギリスのロンドン、イーストエンドの壁に描かれてたバンクシーの壁画をロンドン交通局の落書き対策の清掃員が、落書きと間違えて黒いペンキで塗りつぶしちゃったのだ。バンクシーってのは、正体不明の世界的ゲリラアートの巨匠で、ようするに、そこらの壁とかに、ステンシルで勝手に絵や文字を描いちゃう人なんだけど、普通なら「悪質なイタズラ」だとされるこの行為が、バンクシーの場合は、その作品が1点数百万円から数千万円で取り引きされてるから、特別扱いされてる。で、今回、清掃員が間違えて黒く塗りつぶしちゃった作品は、とても大きなもので、7000万円以上の価値があるって言われてる。
実は、バンクシーの作品が落書きと間違われて黒く塗りつぶされちゃったのは、この時が初めてじゃない。前の月の3月にも、ブリストル市内にあった作品が、市役所に落書きを消すように依頼された下請け業者によって、間違われて消されちゃったのだ。まあ、あたしに言わせれば、バンクシーの作品て、多摩川の橋ゲタとか東名高速の陸橋の柵に描かれてるスプレーの落書きと大して変わんないから、落書きと間違えて消しちゃう作業員の気持ちも分からなくもない。それに、似たような落書きがいくつも並んで描かれてるのに、そのうちの右端のと左から2番目のだけが価値のあるバンクシーの作品で、それ以外が落書きだって言うんなら、ちゃんと前もって作業員たちに指示しておくべきだろう。だから、あたしは、市役所のほうにも責任があると思う。それなのに、市役所は、この下請け会社に、バンクシーの作品を消しちゃったことに対する損害賠償請求をするかもしんないって言うんだから、なんだかなぁ~って感じがする。
‥‥そんなワケで、公共の壁とかにスプレーで絵や文字を描いても、それがバンクシーであれば、作品が保護されるばかりか、落書きと間違えて黒く塗りつぶしちゃったほうの人が、任百万円も何千万円もの損害賠償を請求されちゃう。だけど、似たような絵や文字でも、描いたのがバンクシー以外の人だったら、描いた人が罰せられちゃう。これって、あたしには理解不能だけど、なかなかワンダホーなことなのかもしんない。何しろ、ニポンの場合は、公共の壁とかじゃなくて、自分のお金で建てた自分のお家の壁でも、赤と白のシマシマに塗ろうとしたら、近隣住民から「色彩の暴力」だって言われちゃうくらいだからね。
だけど、欧米人とニポン人の感覚の違いは、今に始まったことじゃないから、あたしは、赤と白のシマシマのお家にクレームをつけてる人たちを責めたりはしない。たとえば、今から40年近くも前の1969年に、伝説のウッドストックで、ジミ・ヘンドリックスが、アメリカ国歌の「The Star Spangled Banner(星条旗よ永遠なれ)」を極端に歪ませた音で演奏したけど、それは大絶賛されて、もちろんすぐにライブ盤のレコードも発売されたし、未だに語り継がれてる。だけど、今からたった8年前の1999年に、忌野清志郎が、パンク風にアレンジした「君が代」を「冬の十字架」っていうアルバムに収めたら、そのアルバムは発売禁止にされた。この違いを見ただけでも、ニポン人のヘンテコな感覚が良く分かるだろう。
ま、いくら「自由」「自由」っつったって、企業や右翼やホニャララ団とベッタリ癒着してる自民党なんかが政権与党をやってるうちは、ニポンにホントの意味での「言論の自由」や「表現の自由」なんかあるワケもなく、すべては、矢沢永吉が「黒く塗りつぶせ!」って言った「シャクな金持ちども」の胸先三寸で決められてる。パンク風にアレンジした「君が代」を発売禁止にされた忌野清志郎は、その11年も前の1988年にも、RCサクセション名義の「COVERS」ってアルバムが発売禁止にされてる。これは、そのタイトルからも分かるように、いろんな有名な曲のカヴァーアルバムで、ローリングストーンズの「Paint It, Black」のニポン語バージョンが収められてるのも今日の日記の話題にピッタリなんだけど、当時、問題にされたのは、この曲じゃなくて、「サマータイム・ブルース」だった。
「サマータイム・ブルース」って言えば、あたし的には何と言っても THE WHO なんだけど、原曲はエディ・コクランだ。で、忌野清志郎は、これを反原発の替え歌にしちゃったのだ。だけど、大したことは歌ってない。たとえば、「熱い炎が先っちょまで出てる~東海地震もそこまで来てる~だけどもまだまだ増えて行く~原子力発電所が建って行く~さっぱりわかんねえ誰のため?~狭い日本のサマータイム・ブルース」とか、「寒い冬がそこまで来てる~あんたもこのごろ抜け毛が多い~それでもテレビは言っている~『日本の原発は安全です』~さっぱりわかんねえ根拠がねえ~これが最後のサマータイム・ブルース」とか、こんなレベルだ。ただ、今、改めて聴くと、4番の歌詞が気に掛かる。
「あくせく稼いで税金取られ~たまのバカンス田舎へ行けば~37個も建っている~原子力発電所がまだ増える~」
そうか、この時代には37個しか原発がなかったのか。そうすると、この時からたった19年で18ヶ所、つまり、1年に1ヶ所の割合で原発が増え続けて来たんだね。なんてファッキンな守銭奴どもなんだろう。ホントに悲しくなるよ。で、こんなレベルの歌が入ってるだけなのに、このアルバムが発売禁止にされたのは、レコード会社の東芝EMIの親会社の東芝が、原発の推進企業だからだ。親会社の特権を悪用して、卑劣な言論弾圧をしたってワケだ。ちなみに、このアルバムには、「ラブ・ミー・テンダー」のカヴァーも収録されてんだけど、こっちも反核ソングで、「ラブ・ミー・テンダー」を「何言ってんだー」にしてるオヤジギャグの替え歌だ。「何言ってんだ~ふざけんじゃね~核などいらね~」とか、「放射能はいらねえ~牛乳を飲みて~」とか歌ってる。
そして、このアルバムが発売できなくなったすぐあとに、今度は、ブルーハーツの「チェルノブイリ」って曲も、親会社の圧力によって発売が許可されなかった。当時、ブルーハーツが所属してたレコード会社、メルダックの親会社が、これまた原発推進企業の三菱電機だったから、卑劣な言論弾圧をしたってワケだ。そして、この曲は、仕方なくブルーハーツの自主レーベルからリリースされることになった。それにしても、放送禁止用語や差別用語を使ったり、良俗や道徳に反するような歌を歌って、それで発売禁止にされるんなら分かるけど、チェルノブイリの原発事故をテーマにしただけで、放射能の危険性を訴えただけで、原発を推進する親会社の圧力で発売できなくなるなんて、まるで、北朝鮮並みの言論弾圧だ。
敗戦後、ニポンは、アメリカによる言論弾圧によって、進駐軍の批判や原爆の悲惨さを報じることを禁止されたけど、戦後40年以上も経ったこの時期でも、自国の企業が自国のミュージシャンの言論を弾圧するなんていう時代錯誤のことが平然と行なわれてたんだよね。こういう事例を知ると、この国って、東芝や三菱を始めとした大企業の都合だけで動かされてるような気がしてきちゃう。
‥‥そんなワケで、この国を破滅へと導く原発や戦争はすべて真っ黒に塗りつぶして、原発推進や憲法改悪に賛成してる政治家どもには残らず「NO!」を突きつけて、あたしたちの平和はあたしたちの手で掴まないとダメだと思った今日この頃なのだ。
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