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2007.08.12

サンマ・パラダイス

2週間くらい前にスーパーに行ったら、鮮魚コーナーに新サンマが並んでた。だけど、1匹200円もするから、ちょっと手が出なかった‥‥っていうか、1匹200円のサンマを買うくらいのお金なら、サスガのあたしでも持ってるんだけど、その隣りに解凍サンマがドッサリと「1匹40円」で売られてて、それを見ちゃったもんだから、「おんなじ大きさのおんなじようなサンマなのに、新モノは5倍もするのか」って思ったら、手が出なくなっちゃった。それで、じゃあ1匹40円の解凍サンマを買ったのかっていうと、新モノを見ちゃったもんだから、解凍サンマがヤタラと鮮度が悪く感じちゃって、こっちにも手が出なかった。

そんなこんながあって、今日、2週間ぶりにスーパーに行ってみたら、ナナナナナント! 新サンマが1匹100円に値下がりしてた上に、解凍サンマが1匹50円に値上がりしてた! それで、あたしのヘンテコな金銭感覚でも、これなら新サンマを買おうって気分になったから、400円で4匹買った。2匹は塩焼きにして、2匹はお刺身にして、母さんと食べようと思ったからだ。何しろ、毎日毎日ぼくらは鉄板の上で焼かれてイヤになっちゃうくらい暑い日が続いてるけど、もう8月8日の立秋を過ぎたワケだから、暦の上では「秋」ってワケで、何かひとつくらい秋らしいことをしてみたい。で、思いついたのが、秋の味覚の王道で、名前にも「秋」って文字が入ってる「秋刀魚」を食べまくるって企画だった。それで、あたしは、ようやく原チャリにだけは乗れるようになったので、買ったサンマを持って、原チャリで母さんのとこへ向った。

で、今年のサンマは、すごく脂が乗ってて、気をつけて焼かないとアッと言う間に火がついちゃって、ボボボーボ・ボーボボって燃え始めて、髪に引火したらアフロになっちゃいそうなイキオイだった。だけど、換気扇を全開にして、サンマが燃えるたびにガスの火を消してサンマを消火して、何とかうまく焼くことができた。そして、お刺身もうまく切れたし、お刺身にしたほうのサンマのハラワタも別口で焼いて、秋のサンマ大パーティーが始まった今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、母さんはご飯を食べてたけど、あたしは、今年初めての新サンマだから、赤ワインを飲むことにした。いつもの激安の業務用の赤ワインだけど、これを冷蔵庫で良く冷やしておいて、大きなグラスでガブガブと飲む。前にも書いたことがあったと思うけど、この、良く冷やした辛口の赤ワインとサンマの塩焼きの組み合わせは、ある意味、天下無敵の組み合わせだ。ワインが好きな人は、白ワインは冷やすけど赤ワインは室温で飲むって言う。それから、肉料理には赤ワイン、魚料理には白ワインって言う。だから、あたしのやり方は、ワイン通の人に言わせたら、2つものタブーを犯してることになっちゃうけど、実際に飲んでみて、これほど美味しい組み合わせは他にないんだから、何を言われてもジンジャエールだ。

で、「ジンジャエール」と言えば、あたしは、サンマの塩焼きには、ダイコンおろしを添えない。我が家では、ショウガをすり下ろして、小皿にショウガ醤油を作って、それにサンマの身をチョンチョンとつけながらいただく。これが、ご飯のおかずにも、お酒のオツマミにも、どっちにもサイコーなのだ。それから、食べ終わった塩焼きの骨と、お刺身のほうの骨も、あとから網であぶって、このショウガ醤油につけながら、ポリポリと食べる。

だから、サンマを焼く前にふるお塩は、しょっぱくならないように、最低限の量にする。できれば、お塩をふらずに素焼きにしたほうがいいんだけど、お塩をふらないと網にくっついちゃうから、ちょっとだけふる。そして、焼きあがったサンマは、まずは身をひと口食べて、冷たい赤ワインをククーッて飲めば、もう極楽気分の始まりだ。そして、身をぜんぶ食べ終わったら、最後のお楽しみが、何よりも美味しいハラワタだ。大切なハラワタをちょっとずつ食べながら、良く冷えた赤ワインを飲めば、何とも言えない至福のヒトトキだ。

そして、ハラワタを食べ終わったら、これこそが最後の最後のお楽しみの「心臓」だ。ハラワタの前の部分をサンマの頭からお箸でほじくり出すと、ちっちゃな三角の物体が出て来るんだけど、これがサンマの心臓で、とにかくメッチャ美味しくて、赤ワインにも、冷酒にも、何にでも合う。だけど、とにかくものすごくちっちゃいし、当然のことながら1匹に1個しかないし、ホントの意味で、最後の最後のお楽しみなのだ。

ちなみに、魚屋さんやスーパーで売られてるサンマってウロコがないけど、これは、大きな網で何百匹も何千匹もマトメて捕まえた時に、サンマ同士でこすれてウロコが取れちゃうそうだ。だから、海中から網を引き上げるまでは、サンマたちはウロコだらけの海水の中を泳いでるワケで、その時に、海水に混じったウロコを飲み込んじゃう。だから、サンマの塩焼きを食べてて、最後にハラワタを食べる時に、ウロコのかたまりが出て来ることがある。これが、最悪なんだよね。

あたしにとって、サンマの塩焼きを楽しみながらお酒を飲むのって、ちょっとしたゼイタクだし、ちょっとしたイベントだ。それで、サンマの身を食べてる時には、その先に待ってるハラワタのことと、さらにその先に待ってる心臓のことを楽しみにしながら、クイクイと飲んでるってワケだ。それなのに、やっと辿り着いた至福の瞬間に、口の中にウロコのかたまりが広がったりしちゃうと、一気にテンションが下がっちゃって、「心臓」ってよりも、「晋三」って感じになっちゃう。

‥‥そんなワケで、100円、200円をヤリクリして、何とかギリギリの生活をしてる庶民のことなんか何ひとつ理解してないアベシンゾーとおんなじで、江戸時代のお殿様も、庶民の生活のことなんか何も知らなかった。で、そんな江戸時代のこと、あるお殿様が、何人もの家来を引き連れて、目黒にある不動尊のお参りをかねて、鷹狩りに出かけた。そしたら、さんざん遊んでお腹が減って来たころに、ある農家から、サンマを焼くいい匂いが漂って来た。それで、その匂いをかいだ家来の1人が、「サンマの塩焼きをおかずにしてご飯が食べたいな~」って言ったら、その言葉を聞いたお殿様は、「ワシもそのサンマとやらを食べてみたいものじゃ」って言った。

だけど、当時は、お殿様の食べるお魚は「鯛」って決まってて、サンマなんて食べさせられない。だから、その家来は、「サンマとはシモジモの者が食べるゲスな魚でございます。とてもお殿様が口にするような魚ではありません」って答えた。でも、サンマを焼くいい匂いはどんどん流れて来るし、お殿様はどうしてもサンマを食べてみたいって言って、アベシンゾーみたいにタダをこね出しちゃった。それで、家来は、仕方なく、その農家に行って、お金を払って、サンマの塩焼きとご飯を譲ってもらって来た。で、庶民がサンマを焼いてたってことは、値段の高い「走り」の時季じゃなくて、値段の安くなる「旬」てワケだから、とにかくサイコーに美味しいワケで、お殿様は、生まれて初めて口にした庶民の味、サンマが、たいそう気に入っちゃった。

でも、お城に帰ってからは、毎日毎日ぼくらは鉄板の上で焼かれてイヤになっちゃう鯛焼き‥‥じゃなくて、またいつもの「鯛」「鯛」「鯛」の連続で、サンマの味が忘れなれないお殿様は、とっても不満だった。それで、会う人、会う人に、「サンマが食べたい」「あれほど美味しい魚は他にない」って言って回ってたら、その話を耳にした別のお殿様が、「そんなに美味しい魚があるというのなら、私もぜひ食べてみたい」って言って来た。それで、サンマの味が忘れられなかったお殿様は、そのお殿様にゴチソウするっていう名目なら、自分もサンマを食べられるって考えた。それで、お殿様は、すぐにお城の料理番を呼びつけて、サンマを買って来て2人ぶんの料理を作るようにと命令した。

お城の料理番は、お殿様からジキジキの命令だから、すぐに日本橋の魚河岸に飛んで行って、最高級のサンマを買って来た。だけど、その料理番は、買って来たサンマを前にして、「こんなに脂の乗った魚をお殿様にお出しして、もしもお腹でも壊されたらオレは切腹モノだ」って悩んでた。それで、その料理番は、まずはサンマをセイロで十分に蒸して、サンマの脂をシッカリと落とした。それから、「もしもお殿様のノドにサンマの小骨でも刺さったりしたら、これまた切腹モノだな」って思って、サンマの身を分解して、小骨をぜんぶ抜いた。そして、パサパサでボロボロになったサンマの身をお出しした。

で、2人のお殿様は、ワクワクしながらサンマの身をほおばったんだけど、脂が抜けてパサパサになったサンマなんかが美味しいワケがない。初めてサンマを食べたほうのお殿様は、「これが鯛より美味しいというサンマなのか?」って言い出すし、サンマの味が忘れられなかったほうのお殿様も、「これはおかしい!すぐに料理番を呼べ!」って言い出しちゃった。そして、お殿様は、呼びつけた料理番に向って「これはいったいどこのサンマだ?」って聞いたんだけど、その料理番が「今朝、千葉の海で獲れたものの中の最高級のものを日本橋の魚河岸で求めてまいりました」って答えたら、お殿様はこう言った。


「それはいかん!だからまずいのだ!サンマは目黒のものに限るのじゃ!」


‥‥そんなワケで、これが、「目黒の秋刀魚」っていう有名な落語のアラスジだけど、これは落語だから作り話だろうって思うかもしんないけど、これは、実際にあった話を落語にしたもので、このお殿様は、松江藩主の松平出羽守(でわのかみ)だって言われてる。だから、オチとかは落語家の人が作ったのかもしんないけど、実際に、鯛みたいな高級なお魚しか食べたことのなかったお殿様が、生まれて初めてサンマの塩焼きを食べて、その美味しさにビックル一気飲みしたっていう事実はあったんだと思う。だから、江戸時代のお殿様も夢中になっちゃったほどのお魚が、ようやく1匹100円ていう適正価格になったんだから、今こそ、新サンマを食べる時だと思う。何年か前には、サンマが不漁で、通常でも1匹400円、500円なんて時もあったんだから、お刺身でも食べられる新サンマが100円、解凍サンマなら50円前後で買えるなんて、まさに、庶民にとっての「サンマ・パラダイス」だと思う今日この頃なのだ。


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