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2007.09.16

先取りの美学

俳句の世界で何よりも嫌われる‥‥っていうか、「野暮(やぼ)」だとされてるのが、もう夏になったのにまだ春の季語を使ってたり、もう秋になったのにまだ夏の季語を使ってたりする「季戻り」だ。なんでかって言うと、俳句の世界では、季節の到来に敏感なことが「粋(いき)」とされてて、まだみんなが「暑い!」「暑い!」って言ってる8月中旬に、ふとした瞬間の「秋」を見つけることこそが、俳人としての感性の豊かさの証明になるからだ。

2005年12月17日の日記、「古池に飛び込んだカエル」で詳しく解説してるけど、松尾芭蕉の「古池や蛙(かわず)飛びこむ水の音」って句の「古池」は、「古くひなびた池」とか「コケむした古めかしい池」って意味じゃなくて、「去年までの池」って意味なのだ。春になって、冬眠から目覚めたカエルたちが出て来て、芭蕉の家の庭の池に飛び込んだ。そして、その音を聞いた芭蕉は「春の訪れ」を実感し、その瞬間に、それまで「今の季節の池」だった庭の池が、新しい春の訪れによって「古池」になったってことなのだ。これは、秋になってその年の「新米」が出たトタンに、それまで普通に食べてたお米が「古米」って呼ばれるようになっちゃうのとおんなじ感覚なのだ。

「季戻り」を嫌う俳人たちは、常に「季節の先取り」を意識してるから、昔の江戸っ子とおんなじに、「走り」ってものにコダワリを持ってる。本来の季節よりもひと足早い、「走り茶」「走り蕎麦(そば)」「走り松茸」など、「走り」ってモノにコダワリを持ってて、値段が高くても、ムリをして「走り」を楽しみ、新しい季節の到来を誰よりも先に感じることを美学としてる今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?

‥‥そんなワケで、俳人たちの「季節の先取り」ってのは、冬の終わりに春を感じたり、夏の終わりに秋を感じたりっていう「半シーズン」程度の先取りだ。これが、冬になったばっかの時に春を感じたりしちゃったら、粋どころかオッペケペーの与太郎ってことになっちゃって、途中で職責をほっぽり投げちゃったどっかの無責任総理大臣みたく、「KY」って呼ばれちゃう。だから、いくら「季節の先取り」って言っても、ムヤミヤタラに先取りすりゃあいいってもんじゃなくて、その「程度」が分かってないとお話になんない。

そして、その「程度」が分かってないのが、ファッションの世界だ。毎年、凍えるような真冬に、次の年の「春・夏」を発表して、熱中症でレッサーパンダまでが倒れちゃうような真夏に、「秋・冬」を発表して来た。そして、今じゃ、もっとエスカレートしちゃって、やっと春になったと思ったら、もう次の「秋・冬」を発表するようになった。やっと春になったばっかの時に、次の冬のファッションだなんて、これだと、なんか、1周して戻って来たみたいで、「先取り」ってよりも、逆に「季戻り」したみたいに感じちゃう。半シーズンや1シーズンの先取りなら「粋な感覚」だけど、3シーズンもズレてると、どうしても「与太郎の感覚」に感じちゃう。

だけど、ファッション業界にも「流行を作り出す」っていう事情があるから、「粋」とか「野暮」とかってことじゃなくて、業界の事情による与太郎感覚な先取りをしなくちゃなんない。「粋」か「野暮」かってことに何よりもコダワリを持たなきゃなんないファッションの世界が、「粋」か「野暮」かってことを無視して流れてるのもコッケイな話だけど、所詮は「流行を作ってナンボ」「売れてナンボ」の世界だから、これはジンジャエールなことなのだ。

でも、ファッションも大好きだけど、俳句も大好きなあたしとしては、春や夏のうちに、冬のファッションについて書く気にはなれない。暑くて眠れない真夏の熱帯夜に、「今年の冬はどんなコートが流行るか」なんて、とてもじゃないけど日記に書く気にはなんない。それに、もしもそんな話題を書いたら、読むほうの人たちも暑くて暑くてたまんないだろう。

‥‥そんなワケで、まだ残暑っぽいとは言え、ようやく秋の気配を感じられるようになって来たので、あたしも、ちょっとだけ、今年の冬のコートについて書いてみようと思う。9月も半ばになってからの「今年の冬のファッション」の話題なら、俳句的にも「粋な先取り」のハンチューに入るからだ。で、最初っから結論を言っちゃうと、今年の冬にあたしが着ようと思ってるのは、ズバリ、「パルトー」だ。パルトーは、ボレロみたいな超ショート丈で、裾や袖口がラッパ状に広がったトッパー風のコートで、襟の形はいろいろあるけど、あたしが好きなのはスタンドカラーのパルトーだ。今年はブーティーが流行るから、足元に合わせて、コートもショート丈にして、レトロでシックでモダンな感じで決めようと思ってる。

ちなみに、パルトーって名前は、フランス語の「オーバーコート」って意味の「paletot」が語源で、14世紀ころのフランスで生まれたそうだけど、当時は、ヒザ下まである丈のコートのことを指してたみたいで、今とは違ってた。ただ、男性用も女性用も、コートの裾が広がってたから、ようするに、「裾が広がったタイプのコート」って意味だったんだと思う。それが、時代とともに変化して来て、いつの間にか、超ショート丈のコートのことを指すようになったんだと思う。

コートって言えば、ここ数年、トレンチコートのブームが続いてる。「去年はロングだったけど今年はショート」とか、「去年はショートだったけど今年はハーフ」とかって感じで、丈の長さが変わるだけで、もう5年くらいトレンチコートのブームが続いてる。その最大の理由は、ブームが続くことによって、いろんな素材や色のものが出て来て、かつてはスーツの上に着るだけだったトレンチコートが、デニムパンツとブーツに合わせたり、フェミニンなワンピに合わせたりって、カジュアルにも着こなせるようになって来たからだ。1着のコートが、通勤にも休日にも使えるのって、ものすごく利用価値が高い。ただ、あたしは、トレンチコートは好きじゃないから、持ってないけど(笑)

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あたしが好きなのは、普通のAラインのハーフコートで、白、ベージュ、千鳥格子の3着と、赤のロングコートを持ってる。そして、流行に関係なく、冬になれば、このどれかを着てる。やっぱり、スタイルが良く見えるのは、何と言ってもヒザ上丈のAラインのハーフコートで、1番のポイントは、腰の位置が高く、脚がスラッと長く見えることだ。映画、「プラダを着た悪魔」で、主人公のアンドレア役のアン・ハサウェイが、どんどんオシャレになってって、グリーンのAラインのハーフコートで颯爽と歩いてるシーンがあったけど、あれも、ヒザ上ギリギリの丈だったから、すごくスタイルが良く見えた。体型が分からないコートだからこそ、その短所を長所に変えて、スタイルを良く見せちゃうってワケで、サスガ、世界中に熱狂的な信者がいる天才スタイリスト、パトリシア・フィールドのセレクトだ。

パトリシア・フィールドと言えば、人気ドラマ、「セックス・アンド・ザ・シティ」のスタイリストとしてもオナジミで、今やチョー有名ブランドになっちゃった「マロノ・ブラニク」なんて、それまでは一部のセレブだけが履く靴だったのに、このドラマで、主役のキャリー役のサラ・ジェシカ・パーカーに何度も履かせたことから、アッと言う間に一般にも人気が出ちゃった。他にも、パトリシア・フィールドが使ったことによって、爆発的に人気が出たブランドはいっぱいあるし、2001年にルイヴィトンに買収された「DKNY」のスタイリングを手がけて、斬新なイメージでブランド色を変革させたのも彼女だ。

‥‥そんなワケで、あたしの趣味とはリトル‥‥っていうか、大いに違うんだけど、パトリシア・フィールドのセンスはバツグンだ。「こんなのアリエナイザー」って感じのコーディネイトも連発してるけど、それがまたカッコイイ。ただ、あたしには似合わないってだけで、美しい女優さんならステキになる。でも、奇抜なスタイリングだけが彼女の持ち味じゃなくて、軽い遊び心をプラスしたベーシックなスタイルも素晴らしくて、「プラダを着た悪魔」のアン・ハサウェイのグリーンのハーフコートなんて、その代表みたいなもんだ。

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で、今年の冬の流行って言うと、まだまだトレンチコートの人気は続くみたいだけど、トレンチコートをカジュアルに崩して着るのが苦手な人たちには、モッズコートが流行りそうだ。モッズコートってのは、映画、「さらば青春の光」で、皮ジャンを着て大きなバイクに乗る「ロッカーズ」と対立してた、スーツの上にアーミーの払い下げのヨレヨレのコートを羽織って、バックミラーがいっぱいついたベスパに乗ってた「モッズ」が着てたことから名づけられたもので、モトモトは「米軍の払い下げのコート」ってことになる。

もちろん、こんなマイナーな映画からの流れじゃなくて、基本的には、ミリタリールックの流行からの流れなんだけど、今じゃ最初っから「モッズコート」として作られてるオシャレなものもあるから、ワリと一般的になって来た。ひと昔前は、本物の米軍の払い下げのコートが中心で、新品よりも古着のほうがカッコイイって感じだったけど、そういうのには距離を置いちゃう一般の女の子たちも、オシャレなモッズコートなら、気軽に自分のファッションに取り入れられる。

ま、これもあたしは着ないからいいんだけど、モッズコートのポイントは、ダッフルコートとおんなじで、フードがついてることだ。これは、コートを選ぶ上の大きなポイントで、お正月に明治神宮に初詣に行った時に、人ゴミを掻き分けて1番前まで行って、賽銭箱のとこにボーッと立ってれば、後ろのほうから投げたお賽銭が、フードの中にどんどん溜まってく。うまく行けば、1時間ほどで、コート代のモトが取れる‥‥ってのは単なるギャグで、こんなことホントにやったら、神様のバチが当たっちゃうし、モッズコートとかダッフルコートとか言うよりも、ダッフンコートって感じになっちゃう(笑)

‥‥そんなワケで、トレンチコートにもモッズコートにもダッフルコートにも興味がなくて、シンプルなAラインのハーフコートが好きなあたしだけど、今年は、パルトーにも挑戦してみることにした。もちろん、パルトーなんかじゃ防寒になんないだろうから、真冬になったらいつものコートを着るつもりだけど、晩秋から初冬にかけては、防寒じゃなくて、オシャレとして、パルトーに挑戦してみるつもりだ。

で、パルトーのいいとこは、やっぱ、生地が少ないからなのか、ヤタラと値段が安いことだ。有名なブランドのものでも、だいたい5000円から8000円くらいだし、通販のニッセンのサイトを見たら、4000円くらいですごく可愛いのが出てた。それで、ついでにいろんな通販サイトを見てたら、飲んでたカルピスウォーターを噴き出すほど笑っちゃったんだけど、「YAZAWAにならないライダース」ってのを見つけた。1万円以下の合皮の安物のライダースジャケットなんだけど、薄手でスタイル良く作られてて、女性が着ても野暮ったくならないデザインだった。それは別にいいんだけど、そのことをアピールするためのコピーが「YAZAWAにならないライダース」って‥‥。これじゃあ、仕方なくYAZAWAになっちゃってる人はともかく、YAZAWAを目指してる人たちが気の毒じゃん(笑)

そんなこんなで、あたしの欲しいタイプのパルトーは、ニポンでは昭和30年代に流行してたみたいだ。当時のファッション誌、「銀麗」とか「私のきもの」とかには、夏以外の3シーズンで、それぞれのパルトーが紹介されてて、すごく一般的に流行してたことがうかがえる。それも、単体のコートとしてのパルトーだけじゃなくて、「パルトースーツ」って言って、おそろいのタイトスカートとのセットアップとかも紹介されてるから、どっちかって言うと、コートっていう概念じゃなくて、上着っていう捉え方をしてたのかもしんない。

そして、他にも、ケープレットコートっていう、これまたショート丈のケープみたいなコートも紹介されてるから、当時の女性は、ヨソ行きのオシャレをした時に、せっかくのオシャレがコートで隠れないように、あえてショート丈のコートを羽織って、肩や首まわりだけを温かくしてたとも考えられる。ちなみに、この頃のニポンの女性のファッションは、ほとんどがパリのモードにならってたみたいだから、このパルトーやケープレットコートも、パリから入って来た流行なんだと思う。

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‥‥そんなワケで、今、あたしが考えてるのは、ヒザ上丈のタイトスカートのボルドーのスーツに、黒のブーティーとライトグレーのパルトーを合わせて、1950年代のパリと現代のニポンとを融合させたイメージにしようと思ってる。これで、足元がパンプスなら、まんまクラシカルなパリ風になっちゃうんだけど、ブーティーってとこが今ドキ感を出してるってワケで、あとは、これに、どんな帽子とバッグを合わせるかだ。一瞬、スーツと同色のボルドーのベレーも頭をよぎったんだけど、あたしには似合わないから、やっぱ、ツバが大きくてモード感タップリの帽子がいいと思う。でも、あたしの場合は、その前に、根本的な大前提として、杖を使わなくても歩けるようになんなきゃダメなワケだし、スリッパに毛が生えたみたいなペタンコ靴しか履けない今の状態を何とかしなきゃダメなワケで、まだまだ先は長い。だけど、今は歩けなくても、この先、歩けるようになった時のことをアレコレと妄想して楽しむのも、ある意味、「先取りの美学」なんだと思う今日この頃なのだ。


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