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2008.02.03

あたしの得意料理

2~3日前の夜に、TOKYO FMを聴きながらお風呂に入ってたら、ナントカっていうアイドルの女の子が、自分の得意料理を「肉じゃが」だって言ってた。それで、あたしは、5年前や10年前ならともかく、今どき得意料理を聞かれて「肉じゃが」だなんて答える子がいたんだ‥‥って驚いた。もちろん、ホントに「肉じゃが」が得意なのかもしんないし、事務所から「肉じゃが」って言うように指示されてんのかもしんないし、その真意は謎だけど、普通に毎日お料理してるあたしとしては、昔っから、得意料理を聞かれて「肉じゃが」って答えるアイドルとかを見るたびに、「あ、この子はお料理なんかほとんどしたことないな」ってピンと来る。だって、「肉じゃが」なんてお料理のうちに入らないし、こんな簡単なもんを得意料理だなんて言うってことは、「他には何も作れません」て告白してるみたいなもんだからだ。

ようするに、「肉じゃが」って答えとけば、男性ファンから「家庭的な子だな」って思ってもらえるっていう、遥か昔からの伝統芸ってワケで、「好きな食べ物は?」って聞かれた時に、ホントは「豚キムチ丼」なのに、「イチゴ」だの「チョコレートパフェ」だのって答えるように事務所から指示されてるのとおんなじことだ。ま、そんなこたーどうでもいいんだけど、このラジオを聴きながらお風呂で温まってたあたしは、「あたしの得意料理って何だろう?」って考えてみた。だけど、しばらく考えても、コレと言って思い浮かばない。あたしは、一般的な家庭料理なら、料理本なんか見ないで一通り作れるし、どれもヒトサマに出せるくらいのレベルだと思ってる。だけど、「これこそが得意料理だ!」って胸を張って自慢できるものがないのだ。

で、どうしてなのかいろいろと考えてみたんだけど、ようやく、その理由が分かった。それは、あたしの作るお料理って、細かい下ごしらえをしたり、数多くの材料や調味料を使ったり、何段階もの手間をかけたりするような、いかにも「料理しました」って感じのものがなかったのだ。下ごしらえって言ったって、ササガキにしたゴボウをお水に入れてアクを抜いたりする程度で、ほとんどのお料理が、お鍋1つとか、フライパン1つで、短時間で作っちゃうものばかりだ。だから、どんなに美味しく出来ても、それは、あたしのお料理の腕がいいからじゃなくて、素材のオカゲってことになる。だから、それを自分のテガラみたく自慢するのは気が引けるから、コレと言って思い浮かばなかった今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、あたしは、お料理において、何が得意なのか考えてみたんだけど、「そこらのヤツには負けないぞ!」って自信を持って言えるのは、「家庭用の普通のガスコンロによる焼き魚」だ。お魚を焼くなら、当然、ガスよりも炭火のほうが美味しく焼ける。だから、おんなじお魚を用意して、あたしがガスで焼いて、もう1人が炭火で焼けば、そっちのほうが美味しく焼けると思う。だけど、おんなじガスコンロで、おんなじ網で焼かせたら、あたしのほうが美味しく焼く自信がある。

ちなみに、あたしのガスコンロは、真ん中にお魚を焼くための秘密基地みたいなのがついてる普通のヤツだけど、そんなの使ったことがない。お魚は、上のコンロに網を置いて、換気扇を回して、自分の納得の行くように焼かないと気がすまないからだ。だけど、誰かから「得意料理は?」って聞かれた時に、もしも「焼き魚」って答えたら、たいていは「魚を焼くだけなのに料理かよ?」って思われちゃうだろう。だから、あたしは、誰よりも美味しくメザシを焼くことができる自信があっても、「焼き魚」はお料理のうちには入らないと思ってる。

他にも、たとえば、あたしがよく作るので、「ナメコおろし」がある。片手鍋に1cmくらいお水を入れて、そこにナメコを1袋入れて、火にかけながら、お醤油と、ニボシダシと、輪切りにしたタカノツメを入れて、濃いめに味付けをして、ひと煮立ちさせて火を止める。で、中くらいの鉢にダイコンおろしをタップリとおろして、その上に熱々のナメコをかけるだけだ。冷たいダイコンおろしと、熱々のナメコを一緒に食べるんだけど、サイコーに美味しい。だけど、こんなもん、2~3分で作れちゃうし、とてもお料理とは呼べない。

「サトイモの煮っころがし」も、「イカとサトイモの煮付け」も、「サバの味噌煮」も、「カレイの煮付け」も、「ブリ大根」も、「風呂吹き大根」も、「キンピラゴボウ」も、「ヒジキと枝豆のサッパリ煮」も、「春菊の白和え」も、こうした系列のものは数え切れないほど作れるし、どれも自分ではサイコーに美味しいと思ってるけど、ほとんどお料理らしい手間がかからないものばかりなので、得意料理として自慢することはできない。今は、お肉を食べなくなったので、もう作ることはないけど、昔だったら、「豚汁」とか、「鶏肉とゴボウの煮物」とか、「シイタケの鶏肉はさみ揚げ」とか、「手羽先の甘辛煮」とか、「スペアリブ」とか、「ポークビーンズ」とか、味に自信のあるものは挙げたらキリがない。だけど、そのほとんどが、材料を切ってお鍋に入れたら、あとは落し蓋をしてホッタラカシにしとくだけで、自動的に出来ちゃうようなものばかりで、とてもお料理とは呼べない。

‥‥そんなワケで、あたしの場合は、こうした簡単なお料理は、ご飯を炊いたりお味噌汁を作ったりすることの延長線上に位置するものだから、一応は「お料理」なんだけど、手間をかけてないっていう引け目があるから、「得意料理」として人様に自慢することができないってワケだ。やっぱり、聞いたこともないような調味料やスパイスを使って、一度ソテーしたものを蒸したりとか、複雑な手順を踏んで、最低でも1時間くらいはかかるようなものじゃないと、「得意料理」として自慢することはできない。だから、あたし的には、わずか15分程度でチャチャッと作れちゃうような「肉じゃが」を「得意料理」として公言してるアイドルを見ると、「あ、この子はお料理なんかほとんどしたことないな」って思えちゃうのだ。

それで、あたしは、自分の作れるお料理の中で、「肉じゃが」よりも手間のかかるものを思い出してみて、その中で一番自信のあるものを「得意料理(仮)」ってことにしとこうと思いついた。やっぱり、何かの時にパッと答えたいし、「(仮)」ってことにしとけば、いつでも別のものと差し替えられるからだ。それで、自分でも大好きで、どこのお店で食べるよりも美味しくて、かつ、手間がかかるからメッタに作らないもの‥‥って考えてみたら、あるお料理が頭に浮かんだ。それは、「小アジの南蛮漬け」だ。もう、想像しただけでヨダレが出そうになっちゃうほど美味しいんだけど、キッチンが汚れる「揚げ物」ってことで、もう何年も作ってない。だけど、以前は、あまりにも美味しいので、月に2回くらいは作ってたし、特に夏場は、毎週のように作ってた。

用意する食材は、15cmくらいまでの小アジをたくさんと、長ネギだけだ、あとは、揚げ油、片栗粉、お酢、お砂糖、お醤油、輪切りにしたタカノツメってとこだけど、お酢は大量に使うから、最低でも1ビンは必要だ。で、ワタとエラとゼイゴを取った小アジをキッチンペーパーかフキンで水気を取っておきつつ、まずは「漬け汁」を作っておく。大きなボールに、お酢を1本ドバーッと入れて、そこにお砂糖をドバーッと入れて、よくかき回して溶かす。味見をしながらお砂糖を加えてって、甘みを感じるようになるまで加え続ける。あたしは、キチンと計ったことはないけど、ケッコーたくさん入れないと甘みが出ない。そして、甘みを感じるようになったら、お醤油で味付けするんだけど、今度は、少なめに入れる。お醤油を入れすぎると台無しになっちゃうから、すごく少しずつ入れてって、中華の甘酢あんかけとおんなじような味になったら、それでOKだ。そして、そこに、輪切りのタカノツメをお好みで入れておく。

漬け汁ができたら、小アジを揚げるんだけど、一度にぜんぶは揚げられないから、2~3匹ずつ順番に揚げてく。小アジの全体に軽く片栗粉をはたいて、最初は150~160度の低温でジックリと揚げて、どんどん油切りの上に並べてく。この時点では、ほとんど焦げ目はなくて、片栗粉の白っぽい色がわずかにキツネ色になってるかどうかのギリギリくらいの感じだ。そして、ぜんぶの小アジが揚がったら、油の中に浮いてる片栗粉とかを網ですくって、火を強くして、170~180度の高温で、二度揚げをする。これは、短時間で、美味しそうなキツネ色になったら、お箸で持った小アジを数回振って、大ザッパに油を切ったら、熱いうちに漬け汁の中にジュ~って漬ける。そして、次の3匹を揚げてる時に、漬けたほうの3匹は、バットとか、大きめのタッパーとかに移しとく。ここがポイントだから、手早く淡々と作業を進める。

‥‥そんなワケで、ぜんぶの小アジを揚げ終わったら、小アジの並んでるバットかタッパーの中に漬け汁をぜんぶ入れて、とりあえずOK。あとは、長ネギを細く切って「白髪ネギ」を作るだけだ。揚げ立ての温かい南蛮漬けに、白髪ネギをタップリと乗せると、もう、この世のものとは思えないほどの美味しさだ。二度揚げとお酢の力で、頭も骨も丸ごと食べられるし、炊き立てのご飯が何杯でも食べられちゃう。

そして、残りの南蛮漬けは、そのまま冷蔵庫に入れとくと、次の日には美味しさが倍増してて、特に夏場は、この冷たい南蛮漬けがサイコーなんだよね。小アジのクセのない白身と、片栗粉をまとった皮に甘酢が染み込んで、絶妙な食感を生み出してるし、その中にタカノツメのピリッとした辛さもあって、さらには、白髪ネギのサッパリ感も加わって、夏バテでどんなに食欲がなくなってる人でも、ドンブリでご飯をお替りしちゃったり、生ビールや冷酒や焼酎のロックが止まらなくなっちゃうほどの美味しさだ。

ようするに、マリネとおんなじようなもんだから、この甘酢の中に、ピーマンやニンジンやタマネギを細く切ったものを入れても、見た目も良くなるし味も美味しい。だけど、あたしの場合は、あくまでもシンプルに楽しみたいから、あとから白髪ネギをタップリ乗せるだけにしてる。それから、大きなアジの場合や、サバとか他のお魚を使う場合には、3枚におろして頭や骨も取って、食べやすい大きさに切って作るけど、それもそれで美味しい。だけど、やっぱり、頭ごと、骨ごと食べられる小アジが、何よりも一番美味しいし、値段も安く済む。

‥‥そんなワケで、2008年のあたしは、誰かから「得意な料理は?」って聞かれたら、「小アジの南蛮漬け」って答えることにしてみたんだけど、いくら美味しくて自信があるからって、もう何年も作ってないものを言うのは気が引けちゃうから、今月中には、キッチンが汚れることを覚悟して、久しぶりに作ってみようと思う。他にも、「サケ缶キャベツ炒め」とか、「お豆腐のガーリックステーキ」とか、久しぶりに作って食べてみたいものがいろいろとあるんだけど、やっぱり、1人ぶんだけを作るのってムダが多いし、何よりも、1人で食べるのは切なくなる。だから、何を作るにしても、母さんが退院して来てからのお楽しみってことにして、それまでは、メザシと納豆のローテーションを続けてこうと思う今日この頃なのだ。


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