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2008.02.04

アリンコの涙

今朝、いつもとおんなじくらいの時間に目が覚めたのに、ヤタラとカーテンが明るくて、「あれ?」って思って、カーテンのスキマから外を見たら、雪が積もってた。それで、あたしは、軽くビックル一気飲みしたんだけど、こないだも雪が降ったし、こんなに寒いんだから、それほどの驚きはなかった。真夏の朝に、カーテンを開けたら雪が積もってたとかってんなら、それこそビックルの大ビンのビッギーを一気飲みしちゃうけど、「寒い冬の朝に雪が積もってた」ってのは、「メッタに雪が降らない東京に」っていう前提があってこその驚きで、たいしたことはない。そして、この時点でのあたしは、このすぐあとに、今世紀最大のビックル一気飲みが襲い掛かって来るとは、予想だにしてなかったのだ‥‥。

保冷倉庫の中みたいに、キンキンに冷えたお部屋で目覚めたあたしは、顔を洗うよりも、歯を磨くよりも、何よりも先に、とりあえず何か温かいものを飲むことにした。それで、油のきれたロボットみたくカクカクとキッチンへ行き、ヤカンを火にかけた。そして、コーヒーを入れようと思い、お湯が沸くまでの間に、一番大きなマグカップの上に、コーヒーをいれる時の逆三角形のアレを乗せて、フィルターをセットして、コーヒーの粉を入れた。だけど、お湯はまだ沸かないから、あたしは、ブルブルと震えながら、その場で足踏みしてた。

それで、あたしは、朝はいつもブラックを飲んでるんだけど、今日はあまりにも寒かったし、少し糖分を摂取したほうが体のためにいいかも?って思ったので、お砂糖を入れてみようかと思った。でも、あたしは、甘いコーヒーは嫌いだし、「どうしようかな?」って考えてる時に、1つのアイデアが浮かんだ。それは、「お砂糖の代わりに蜂蜜を入れてみる」って作戦だ。蜂蜜のほうが、お砂糖よりも栄養があると思うし、昔、学生時代に何度か行ったことのある「POEM」ってコーヒーショップがあって、そこは「100種類のコーヒーがある」ってのを売りにしてたんだけど、そのメニューの中に、蜂蜜を入れた「ハニーコーヒー」ってのがあったのだ。

もちろん、甘いコーヒーが嫌いなあたしは、いつも「その日のブレンド」を飲んでて、「ハニーコーヒー」は一度も注文したことがなかったんだけど、ちゃんとしたコーヒーショップのメニューにもあるんだから、お砂糖の代わりに蜂蜜を入れても、変な味にはなんないだろうって思った今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、あたしは、冷蔵庫の奥のほうにあった蜂蜜のビンを取り出した。これは、オトトシくらいに、俳句仲間の人が送ってくださったもので、長野県で手作りされてる「アカシアの蜂蜜」だ。それで、いただいたころは、パンもよく食べてたので、朝、トーストに塗って食べたりもしてたんだけど、去年、足をケガして収入がなくなってからは、できるだけ節約することにしたから、いただきもののお米やパスタだけを主食にして、パンを買うことはほとんどなくなり、その蜂蜜も使うことがなくなった。だから、去年の6月に冷蔵庫を買い換えてからは、ずっと冷蔵庫の中に入れっぱなしで、一度も使ってなかった。

半年ぶりで冷蔵庫から取り出されて、ようやく日の目を見ることになった蜂蜜は、外から見ると、全体的に白っぽくなってて、見るからに硬くなってる感じだった。それで、フキンでフタを包んでから全力でトライしたんだけど、想像した通り、とてもじゃないけどフタが開かなかった。そして、今度は、トンカチでフタの角を軽く叩いて、トントンと一周して、それからもう一度トライしてみたら、意外にも、クルッと回って簡単に開いた。で、ビンの中を見たあたしは、ここで、今世紀最大のビックル一気飲みが炸裂しちゃったのだ! ナナナナナント! ビンの中の硬くなった蜂蜜の上に、10匹以上のアリンコの死骸が散乱してたのだ!

あたしがビックル一気飲みしたのは、苦手な虫がいっぱい入ってたことはもちろんとして、「何で入ったのか?」ってことが理解できなかったからだ。だって、蜂蜜のビンのフタは、固くて開かないほどガッチリと閉まってたワケだし、さらに、そのビンは冷蔵庫の中に入れてあったのだ。それなのに、何でアリンコは入ることができたんだろう?‥‥ってなワケで、最近、何かと出番の多い迷探偵キッコナンだけど、推理を開始する前に、とにかく、ビンの中にお水を入れて、アリンコの死骸を流し出して、それだけじゃまだ気持ち悪かったから、もったいないと思ったんだけど、硬くなってた蜂蜜の上の面をスプーンで削り取って、全体的に数ミリほど捨てることにした。

だって、このビンの中で死んでたアリンコたちは、食料にはコト欠かなかったワケだから、どれくらいかは分かんないけど、このビンの中で生きてたワケで、そうなると、目の前の蜂蜜を食べるだけじゃなくて、そこにフンもしてたワケだ。だから、この蜂蜜の上の面には、あたしには見えなかったけど、きっと、アリンコのフンとかも混じってるワケで、最低でも上の面だけは削り取らないと気持ち悪い。

それで、あたしは、上の面を削り取って、何とか大丈夫そうな感じになった蜂蜜をスプーンに2杯ほど削って、マグカップに入れて、コーヒーをいれた。そして、よくかき回して、溶かしてから飲んでみたんだけど、味としてはイマイチだった。死ぬほど寒いお部屋で、温かい飲み物を飲んでるってことで、その点に関しては美味しいんだけど、純粋にコーヒーの味としては、ハッキリ言うけど、「コーヒーに蜂蜜は合わない!」って思った。これなら、お砂糖のほうがぜんぜんマシだ。

でも、もしかしたら、この蜂蜜が古くなりすぎてて、味が悪くなってるのかもしんないし、新鮮な蜂蜜なら、もっとマシな味になるのかもしんない。とにかく、この時点では、蜂蜜だけを舐めてなかったので、何とも言えない状況だった。それに、この時点でのあたしは、「何で密閉してたビンの中にアリンコが何匹も入ってたのか?」っていう大事件に遭遇してたから、そっちの謎を解くほうが先で、「蜂蜜を入れたコーヒーはまずい」なんてことの真偽は、あと回しの状況だった。

‥‥そんなワケで、イマイチの味の「ハニーコーヒー」で体を温めつつ、頭脳は子供でもベッドでは大人、迷探偵キッコナンは、この蜂蜜のビンを冷蔵庫に入れた時のことを思い出してみた。あたしの記憶では、去年の6月の終わりころのものすごく暑かった日に、突然、冷蔵庫が壊れちゃって、もう寿命だと思ったし、新しい冷蔵庫に代えるしかないと思って、いつものリサイクルショップに電話してみたんだけど、あいにく、ちょうどいい大きさの冷蔵庫がなかった。それで、松葉杖で必死にコジマ電気に行って、「エヴァンゲリオン~奇跡の価値は~」で勝ったお金で、新しい冷蔵庫を買って、次の日に届けてもらったのだ。

こんな時、日記をつけてると便利なもんで、「さるさる日記」の検索システムで調べてみたら、去年の6月24日の日記、「あたしはあたし」に、その時のことが詳しく書いてあった。それで、この日の日記を読み返してみたら、鮮明に思い出すことができたのだ。あたしは、とにかく冷凍しといたお魚が腐っちゃうことを心配して、お魚のことを中心にバタバタしてたんだけど、その他の冷蔵庫内のものに関しては、キッチンのテーブルの上と、シンクのところに、テキトーに並べておいたのだ。それで、蜂蜜のビンはと言えば、たしか、ジャムのビンや豆板醤のビンなんかと一緒に、シンクのとこに置いといたってことを思い出した。

で、このシンクのとこって、あたしのお部屋は2階なのに、どこから入って来るんだから、タマにアリンコを見かけてたのだ。それで、次の日に新しい冷蔵庫が届くまで、丸1日、ここに蜂蜜のビンを出してたワケで、迷探偵キッコナンは、アリンコが入ったとしたら、この時しか考えらんないと思った。そして、この時なら、お部屋の中はサウナみたいに暑かったから、蜂蜜のフタも簡単に開くような状態だったハズで、そう考えると、フタとビンとのスクリューになってる部分のスキマを小さなアリンコが「螺旋階段を上るように侵入して行った」ってことが考えられる。何しろ、一番ちっちゃいタイプのアリンコだから。

そして、あたしは、蜂蜜のビンの中にアリンコたちが入っちゃったことに気づかずに、次の日に届いた冷蔵庫の中に、他のものと一緒に仕舞っちゃったワケだ。そしたら、冷やされたことによって、蜂蜜も硬くなって、フタとビンとのスクリューの部分についてた蜂蜜も硬くなり、入る時にはギリギリで通れたスキマが、もう通れなくなっちゃった。それで、出るに出られなくなったアリンコたちの「ビンの中での生活」がスタートしたってワケだ。

アリンコたちにしてみれば、周りは美味しい蜂蜜だらけだし、少々寒いことだけガマンすれば、そんなに絶望的な状況でもなかったと思う。ただ、ひとつだけ心細いのは、あたしが冷蔵庫のドアを開ける数秒以外は、常に暗闇だったってことだ。ま、アリンコの場合は、巣の中も真っ暗なんだから、暗闇の中で生活するのには慣れてると思うけど、それでも、昼も夜も分かんない暗闇での生活は、体内時計だけが頼りだろうから、アリンコなりの不安があったかもしんない。

‥‥そんなワケで、ナンダカンダ言っても、あたしは、リトル自己嫌悪に陥った。アリンコたちがいつ死んだのかは分かんないけど、少なくとも1週間や2週間、ヘタしたら1ヶ月か2ヶ月くらいは生きてた可能性もあるワケで、その間に1回でもあたしが蜂蜜を食べようとしてれば、アリンコたちを助けてあげることができたからだ。それなのに、あたしは、この半年間、何度も何度も冷蔵庫を開け閉めしたのにも関わらず、奥のほうの蜂蜜のビンの中で、外に出られずに苦しんでたアリンコたちの存在に気づかずに、息絶えたあとも気づかずに、こんなに時間が経ってから、ようやく気づいたってワケだ。もちろん、意図的に殺したワケじゃないけど、それでも、「蜂蜜を食べようとしてれば助けてあげることができた」って思うと、すごく悔やまれる。そして、この蜂蜜を入れたコーヒーが美味しくなかったのは、アリンコたちの涙の味だったのかも‥‥って思った今日この頃なのだ。


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