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2008.05.28

辰巳泰子の言霊

Ty3
お知らせしといた「予習」をしてくれたものとして書いてくけど、あたしは、今から十数年前、仲の良い先輩俳人から、「ものすごい歌を詠む歌人がいるよ!」と、辰巳泰子さんの第2歌集、「アトム・ハート・マザー」を紹介された。「アトム・ハート・マザー」って言えば、ピンク・フロイドの有名なアルバム、楽曲のタイトルで、ニポンでは「原子心母」っていうヘンテコな邦題でリリースされたけど、歴史的な1枚なので、名前くらいは聞いたことのある人も多いだろう。

ピンク・フロイドとかキング・クリムゾンとかってバンドは、当時「プログレ(プログレッシブ・ロック)」って呼ばれてて、簡単に言えば、シロートには分かりにくい難解なものだった。普通のロックが「写生画」なら、プログレは「抽象画」って感じだった。リリックスから明確なストーリーや世界観を受け取る一般的なロックと違って、繰り返される効果音や不協和音など、ヤタラと芸術的だから、ホントは分かってなくても、分かったような顔をして聴いてるような人たちも多かったハズだ。

で、そんなプログレを代表するバンド、ピンク・フロイドのアルバムタイトルをつけた辰巳泰子さんの歌集だったから、あたしは、分かりにくい前衛的な短歌なんじゃないかって思った。絵でも音楽でも詩でも、どんなジャンルにも「難解=高尚」って考える人がいるから、先輩俳人の「すごい歌を詠む歌人」て言葉が、そっちの意味での「すごい」なのかと思って、最初はあんまり触手が動かなかった今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、そのタイトルによる先入観から、難解な短歌、前衛的な短歌を想像してたあたしは、辰巳泰子さんの「アトム・ハート・マザー」を手にして、最初のページをひらいたトタンに、その思いはふっ飛んだ。そこにあるのは、現代短歌の主流である「頭の中だけで空想して作る創作」の世界とは一線を画した、血の通った生(なま)の声の数々だった。

「予習」で過去ログを読んでくれた人なら、これ以上の説明は不要だと思うけど、今の歌人のほとんどは、恋愛にしろ感動にしろギャグにしろ、すべて頭の中だけで創作して、それをあたかも事実のように31音にマトメてる。つまり、短歌ってのは「31音の小説」であり、評価されてる歌人の多くは、架空の話を作り上げる才能と技術に長けた「小説家」ってことになる。

だから、見たものを見たままに詠むことを王道とする「俳句」をやってるあたしとしては、良くできた短歌ほどウサン臭さを感じるんだけど、それはそれ、短歌と俳句では、「歌」としての位置づけもスタイルも対象もまったく違うんだから、そこんとこはツッコミを入れる部分じゃない。短歌を鑑賞する場合には、あくまでも「創作」として楽しむことが前提で、それこそ、小説を読むのとおんなじだ。小説を読む時に、「どうせ頭の中だけで作ったんだろう」なんて思いながら読む人はいないワケで、アニメを観る時に、「こんなことアリエナイザーだろう」なんて思いながら観る人はいないワケで、これらとおんなじだ。

‥‥そんなワケで、あたしは、短歌に対しては、自分の実践してる俳句とはまったく違う鑑賞の仕方をして楽しんでたんだけど、辰巳泰子さんの歌と出会って、この考え方は一変した。泰子さんの歌は、小説は小説でも、完全に「私小説」なのだ。短歌にありがちな「誰かを演じる」という芝居感覚が皆無だから、脚色や創作の味つけがなされていたとしても、そこには常に「辰巳泰子」という1人の女性が立っている。言葉のひとつひとつに、体温があり生きているから、ナイフで切れば血が噴き出す。これが、泰子さんの歌だ。

これは、俳句の海を泳いで来たあたしにとって、ものすごい衝撃だった。こんなふうに短歌を操る人がいたなんて、短歌という詩形を見直すキッカケにもなったし、何よりも、あたしは、泰子さんの歌の世界に引き込まれた。そして、「アトム・ハート・マザー」を読み終えたあたしは、この歌集を紹介してくれた先輩俳人に頼んで、泰子さんの第1歌集「紅い花」を貸してもらって読んだ。

それからのあたしは、いつも泰子さんに注目するようになって、第3歌集の「仙川心中」、第4歌集の「恐山からの手紙」、第5歌集の「セイレーン」は、ちゃんと買って読んだ。俳句の句集もメッタに買わないあたしが、短歌の歌集を買うなんて、ヨホドのことなのだ。書籍版「きっこの日記」の「きっこさんに50の質問」のコーナーでも、「好きな歌人」として、辰巳泰子さんの名前を挙げてるほどだ。

で、ここまで書いて来て、いつものあたしなら、泰子さんの歌を何首も紹介してるハズなのに、なぜ?‥‥ってワケで、これには大きな理由がある。それは、このたび、泰子さんの短歌朗読ライブの様子をおさめたDVD、「聖夜」がリリースされることになったからだ! 泰子さん、おめでと~♪

このDVDには、過去に「ネイキッドロフト」や「ロフトプラスワン」で行なわれたライブの他に、新たに撮り下ろした新宿路上ライブの様子もおさめられてて、ホントに素晴らしくて大感激した。あたしが泰子さんと出会った「アトム・ハート・マザー」からも60首が朗読されてて、10年以上も、あたしの胸の中に置かれてた泰子さんの言霊が、泰子さん自身の声で歌われることによって、ひとつひとつ昇華して行くような感覚に包まれた。そして、短歌の朗読が素晴らしいのは当然として、朗読の合間のトークにも、胸がジーンとした。だから、あたしが、泰子さんの歌を紹介しなかったのは、初体験の人たちには、まずは、このDVDで味わって欲しいと思ったからだ。

このDVD、「聖夜」は、6月1日にリリースされるんだけど、6月1日(日)の午後1時から、新宿の「ネイキッドロフト」で、リリース記念のライブが行なわれる。チャージは1ドリンク付きで4000円なんだけど、これは、3500円のDVDを含んだ料金なので、ものすごくお得なのだ。

さらには、トークライブのゲストがワンダホーで、テレビでも有名な歌人の枡野浩一さんと、短歌絶叫ライブでオナジミの福島泰樹さんという、あまりにも美味しすぎる顔ぶれだ。枡野浩一さんは、某短歌賞で、最高得点をとりながらも、歌壇の不思議な裏の事情によって大賞を獲れなかった時の50首の中に、あたしの大好きな歌がある。


 「このネコをさがして」という 貼り紙がノッポの俺の腰の高さに  枡野浩一


そして、福島泰樹さんは、東京の下町のお寺の住職さんにして、「頭脳警察」のトシさんと絶叫ライブをやっちゃうようなすごい歌人だ。まあ、あまりにも著名なお2人だから、短歌をやってない人でも知ってる人は多いと思うけど、このメンバーでのトークライブは、ある意味、「洞爺湖サミット」よりも地球のためになるだろう。

‥‥そんなワケで、この「聖夜」は、短歌の歴史に残るDVDになるだろう。短歌に興味のある人はもちろんのこと、今までは興味のなかった人も、作者による朗読ライブを聴くというのは、自分で歌集を読むのとはまったく違う世界なので、ぜひ味わって欲しいと思う。そして、辰巳泰子という1人の女性が生み出す言霊の世界を肌で感じてみて欲しいと思う。きっと、何らかの気づきにつながると思うから‥‥って感じの今日この頃なのだ。


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