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2008.05.24

親の気持ちと子の気持ち

あたしは、子供のころ、朝ご飯は「ご飯」が多かった‥‥って変だけど、パンよりもご飯が多かったって意味だ。ご飯とお味噌汁とお漬物の他に、納豆か生タマゴがついたり、生タマゴの代わりに1つだけの目玉焼きの時もあった。それから、すごくタマに、シャケとかアジのヒラキとかが出ると嬉しかった。煮物とか、前の晩のオカズが残ってた時は、それが出ることもあった。だから、そんなに豪華じゃなくて、そんなに質素じゃなくて、ごく平均的なニポンの朝ご飯だったと思う。

それで、月に数回、パンの時があったんだけど、これがホントに嬉しかった。それは、パンが嬉しかったんじゃなくて、お味噌汁の代わりにコンソメスープがついたからだ。パンは、基本的には食パンのトーストだったけど、年に何回かは、フランスパンをナナメにスライスしたトーストだったり、バターロールだったり、クロワッサンだったりした。でも、パンは給食で出るから、そんなに珍しくもなかった。オカズも、1つだけの目玉焼きだったりしたから、ご飯の時と変わらない。ただ、コンソメスープだけが特別で、すごく嬉しかった。

マグカップにコンソメの素を入れて、お湯を入れただけなんだけど、なんでそんなに嬉しかったのかって言うと、1枚のソルトクラッカーが浮かべてあったからだ。しばらく飲まずにガマンしてると、ソルトクラッカーはどんどん大きくなってって、マグカップいっぱいの大きさになる。それでもガマンしてると、マグカップからはみ出すほど大きくなる。それをスプーンで崩しながらスープと一緒に食べると、何とも言えない美味しさで、子供のころのあたしにとっては、ものすごいゴチソウだった‥‥なんてことを思い出した今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、コンソメの素もソルトクラッカーも、それほど高いものじゃなかったから、あたしがリクエストすれば、母さんはいつでも作ってくれただろう。だけど、ご飯にはお味噌汁って決まってたから、その他にコンソメスープまで作ってもらうワケには行かなくて、結果的に、パンの日にしか飲むことができなかったってワケだ。つまり、値段が高いから年に一度くらいしか食べられなかったお寿司とかウナギとかとは違って、我が家の食事のシステム上の問題として、タマにしか飲めなかった‥‥ってことなのだ。

だから、子供のころのあたしは、朝ご飯がパンの日に作ってくれる、1枚のソルトクラッカーを浮かべたコンソメスープが大好きで、これに、キュウリを薄い輪切りにしたのとシーチキンをマヨネーズで和えたのがついてたら、朝から踊り出したくなるほど嬉しかった。それで、アニメの「ちびまる子ちゃん」で、まる子がお母さんに「シーチキンとキュウリのマヨネーズ和え」を作って欲しいって言ってるシーンを見た時には、「まる子よ、お前もか!」って思ったほどだ。

で、何年生の時かはハッキリ覚えてないんだけど、たぶん3年生か4年生のころ、だから、まる子とおんなじくらいのころだと思うけど、一度だけ、すごいことがあった。朝、食卓につくと、ラーメンの丼にいっぱいのコンソメスープに、クラッカーが4枚浮かべてあったのだ。母さんは、「ご飯を炊き忘れちゃって、パンも買い忘れちゃって‥‥」って言って謝ってたけど、あたし的には、ものすごく嬉しかった。

あたしは、ちょっとしたコーフン状態になりつつ、スプーンの先でクラッカーをつついてみたりしつつ、ワクワクしながら大きくなるのを待った。4枚のクラッカーは、ジワジワと大きくなって行き、丼いっぱいの大きさの田んぼの「田」の字になった。それで、あたしが夢中になって食べてたら、母さんが「クラッカーのおかわりはあるからね」って言って、何枚かのクラッカーを乗せたお皿まで出してくれたのだ。たった一度だけだったけど、あたしにとっては、忘れられない朝ご飯だった。

‥‥そんなワケで、あたしがこんなに喜んだのに、この「丼のコンソメスープ」は、二度と出なかった。あたしが、「こないだの、また作ってね」って言っても、母さんは、「ああ」とか「うう」とかハッキリしない返事をするだけで、二度と作ってくれなかった。あたしが「また作ってね」って言えば、「どんどん焼き」でも、「チクワ入り焼きそば」でも、何でも作ってくれた母さんなのに、この「丼のコンソメスープ」だけは、二度と作ってくれなかった。

そして、あたしは、ずっとしてから、この時は、ご飯を炊き忘れたのでもパンを買い忘れたのでもなくて、お米やパンを買うお金がなかったってことをウスウスと知ったのだ。だから、母さんは、大喜びしたあたしの気持ちとはウラハラに、「お金がなくて自分の子にこんな粗末な食事しか作ってやれなかった」ってことを恥じたんだと思う。当時のあたし的には、毎朝これでも良かったのに、母親の立場では、大きく違ってたんだと思う。

子供の食べたがるものを作ってあげることだけが「母親の愛情」ってワケじゃないんだよね。だから、あたしは、大人になって母さんの気持ちが分かるようになってから、何度も「また作ってね」って言っちゃった当時の自分を責めた。でも、「孝行をしたい時分に親はなし」ってコトワザがあるように、こうした「親の気持ち」って、自分が大人になってからじゃないと分かんないことだから、仕方ないと言えば仕方ない。大切なのは、親の気持ちが分かった時点で、過去を反省することじゃなくて、親や社会に返して行くことだと思う。自分が受けた愛情を今度は自分が返す番になったんだってことを理解すれば、おのずと考え方や生き方も変化して来ると思う。

ちなみに、あたしは、「親孝行」って言葉が嫌いだ。だって、自分を産んでくれて、育ててくれた親を大切に思うのは当たり前のことだし、わざわざ「親孝行」なんて言葉を使って、何か特別のことをするような、まるで「親を大切にする人間は偉い」とでも言うような、このおかしな感覚が嫌いなのだ。だけど、最近は、自分の子供を殺す親とか、自分の親を殺す子供とか、とてもマトモとは思えないような犯罪が連発してるから、わざわざ「親孝行」って言葉を使って、この「当たり前のこと」を学校で教えないと、ダメな世の中になって来たのかもしれない。

でも、あたしは、「自分の親を大切にする」なんてことを学校で教えなきゃなんなくなったら、もう、世も末だと思う。だって、「自分の親を大切にする」なんてことは、人から教わったり強制されたりして、誰かに言われてすることじゃないからだ。そして、誰かに言われて親孝行したって、そんなもん、ホントの親孝行とは言えない。こんなの、「母の日だから何かプレゼントする」ってのとおんなじで、ホントの愛情じゃない。親孝行してる自分の姿に自己満足してるだけの自己チュー野郎でしかない。こういう人は、恋人を愛する場合でも、相手の気持ちなんか二の次だ。常に自分の所有欲や支配欲を満たすことしか考えてないから、頭の中にあるのは、いつでも損得勘定だけなのだ。

‥‥そんなワケで、母と子ってのは、もっとも強い血縁関係であって、「母親が子供を守るために自分の命を投げ出した」なんて話は、数えきれないほどある。これも、「母性」による本能的な行動で、脳みそでアレコレと損得勘定をしての行動とは違う。そして、人間は、自分がやさしくされたら、その人にもやさしくしてあげたいと思うのは普通の感覚で、そこに血縁関係があれば、その気持ちはさらに強くなる。だから、親から愛されて育てられれば、その親を愛するようになるのは当たり前だし、その気持ちが「親孝行」へとつながるんだから、誰かに教わるようなことじゃない。自分で気づき、自発的に始まることだ。

だけど、最近は、朝ご飯を作らない母親とか、自分の子供にお金を渡して、コンビニでパンを買って食べるように言うような母親もいるそうなので、もしかすると、社会全体で、「母性」ってものが希薄になって来たのかもしれない。自分の子供を車の中に置き去りにしたまま、何時間もパチンコをして、戻って来たら子供が熱中症で死んでたとか、幼い子供たちをアパートに置き去りにしたまま、夫婦でスノボに行っちゃって、帰って来たら火事でみんな死んでたとか、とても普通じゃ考えられないことが何度も繰り返されてる。

たとえば、こうした親たちが、子供の代わりに100万円の現金を持ってたらどうしただろう。車の中に100万円の現金を置いたまま、何時間もパチンコを打つだろうか? アパートに100万円の現金を置いたまま、丸1日、留守にするだろうか? たぶん、そんなことはしないだろう。銀行に預けたり、バッグに入れて肌身離さずに持ってるだろう。そして、これが、50万円でも、30万円でも、車の中やアパートに置きっぱなしにはしないだろう。つまり、こうした親ってのは、自分の子供の命を50万円や30万円よりも低く見てるのだ。

‥‥そんなワケで、あたしは、今までに何度も書いて来たけど、お年寄りってのは、その国の宝だと思ってる。言うなれば、その国を造って来た「親」たちなのだ。そして、その大切な「親」を家族から切り捨てるような前代未聞の悪法、「後期高齢者医療制度」を作ったコイズミは、人としてもっとも大切な心すら持ってない冷血漢だと思ってる。だから、あたしは、コイズミチルドレンの杉村太蔵が、生後2ヶ月の自分の赤ちゃんを自宅に残したまま、夫婦でノンキにデートに出かけちゃって、帰って来たら赤ちゃんが高熱を出してて大変だったって話を聞いた時も、「親が親なら子も子だ」って思った。国の「親」であるお年寄りを冷酷に社会から切り捨てたコイズミと、自分の子供さえもマトモに育てられないコイズミチルドレン‥‥こんな大バカどもが政治家をやってんだから、国民の中にも、親を親とも思わないような人たちが増えて来たんだと思う今日この頃なのだ。


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