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2008.05.12

母さん、ありがとう♪

どこかへ旅行に行くことになった時って、旅行自体が楽しいのは当然として、思い立ってから出発までの過程も、ワクワクしてすごく楽しい。そして、帰って来てからも、撮って来た写真を見たり、お土産を見たりして、その余韻を楽しむことができる。だから、たった一泊の旅行でも、考えようによっちゃ、1ヶ月くらいは楽しい気分でいられる。特に、あたしの場合は、皆さんご存知の通り、生粋の「妄想ジェンヌ」だから、いろんな情報を集めたり、地図帳を見たりして、「どこに行こうか」「何をしようか」って考えてる時が、何よりも楽しい。

で、今日は全国的に「母の日」だったけど、あたしは、母さんと日帰りで温泉に行こうと思って、ずいぶん前から計画を立ててた。インターネットでいろんな温泉サイトを見たりして、いくつかの温泉をピックアップして、料金や泉質や名物を調べたり、ルートを考えたりと、ヒマさえあればアレコレと楽しんでた。それで、こういうのって、最初は妄想的なとこから始まって、行く日が近づいて来るに従って、ジョジョに奇妙に現実的になって来る。

最初は「伊豆に行って、美味しいお魚を食べて、海の見える露天風呂に浸かって‥‥」なんて考え始めるんだけど、2週間前くらいになると、「伊豆はムリだから鶴巻温泉あたりにするか」なんて思い始めて、1週間前くらいになったら、「車で30分で行ける深大寺温泉にしよう」ってことになっちゃった。最初は、片道150kmくらいまでの範囲を考えてたんだけど、ガソリン代が発狂したみたいに高くなっちゃったし、高速料金もバカになんないし、結局、一度は行ってみたいと思ってた近所の深大寺温泉でいいや‥‥って気持ちになった。

それで、その温泉のホームページを見てみたら、内湯も外湯もすごく良さそうだったから、1人1650円はふだんなら考えられない高さだけど、「母の日」だからOKってことにした。そして、「深大寺ならおそばが名物だから、お昼はおそばを食べよう」って思って、何とかフランク・ザッパな計画だけは立てられた今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、あたしは、この計画で決まりのつもりでいたんだけど、2日前の金曜日になって、ちょっと心配だったから、念のために、温泉のクチコミサイトを見てみた。そしたら、唖然としちゃう感想が並んでた。もちろん、良い感想もあったんだけど、それはすべて「平日の空いてる時」に行った人たちの感想で、「休日」に行った人たちの多くは、ボロクソに書いてた。複数の感想で多かったのが、「混雑してて洗い場まで長蛇の列」「風呂に入っている時間より並んでいる時間の方が長かった」「脱衣所、休憩所、風呂、すべてが狭くてくつろげない」「従業員の態度が悪い」「お湯がアンモニア臭で不快」「子供連れが多くてやかましい」などなど。

これじゃあ、母さんを連れてけないや‥‥ってことで、「母の日」の2日前になって、あたしは、大あわてで「温泉探し」を始めたんだけど、一度「近場で済まそう」って決めちゃったあとだったから、なかなか遠出するテンションには気持ちが向かない。それで、気持ちが向かないのに探してるワケだから、いろんなサイトを見たりしても、ワクワクしないし楽しめない。で、「もういいや」って気持ちになって、結局、地元の銭湯、「ポカポカランド」に行くことにした。

あたしは、今年の1月までは、足のリハビリのために、月に3~4回くらいは行ってたんだけど、2月からは行ってなかったし、母さんは、もう1年くらい行ってないハズだ。だから、夕方の早い時間から、一緒に行くことにした。銭湯って言っても、ちゃんと地下から湧いてる「東京黒湯」だから、泉質としては、深大寺温泉とおんなじだ。それが、4分の1の料金、430円で入れるんだから、こっちのほうがぜんぜんいい。

‥‥そんなワケで、今日は午前中に車で母さんを迎えに行って、一度戻って来て車を置いてから、のんびりと歩いて高島屋に行った。それで、南館に入ったら、入口のホールで「母の日フェア」みたいなのをやってて、ゴージャスなカーネーションがドバッと並んでて、「母の日」の気分が盛り上がりまくった。そして、アレコレと見てると時間がもったいないから、正面のエスカレーターでサクッと5階の紀伊国屋さんに行って、「女性のエッセイ」の棚のとこに母さんを連れてって、ちゃんと「きっこの日記R」が置かれてるのを見せて自慢した(笑)

ホントは、発売してすぐの「平積み」の時に自慢したかったんだけど、今は棚に1冊あるだけで、それが売れると、下の引き出しみたいなとこから1冊出して補充する‥‥って形だからジンジャエールだ。でも、ちゃんと本屋さんに並んでるのを見て、母さんは喜んでくれた。実は、あたしの本が本屋さんに並んでるとこを見せたのは、3冊目にして初めてだったのだ。で、アホな自慢も終わったので、ひとつ上の6階に行って、ちょっと早いお昼を食べることにした‥‥っていうか、それが目的で高島屋に来たんだけどね。

温泉を銭湯にしちゃったから、せめて食事くらいは豪華にしようと思って、「あたしは、お寿司でも天ぷらでもうなぎでも何でもいいんだけど、母さんは何が食べたい?」って聞いたら、間髪入れずに「うなぎ!」って言ってくれて、あたしは「おおっ!」って思った。実は、あたしはうなぎが食べたかったから、内心、「うなぎって言ってくれよ!」って思いながら聞いてたのだ。「母の日」なんだから、母さんの食べたいものにするのは当然なんだけど、高島屋の6階で食事するなんて、年に一度あるかないかのゼイタクなので、マグロとサーモンが危険なお寿司よりも、イマイチ揚げ方に納得が行かない天ぷらよりも、やっぱ「和田平」のうなぎが食べたかった。サスガ、あたしの母さんだ♪

‥‥そんなワケで、母さんとあたしは、うなぎ屋さんの「和田平」に入った。お昼になると、どのお店も並ぶほど混んじゃうから、お昼前に入るのがポイントなのだ。で、一番上等な「うな重」を2つと、タマゴ焼きの中に蒲焼きが入ってる「う巻き」を注文したんだけど、運ばれて来てから、「あたし、タマゴ食べちゃダメじゃん!」ってことに気づいたのだ。牛肉、豚肉、鶏肉の入ったものは絶対に注文しないんだけど、タマゴはウッカリしてたよ。うなぎ屋さんだってことで安心してて、メニューにあるものはぜんぶOKって思い込んじゃってた。これだから、あたしって、ヘナチョコベジタリアンなんだよな‥‥って、ちゃんと自己申告するとこが偉い! タマゴを食べたことはマイナスだけど、正直に自己申告したことはプラスだから、プラマイ0だ!(笑)

とにかく、チョー久しぶりに食べた本格的なうなぎは、この世の食べ物とは思えないほど美味しくて、母さんもあたしも大満足だった。それにしても、こんなに感激してるんだから、あたしに食べられたうなぎも幸せだろう。少なくとも、隣りの席の鼻毛の出てるオジサンに食べられたうなぎよりは、あたしに食べられたうなぎのほうが、絶対に「ラッキ~♪」って思ってるハズだ。「ラッキ~♪」とは思ってなくても、少なくとも「不幸中の幸い」って思ってるハズだ。

で、美味しいうなぎを食べて幸せになった母さんとあたしは、催し物会場で恒例の「くらしを彩る/一郷一品すぐれもの市」をやってるってポスターが貼ってあったから、見に行ってみた。秋田は大館の「曲げわっぱ」とか、岩手は盛岡の「南部鉄器」とか、新潟は加茂の「桐箪笥(きりだんす)」とか、滋賀は大津の「とんぼ玉」とか、大分は別府の「つげ細工」とか、鹿児島は奄美の「大島紬」とか、東京の下町の「江戸切子」とか、どれもこれもステキで、どれもこれも高くて、いい目の保養になった。

それにしても、1万5000円の江戸切子のビアタンブラーとかなら、キヨミズの舞台からバンジージャンプしたつもりで、6回払いにすれば買えないこともないけど、13万円の金魚鉢なんて、何かのギャグかと思っちゃった。最初、1万3000円かと思って、それでも「高いね~」なんて言ってたのに、よくよく見たら、13万円だった。そしたら、母さんたら、「この金魚鉢で飼われる金魚って、あたしよりも高い家賃の部屋に住めるんだね」なんて言うもんだから、2人で顔を見合わせて爆笑しちゃったよ(笑)

でも、広島は安芸郡熊野町の「熊野筆」のメイクブラシも出品されてて、ポーチに入った基本の5本セットが2万円以下だったのは、「おおっ!」って思っちゃった。あたしも、熊野筆は2本愛用してるけど、2本ともチーク用とフェイス用の大きなものだから、1本1万円以上した。もちろん、お仕事用のもので、自分用のなんか持ってない。ま、あたしはツラの皮が厚いから、こんな高級なメイクブラシは必要ないけど。

‥‥そんなワケで、他にもいろんなお店を見たりして、ちょっと疲れたからカフェでコーヒーとケーキのセットをいただいたりしつつ、ナンダカンダとウロウロしてたら、知らないうちに3時近くになっちゃった。それで、銭湯は3時半からだから、母さんにはベンチで待っててもらって、あたしは、ヒサビサのハイヒールダッシュで、お家にお風呂セットを取りに行った。で、約10分で戻って来て、またまたウロウロして時間を潰してから、のんびり歩いて「ポカポカランド」へ向かった。

歩きながら、あたしは、「ホントは近場の温泉にでも行きたかったんだけど、せっかくの母の日に銭湯なんて、ごめんね‥‥」って言った。そしたら、母さんは、「あたしはポカポカ大好きだから、こんな早い時間から入れるなんて、とっても嬉しいよ♪」って言ってくれた。ポカポカランドは、ホントに素晴らしい銭湯だから、母さんもあたしも大好きなんだけど、年に一度の「母の日」に銭湯にしか連れて行ってあげられないなんて、あたしは、ちょっと後ろめたい気持ちがしてた。

だけど、ポカポカランドに到着してみて、あたしのこの気持ちは一変した。ナナナナナント! ナナナナナント! ナナナナナント!って3回も繰り返しちゃうけど、地元の唯一の銭湯、通称「ポカポカランド」、正式名称「新寿湯(しんことぶきゆ)」が、今月いっぱいで廃業しちゃうのだ!

20年以上前にニコタマに引っ越して来た時には、駅の反対側にも「玉川湯」って銭湯があって、あたしは、両方の銭湯をその日の気分で使い分けてた。だけど、「玉川湯」は、数年前に廃業しちゃって、駅の周りの再開発で、他にもいろんな老舗が取り壊されてった。ヨソから来る人たちのために、地元の人たちの思いを無視して、シャレたショップを並べるそうだ。煙たいけど美味しかった焼き鳥屋さんとか、老夫婦ががんばってた小さなうなぎ屋さんとか、商店街の人たちの憩いの場だった床屋さんとか、子供たちに人気のあったケーキ屋さんとか、次々と潰されてった。そして、そのシンボル的な存在だった「玉川湯」も、廃業に追い込まれたのだ。だけど、ポカポカランドだけは、何十年もみんなに愛されてる銭湯だったから、絶対に廃業なんてないと思ってたのに‥‥。

あたしは、行こうと思ってた深大寺温泉をやめて、地元のポカポカランドにしたことが、なんか、ジャーガイダンス(神様のお導き)のように思えた。だって、今月いっぱいで廃業しちゃうなんて知らなかったから、今日を逃したら、もう、二度と母さんと一緒に来ることなんてできなかったからだ。

母さんと一緒に、いつもの「東京黒湯」に浸かりながら、いつもの「赤富士」のタイル絵を眺めながら、いろんなことを話した。これが入り納めかと思うと、いろんな思い出が蘇って来て、なんだかシンミリとしちゃった。あたしだけなら、もう1回くらい来ることはできるけど、母さんと一緒に来られるのは、たぶん今日が最後になっちゃうから、いろんな意味で感慨深かった。

‥‥そんなワケで、あたしは、さっきまでは「母の日に銭湯なんて」って思ってたのに、なんだかすごく良かったって思えた。母さんも、「初めてここに来たのって、きみこが高校1年生の時だったよね」なんて言って、お互いに、忘れかけてたいろんなことを思い出せた。だから、今日は地元の銭湯にして、ホントに良かったと思う。

そして、お風呂上がりには、解凍サンマ、キャベツ、ダイコン、ニンジン、長ネギ、シイタケ、ショウガ、お豆腐、糸コンニャクと、ものすごくゼイタクなお買い物をして、夜は、サンマ鍋を作ることにした。お家に帰って、お鍋の用意をする前に、母さんに、用意しといた「母の日」のプレゼントを渡した。今年のプレゼントは、去年の夏から取りかかってたんだけど、小型のスケッチブックの右のページに透明水彩絵の具で絵を描いて、左のページに俳句を書いたものだ。夏から始まって、今年の春まで、少しずつ少しずつ描いて来て、やっと1冊が完成した。

去年、足をケガして、お仕事ができなくなって、すごく落ち込んでた時、自分の生活も苦しかったから、「これじゃあ来年の母さんのお誕生日には、何にもプレゼントできないかもしれない」って思った。それで、今年の母さんのお誕生日には、万が一の時には手作りのものをプレゼントしてお茶を濁そうと思って、コツコツと描いてたのだ。だけど、4月の母さんのお誕生日には間に合わなくて、5月の母の日になっちゃった。最後のページには、あたしの思いをぜんぶ書いた。そして、カーネーションと一緒に母さんに渡してから、あたしは、キッチンにお鍋の用意をしに行った。

このタイミングで渡したのは、あたしのヘタクソな絵を母さんが見てるとこを横で見てるのが、恥ずかしかったからだ。それで、キッチンでお鍋の用意をして戻って来たら、母さん、泣いてた。泣いてる母さんを見たら、なんか、あたしも涙が出て来て、2人でずっと泣いちゃった。なんだか、バカみたい(笑)

‥‥そんなワケで、世の中には、ものすごく豪華なプレゼントをした人もいると思うし、田舎のお母さんに電話して「ありがとう」って言うことしかできなかった人もいると思うし、何もしなかった人もいると思うし、人それぞれだと思う。そして、「ありがとう」を言いたくても、もうお母さんがいない人も多いと思う。だけど、今、あたしたちがここにいるのは、お母さんが産んでくれたからなんだよね。10ヶ月もの間、お腹の中で育ててくれて、苦しい思いをして産んでくれたからなんだよね。だから、世界中の人たちが、たった1人しかいない自分のお母さんに対して、心の中で「ありがとう」って言って欲しいし、その思いを「母の日」だけじゃなくて、自分が死ぬまで、ずっと持ち続けて欲しいと思う今日この頃なのだ。

母さん、あたしを産んでくれて、ホントにありがとう♪


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