ウナギのヒラキナオリ
今日の日記は、昨日からの流れで、ウナギの蒲焼きの産地偽装について書こうと思うんだけど、1年も前から「ニポンで売れられてるウナギはほとんどが産地偽装」だってことを書いて来て、書籍版の「きっこの日記」でも、この問題を取り上げて来たあたし的には、激しく「今さら」って感じがマンマンだ。だけど、そうも言ってられないので、まずは、去年の6月23日の日記、「マジメな人がバカを見る美しい国」で紹介した1通のメールをここに再掲する。
お名前:YT
E-mail:xxxxx@xxxxx.ne.jp
コメント:きっこさんこんにちは。社名は言えませんが、私は西の方に本社のある中堅の水産物問屋に勤めてます。私は主に「うなぎ」を扱っているのですが、そのことできっこさんにお伝えしたいことがあります。きっこさんはご近所のスーパー等で「うなぎの蒲焼き」を買ったことはありますか?そこで「四万十川産」と表示してある蒲焼きを見掛けたことはありますか?今はネット通販でもよく見掛けますが、あれは殆どが中国産です。いわゆる「産地偽装」です。四万十川の養殖うなぎは全国のスーパーや通販で販売できるほどの数は絶対に確保できません。僅かな本物の四万十川産は、養殖場と直接契約している高級店等に納品されてしまい、一般には殆ど流通しません。中国産うなぎを国産と偽って販売するのは十年程前から激増してきましたが、その現状は酷いものです。たとえば、国内のどの養殖場もまだ「新仔」を出荷していない四月に、東京の有名なデパートの地下食品売り場では、国産の「新仔」のシールを貼った蒲焼のパックが並んでいます。日本中の全ての養殖場が出荷していない「新仔」をどうしたら四月に売ることができるのでしょうか?食肉産業の産地偽装は今や当り前ですが、水産物も同じです。きっこさん、四万十川のうなぎを食べたかったら、高知まで行って下さい。本物を食べたらスーパーやネット通販の「四万十川産」が偽物だということがすぐに分かります。味が全然違います。(後略)
このメールを読めば分かるように、この国の食品の産地偽装は、今や日常茶碗蒸しだ。賞味期限を改ざんした「吉兆」のデザートや「白い恋人」が売られてたのも一流デパートの地下の食品売り場だし、そんな場所でも当たり前のようにインチキ食品が売られてるんだから、そこらのスーパーなんか「何でもアリ」の世界だと思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、あたしは、去年の9月26日の日記、「そのまんま偽装大国」でも、ニポン中に流通してるウナギのうち8割は「産地偽装」のインチキウナギだってことを書いた。わざわざ過去ログを読むのがメンドクサイ人のために、要点だけを書くけど、現在のニポンの年間のウナギの消費量は、約12万トンだ。そして、そのうちの国産は約2万トンだけで、残りの10万トンは、中国からの輸入が約7万5000トン、台湾からの輸入が約2万5000トンだ。この数字だけ見れば、ニポン国内に流通してウナギのほとんどが、輸入モノだってことが分かるだろう。
でも、ニポン中でウナギを食べてる人たちの多くは、自分は国産ウナギを食べてると思ってる。それは何でかって言えば、1人前2500円も3000円もする「うな重」が、マサカ、中国産のウナギのハズはないと思い込んでるからだろう。お店の看板やメニューに「宮崎産」て書いてあるからだろう。ウナギの産地の「浜名湖」まで来て、そこのお店で食べてるからだろう。スーパーに並んでる蒲焼きのパックに「愛知産」て書いてあるからだろう。ネットショップの宣伝文句に「四万十産」て書いてあるからだろう。
だけど、そしたら、全国を流通してる85%近い輸入モノのウナギは、いったいどこで消費されてるの? すべてのお店のウナギが、看板通りにちゃんとした国産で、スーパーに並んでるパックも表示通りに国産で、ネットで売られてるウナギも、宣伝文句通りに国産だったら、中国産や台湾産のウナギはどこに行っちゃったの? さらに言わせてもらえば、国産のウナギは全体のわずか15%しかないのに、全国のお店やデパ地下やスーパーやネットショップで売りまくれるほど、あるワケないじゃん。
ニポンの人口は1億2000万人以上いるけど、このうちの2000万人を「ウナギを食べない人」だとする。固形物の食べられない赤ちゃんとか、ウナギを嫌いで食べない人とか、チョー貧乏でウナギなんか食べられない人とか、そういう人もいると思うからだ。すごくフランク・ザッパだけど、全人口の中で、1年間に1回以上ウナギを食べる人が1億人だと仮定する。そして、「ちゃんとした本物の国産のウナギ」は、最初に書いたように年間に2万トンしか生産、流通してないんだから、この2万トンを1億人で割り算すると、1人に割り当てられるのは「200グラム」しかない。これが、あたしたちが1年間に食べられる「本物の国産のウナギ」の量なのだ。
中には、ウナギが大好物のお金持ちで、ものすごい高級店に何度も何度も通ってて、年間に何キロもの国産ウナギを食べてる人もいるだろう。そしたら、あたしたち庶民に割り当てられる量は、さらに少なくなる。こんな流通の状況で、あたしたちが年間に数回ほど口にするウナギが、果たしてホントに「本物の国産のウナギ」だなんて信じられるだろうか? こんな流通の状況で、スーパーに並んでる、たった1000円前後のウナギの蒲焼きが、果たしてホントに「本物の国産のウナギ」だなんて信じられるだろうか? 高級デパートの中の有名店ですら「産地偽装のインチキウナギ」を並べてるってのに。
‥‥そんなワケで、今回の「魚秀」の産地偽装は、文字通り氷山の一角でしかない。今回摘発されたのは、わずか256トン(約205万匹)だけど、これはあくまでも「今回摘発されたぶん」ってだけのことで、「魚秀」は年間に約1300トンのウナギを中国から輸入してるのだ。だから、残りの1000トン以上のウナギに関しては、キチンと中国産として出荷してたのかどうかは、まだ何も分からない。
そして、もしも「魚秀」が1300トンのウナギをすべて国産に偽装して出荷してたってことが明らかにされたとしても、こんなもん、年間に10万トン以上も輸入されてる中国産、台湾産ウナギの「わずか0.1%」の話でしかない。残りの99%以上の輸入ウナギは、数えきれないほどの似たような会社が、似たようなことをしてるってワケで、現実的には、ほとんど野放し状態なのだ。さらに言えば、ニポンの水産業界では、中国産や台湾産のウナギを国産に偽装することは、もはや「当たり前」のことであり、どの会社もやってる「普通のこと」なのだ。
その証拠に、今回摘発された「魚秀」の中谷彰宏社長は、記者からマイクを突きつけられても、まったく悪びれる様子もなく、ハッキリと、「悪いことだとは思っていましたが、国産に偽装して出荷しないと売れないので、やっていました。特に毒ギョーザの問題が起こってからは、中国産の食品は見向きもされないので、こうするしかありませんでした」って言ってた。もちろん、やってたことは悪質だし、過去に摘発されたものよりも大規模だけど、ここんとこ、往生際の悪い社長たちの大ウソ会見ばっか見せられて来たから、ちゃんと不正を認めて謝罪した中谷社長が、不思議と「立派な人」に見えちゃったよ(笑)
ま、輸入ウナギを国産に偽装しただけじゃなくて、そのまんま東のシールまで貼って「宮崎産」として出荷してた「原田穂積商店」や「石橋淡水」なんかにしたって、バレた時にまったく悪びれてなかったもんね。「石橋淡水」の取締役の石橋政男なんか、謝罪するどころか、「うちだけが産地偽装をしてるわけじゃない」とか、「全国の業者を調べたら日本中が大変なことになる」とか言い放って、アジならぬウナギのヒラキナオリを炸裂させてたことも記憶に新しい。
でも、この石橋政男が、去年の9月に摘発された時に言ってたこれらのセリフこそが、ニポンのウナギ業界の「真実」なんだよね。ようするに、産地偽装しなきゃ売れないワケで、どこの会社もみんなやってるワケで、バレても「改善命令」を受けるだけで何の罰則もないから、「産地偽装しなきゃ損」だってワケだ。そして、バレたらバレたで、どっかの病院の院長や、どっかの肉屋の社長みたく、大ウソを連発して見苦しい姿なんか晒さずに、潔くトットと謝罪して、また次なる悪事を始めればいいって思ってんだろう。
‥‥そんなワケで、ホントなら、悪いことなんかしないで、マジメに正しく生きてる人が「立派」なハズなのに、これほど次から次へと悪質なことをしてる会社だの病院だのが発覚して、そのたびにウソにウソを塗り重ねた往生際の悪いイイワケ会見を見せられちゃうと、もはや、悪いことをしてるのは「当たり前」で、その人が立派かどうかは、「バレた時の謝罪の仕方」で決まっちゃうような世の中になったんだろうか? そう言えば、「アパ」の耐震強度偽装がバレちゃった時に、本谷夫妻のドス黒い涙の謝罪会見のあと、アベシンゾーのお友達の塩崎官房長官(当時)は、こともあろうに「アパは立派だ」ってコメントして、全国民をダッフンさせてたよね。アベシンゾーにしても、数々の不正がバレ続けてる「グッドウィル」に対して、「コムスン(グッドウィル)は素晴らしい会社だ」っノタマッて、広告塔までやってたんだよね。ま、企業も政治家も、マジメに正しくやってる人たちよりも、悪の限りを尽くしてるコイツラのほうが世の中を牛耳ってんだから、これからも似たような問題は次々と出て来ると思う今日この頃なのだ。
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