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2008.07.09

織姫ちゃんの下心

七夕が過ぎちゃってから七夕について書くのもアレだけど、8年も日記を書き続けてると、毎年7月7日には七夕について書いてるから、もう書き尽くしちゃった感もある。特に、夜空の星を観察するのが好きなあたしとしては、織姫と彦星のお話だけじゃなくて、星座のお話も過去にタップリと書いたし、もうコレと言って書くことがない‥‥って思ってたんだけど、何もウンチクを傾けなくても、普通の人の日記みたく、自分が何をしてたのかを書けばいいか‥‥ってことで、七夕の夜に、あたしが何をしてたのかって言えば、F1のイギリスGPを観てた。夜の11時過ぎから放送が始まって、コーフンしながら観戦してたら、すぐにレース結果がメールで届いたから、今すぐに開封して結果を知りたい気持ちを横四方固めで抑えつつ、次々に雨でクルクルとスピンするマシンたちを眺めてた。

で、「それって日曜日の夜、つまり、6日の夜のことだろ?」ってツッコミを入れようとした老若男女に犬猫クチボソ黒メダカの皆さん、残念でした。多くの人たちは、「7月7日の夜が七夕」って思い込んでるけど、それは間違いで、正しくは、「7月6日の夜から7日の明け方にかけてが七夕」なのだ。だから、7月7日の夜に、願い事を書いた短冊を笹に吊るしたって、1日過ぎちゃってるから、もう時間切れで叶わないのだ。もちろん、あたしは、F1を観終わったあとに、「世界中の野良猫たちが幸せになりますように」って書いた短冊を50cmくらいのクマザサに吊るして、お祈りをした。この辺、あたしは、抜け目がないと思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、もっと細かいことを言えば、ホントの七夕は「旧暦の7月6日の夜から7日の明け方にかけて」なんだから、現代の新暦で言えば、8月に入ってからってワケで、新暦の7月6日の夜にやろうが7月7日の夜にやろうが大差ない。どっちにしたって、1ヶ月以上もズレてんだから。でも、そこまで細かいことは言いっこなしにして、だけどもリトル細かいことを言っちゃうのが、ナニゴトもフランク・ザッパだったり、フランク・ザッパの娘のムーン・ザッパだったりする「きっこの日記」ってワケだ。

だから、いつものように、パンツのゴムをゆるくして読んでもらうとして、柳田國男の高弟としてオナジミの民俗学者で詩人の折口信夫が、昭和4年(1929年)に発表した「たなばたと盆祭りと」っていう論文系のエッセイの中に、次のような記述がある。


「たなばたは、七月七日の夜と、一般に考へられてゐる様であるが、此は、七月六日の夜から、翌朝へかけての行事であるのが、本式であつた。此点、今井武志さんの報告にある、信州上水内の八月六日の夜を以てするのが、古形を存するものゝ様である。沖縄に保存してゐるたなばた祭りも、やはり七月六日の夜からで、翌朝になるとすんでゐた。」


ここには、「七月六日の夜から、翌朝へかけての行事であるのが、本式であつた」って書かれてて、沖縄の七夕に関しても、「七月六日の夜からで、翌朝になるとすんでゐた」って書かれてる。あたしは、これは、昔の人たちの「1日の感覚」によるものなんだと思う。今は、時計の針が深夜0時を過ぎた瞬間からを「翌日」って見る人が多いと思うし、実際、それが「翌日」になる。だけど、今みたく、朝までずってテレビやラジオをやってて、繁華街は昼間のように明るい「炭素社会」じゃなかった古き良き時代には、どの家の人たちも夜は寝て、朝起きて、お天道さまが上ってる間に仕事や用事を済ませてた。

だから、1日の始まりは「日の出」であって、深夜0時じゃなかったのだ。つまり、現代的に言えば、七夕は「7月6日の夜から7日の明け方にかけて」ってことになるけど、当時の人たちの感覚で言えば、7日の「日の出」までは「6日の夜」ってワケだから、ようするに、七夕は「7月6日の夜にやる行事」だったってワケだ。だから、大きなことにはフランク・ザッパなのに、小さなことにはコダワリまくるあたしとしては、昔の本式の七夕のエッセンスを現代風にアレンジして、「7月6日の深夜0時までにやる」ってのがホントのとこだった。

そうすれば、「7月6日の夜」っていうアバウトな昔の把握の中にも、分刻みで生活してる現代人としてのコダワリがキラリと光ってて、旧暦と新暦の違いっていうカンジンの部分を無視しつつも、ナニゲに短冊に書いた願いが叶いそうな雰囲気がして来るからだ。だけど、あたしの場合は、時計の針が深夜0時を過ぎてからだったから、ものすごくビミョ~なとこで、自分でも何が言いたいのか怪しくなって来る。

‥‥そんなワケで、とにかく、昔の本式の七夕は、7月6日の夜だったってワケだけど、それなら、何で「七夕」って書くのかって疑問が湧いてきちゃう。だいたいからして、「七」の「夕」なんて書いて「タナバタ」なんて読ませてるから、みんな「7日の夜」って思っちゃうワケで、こんなのどうせ当て字なんだから、それなら「六夕」って書いて「タナバタ」って読ませりゃ誰も間違えないハズだ。

「タナバタ」は、もともとは「棚機」って書いてた。この字を見れば、誰でもすぐに機織りをする「織姫」のことが頭に浮かんだと思うけど、もちろん、この「機」は、機織りの「機」だ。で、この「棚機」ってのが何かっていうと、大きな棚を造って、その上で女の子が機織りをして、神様をお迎えするっていう儀式みたいなもんなのだ。「日本書記」の巻第ニのニの「天孫降臨(てんそんこうりん)」のとこに、こんな記述がある。


吾田の笠狹之御碕に到る。遂に長屋の竹嶋に登る。乃ち其の地を巡り覽れば、彼に人有り。名を事勝國勝長狹と曰う。天孫因りて問いて曰く、「此は誰が國ぞ」。對えて曰く、「是長狹が住める所の國也。然れども、今、天孫に奉上らん」。天孫、又問いて曰く、「其の秀起つる浪穗の上に八尋殿を起てて、手玉も玲瓏に織經る少女は、是誰が子女ぞ」。答えて曰く、「大山祇神が女等、大を磐長姫と號す。少を木花開耶姫と號し、亦は豐吾田津姫と號す」。


‥‥って、マニアじゃなきゃチンプンカンプンだと思うから、マニアのあたしが簡単に訳すと、こんな感じになる。


天から降りて来た、アマテラスの孫のニニギノミコトって神様が、吾田(あた)の笠狹之御碕(かささのみさき)ってとこに到着したので、ついでに見晴らしのいい高台に登って、辺りをグルリと見渡してみたら、誰か分かんないけど人がいた。それで、その人に声をかけてみたら、事勝國勝長狹(ことかつくにかつながさ)って名前の人で、ハッキリ言って、どこまでが名字でどこからが名前なのかも分かんないほどヘンテコな名前のオッサンだったんだけど、そのオッサンに「この国は誰の国なの?」って聞いてみたら、「私の治めている国ですが、あなたに差し上げます」と来たもんだからビックル一気飲みしちゃったよ。で、「あの海に張り出した御殿で、手につけた玉をリンリン鳴らしながら機織りをしてる可愛い女の子は、いったい誰の子なの?」って聞いてみたら、「あれは大山祇神(オオヤマツミノミコト)の娘で、木花開耶姫(コノハナサクヤヒメ)です」って教えてくれた。


‥‥って、「簡単に訳す」とか言いながら、ついついヨケイなことまで書き足しちゃったけど、ようするに、天から降りて来た神様のニニギノミコトは、海に突き出した御殿で機織りをしてたコノハナサクヤヒメにひと目惚れしちゃうんだけど、この御殿ていうのが、「八尋殿(やひろでん)」だ。釣りをする人なら知ってると思うけど、大人が両手をいっぱいに広げた長さを「一尋(ひとひろ)」っていって、約1.8mになる。つまり、その8倍だから、幅が15mくらいある御殿てワケで、それが海に突き出て建ててあるんだから、当然、海の中からも柱が立ってて、床の前のほうを支えてる。

この建築様式を頭の中に浮かべてもらうと、いかにも「棚」って感じでしょ? 普通に地面の上に建ててある御殿なら「棚」とは呼ばないだろうけど、こんな風変わりな様式だから、大きな「棚」に見立てて、さらには中で機織りをしてんだから、これぞ「棚機」ってワケだ。

で、ニニギノミコトは、バッチリとコノハナサクヤヒメをナンパしちゃって、この八尋殿の中でラブラブの生活を始めちゃう。だから、余談になるけど、全国各地にある結婚式場には、「八尋殿」ていう名前をつけてる式場や会場がいくつもあるのだ‥‥なんて業務上の知識もちりばめつつ進んでくんだけど、この話だけを聞くと、ニニギノミコトとコノハナサクヤヒメの出会いは偶然みたいな感じがしたと思う。だけど、これは、偶然じゃないのだ。

だって、機織りをするだけなら、何もワザワザ海に突き出した御殿なんかを建てて、そんなとこでやる必要はないし、手に音の出る玉をつけて、機織りしながらリンリンと音を出す必要もない。じゃあ、これは何なのかって言うと、「神様を呼ぶ儀式」なのだ。古い農村の民間信仰に、「棚機女(たなばたつめ)」っていう巫女が、水辺で機織りをして、神様が降臨するのを待つっていう五穀豊穣の儀式がある。そして、その民間信仰と、中国から伝来して来た「七夕伝説」と結びついて、「七夕」を「タナバタ」って読むようになったのだ。

‥‥そんなワケで、これが起源なんだから、織姫ちゃんは、ホントは機織りすることが仕事じゃなくて、機織りしてるフリをして、男を誘うことが目的だったのだ。それも、「神様狙い」ってことは、ようするに「玉の輿狙い」ってことで、なかなかのやり手だったんだと思う。現代なら、「男性が一生懸命に働いてる姿にグッときちゃう」って女性も多いだろうけど、古代のニポンでは、女性がセクシーに機織りをして、それで神様をGET MY LOVE!してたってワケだ。だから、機織りも編み物もできないあたしだけど、ここはひとつ、夜な夜なベランダでリリアンでもしてみるか‥‥なんて思った今日この頃なのだ(笑)


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