カンフーパンダとパクリ文化
今月、映画「カンフーパンダ」が公開される。「シュレック」や、あたしの好きな「マダガスカル」を制作したドリームワークスの作品だし、何よりも、東京都知事をパンダに代えて欲しいと思ってるほどパンダが好きなあたしとしては、すごく気になる作品だ。オマケに、声優陣が、ジャッキー・チェンだアンジェリーナ・ジョリーだダスティン・ホフマンだと、ものすごく豪華なラインナップで、これも気になって仕方ない。
だけど、公開が近づいて来て、いろんな媒体で「カンフーパンダ」の映像を断片的に目にするようになって来たら、あたし的に、一番カンジンな点が欠けてることに気づいたのだ。それは、「パンダがぜんぜん可愛くない!」ってことだ。どうしたら、こんなにも可愛くなく描けるんだろう?って思えるほど、激しく可愛くない。それも、可愛くないだけじゃなくて、ビミョ~に気持ち悪い。なんか、「パンダ」ってよりも、「顔をパンダみたいにペイントしたオッサン」にしか見えないのだ。
ドリームワークスのアニメって、動物に人間みたいな様々な表情をさせたいがために、「逆ディフォルメ」とでも言うのか、単純な動物の顔を人間ぽく描くことが多い。今回の「カンフーパンダ」もそうみたいで、パンダらしいパンダの顔だと、オーバーな喜怒哀楽を表現できないと思ったのか、ずいぶんと人間ぽく描かれてる。だけど、それが、何よりも重要な「パンダの可愛さ」をなくしちゃった上に、実際のパンダとはカケ離れた「人間のような動き」をするもんだから、なんか、忘年会の隠し芸でパンダの扮装をしたオッサンが、酔っ払ったイキオイで、そのままのカッコで街へ出て、暴れてるみたいにしか見えない今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、最初に「カンフーパンダ」が発表になった時には、観に行くレベルが80から90だったあたしだけど、公開が近づいて内容が分かるようになるにつれ、どんどんレベルが下がってきちゃって、今じゃぜんぜん観る気がしなくなった。もちろん、1年半後にテレビでやれば観るけど、劇場まで行く気はなくなった。それは、お金がもったいないって言うよりも、あの気持ち悪いパンダを大きなスクリーンで観たくないってほうが強い。
それにしても、今回の「カンフーパンダ」は、キャラの気持ち悪さだけじゃなくて、ニポンでの宣伝の仕方にも問題がありすぎる。一時的に売れてるお笑い芸人だとかに宣伝させるのは、まあ、今のバカブームを考えたらジンジャエールだとしても、宣伝を担当してる人のセンスの無さや知識の無さやが垣間見えることだらけで、広告のお仕事をしてるあたしとしては、「おいおいおいおい!」ってツッコミを入れたくなることが満載だ。たとえば、しばらく前に「カンフーパンダ」のオフィシャルサイトを見たら、カンフーのポーズをとったパンダの横に、キャッチフレーズみたいにこんなセリフが書いてあった。
「ここらで白黒つけようぜ!」
パンダだから「白黒」なワケで、あまりにもヒザカックンだ。酔っ払ったオッサンみたいなパンダの横に、オヤジギャグみたいなことを書かれたら、もうお腹いっぱいだ。だいたいからして、このセリフって、映画「ゼブラーマン」の時に、哀川翔がいろんなバラエティー番組に出て連発してたセリフじゃん。寒い上に二番煎じだなんて、あまりにもユルすぎる。まあ、今は「自分を信じろ」とかってセリフに変えられてるから、きっと誰かから「変えたほうがいい」って助言されたんだろうけど。
でも、こんなどうでもいいことじゃなくて、あたしが何よりも呆れたのは、2ヶ月くらい前にいただいたフライヤーに書かれてた宣伝文だった。告知文の冒頭に、こんな一節があったのだ。
「今年はカンフーに世界的に注目が集まるなか、パンダとカンフーというありえないコラボレーションが誕生したのである。」
今年、「カンフー」が注目されてるってのも初耳だけど、それよりも、パンダとカンフーって、おんなじ中国つながりなんだから、「ありえない」どころが、誰でもカンタンに思いつく組み合わせじゃん。キリンが盆踊りを踊るとか、猫がバタフライで泳ぐとか、そういうのなら「ありえないコラボレーション」だけど、パンダとカンフーだなんて、逆に言えば「今さら」って組み合わせじゃん。
あたしの大好きな「機動新撰組 萌えよ剣」のテレビ版アニメにも、カンフーを使うパンダのカンカンが登場するけど、これにしたって、「中国のパンダだからカンフーをやってて当然」ていう大前提で描かれてるし、3年も前の作品だ。機動新撰組のおりょうさんの息子、竜之介が、中国に勉強に行ってたんだけど、中国の妖怪のボスの娘、ランランに惚れられちゃう。でも、竜之介は、ランランを置いてニポンに帰ってきちゃったので、ランランが飛行船でニポンまでやって来る。そのランランのボディガードが、パンダのカンカンだ。
とにかく、ものすごく可愛い。丸くて、ちゃんとパンダで、だけど顔に傷があって、とてもパンダとは思えないような険しい目つきをするんだけど、それがまた可愛い。そして、カッコイイし、頼りになる。何しろ、普通のカンフーだけじゃなくて、ドラゴンボールみたく、かめはめ波みたいな波動攻撃を繰り出したり、敵からの攻撃を精神エネルギーのバリアで防いだりしちゃうんだから、ものすごいパンダだ。やっぱ、高橋留美子の描く動物キャラは、あたしのツボだ。
‥‥そんなワケで、「カンフーパンダ」のキャラを見て、「アングロサクソンには東洋の美的感覚は分かんないのかな?」って思ったあたしだけど、そんなあたしでさえも脱力しちゃったのが、カンジンの中国側の対応だった。ニポンよりも、ひと足先に、6月20日から「カンフーパンダ」の公開が始まった中国では、四川省在住の趙半狄(ジャオ・バンディー)さんていう芸術家が、この映画にクレームをつけたことによって、四川省のすべての映画館で、上映を見送ることになったのだ。で、その内容がシビレちゃうんだけど、趙さんの主張は次の2点だ。
「この映画は、大震災はチベット弾圧の報いだと発言したシャロン・ストーンと同じハリウッド映画である」
「この映画は、パンダという我が国の国宝と、カンフーという伝統文化をアメリカが盗み、それを組み合わせて中国で金儲けをしようとしている」
こんなトンチンカンなことを言い出すなんて、この人、芸術家じゃなくて、「政府の報道を鵜呑みにして大騒ぎする知能の低いナショナリスト」って感じがするけど、この人のクレームで、実際に四川省のすべての映画館が上映を見送ることになったんだから、きっと、それなりに著名な人なんだろうね。
それにしても、自国のことはタナに上げて、平然とこんなセリフが言えるなんて、あたしには理解できない感覚だ。ディズニーランドの完全パクリでオナジミ、北京の「石景山遊楽園」で金儲けし続けて来たことは「犯罪」だけど、「カンフーパンダ」は誰の著作権も侵害してないじゃん。
ま、中国政府は、北京オリンピックを成功させたいために、「石景山遊楽園」のパクリキャラの数々をすべて撤去したけど、この遊園地には、ディズニーのキャラだけじゃなくて、ニポンの「ドラえもん」や「キティちゃん」や「ウルトラマン」なんかもパクられてた。だから、ディズニーのキャラについては、ニポン人のあたしが口出しすることじゃないけど、「ドラえもん」をはじめとしたニポンのキャラについては、あたしだって文句のひとつくらい言ってもいいと思う。で、趙さんのセリフをパクらせてもらうと、こんな感じだ。
「この遊園地は、ドラえもんという我が国の国宝と、ジャイアンがのび太をいじめるという伝統文化を中国が盗み、それを組み合わせて中国で金儲けをしている」
‥‥そんなワケで、中国のパクリは今に始まったことじゃないし、パクリも中国の現代文化のひとつだと思ってるから、あたしはあんまりツッコミは入れたくないのが本音だ。たとえば、あたしは、何年か前に、中国へ行って来たお友達から、お土産にミッキーマウスのTシャツをいただいた。あたしは、ディズニーのキャラが嫌いなんだけど、特にミッキーマウスが大嫌いで、あの、誰にでも媚びてるようなヘラヘラしたツラや、おどけた動きを見るたびにぶん殴りたくなる。だから、今まで一度も東京ディズニーランドに行ったことはないし、今後も行く気はない。
で、そのお友達も、あたしがミッキーマウスを大嫌いなことをよく知ってた。それなのに、ミッキーマウスのTシャツをお土産に買って来たのだ。コレッて嫌がらせ?って感じだけど、実はそうじゃない。それは、あたしでも喜ぶ‥‥っていうか、ミッキーマウスのことが嫌いなあたしだからこそ喜ぶTシャツだったのだ。大きなタムからドレッドを垂らしたミッキーマウスは、ラスタカラーのタンクトップを着てて、太いジョイントを吸ってヘロヘロになって腰を抜かしてた。周りには、ガンジャの葉っぱがワサワサしてて、あたしの大嫌いな「優等生のミッキーマウス」じゃなくて、思いっきりルードボーイなミッキーマウスだったのだ。
著作権にうるさいディズニーだけど、そんなディズニーが何よりも目クジラを立ててるのが、子供たちに夢を与えるキャラを「悪いこと」に使われることだ。だから、マリファナを吸ってヘロヘロになってるミッキーマウスだなんて、ディズニー的には激しくNGだろう。だけど、マリファナは、麻薬じゃないし、タバコみたいな害もないし、アメリカだって州によっては解禁されてる「平和の草」だ。だから、ミッキーマウスがシャブを打ってたり、ピストルで誰かを撃ち殺してるようなTシャツとはワケが違う。あたし的には、サイコーのお土産だった。
‥‥そんなワケで、こんなTシャツを作っちゃうのも、中国のパクリ文化のひとつだし、こうした文化を認めてたあたしとしては、今回の趙さんの主張は、あまりにも本末転倒だと思った。全世界から中指を立てられてる中国の酷すぎるパクリに対して、こんなにも好意的な見方をしてあげてたあたしとしては、自国のことをタナに上げて、まったく著作権を侵害してない「カンフーパンダ」を泥棒呼ばわりした発言は、とても良識のある社会人のものとは思えなかった。だけど、やっぱり、「カンフーパンダ」は気持ち悪いから、あたしは、「パンダフルライフ」のほうを観に行くつもりだけど‥‥なんて思ってる今日この頃なのだ(笑)
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