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2008.09.05

北京オリンピックのために殺された人たち

先月、8月11日のこと、中国広東省のとある村で、カップルがデートをしてた。デートって言っても、都会じゃないから、誰もいない道を手をつないでお散歩してただけだ。すると、そのカップルの後ろから、1台の車がゆっくりと近づいて来た。2人は、車が来たことは音で分かったんだけど、そのまま通り過ぎて行くもんだと思ったから、気にせずに歩いてた。すると、その車は、2人の数メートル後ろで静かに停まり、数人の男が降りて来て、そのカップルに背後から襲いかかった。それぞれが手にしていたワイヤー製のロープを2人の首にかけ、絞め上げて殺そうとしたのだ。

そのカップルは、必死に抵抗して、何とかロープを外して、命からがら逃げることに成功した。そして、すぐに警察に通報して、この2人の証言から、広東省掲陽市の警察は、この犯行グループを逮捕することができた。そしたら、とんでもないことが分かったのだ。この犯行グループは、全員で9人で、去年から逮捕されるまでの約1年半に、400人以上もの人たちを同様の方法で殺害してたことが分かったのだ。警察の取り調べに対して、最初は「100人くらい」なんて供述してたんだけど、取り調べや捜査が進むにつれて、「最低でも400人以上は殺害した」ってことが分かった。

これを1人でやってたのなら、人を殺すことで快感を覚える殺人鬼の仕業ってことになる。あたしが知る限り、歴史上、1人で犯した最大の殺人は、「アンデスの怪物」と呼ばれたペドロ・ロペスで、少女ばかりを推定360人、強姦してから惨殺した。そして、ぺルーは死刑制度を廃止しちゃった上に、最高刑の終身刑も「最長16年まで」っていう、まるで「じゃんじゃん凶悪犯罪をやってください」って感じの激アマな法律の国だから、この前代未聞の殺人鬼は、1999年に仮釈放で出獄して、今も普通に生活してる今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、今回の中国の犯行グループは、こうした殺人鬼とは違って、殺人を「商売」としてやってた。でも、依頼されて特定の人物を殺すことが目的の「殺し屋」じゃない。この9人組は、誰でもいいからテキトーに見つくろった人を殺して、その遺体を売ってたのだ。実は、これは、亡くなった人を「土葬」するのが慣例だった中国で、政府が「火葬」への転換を強制したために生じたことなのだ。

中国は儒教の国だから、「亡くなった人は土に埋められてこそ安らぎをえられる」って思想が何千年も続いてて、土葬するのが当たり前になってた。だけど、いくら広大な土地を持つ中国と言っても、人口の過密した都市部では、1人1人を土葬するほどの土地の余裕がない。それで、1950年代に、毛沢東が、火葬の導入を呼び掛けた。これによって、30年ほどの間に、都市部では約70%、中国全土でも約15%が火葬されるようになった。

で、ここで問題なのは、都市部と地方との格差なのだ。都市部で約70%、都市部を含んだ中国全土で約15%ってことは、都市部を抜いた地方だけを見た場合には、ほとんど火葬は受け入れられてなかったってことになる。もともとが、人口の過密した都市部のための対策なんだから、土地が有り余ってる地方では、それまで通り、儒教の思想に基づいて土葬する人が9割以上もいるのは普通のことだろう。だから、政府のほうも、都市部には強く呼び掛けてたけど、地方に関しては「形式だけの呼び掛け」をするだけだった。表向きは、内陸部と沿岸部とに分けて、人口密集地と沿岸部には火葬を義務づけたんだけど、徹底はされてなかった。

だけど、今年、北京オリンピックが開催されることになって、状況は一変した。何よりも外ヅラを気にする中国政府は、北京市内の「クリーンアップ作戦」と銘打ち、野良犬を数万匹、カタッパシから殺して回った。その次は、数十万匹の野良猫を殺して回り、会場の近隣に住む生活水準の低い人たちを何万人も排除した。そして、これらの準備と同時進行で、中国政府は、広東省の沿岸部での火葬を徹底させることにしたのだ。何でかって言うと、北京のある河北省とは離れてても、広東省は目と鼻の先に香港や台湾があり、大きな飛行場や港があって、「中国の玄関」みたいな位置づけだったからだ。

多くの外国人がやって来る自国の玄関みたいな場所で、未だに土葬が行われてるなんて、何よりも体面を気にする中国政府にとっては、絶対に見られたくないことだ。そのため、中国政府は、去年から、広東省の都市部から離れた沿岸部でも、火葬せずに土葬した者を厳しく取り締まるようになったのだ。

‥‥そんなワケで、ニポンでは火葬が一般化されてから長い年月が経ってるし、遺族は棺を焼く時にも立ち会えるし、お骨を拾うこともできるから、火葬に対して特別の違和感はない。だけど、中国の場合は、たとえ遺族であっても、いっさいの火葬の場に立ち会うことが許されない。棺を火葬場に運んだら、次に会えるのは骨壺の状態なのだ。これは、家族や親族が一同に集まって、もうひとつの世界へと送り出すために土をかけて行く土葬とは、天と地ほどの差がある。「死」ということを「生」と同列に考えてる儒教の思想とは、思いっきり逆行してる形態の葬儀ってことになる。

でも、政府の命令通りに火葬にしないと、取り締まりの対象になってしまう。それで、誰からともなく考えられたのが、亡くなった家族はこれまで通りに土葬にした上で、当局の目をゴマカスために、別の遺体を用意して、ダミーの火葬をするっていう方法だったのだ。そして、そのために登場したのが、見ず知らずの人の遺体を火葬用に販売する人たちってことなのだ。

今回、逮捕されたグループは、ある程度のお金を持ってる個人に販売する場合には、1体を1万元(約15万円)で売ってたんだけど、葬儀屋に売る場合には、1体を2000元から4000元(約3万円~6万円)で卸してたそうだ。殺された人の遺体に対して「卸す」なんて言い方はしたくないんだけど、このグループから遺体を安く買い取った葬儀屋は、自分が見つけたお客に高い値段で売って、その差額を利益としてたんだから、完全に「商売」として行なわれてたってことになる。

これまでに殺された400人以上の人たちは、主に、知的障害者や精神病患者やお年寄りたちだった。つまり、ある日突然いなくなっても、単なる「行方不明」で済むような人であることと、殺害しやすいことを考えて実行されてたことがうかがえる。そして、その殺害方法は、今回のカップルと同様に、背後から近づいての絞殺か、薬物による毒殺に限られてた。これは、ナイフなどで刺し殺してしまうと、遺体に傷がつくために、商品価値がなくなってしまうからだそうだ。

あたしは、このニュースを知って、これも不謹慎な言い方になっちゃっうけど、まるで高級魚を獲る漁師さんのようだと思った。天然の鯛などの高級魚の場合には、網でまとめて獲ると、網の中でお魚同士がぶつかり合って体に傷がついちゃうので、安くしか売れなくなる。そのため、漁獲量が減っても、わざわざ1匹ずつ釣る。中には、ちゃんと釣り上げたものだってことを証明するために、口に掛かってる釣り針を外さずに、釣り針の上のハリスの部分から切って、口に釣り針をつけたまま出荷するケースもあるのだ。

‥‥そんなワケで、これほど酷い大犯罪に対して、「卸す」って言葉を使ったり、漁師さんをイメージしたりするのはホントに不謹慎だと思うけど、あまりにも膨大な被害者の数や、各自が役割分担をして、葬儀屋とも結託して、完全に「商売」としてやってたっていう事実が、まるで別の時代や別の惑星での出来事みたいで、あたしの感覚をマヒさせる。そして、これほどの数の人たちを殺し続けてたのに、1年半も、まったく警察が気づかなかったていう中国のアバウトさも、あたしの感覚をマヒさせる。

たとえば、何ヶ月も前から、内定して捜査をしてて、それで今回の逮捕に至ったっていうのなら分かるけど、今回、たまたま殺害を逃れたカップルからの通報で、犯人を捕まえてみたら、このグループの悪事の全貌が明らかになったっていう流れなんだから、ずっと警察はノーマークだったってことになる。でも、そうだったとしたら、広東省の警察はあまりにも無能だと思う。だって、広東省では、4年前の2004年にも、個人で10人の人を殺して、その遺体を売ってた男が捕まってるのだ。

中国政府は、2008年のオリンピック開催地に名乗りを上げてから、「中国の玄関」である広東省での土葬を厳しく取り締まるようになった。で、この取り締まりは、最初は厳しく行なわれてたんだけど、それからしばらくは緩くなって、2008年のオリンピックが北京に決まってから、また厳しくなったのだ。だから、4年前にこうした犯罪者を逮捕してたのなら、オリンピックが迫った去年から、同様の犯罪者が出て来ることは十分に予見できたハズなのに、400人以上もの人が殺されるまで気づかなかったなんて、まるでフクダちゃん並みの他人ゴトっぷりだ。

それにしても、1年半で400人を殺したってことは、1日に約1人を殺してたってことで、高くても15万円で売ってたんだから、これを9人で割ると、1人の取り分は日給にしてわずか1万6000円だ。葬儀屋に3万円で卸した日なんかは、1人の取り分は日給3000円ちょっとにしかならない。でも、中国では、都市部のサラリーマンでも、平均月収が3万円くらいで、日給にすると1000円程度だし、工場とかで働いてる人はもっと低い。だから、あたしたちニポン人から見たら、「こんな金額で人を殺すのか!」って思うけど、約10倍くらいの貨幣価値になる中国では、マジメに働いてる人たちの半月ぶんものお金が、たった1日で稼げるってことになる。

だけど、ニポンの貨幣価値に直しても、1人あたりわずか3万円から16万円だ。こんな金額のために見ず知らずの人を殺すなんて、あたしにはまったく理解できない感覚だ。それも、捕まったら確実に死刑になる中国でやってるんだから、他人の命だけじゃなく、自分の命までを軽く考えてるとしか思えない。だけど、今回の北京オリンピックを成功させるために、中国政府は、3月から8月までの5ヶ月間に、約400人のチベット人を虐殺した。あたしから見たら、民間人の犯罪グループが私利私欲のために400人を殺したことと、政府がオリンピックのために400人を殺したことに、何の違いもない。なぜなら、「誰かの都合で何の罪もない人が殺された」っていう本質はおんなじだからだ。

‥‥そんなワケで、民間人が1人を殺したら犯罪だけど、政府が100人を殺しても犯罪にはならないのか? タリバンが10人を殺したら「テロ行為」だけど、アメリカ軍が1000人を殺すのは「正義」なのか? あたしは、そうは思わない。アメリカ軍が、イラクやアフガンで殺し続けてる民間人の多くは、子供や女性やお年寄りだ。中国の武装警察が殺したチベット人の中にも、たくさんの子供やお年寄りが含まれてる。これが犯罪でなくて、いったい何だって言うんだろう? あたしには、私利私欲のために知的障害者やお年寄りたちを殺し、その遺体をわずかなお金で売ってた今回の犯罪者たちと、何ひとつ違いが分からない今日この頃なのだ。


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