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2008.09.16

23年目の表彰台

今日はF1の話題だけど、F1に興味のない人や、F1のことがあんまり分かんない人にも楽しんでもらえるように心がけて書いてくので、そうした人たちも、よかったら読んで欲しい‥‥なんて前置きからスタートするけど、土曜日の深夜、眠い目をこすりながらイタリアGPの予選を観てたら、現チャンプのライコネンと現在トップをひた走るハミルトンの2人が、ナナナナナント! Q2(予選の第2ステージ)でノックアウトされちゃって、Q3(予選の最終ステージ)に進めないっていう前代未聞の流れになったもんだから、あたしは一気に目が覚めちゃった。そして、こともあろうに、トロロッソのベッテルがポールを獲得するっていう大波乱のミラクルが炸裂しちゃった。それだけじゃなく、他もスゴイことになっちゃったので、とにかく、上位陣のチーム名を見て欲しい。


1.ベッテル(トロロッソ)
2.コバライネン(マクラーレン)
3.ウェバー(レッドブル)
4.ボーデ(トロロッソ)
5.ロズベルグ(ウィリアムズ)
6.マッサ(フェラーリ)
7.トゥルーリ(トヨタ)
8.アロンソ(ルノー)
9.グロック(トヨタ)
10.ハイドフェルド(ザウバー)
11.クビサ(ザウバー)
12.フィジケラ(フォースインディア)
13.クルサード(レッドブル)
14.ライコネン(フェラーリ)
15.ハミルトン(マクラーレン)
16.バリチェロ(ホンダ)
17.ピケJr.(ルノー)
18.中嶋(ウィリアムズ)
19.バトン(ホンダ)
20.スーティル(フォースインディア)


いつもなら、フェラーリとマクラーレンの指定席で、タマにザウバーがチョコっと顔を出すような上位4グリッドのうち、プライベーターのレッドブルファミリーが3台も鎮座してるのだ。それも、本家のレッドブルはウェバーだけなのに、兄弟チームのトロロッソはベッテルがポール、ボーデが4番グリッドを獲得しちゃった今日この頃、皆さん、ゆうべは号泣しましたか?


‥‥そんなワケで、何よりの快挙は、もちろんベッテルのポールだけど、ボーデも4番グリッドってことは、もしかすると決勝では「となりのトトロッソ」がワンツーフィニッシュなんてこともありそうだし、そんなことにでもなったら、今度からトロロッソのモーターハウスを「ねこバス」にして欲しいと思うのは、あたしだけ?‥‥なんてことも言ってみつつ、すでに決勝を観終わって、まだ感動の涙が止まらない今の状況としては、コーフンしてて何から書き始めればいいのか分からない。

とりあえず深呼吸して、頭の中を整理して、まずはF1のことを知らない人のために簡単に説明してくと、F1のチームには、大きく分けて「ワークス」と「プライベーター」の2種類がある。フランク・ザッパに言うと、「ワークス」ってのは、自動車メーカーがやってるチームで、マシンのシャシーもエンジンも自分のとこで開発してるチームのことだ。現在のチームだと、フェラーリ、ルノー、ザウバー(BMW)、ホンダ、トヨタの5チームが完全な「ワークス」ってことになる。そして、「プライベーター」ってのは、自動車メーカーとは関係なくて、自分のとこでエンジンを開発できないから、ヨソからエンジンの提供を受けてるチームのことだ。

で、前出の5チームは完全な「ワークス」だけど、残りの5チームは完全な「プライベーター」だとは言えない。たとえば、マクラーレンの場合は、もともとはフォードやポルシェやホンダなどからエンジンの提供を受けてた。だから、以前は「プライベーター」って呼べたんだけど、今は、マクラーレンの株式の40%をメルセデスが取得してて、チーム名も「メルセデス・マクラーレン」になってるし、エンジンもメルセデスのものを積んでる。こうなって来ると、メルセデスっていう自動車メーカーが持ってるワークスチームと紙一重なワケで、とても「プライベーター」とは呼べない。だから、このマクラーレンみたいなチームのことは、「セミワークス」って呼ぶのが妥当だと思う。

他にも、自動車メーカーが「プライベーター」へ提供するエンジンは、前年度の型落ちのハズなのに、今はほとんどのプライベーターチームが現行の最新型エンジンを提供されてる。この現状を考えると、表向きはプライベーターでも、実際には特定の自動車メーカーとの太いパイプがチラホラと見えてるワケで、「ヒツジの皮をかぶったオオカミ」ならぬ、「プライベーターの皮をかぶったセミワークス」って位置づけになる。そんな中で、完全な「プライベーター」と呼べる貴重な「トロロッソ」のマシン2台が、並みいるワークスやセミワークスを蹴散らしてポールと4番グリッドを掴むなんて、ものすごい大金星ってことなのだ。

で、なんでこんなことになっちゃったのかって言うと、大雨が降ったからだ。とてもマトモには走れないほどの場面もあって、ライコネンもハミルトンもちゃんとタイムアタックすることができなくて、予選の途中でノックアウトされちゃったのだ。そして、多くのドライバーが雨に苦しむ中、雨を得意とするベッテルが、ポールを獲得したってワケだ。

ベッテルは、去年のニポンGPでも、雨の中、9番グリッドを獲得したし、決勝でも、結果こそオカマを掘ってリタイアしちゃったけど、素晴らしい走りを見せてくれた。その次の中国GPでも、雨の中、素晴らしいレース展開で、チームにとっても過去最高位の4位に入賞した。そして、今シーズンはと言えば、開幕戦からずっとリタイアが続いてたのに、雨になった第6戦のモナコでは、これまた素晴らしい走りで5位に入賞してる。つまり、今回の雨の中でのポール獲得ってのは、タマタマってワケじゃなくて、雨を得意とするベッテルが、これまでに培って来た経験と実力によって、自ら勝ち取ったものなのだ。

ひと昔前は、中嶋悟が「雨の中嶋」なんて言われてたけど、息子の中嶋一貴は「えなりかずきにしゃべり方が似てる中嶋」って言われてるだけだから、今、「雨」と言えば、やっぱりベッテルだろう。19才でF1にデビューして、まだ若干21才だってのに、ポテンシャルの低い自分のマシンで、遥かに性能の高いフェラーリやマクラーレンと対等に戦うために、他のマシンが遅くなる「雨」を味方につけて走り続けて来て、とうとうポールを獲得したのだ。これほどカッコイイことはない。だから、細かいことを言うといろいろあるけど、とにかく、予選でポールを獲得したベッテルが、まるで決勝で優勝したかのように何度も何度もガッツポーズをして、チームクルーたちと抱き合うシーンを見たら、あたしは、もう涙が止まらなくなった。あまりにも感動しちゃって、いつまでも涙が止まらなくて、オカゲ様でドライアイが楽になった(笑)

だけど、予選でポールを獲得しただけで、あたしがこんなに感動しちゃったのは、もちろん、ベッテルの喜びが伝わって来たからだけじゃない。それプラス、あたしがF1を観戦するようになってから、20年近く、ずっとミナルディを観て来たからだ。ミナルディは、1985年からF1に参戦して、2005年にチームを手放すまでの20年間、合計で340回もレースに出場していながら、優勝やタイトルはもちろんのこと、ただの一度も3位以上に入賞したことがない、つまり、表彰台に上ったことがないチームだった。それどころか、20年間のトータルの獲得ポイントが、わずか38ポイントと、中堅ドライバーの1シーズンのポイント並みのお粗末さだ。

そして、記録の上では何も残せずに、F1から撤退しようとしたミナルディをレッドブルが買い取って作ったチームが、今のトロロッソだ。つまり、ミナルディ時代からの流れで見れば、今回のベッテルのポール獲得は、23年目にして初めて手にしたポールであり、記念すべき初の記録ってことになる。それも、ミナルディがF1にデビューした時には、まだ生まれてなかったベッテルが、21才の立派な若者へと成長して、勝ちとったのだ。教師生活25年で号泣するのは「ど根性ガエル」の町田先生だけど、F1生活23年目の初ポールの感動は、あたしを号泣させたってワケだ。

‥‥そんなワケで、ミナルディって、昔はそこそこのチームだった。3位以上の入賞こそなかったけど、昔は他のチームとそれなりに戦ってた記憶がある。黄色と黒のカラーリングのころだ。たぶん、ミナルディが速かったっていうよりも、昔はワークスとプライベーターとのマシンの差がそんなになかったように思う。ミナルディには、最初のころはナニーニとかもいたそうだけど、あたしが覚えてる昔のドライバーは、マルティニとかフィッティパルディとかだ。

それで、ものすごくアバウトな記憶で申し訳ないんだけど、ミナルディのマシンの色が、ブルーになったりグリーンになったりしたころから、どんどん遅くなってった気がする。もしかすると、ミナルディが遅くなったんじゃなくて、他のチームのマシンが速くなって、差がひらいて行ったのかもしれないけど、ベネトンのマシンが例のド派手な4色のベネトンカラーで、シューマッハ兄が乗ってたころから、ミナルディの遅さが際立つようになって、そのうちに「走るシケイン」とか呼ばれるようになったと思う。だけど、現役ドライバーの中には、アロンソを筆頭に、ウェバー、フィジケラ、トゥルーリって、ミナルディからデビューした素晴らしいドライバーが何人もいるんだよね。だから、こんな言い方をしたらアレだけど、「みんなミナルディを踏み台にして大きくなった」って感じもする。

で、強かったベネトンがF1から撤退したら、力のあるルノーがサクッと買い取ったみたいに、弱かったミナルディがF1から撤退したら、力のないレッドブルがコソッと買い取ったワケだ。そして、「レッドブル(赤い牡牛)」をイタリア語にした「トロロッソ」ってチーム名にしたってワケだ。ちなみに、「トロ」が「牡牛」で、「ロッソ」が「赤」って意味だ。だから、ニポンに「アップル」っていうF1チームがあったとして、そのチームがもう1チームを手に入れて、それに「リンゴ」っていう名前をつけたようなもんだ。ま、レッドブルにしたって、所詮はスポンサー名をそのままチーム名にしただけだから、芸がないっちゃ芸がないんだけど、もともとがカッコイイ名前だから、ラッキーだったよね。おんなじ飲み物でも、これが、もしも、「ウコンの力」とかだったら、それこそダッフンしちゃうとこだった(笑)

それにしても、ミナルディって、成績こそ残せなかったけど、よくある言い回しを使うと、記録には残らなくても記憶に残るチームだった。何でかって言うと、ヤタラとテレビに映ってたからだ。今のホンダのバリチェロみたく、中途半端に遅いと、最初から最後までほとんどテレビに映らないんだけど、ミナルディの場合は、あまりにも遅すぎたから、レース中盤で常に周回遅れになる。そうすると、トップのマシンや2番手のマシンが周回遅れのミナルディのマシンを抜くシーンが映るのだ。さらには、モナコみたく抜く場所のないコースになると、必ず名物の「ミナルディ渋滞」が起こっちゃうから、そこでもテレビに映る。つまり、売れない芸人が、人気のある芸人に絡むことで、自分も一緒にテレビに映ろうとするアレとおんなじパターンなのだ。

とにかく、ミナルディがどれほど遅いかってことを全世界に知らしめたのが、ミナルディの最後の年、2005年のアメリカGPだろう。「きっこの日記」にも書いてるから、覚えてる人も多いと思うけど、傍若無人で無責任なミシュランタイヤに激怒したすべてのユーザーチームが、フォーメーションラップ後にピットに戻ってレースをボイコットしちゃって、決勝に参加したのは、ブリジストンを履いてたフェラーリ、ジョーダン、ミナルディの3チーム、6台のマシンだけだった。F1の規定では、マシンが12台以下だとレースが成立しないんだけど、フォーメーションラップを走ったあとのリタイアは、レースに参加したことになるため、たった6台なのに、レースは成立しちゃったのだ。で、たった6台ってことは、完走さえできれば、全マシンが入賞するってワケだし、3位以上に入賞して表彰台に上がれるのも、2分の1の確率っていうワンダホーな条件だった。

そして、「すわっ! ミナルディが20年目にして初の表彰台か!」って思ったのもトコノマ、これほどの好条件下でも、やってくれましたミナルディ。アルバースは5位、フリーザッハーは6位で、それも、トップのフェラーリからは2周遅れ。これぞ、ミナルディの底力ってワケで、こうなって来ると、ミナルディを表彰台に上げるためには、2チーム、4台のマシンでレースをするしかない感じがして来た。そして、そんなレースが行なわれるハズもなく、ミナルディは、一度も表彰台に上がることなく、20年間のF1参戦にピリオドを打ったのであった‥‥。

‥‥そんなワケで、最後のころには「笑点」における山田くんの立ち位置みたいになっちゃってたミナルディだけど、F1ファンの中には、不思議なことに、ミナルディが嫌いだって人がほとんどいない。あたしの知る限り、ミナルディを嫌いだっていう話は聞いたことがない。あたし自身も、ミナルディに対しては、あたたかくて、憎めなくて、それでいて、切ない感じのするチームだと思ってた。だから、売りに出たミナルディをレッドブルが買い取った時には、熱烈なミナルディのファンの中には賛否両論あっただろうけど、あたしみたく「F1の調味料」みたいに観てたファンは、形はどうあれ、ミナルディの火が消えないことに、みんな喜んだ。

で、これほど長い前置きをしてから、ようやくスタートしたゆうべのイタリアGPの決勝だけど、レースの前にベッテルは、「決勝は別に雨じゃなくてもOKさ!」って笑顔でコメントしてた。だけど、実際には、セーフティカーが先導して走る異例の「セーフティカースタート」がとられるほどの雨になった。これで、路面状況とかはベッテルには有利になったけど、もちろん、他のマシンのスピンに巻き込まれたりするマイナス面もあるってワケだ。実際、レースは、CMが明けるたびに順位が入れ替わってるような完全な「打撃戦」になった。何よりも残念だったのは、4番グリッドのボーデが、スタ―トでエンジンストールしちゃって、ピットスタートになったことだ。

だけど、千載一遇のチャンスを手に入れたベッテルは、降り続く雨をものともしないドライブで、トップを疾走してく。レース中盤でも、2番手に6秒ちょいの差しかつけられないのは、どう見てもマシンの力不足だ。それでも、時に熱く、時に冷静に、周回を重ねてくベッテル。後続のマシンは、激しく順位を入れ替えてるのに、ベッテルだけは別次元のレースを展開してる。自分自身と向き合ってステアリングを握ってるのだ。そして、ついに、その時がやって来た。若干21才の若きドライバーが、数々の新記録を打ち立てて、チェッカーを受ける時が。

‥‥そんなワケで、あたしは、2000年のドイツGPでバリチェロが初優勝した時とおんなじくらい号泣した。ベッテルが、両手のコブシを高々と突き上げ、マシンを降り、外したステアリングを丁寧に戻し、フロントタイヤに両手をあてて「よくがんばったな!ありがとう!」って言ったとこで、あたしの涙の黒部ダムは決壊した。狂喜乱舞するチームクルーたちに迎えられるベッテル。みんな抱き合い、初めて手にした勝利をかみしめてる。そして、夢にまで見た表彰台で、シャンパンファイトだ。


「人生で最高の日だよ。この感動は生涯忘れないよ。チームのみんなに感謝したい」


おめでとう、ベッテル!

おめでとう、トロロッソ!

そして、おめでとう、ミナルディ!


残念ながら、ゆうべの「中秋の名月」は雨で見えなかったけど、この雨がベッテルに優勝をもたらせたんだと思ったら、雨雲に隠れてるお月さまが、ニッコリと微笑んでるような気がした今日この頃なのだ。


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