F1三人吉三
各チームの状況的には、コレといった花もなくて、何だかグダグダッとした感じで終盤へとナダレ込んできちゃった今シーズンのF1だけど、前回のシンガポールのナイトレースで、ルノーのアロンソがヒサビサの優勝っていうポンポコリンを炸裂させてくれたオカゲで、今回のニポンGPもすごく楽しみになった。それで、土日がカキイレ時のあたしとしては、土曜日の予選と日曜日の決勝を録画してたんだけど、やっと落ち着いた深夜に観ようと思ってたら、NHKで深夜に各地のお祭りを放送してて、オトトイは博多の山笠、昨日の青森のねぶただった。だから、あたしは、お祭りのほうを観てて、ニポンGPを観たのは今日になっちゃった。
で、やっとこさ予選と決勝を観終わった感想としては、何よりも気になったのが、中嶋一貴の「まぁ」だ。前々から気にはなってたんだけど、今回はニポンGPってことで、いつも以上に舞い上がってたのか、あまりにもすごい「まぁ」の連発だった。「まぁ今回の、まぁ予選は、まぁ納得の、まぁ行く結果だったので、まぁ明日の、まぁ決勝は、まぁ自分の力を、まぁ信じて、まぁ臨みたいと、まぁ思います」‥‥って、すべての言葉の前に「まぁ」がついてるから、どんなに大事なことを話してても、こっちは「まぁ」ばっかりが、まぁ気になっちゃって、まぁ何をしゃべったのか、まぁぜんぜん覚えてない(笑)
そして、決勝はと言えば、こないだの「きっこに質問コーナー」の中でも書いたように、スタート早々、またまたハミルトンにムカつきーの、いろんなドタバタ劇がありーの、アロンソが優勝しちゃいーの、トツギーの‥‥って感じだった。ここに来てのマクラーレン全滅は、ハミルトンにムカついてることは抜きにしても、残り2戦を面白くする意味でヒャッホ~♪って感じだし、ライコネンの3位入賞でフェラーリのコンストラクターズが逆転したし、マッサは7位入賞でハミルトンとの差をリトル縮めたし、まさに「お膳立てができた」って感じだった。そして、何よりも熱いのが、ここに来ての意外な2連勝で、来シーズンへ向けてのノロシを上げ始めたアロンソのアピール度だろう。トロロッソ行きの噂まで流れてたアロンソだけど、こうなって来ると、育ての親のフラビオ・ブリアトーレが、そう簡単にはアロンソを手放さないような気がして来た今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、ずっと勝てなかったアロンソ的にも、チームが低迷してるルノー的にも、最近パッとしないフラビオ・ブリアトーレ的にも、前回と今回の2連勝は、来シーズンへ向けての大きなステップになったハズだ。そして、ファッション業界とおんなじに、秋や冬のうちから翌年の春や夏のことを考えて動いてるF1業界としては、「こいつぁ~春から、あ、縁起がいいわえ~」って思ってるハズだ。
ちなみに、この「こいつぁ~春から、縁起がいいわえ~」ってセリフは、きっと多くの人が耳にしたことがあると思うけど、このセリフだけがひとり歩きしちゃってるから、何で春から縁起がいいのかを知ってる人は、ワリと少ない。このセリフは、歌舞伎の演目としても有名な「三人吉三(さんにんきちさ)」の中の決めゼリフで、この部分の全文はこんなふうになってる。
月も朧(おぼろ)に白魚の 篝(かがり)もかすむ春の空
冷てえ風にほろ酔いの 心持ちよくうかうかと
浮かれ烏(からす)のただ一羽 ねぐらへ帰る川端で
竿の雫か濡れ手で粟(あわ) 思いがけなく手にいる百両
ほんに今夜は節分か
西の海より川の中 落ちた夜鷹(よたか)は厄落とし
豆だくさんに一文の 銭と違って金包み
こいつは春から 縁起がいいわえ
この「三人吉三」って演目は、そのタイトルの通り、3人の「吉三」が登場する白波モノだ。「白波モノ」ってのは、盗賊やドロボウを主人公にした演目のことで、「白波五人男」とかの「白波」のことだ。もともとは、中国で「黄巾(こうきん)の乱」を起こした張角(ちょうかく)の一派が、白波谷ってとこを隠れ家にしてたことから、「白浪賊」って呼ばれてた。ここから、盗賊やドロボウが主人公の演目を「白波モノ」って呼ぶようになった。ちなみに、庶民の日常生活を題材にして、人情や風俗を描いた演目は「世話モノ」って呼ぶ。
で、この「三人吉三」に登場するのは、お嬢吉三(おじょうきちさ)、お坊吉三(おぼうきちさ)、和尚吉三(おしょうきちさ)の3人なんだけど、コイツラはそれぞれドロボウで、人のものを盗んで生きて来た。お嬢吉三は、見た目は女性のカッコをしてるけど、実は男だ。ようするに、女に成りすまして盗みを働くドロボウなんだけど、これは、ドロボウをするためだけに女装してるワケじゃなくて、性同一性障害なのだ。体の性別は男だけど、心の性別は女で、同性であるお坊吉三とボーイズラブの関係なのだ。だから、歌舞伎の場合には、玉三郎とかの女形がお嬢吉三を演じるんだけど、「女装した男」っていう設定だから、見た目は美しいのに、立ち居振る舞いのハシバシに男っぽい仕草をまじえたりしてて、すごく面白い。
ま、細かい解説はテキトーにして、カンジンのストーリーだけど、ある日のこと、大川(今の隅田川)沿いをウロウロしてる夜鷹のおねえちゃんがいた。「夜鷹」ってのは、「立ちんぼの売春婦」のことで、ちゃんとした女郎屋に勤めてる売春婦よりも、ガクッと格が下がる女だ。それで、何をしてるのかっていうと、ゆうべ大金を拾っちゃって、その落とした人に見覚えがあるから、返してあげようと思って、その人を探してるとこだった。そして、そこに登場するのが、有名な「八百屋お七」に成りすました美しいお嬢吉三なのだ。
お嬢吉三は、その夜鷹のおねえちゃんに声をかけて、何をしてるのか聞く。そして、そのおねえちゃんが大金を持ってることを知ったもんだから、お金を奪って川に突き落としちゃう。ハッキリ言って、ドロンジョ様よりもタチが悪い。奪ったお金は、ナナナナナント! 小伴が100枚! いつも「きっこの日記」を読んでる人なら、当時の小伴1枚が、現在の10万円に相当するってことを知ってると思うから、それが100枚ってことは、1000万円てことになる。
そして、川へ突き落した夜鷹のおねえちゃんはと言えば、遥か川下のほうを「あ~れ~」なんて言いながら流れてるから、この大金はもう、お嬢吉三のものだ。お嬢吉三は、「ラッキー、クッキー、八代亜紀」なんて言いつつ、この百両をフトコロに入れるんだけど、江戸時代なんだから、古いギャグでも問題ない。そして、ここで、さっきの名セリフを言うワケだ。
月も朧に白魚の 篝もかすむ春の空
冷てえ風にほろ酔いの 心持ちよくうかうかと
浮かれ烏のただ一羽 ねぐらへ帰る川端で
竿の雫か濡れ手で粟 思いがけなく手にいる百両
ほんに今夜は節分か
西の海より川の中 落ちた夜鷹は厄落とし
豆だくさんに一文の 銭と違って金包み
こいつは春から 縁起がいいわえ
‥‥そんなワケで、この一部始終を見てたお坊吉三が、「オレにもよこせ!」って言って、お嬢吉三からお金を奪おうとする。そして、そこにやって来た和尚吉三が、2人の間に割って入って、ナンだカンだありーので、結局、ドロボウ同士で気が合っちゃって、3人仲良くお酒を飲むっていうストーリーだ。ま、ストーリーは単純なんだけど、このお嬢吉三の有名なセリフは、当時の「節分」のことが分からないと理解できない。
当時は、今みたく「豆撒き」をしたんじゃなくて、自分の年の数だけの豆と、1文銭とを一緒に紙に包んで、それを自分の家の外に置いてたのだ。そして、その紙包みが乞食(こじき)に拾われると厄が落ちるって言われてた。だから、節分の夜になると、乞食がたくさん現われて、それぞれの縄張りを「厄落としましょ~う」「厄落としましょ~う」って言いながら徘徊して、その紙包みを拾って歩いてた。
もともと、室町時代には、年の数だけお金を包んで置いてたそうだ。だけど、時代の流れとともに、「年の数の豆+1文銭」ていう不景気な方式に変わったから、当時のニポンも自民党が政権与党だったのかもしれない‥‥なんてことも言ってみつつ、当時は、今と違って節分が3回もあったから、たとえ「年の数の豆+1文銭」でも、6つ拾えば「小室等と六文銭」のCDくらいは買えたかもしれない(笑)
で、紙包みを拾った乞食は、その家の前で厄落としのセリフを一節言うんだけど、その最後の部分が、「西の海へさらり」で締めくくられてた。これは、日が沈む方向が「西」だから、「西の海」は「地の果て」って感じで捉えられてて、「ものすごく遠く」って意味だったからだ。ようするに、「あなたの厄をものすごく遠くの海へ落としました」って意味なのだ。
そして、ここまでのことをベースにして、さっきのお嬢吉三の名セリフを読むと、後半の「ほんに今夜は節分か 西の海より川の中 落ちた夜鷹は厄落とし 豆だくさんに一文の 銭と違って金包み こいつは春から 縁起がいいわえ」って部分がよく分かると思う。「わざわざ遠い西の果ての海に落とさなくても、目の前の川に夜鷹を突き落したら、それが厄落としになったみたいで、豆だらけの中に1文しか入ってない紙包みなんかじゃなくて、お金がいっぱい入った紙包みが手に入っちゃったよ。こりゃあ春から縁起がいいねぇ」ってことになる。
もうちょっと細かいことを言うと、このセリフの真ん中のとこには、「おん厄払いましょ~う、厄落と~し、厄落と~し」っていう乞食の呼び声が聞こえて来る。そして、遠くから聞こえるその声に耳をやってから、お嬢吉三は、「ほんに今夜は節分か」って続けるのだ。で、だいたいの流れが分かったとこで、せっかくだから、今度は「きっこ訳」で書いてみる。
空にはぼんやりとした朧月、篝火もかすむ白魚漁の舟、う~ん、春だねぇ
‥‥なんて言ってみつつ、ほろ酔い気分のあたしには、冷たい夜風が気持ちいい
浮かれガラスみたいなあたしが、カーカー鳴きながら寝ぐらへの道を歩いてたら
濡れ手に粟で百両もの大金を手に入れちゃったよ、ウッシッシ
今日は節分みたいだけど、わざわざ遠くの「西の海」まで行かなくたって、目の前の「川」で厄落としは済んじゃったし
ハトしか喜ばないような豆ばっかの包みと違って、お金がいっぱい入ってる包みをGET MY LOVE!しちゃったし
こりゃあ春から縁起がいいわよねぇ
‥‥そんなワケで、よくよく考えてみなくても、他人から1000万円もの大金を奪って、その人を川へ突き落したのに、それで「こりゃあ春から縁起がいいわよねぇ」もないもんだと思う。もしも、突き落とした夜鷹のおねえちゃんが溺死してたら、強盗殺人てことになる。だけど、そんなこと関係なく喜んじゃうとこが、悪党の悪党たるユエンてワケで、さらには女装した男なんだし、その上、単なる作り話なんだから、いろんな面で許してあげるしかないだろう。とにかく、強引で悪質なドライブでポイントを重ねて来て、今シーズンのチャンプの座を狙ってるハミルトンが「お嬢吉三」なら、その座を奪おうとしてるマッサが「お坊吉三」で、最後に割って入って来たアロンソが「和尚吉三」みたいなもんだと思う。だから、今シーズンのチャンプの行方は、千秋楽のブラジルGPまで分からないと思う今日この頃なのだ。
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