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2008.10.24

ハナコが教えてくれたこと

今日は、まず、あたしの心に引っかかった毎日新聞の小さな記事を紹介する。

 

 

「たま駅長困惑、貴志駅に捨て猫急増」(毎日新聞)

 

三毛猫の「たま」が駅長を務める和歌山電鉄貴志川線貴志駅(和歌山県紀の川市)に、今春から夏にかけ、相次いで子猫が捨てられた。たまは07年1月に駅長就任以降、写真集発売など人気を呼んで乗客増にも貢献。中には「たまみたいに可愛がってあげて」とメモが添えてあったが、同社は「たまの所なら育ててもらえると思うのは間違い。責任を持って飼ってほしい」としている。これまで貴志駅に捨てられた猫は6匹。同社や引き取った県動物愛護センターによると、最初は5月24日、待合室で子猫2匹が毛布を敷いた段ボールの中で鳴いていた。同様に8月21日に2匹、同27日にも1匹。7月下旬には、生後2カ月程の子猫1匹が待合室のベンチにひもで結びつけてあった。貴志駅売店店主でたまの飼い主の小山利子さん(49)は「たまが、捨て猫だった『ちび』を育てたことが知られたためでは」と話す。猫の出産期は5~6月。8月27日を最後に捨て猫は確認されていない。同社は「猫を大切にすると思われてのことだろうが……」と困惑する。来年も同じころに捨てられないか心配し、8月下旬に貴志駅に張り紙をして、猫を捨てないよう呼びかけている。(2008年10月22日)

 

 

‥‥貴志駅の「たま駅長」のことは、たまが駅長に就任してすぐに、この「きっこの日記」でも取り上げた。今、過去ログを見てみたら、2007年1月7日の日記、「猫の駅長さん」だった。久しぶりに読んでみたら、あたしの日記って、ホントに面白い(笑)‥‥なんて自画自賛もしてみつつ、たま駅長は、このあと、写真集が発売されたり、映画に出たりして、どんどん人気が出て行った。最近では、たまの車両も作られることになり、赤字だった路線が、文字通り猫の手も借りたいほど元気になった今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?

 

 

‥‥そんなワケで、あたしが猫を飼わないのは、今住んでるマンションが「ペット禁止」だってことも理由の1つだし、あたしが1人暮らしだから、猫にさみしい思いをさせちゃうからってことも理由の1つなんだけど、最大の理由は、自分の子供だと思って、目の中に入れても痛くないほど愛してた猫が、死んじゃったからだ。前にも書いたことがあるけど、このマンションに住むようになってから、雪の降る日に、多摩川の近くで、死にそうになってた子猫を見つけた。まだ、目も開いてないくらいの生まれたての子猫が、多摩川沿いの道路の脇で、雪の中で泥だらけになってニャーニャー鳴いてるのを見つけた。すぐ近くに、その子猫が入れられてたダンボール箱があった。

 

あたしは、その子を抱き上げて、氷みたいに冷たくなってた体を両手で温めようとしたんだけど、あたしの手も冷えきってて冷たかった。それで、とにかく何とかしなきゃ死んじゃうと思って、自分のマフラーで、その子をくるんだ。その子は、片目は開いてたんだけど、もう一方の目は、潰れてるのか、血の混じった目ヤニで塞がってた。そして、マフラーでくるんでも、ずっとニャーニャー鳴き続けてた。それは、まるで、「生きたい!生きたい!」って言ってるみたいだった。

 

あたしは、必死に小走りで駅に向かった。パンプスの中に雪が入って、足がびしょびしょになった。冷たくて痛かったけど、死にかけてるこの子のことを思ったら、自分のことなんて考えてるヒマなんかなかった。そして、駅前のマックに飛び込んで、フィレオフィッシュを買って、外に出て、駅の構内のハシッコにしゃがんで、食べさせた。フィッシュフライの部分をチョコッとかじって、口の中でコロモをとって、身の部分だけにして、それを少し噛んで細かくしてから、手のひらに乗せて、その子の顔の前に出した。そしたら、その子は、鳴き声を上げながら、狂ったように食べ始めた。

 

 

お腹がペコペコだったんだね。つらかったよね。心細かったよね。でも、もう大丈夫だよ。あたしがついてるから、もう安心していいんだよ‥‥。

 

 

こんなちっちゃな子に、フィレオフィシュなんか食べさせてもいいのか、その時のあたしは分からなかったし、近くにはコンビニもあったから、他に選択肢もあった。だけど、その時は、とにかくこれしか思いつかなかった。そして、最初は「具合が良くなるまで」って自分にイイワケをして、ペット禁止のマンションに連れて来た。そして、お湯で濡らしたタオルで体を拭いて、濡らしたティッシュで顔を拭いたら、目ヤニで塞がってた目が開いた。キレイになったら、とっても可愛いキジトラだった。あとから分かったんだけど、女の子だった。だけど、呼吸が荒くて苦しそうだったから、あたしは徹夜で看病した。看病って言っても、何をすればいいのか分からなかったから、ソファーの上にバスタオルを重ねたとこに寝かせて、湿らせた脱脂綿を口にあててお水を飲ませたりしながら、朝までずっと背中に手をあててた。

 

朝になったら、呼吸が落ち着いて、スースーと寝息を立てるようになった。あたしは、空き箱のフタに古新聞を敷いておトイレを作り、ご飯にオカカを混ぜた猫まんまとお水を並べて、その子をバスタオルごとソファーの下に降ろして、後ろ髪を引かれる思いでお仕事に行った。ものすごく心配だったけど、他に方法がなかった。だから、お仕事が終わって、ダッシュで帰って来て、お部屋に飛び込んだ時に、朝とおんなじ場所でスヤスヤ寝てる姿を見て、あたしは、ホッとしすぎて、その場にへたり込んだ。

 

‥‥そんなワケで、ペット禁止のマンションに猫を入れてる「自分へのイイワケ」が、「具合が良くなるまで」から「もうちょっと暖かくなるまで」に変わり、「1人でも生きて行けるくらい大きくなるまで」に変わったころには、もう、完全になつかれてた。一緒にお布団に入ると、あたしの脇のとこにグイグイともぐり込んで来て、目をつぶったまま、あたしの二の腕を両手で交互に押して、オッパイを飲む仕草をした。これを見た時に、あたしの中に母性が目覚めて、もう絶対に手放せなくなった。

 

「ハナコ」と名づけたこの子は、ホントに聞き分けのいい子で、「ムダ鳴きをしない」っていうペット禁止のマンションでのサバイバル・ルールをちゃんと守ってくれた。実際、このマンションは、表向きは「ペット禁止」を謳ってるけど、普通に犬を飼ってる人が何人もいるし、管理人さんもそうした人たちのことを見て見ぬフリをしてたから、「周りに迷惑をかけないように静かに飼うならOK」って感じの暗黙の了解があった。だけど、できる限り社会のルールを守って生きて来たあたしにとっては、高校の屋上でタバコを吸うのとおんなじくらいドキドキしてた。

 

ハナコは、顔立ちもキレイで、体の線もなめらかで、シッポも長くて、とっても美しい猫に育って行った。ハナコは、あたしのことをお母さんだと思ってて、あたしも、ハナコのことをホントの子供だと思うようになった。あたしは、猫のことをいろいろと勉強して、3ヶ月くらいした時には、動物病院に連れてって3種混合ワクチンをしてもらった。そして、ナニゴトもないまま、ハナコとの幸せな毎日が続いて行き、1年以上が過ぎたある日のことだった。昨日まで、いつも通りにご飯をパクパクと食べてたのに、その日は、大好きなお風呂のフタの上にずって寝てるだけで、ご飯を食べようとしなかった。

 

それで、ちょっと心配だったけど、食欲がないだけだと思って、無知だったあたしは、ご飯を用意して、そのままお仕事に行った。だけど、夜になって帰って来たら、ご飯はまったく減ってなくて、朝とおんなじに、お風呂のフタの上に寝てたのだ。よく見ると、普通に寝てる時よりも、お腹の上下運動が少し激しい感じで、明らかに具合が悪いみたいだった。それで、あたしは、次の日のお仕事を仲間に代わってもらって、朝イチで病院に連れてった。

 

そしたら、血液検査の結果を見た先生の顔が、いつもの笑顔から険しい表情に変わって、「この子は、猫白血病です。助かる見込みは少ないけど、できるだけのことはやってみます」って言われた。1年前、3種混合ワクチンを打ったあとに、一度だけ外へ逃げちゃって、他の猫にやられて、顔から血を流して帰って来たことがあったんだけど、先生が言うには、その時に感染したか、もしくは、生まれた時から母子感染してたかのどっちかだって言う。そして、ずっと潜伏してた猫白血病が、突然、発病したんだって言う。

 

あたしは、こんな病気があることすら知らなかったから、まだ、コトの重大さが分からなかったんだけど、先生から「猫白血病」と「猫エイズ」の説明を受けて、今のニポンには治療薬がないことも聞かされて、初めて、心臓がドキドキして来た。そして、ハナコは、その日から入院することになったんだけど、次の日、お仕事が終わってから様子を見に行ったら、オリの中にへたり込んでて、昨日よりもグッタリしてた。でも、あたしが声をかけると、ちゃんと顔を上げてこっちを見るし、立ち上がってくれた。

 

先生は、有効だと思われる治療法をすべて尽くしてくれたけど、ハナコは、日ごとに衰弱して行った。最後には、目も見えなくなり、鳴くこともできなくなり、ただ横になってるだけだったのに、あたしが声をかけると、シッポの先だけで返事をしてくれた。そして、発病からたった5日目に、眠るように息をひきとった。

 

あたしは、その場に泣き崩れて、泣いて泣いて泣きすぎて、具合が悪くなって倒れてしまった。しばらく休ませてもらってから、ハナコを連れて帰り、朝まで泣き続けた。最初は暖かくてやわらかかったハナコが、だんだんと冷たく、固くなって行くのがつらかった。変な形に固まったらイヤだと思って、完全に固くなる前に、ダンボール箱の中にバスタオルを敷いて、横向きの姿勢に寝かせた。

 

少しだけ落ち着いた3日目には、電話帳で調べた動物霊園に連れてって、ハナコを火葬してもらった。だけど、ちっちゃな骨壺を見たら、もうガマンできなくなって、辺り構わずに大声で泣いた。それから2週間、すべてのお仕事をキャンセルして、誰にも会わずに、ずっとお部屋で泣き続けてた。あたしは、飲み物しか口にできなくて、体重が30kg台にまで落ちた。コツコツと貯めてた貯金も、病院代と火葬代ですべて無くなった。

 

でも、お金なんかどうでも良かった。どんなにお金が掛かっても、借金をしても、ハナコさえ助かればそれで良かった。だけど、あたしは、ハナコを助けてやることができなかった。そして、こんな思いは二度としたくないから、あたしは、生涯、猫は飼わないと心に決めた。

 

そして、それから何年かしたある日、マンションの駐車場で、野良猫にご飯をあげてる人がいた。何となく声をかけてみたら、「この子がハナコで、この子がマイケルで‥‥」って名前を教えてくれた。あたしは、「ハナコ」って名前を聞いて、ずっと遠くに置いて来たハズの思いが、昨日のことのように蘇って来た。そして、この日から、あたしと駐車場の猫たちとの付き合いが始まったのだ。

 

‥‥そんなワケで、あたしのハナコも多摩川の土手に捨てられてた子だったけど、多摩川の土手には、たくさんの子猫や子犬が捨てられ続けてる。そして、そのほとんどは、カラスに食い殺されるか、車に轢かれて死んでる。子供が生まれても自分の家で飼えないのなら、何で親の避妊手術をしないのか。そして、もしも生まれてしまっても、何で里親探しをしないのか。避妊手術をするなら、それぞれの市町村で補助金を出してくれるし、里親探しをするなら、力になってくれるいろんな団体がある。それなのに、飼い主としての最低限の義務も果たさずに、安易に「命」を捨てる人たち。こういう人たちが世の中にたくさん存在してることが、あたしはホントに悲しいし、とても恐ろしく感じる。だけど、世の中、捨てたもんじゃない。先日、とっても嬉しいメールが届いたので、今日は、このメールを紹介して、終わりにしようと思う今日この頃なのだ。

 

 

きっこさん、はじめまして。
ちえと申します。
「きっこのブログ」の存在を知った昨年4月から
ほぼ毎日読ませていただいております。

 

きっこさんの舌鋒鋭い文章を読むたび
テレビや新聞の偏った報道ばかりを鵜呑みにせず
多角的な視点でものごとを観ることの重要性を再認識して
背筋をただす思いです。

 

そんな中、猫の話題は
ちょっと微笑ましくもあり、切なくもあり…
楽しみにしている記事のひとつです。
今回の、もんじゃ君のエピソードも
とってもいじらしくて、思わず涙ぐんでしまいました。

 

ところで、きょうメールを差し上げたのは
きっこさんにお礼を申し上げようと思ったからです。

 

「きっこのブログ」バナーにある
「いつでも里親募集中」をクリックしたことがきっかけで
私の家に、かわいくてやんちゃ坊主の猫が来たのです!

 

もともと私の実家では、子供のころからいつも猫がいました。
上京して20年余り、なかなか猫を飼える環境に住めず
周囲に地域猫もいなかったので、さみしい思いをしていたのですが
今年になって、念願のペットOKのマンションに引っ越すことができました。
ペットショップで猫を買うことはまったく念頭になく、
行き場のない猫を引き取りたいと思っていました。

 

そんな折り「きっこのブログ」に「いつでも里親募集中」のバナーが
あったことを思い出し、
クリックしてみたのです。
掲載されていた多くの猫のなかで、
住まいが近く、当方に合う条件と思われた保護主の方に
さっそく連絡を取りました。

 

「いつでも里親募集中」に掲載されていた子猫は
タッチの差で、他の里親さんが決まってしまっていましたが
その保護主さんは、ちょうどほかにも捨て猫きょうだいを保護したばかりだったのです。

 

生後2ヶ月ほどの、白猫きょうだい4匹が
ドラッグストアの駐車場に捨てられていたそうです。
かわいそうなことに、1匹は車にひかれて亡くなってしまっていたそうです。
無事保護した3匹のうち2匹は、すでに里親さんが決まっていたので
売れ残りのメス1匹をもらうことにしました。

 

家に来たときは、650グラムほどの
真っ白でふわふわな、繭玉のような子猫だったので
「まゆちゃん」と名付けましたが…
現在は生後7ヶ月。
すくすくと成長し、体重3キロのチョーいたずら小僧になりました。
呼び名も「まゆぞう!」となり、
きょうも元気に遊び回っています。

 

「まゆぞう」は、たまたま全身真っ白な猫でした。
黒猫や白猫は、柄に個性が少ないので、
どれも同じように見えがちですが
飼い主から見れば、絶対に見まちがえないんですよね。

 

猫がいる暮らしは、心がなごみます。
きっこさんのブログを拝見していたからこそ
「まゆぞう」と暮らすことができたのです。
きっこさん、ありがとうございます。

 

私のブログは、きっこさんの足元にも及ばない
人畜無害なヒトコマ絵日記ブログですが
たまに、猫のことも描いたりしています。

 

「トホホなうさぎのDiary」
http://ameblo.jp/lonesomebunnydiary

 

僭越ながら私のブログにも「いつでも里親募集中」バナー、
貼らせていただきました。
不幸な猫が1匹でも減りますように。

 

寒い季節に向かいますが、どうかご自愛ください。
これからも楽しみに読ませていただきます。

 

 

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