CAN YOU CELEBRATE?
ブライダルのお仕事をやってると、思わず胸がジーンとして、もらい泣きをしちゃいそうになることが多い。特に、新婦さんがご両親にお手紙を読んで、花束を贈呈するシーンでは、毎回のようにもらい泣きしそうになる。だけど、それはそれ、プロとして、自分の感情をコントロールして、泣かないように気をつけてる。だけど、今日のお式は、サスガのあたしも涙が止まらなくなっちゃった。
結婚式の披露宴では、いろんなBGMが使われる。お客様をお迎えする迎賓、新郎新婦の入場、ケーキ入刀、乾杯、お色直し、ご両親への手紙の朗読や花束贈呈、新郎新婦の退場、お客様をお送りする送賓など、そのシーンそのシーンでいろんなBGMを使う。タマ~に、プランナー任せ、式場任せの人もいるけど、たいていは新郎と新婦が希望を言って来て、プランナーがうまくマトメるって感じだ。もちろん、特に希望のないカップルや、どんな曲を使えばいいのか分からないカップルのために、プランナーは、それぞれのシーンに合わせた選曲リストを用意してる。
で、今日のお式は、新婦さんが、あたしとおんなじで、母ひとり娘ひとりの母子家庭だった。あたしは、普通に打ち合わせをして、メークリハをして、今日の本番を迎えたんだけど、いつものプランナーからのお仕事だったので、BGMまではチェキしてなかった。それで、お色直しをして送り出してから、ソデで待機してたら、新婦さんがお母さまへのお手紙を読むシーンになった。そしたら、流れ始めたBGMが、Metisちゃんの「母賛歌」だったのだ。
女手ひとつでMetisちゃんを育てあげたメティママに対する、Metisちゃんからの愛と感謝の歌、それが「母賛歌」だ。あたしは、「母よ~母よ~感謝してます~♪」っていうMetisちゃんの歌をBGMにして、新婦さんが読み上げるお母さまへの感謝のお手紙を聞いて、もう、涙をこらえきれなくなった。新婦さんも涙声だったけど、ソデからチラッと覗いたら、お母さまだけじゃなく、ほとんどの人たちがハンカチを目にあててた。そして、ちょうど最後の「私を産んでくれてありがとう~♪」のとこでお母さまに花束を贈呈したんだけど、そこにいるすべての人たちが涙を流してた今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、いつもは泣かないあたしだけど、今日だけは気持ちのコントロールが効かなくなって、感動を抑えられなくて泣いちゃった。そして、披露宴のあとに知ったんだけど、新婦さんも昭和59年生まれで、Metisちゃんと同い年だったので、「あれは昭和59年~私が生まれた故郷は~」って歌い出す「母賛歌」が、まるで自分とお母さまのことのように感じられたんだってことだった。あたしも、Metisちゃんの「母賛歌」を初めて聴いた時には、まるで自分のことのように感じられて涙が止まらなくなったけど、同い年なら、なおさらだよね。
もちろん、新婦さんのお手紙の内容も感動的だったけど、それだけなら、あたしは慣れてるから、グッと来ても涙を抑えることができた。だけど、そこに、Metisちゃんの「母賛歌」が流れると、あたしはもうダメだった。それで、BGMの効果ってものを再認識したのが、今日のお式だった。
正直言って、最近の披露宴のBGMは、あたしには理解できないパターンが多い。たとえば、新郎新婦が大のサザンファンで、入場から退場まですべてシーンにサザンの曲を使うってんなら、一応は理解できる。だけど、スマップの騒がしい曲で入場して、コブクロの四畳半フォークみたいな曲でケーキ入刀、お色直ししたら平井堅の「ポップスター」で再登場‥‥って、いったいナニゴト?って感じがする。まあ、本人たちの希望なんだから、あたしがトヤカク言うことじゃないけど、一生に一度の結婚式で、いくらなんでもスマップはないだろ?スマップは?‥‥って思う。
でも、どんなに突拍子もないBGMを選ぶカップルでも、ご両親への手紙や花束贈呈のシーンでは、それなりに落ち着いた選曲をする場合がほとんどだ。やっぱり、シチュエーションが明確だと、あまりにもダッフンした選曲をする人は少ない。ちなみに、プランナーがオススメしてるのは、ダイアナ・ロスの「If We Hold On Together」とか、ホイットニー・ヒューストンの「Greatest Love Of All」とか、サラ・ブライトマンの「Time To Say Goodbye」とか、洋楽の女性ボーカルのバラードが多い。何でかって言うと、ご両親へのお手紙を読み上げるシーンで、歌詞がニポン語の邦楽を流すと、言葉がかぶっちゃうからだ。
だけど、今回のMetisちゃんの「母賛歌」の場合は、新婦さんの読み上げるお手紙がメインボーカルで、Metisちゃん「母よ~母よ~感謝してます~♪」って歌がコーラスみたいな感じに混じり合ってて、ホントに素晴らしくて感動的だった。だから、とっても珍しいケースだったと思う。あたしは、打ち合わせとメークリハで新婦さんのご自宅にうかがった時に、お母さまともお会いしてて、お母さまがどれほど娘さんの結婚を喜んでたか知ってたから、今日の感動もヒトシオだった。
‥‥そんなワケで、ヨーロッパでは、「ジューンブライド」って言われてて、6月に結婚式を挙げるカップルが多いけど、ニポンの場合は、6月は梅雨でお天気が悪いので、1年のうちでもっとも結婚式が集中するのが、今、11月だ。でも、あたしの場合は、今はマネージャーもいなけりゃアシスタントもいない完全家内工業的独立採算制三段逆スライド方式だから、1ヶ月にこなせる本数が決まってる。だから、伊豆の伊東のホテルサンハトヤとおんなじに、半年から3ヶ月ほど前にいただいた予約に沿って淡々とスケジュールをこなしてくだけで、別に11月だけが特別に忙しくなるワケじゃない。
で、あたしにお仕事を斡旋してくれてるブライダルプランナーも、忙しいのは11月のスケジュールを組む春から夏に掛けてだから、11月に忙しくなるのは、現場である式場だけなのだ。それなのに、今年の11月は、プランナーも忙しくなっちゃった。それは、すでに予約を受けてた何十組ものカップルから、急きょ、BGMの変更の相談が入ったからだ。何よりも多かったのが、当然のことながら、安室奈美恵の「CAN YOU CELEBRATE?」を別の曲に変えたいって相談だったそうだけど、他にも、小室哲哉の楽曲をBGMに選んでた何組ものカップルが、他の曲に変えたいって連絡して来て、プランナーの事務所はプチパニックになったそうだ。
今月の下旬とか来月とかならともかく、8日と9日の土日に入ってた数十組のお式のうち、十何組かが「CAN YOU CELEBRATE?」を始めとした小室哲哉の楽曲を選曲してたもんだから、小室哲哉が逮捕された翌日の5日から電話が掛かって来たそうだ。みんな、お式まで時間がないから、アセリマクリスティーで、対応するほうも大変だったみたいだ。そして、この先の予約の中にも、数多くのカップルが小室哲哉の楽曲を選曲してるから、まだまだプチパニックは続いてくそうだ。
あたしの場合は、プランナーから雇われてる立場なので、自分のお仕事であるヘアメーク以外は専門外だけど、新婦さんのヘアメークを作る上で、ドレスを把握しておくことと、大マカの演出を頭に入れとくことだけは必要になる。もちろん、新婦さんの希望が第一だけど、ドレスや演出に似合わないヘアメークは作れない。だから、できる限り新婦さんの希望を取り入れつつ、ドレスや演出に合ったヘアメークを考えて、メークリハで決定する。入場やお色直しからの再登場の時のBGMに会わせて、ヘアメークの細部を決定する場合もあるから、あまりにも印象の違うBGMに変更されちゃったら、あたし的にもメンドクサイことになっちゃうのだ。
ハッキリ言って、いくら小室哲哉が巨額詐欺で逮捕されたからといって、小室哲哉の作った歌を歌ってた篠原涼子や安室奈美恵や華原朋美には何の罪も責任もない。たとえば、それらの楽曲を作る上で、誰かの作品を盗作したって言うのなら、その楽曲を使うのはどうかと思うけど、今回の犯罪は、楽曲とも歌手とも関係ない。あくまでも、小室哲哉個人の犯罪だ。だけど、テレビのワイドショーでは、小室哲哉の事件を取り上げるたびに、篠原涼子や安室奈美恵の顔写真が出て、これらの楽曲が流れまくってるから、何だか、篠原涼子や安室奈美恵も共犯者みたいな、すごくマイナスのイメージが植えつけられちゃった。華原朋美に至っては、楽曲を提供されてただけじゃなくて、元恋人ってこともあるから、さらにツッコミが激しい。何とかコメントを引き出そうと、連日、何人ものレポーターがしつこく自宅に押しかけちゃって、ホントに気の毒だ。
‥‥そんなワケで、あたしとしては、小室哲哉が詐欺を働いたからって、過去の素晴らしい楽曲や、その楽曲を歌ってる歌手には、何の罪もないと思う。奈美恵の「CAN YOU CELEBRATE?」は、たとえ英語がデタラメでも、たとえ小室哲哉が刑務所に行っても、歴史に残る名曲だと思う。だけど、悲しいことに、こんな事件が起こっちゃうと、結婚式の披露宴ていうおめでたい席では、ケチがついちゃったから使いずらくなるよね。この曲が大好きで、自分の結婚式で使いたいって思ってた人たちにとっては、ホントに残念なことだと思うし、奈美恵本人にとっても、すごく残念なことだと思う。だけど、きっと、いつかは、また純粋な気持ちで聴いたり歌ったりできる日が来ると思うから、そうなれば、CAN YOU CELEBRATE?だと思う今日この頃なのだ。
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