CHANGE HAS COME
開票を続けてたアメリカの大統領選は、ニポン時間の5日13時ジャストに、民主党のオバマ候補が過半数の270を超えて、事実上の当選になった。あたしは、ニポンで唯一の正しい情報を伝える通信社、「世田谷通信」の社主兼記者として、車の中からケータイで必死に記事をアップしたんだけど、慣れないケータイでモタモタしてたら、3分近くかかっちゃって、ここにアップできたのは13時2分57秒だった。それでも、あたしが速報を出した時点では、通常のネットニュースはどこもこのニュースを伝えていなかったから、あたしは、心の中で桑田真澄のような小さなガッツポーズをした。
そして、ケータイのワンセグでテレビのワイドショーをチェキしてみたら、日本テレビもTBSも小室哲哉のことなんかを特集してたから、「よっしゃ!」って思って、今度はコブシを真上に突き上げて、サンルーフを突き破るほどのガッツポーズをした。アメリカの大統領選の開票日は、前から分かってたことだから、あたしの常識では、今日の午後のワイドショーは、どこも真っ先にこの大ニュースを伝えると思ってた。それなのに、午後のワイドショーをやってる民放2局が、両方ともくだらない芸能ネタを優先してたなんて、これだから世の中の主婦の中には、未だに自民党なんかを支持してるオッペケペーがいるんだね。
とにかく、あたしは、路肩に停めてた車を発進させて、半分ほど開けてたサンルーフからコブシを突き上げて、オバマの勝利、民主党の勝利、そして、アメリカでの政権交代が実現したことを喜んだ。あたしが、何よりも感動したことは、アメリカには、まだ民主主義が生きてたってことだった。ニポンみたいに、誰からも選ばれてない世襲議員が自動的に総理大臣になれるような国とは違って、国民の1人1人が、自分の国のことを真剣に考えて、投票所に足を運んだのだ。ここんとこ、あんまり好きになれなかったアメリカだけど、それはブッシュっていう独裁者がデタラメをやってたからで、アメリカを愛するアメリカの人たちが、みんなでブッシュに「NO!」を突きつけてくれた今、あたしの中でも、アメリカに対する好感度がアップした今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、笑顔のオバマの大きな写真に、大きな文字で「CHANGE HAS COME(変革の時が来た)」って書かれた号外が撒かれて、全米が熱狂した。これは、オバマの当選を祝うってよりも、やっぱり、ブッシュ政治の終焉を祝うものだった。今回の大統領選の中で行なわれた世論調査では、80%以上のアメリカ人が「ブッシュの政策は間違っていた」って回答してて、イラク戦争に関しては、87%が「間違っていた」って回答してた。これは、現在のブッシュの支持率が20%しかないこととも合致するし、今回の選挙結果にも大きく影響した。
戦争が大好きなマケインとは正反対に、オバマは、公約の1つに「イラク駐留米軍の完全撤退」を掲げてたから、これで、何の罪もないイラクの人たちが殺されることもなくなるし、頭の狂ったアメリカ兵にイラクの少女や少年たちがレイプされることもなくなる。今や、アメリカ兵によるレイプや強盗や殺人は、毎日のように行われてて、アメリカ国防省の中には、その事実をインペイするため専門部署まで作られてるほどだから、こうした戦争犯罪がなくなるだけでも、ものすごい前進だと思う。ついでに、在日アメリカ軍も完全撤退してくれたら、基地の近くに住んでる人たちは、みんな安心して生活できるようになるんだけどね。
とにかく、何かにつけて「初の黒人の大統領」ってことばかりが取りざたされてるけど、今回のオバマの勝因の1つに、「黒人の代表にならなかった」ってことがあげられると思う。オバマは、一貫して、「人種に関係なく、すべての国民が手を結ぶ時だ」って「人種の融和」を訴え続けた。これによって、黒人やヒスパニック系だけでなく、白人の票も取り込むことに成功した。また、汚い言葉で人格攻撃や誹謗中傷を続けるマケインに対して、決して相手の土俵には上がらずに、常に冷静に政策を訴え続けた。こうした紳士的な態度が、人種の壁を超えて多くの人たちの心をつかんだ。
‥‥そんなワケで、オバマの勝利を喜んで、ヤタラと「ガッツポーズ」をしちゃったあたしだけど、サンルーフから真上に突き上げるスタイルのガッツポーズだったってことと、「マクラ」の部分だったってことで、勘のいい人はお気づきのように、これには、黒人で初のワールドチャンプになったマクラーレンのルイス・ハミルトンのことがカケてあったのだ。こないだの最終戦、ブラジルGPは、ハミルトンがマッサに7ポイントの差をつけて迎えてた。つまり、もしもマッサが優勝して10ポイントを獲得しても、ハミルトンが5位以上に入賞して4ポイント以上を獲得すれば、ハミルトンが、アロンソの記録を塗り替えての最年少ワールドチャンプになり、その上、黒人として初のワールドチャンプにもなれるって状況だった。
そして、フェラーリのマッサは、完璧なドライブで、誰よりも先にチェッカーを受けた。でも、この時、ハミルトンは、6番手を走ってた。トロロッソのベッテルとトヨタのグロックに抜かれてたからだ。つまり、このままゴールすれば、去年に引き続き、またも手中にしかけてたタイトルが指の隙間からすべり落ちてくってワケだ。レースは最終ラップ、それも、一段と酷くなった雨の中、まっすぐに走ることもできないような状況で、前のマシンを抜くことなどできない。
画面には、喜ぶマッサの家族が映し出された。フェラーリを応援してるあたしも、この時点で、マッサのワールドチャンプを確信した。だけど、次の瞬間、信じられないことが起こった。最終ラップの最終コーナーで、4番手を走ってたトヨタのグロックが、急に意味不明の減速して、ベッテルとハミルトンを先へ行かせたのだ。あたしは唖然とした。フェラーリのマッサ陣営も、落胆の表情に変わった。こうして、わずか1ポイント差で、優勝したマッサはワールドチャンプになれず、ハミルトンがワールドチャンプになり、真上にコブシを何度も突き上げて、コースを1周した。
で、多くのスポーツメディアは、「最終コーナーの悲劇」として、このレースを報じた。つまり、ハミルトンのワールドチャンプを祝福するよりも、マッサがワールドチャンプを逃したことを哀れんだってワケだ。マッサを応援してたあたしも、ハミルトンがチャンプになれば、それはそれで祝福しようと思ってたのに、あまりにも納得の行かない形だったから、ハミルトンを祝福するよりも、マッサを気の毒に思ったし、グロックにムカついた。一瞬、「トヨタってベンツからワイロをもらってたの?」って思った。でも、これは、ドライタイヤでムリして走ってたグロックが、最善を尽くして走った結果で、決して故意に抜かせたワケでもなかったし、ましてや、チームから指示があって抜かせたなんてことはアリエナイザーだった。レース後に、グロック本人がそう言ってるから、それを信じるしかない。
‥‥そんなワケで、グロックの件は別にしても、ハミルトンに対して周りの目が厳しいのは、今に始まったことじゃない。それは、ハミルトンのドライブが「ケンカ腰」だからだ。予選では他のマシンのタイムアタックを妨害したり、決勝ではブレーキングを遅らせて他のマシンをコーナーから押し出したり、ナニゲに汚いことをする。だから、順位に絡んでないチームのドライバーからも、あんまり良くは思われてなくて、なんて言うか、レースの中で「浮いた存在」って言うか、やんわりとした「村八分」的な雰囲気がある。
あたしは、これが、ハミルトンが黒人だからってことじゃなくて、あくまでも「汚い走り」をするからだと思ってた。だけど、今回、ハミルトンがワールドチャンプになったことを受けて、お父さんのアンソニー・ハミルトンが、重い口をひらいた。
「私も息子も、黒人であることを理由に、ずっと人種差別を受けて来た。モータースポーツの世界だけは別だと思っていたが、これまで2年間、F1で各国を転戦して来て、いろいろな国で差別的なヤジを受けた。スペインでは、顔を黒く塗ったファンに冷やかされたり、ルイスの弟が不吉とされる黒猫の人形を渡されたり、ホームページに差別的な嫌がらせを書き込まれたりと、あまりにも酷い差別が続いたので、『ここにも我々黒人の居場所はない』と思ったこともあった。だが、息子のルイスには言わずに、『世界はこんなはずではない』と今日まで自分に言い聞かせて来た」
ルイス・ハミルトンは、イギリスのベッドフォードシャー州ってとこで、黒人のお父さん、アンソニーと、白人のお母さん、カーメンの間に生まれた。だけど、ハミルトンが2才の時に、お父さんとお母さんは離婚して、ハミルトンはお父さんに引き取られた。で、お父さんは、白人のリンダと再婚して、弟のニコラスが生まれるんだけど、ニコラスは脳性マヒで、車イスの生活をしてる。F1の中継を観てると、お父さんのアンソニーと一緒に、車イスを押す白人女性が映ったりするけど、あれが義母のリンダと弟のニコラスだ。一方、お母さんのカーメンもほうも再婚したから、ホントならそれぞれの家庭が別々になるとこなんだけど、面白いことに、この2つの家庭が協力して、ハミルトンを一流のレーサーへと育てて行ったのだ。
お父さんアンソニーは、ハミルトンが8才になったクリスマスに、カートをプレゼントした。そして、8才のハミルトンは、カートの選手権での入賞者たちがたくさん出場するレースに出て、生まれて初めてのレースなのに、4位に入賞しちゃった。これが、ハミルトンのレース人生の始まりだった。そして、お父さんは、ハミルトンにカートのレースを続けさせるために、昼も夜も働き続けた。1日に3つもの仕事をカケモチした時もあったけど、ハミルトンもがんばって、2年後の10才でチャンプになった。
そして、その走りがマクラーレンのロン・デニスの目にとまり、ハミルトンはマクラーレンのサポートを受けられるようになった。それからハミルトンは、マクラーレンの秘蔵っ子として、レーサーとしての英才教育を受けてくワケだけど、ロン・デニスが一番最初にハミルトンを気にしたのは、彼が黒人だったからだ。ハミルトン以外は、すべて白人の子供ばかりのカートの世界では、黒人のハミルトンはすごく目立ってたのだ。
だけど、ハミルトン自身は、実のお母さんも新しいお母さんも白人だし、小さなころから両方の家を行き来してたから、あんまり、白人と黒人ていう線引きをしないで大きくなった。そのため、レースの世界でメキメキと頭角を表わすようになってから、いろんな場所で心ない人たちから投げつけられる差別発言に対しても、その根源が人種差別ではなく、自分の才能に対するヤッカミだって受け取ることができた。たとえば、10台のカートの中で後ろのほうにいたら、自分以外はみんな白人なんだから、自分に対する差別発言は、すべて「自分が黒人に生まれたから」ってふうに受け取らなきゃならない。でも、自分が10台のカートの中で1番なら、誰から何を言われたって、それをヤッカミだって思うことができる。これは、とっても大きな違いだろう。
だからこそ、ハミルトンは、常に上を目指す強い精神力が培われて行ったんだと思うし、そう考えると、今の「ケンカ腰」のドライブも、こうした土台の上に成り立ってるもののような気がして来る。どんなことをしても、絶対に一番になって、自分に対する差別発言をすべて「ヤッカミ」だと思いたい。言葉を変えれば「ジェラシー」ってワケで、どんなに酷い言葉を投げつけられても、それが自分に対するジェラシーから発せられてるものだと思えれば、「SHIT!」なんて気持ちにはならないからだ。ちなみに、これは、「嫉妬」と「SHIT」をカケてみたんだけど、どうでもいいか(笑)
で、前出のお父さんのコメントを受けて、ハミルトンは、「レースにおいて僕は別に人種というものは意識してないけど、僕の活躍が黒人たちを勇気づけたのならとても嬉しいです」って語ってる。もちろん、ハミルトン自身も、各国のサーキットで酷い言葉を耳にして来たんだから、この「人種というものは意識してない」ってセリフは、そうした心ない人たちからの言葉を「ヤッカミによる雑音」て割り切れるだけの精神力のタマモノだろう。
‥‥そんなワケで、話はクルリンパと戻り、今日の大統領選だけど、当選したオバマを支持したのは、白人が43%、黒人が95%、ヒスパニック系が66%だったそうで、こうして人種を分けてみれば、それなりに人種の壁が残ってることは否めないだろう。だけど、黒人だってだけで乗せてもらえないバスがあったり、黒人だってだけで入れないお店があったり、黒人だってだけで射殺されたりする、あれほど酷い人種差別の国、アメリカで、黒人の候補者が白人の4割以上から支持されたってことは、文字通りに「歴史的変革」だと思う。
「ブッシュの8年間が酷すぎた」とか、「マケインは経済音痴だ」とか、「共和党の副大統領候補のペイリンはクルクルパーだ」とか、オバマが勝った理由はいろいろとあるだろうけど、たとえマケインが最低最悪だったとしても、それでも黒人が大統領になることだけはガマンできないって思って、ただ「白人だ」ってだけの理由で、マケインに投票する人もいる。それが、アメリカって国だ。そして、そうした人種差別者が多かったから、今までは、黒人が大統領になることなんて、マンガの世界でもアリエナイザーだった。
だけど、今回の選挙は、僅差どころか、ダブルスコアの大差をつけて、黒人のオバマが勝ったのだ。正確に言うと、ハミルトンとおんなじでお母さんが白人だから、「混血」ってことになるんだけど、黒人に対する偏見が根強いアングロサクソンたちは、ハーフどころか、クォーターだって毛嫌いする。だから、今回の選挙結果は、ホントの意味での「人種の融和」の第一歩ってことで、1989年にベルリンの壁をぶっ壊したのとおんなじくらい、歴史に残るワンダホーな出来事だったのだ。
今回の選挙では、常に「オバマ有利、マケイン不利」が報じられて来たけど、不利なマケイン陣営が最後に期待してたのが、「ブラッドリー効果」だった。「ブラッドリー」なんて言うと、「血」のことだと思う人もいるかもしれないけど、これは、1982年のカリフォルニア州知事選挙に出馬した黒人、トム・ブラッドリーの名前から来てる。この選挙では、事前の世論調査では、トム・ブラッドリーが圧倒的に支持されてて、もう一方の白人の候補者、ジョージ・デュークメジアンは、選挙をする前から負けたも同然だった。だけど、投票日になってみたら、世論調査で「トム・ブラッドリーに投票する」って答えてた白人の多くが、ジョージ・デュークメジアンに投票して、結果、トム・ブラッドリーは負けちゃったのだ。
これは、白人と黒人の候補者がいる場合に、白人が世論調査で「白人の候補者に投票する」って答えちゃうと、ナニゲに黒人を嫌う人種差別者に見られちゃう。だから、それを避けるために、あえて黒人の候補者に投票するって言っておいて、「私は人種差別などしませんよ」ってアピールしておき、実際には白人の候補者に投票するっていうメンドクサイ方式だ。で、起死回生の大逆転を狙って、若くて美人のペイリンを副大統領候補に抜擢したマケイン陣営は、この女がフロッピー麻生並みの大バカだったってことを知らずに、結局、さらに自分の足を引っぱることになっちゃった。そして、マケインは、もはや、こんなオカルトみたいな「ブラッドリー効果」に期待するしかないほど崖っぷちに追い詰められちゃって、そのまま谷底へ落ちてったってワケだ。
‥‥そんなワケで、今回の大統領選を通して見ると、やっぱり、一部の白人の人種差別者によるオバマへの酷い中傷も多かった。だけど、そうした幼稚な中傷に対して、おんなじ白人がいさめるシーンも多々あり、あたしは、「肌の色じゃなくて政策の内容で自分たちのリーダーを決めよう」って流れが強いことを感じた。そして、「ブラッドリー効果」も起こらないまま、大差でオバマが選ばれたんだから、今回の大統領選は、アメリカの国民1人1人も大きく成長した選挙だったと思う。自分の力で周りの差別意識から抜け出したルイス・ハミルトンと、差別意識そのものを融和してしまったバラック・オバマ。スタイルも方法も違うけど、黒人のお父さんと白人のお母さんの間に生まれたことと、2才の時に両親が離婚したこと、そして、人種差別を受けて育って来たことだけは共通してる。そんな2人のヒーローが、時を同じくして誕生したことが、破滅へと加速し続けてる地球のブレーキになってくれるって、あたしは信じたい。そして、このニポンでも、1日も早く政権交代が実現して、長年に渡る政官業の癒着を断ち切ることができれば、ホントの意味での「CHANGE HAS COME」が訪れると思う今日この頃なのだ。
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