« 筑紫哲也さん亡くなる | トップページ | 無知は恥 »

2008.11.08

住民投票という民主主義

アメリカは、未だに大統領選の余韻で沸き立ってるけど、広いアメリカでは、この大統領選とおんなじ日に行なわれた、いろいろな住民投票があった。これは、それぞれの州の法律に対するもので、今日は、その中から、明暗を分けた2つの投票について取り上げようと思う。1つは、カリフォルニア州で行なわれた「同性婚を禁止しろ!」って投票で、もう1つは、マサチューセッツ州で行なわれた「マリファナの個人使用くらい認めろ!」って投票だ。

で、まずは前者だけど、これは、今年の5月に住民投票が行なわれて、「同性婚はダメ」ってほうが多かった。だけど、その投票結果に対して、カリフォルニア州の最高裁は、翌6月に「同性婚を禁止するのは州の憲法に反する」って判決を下した。それで、カリフォルニア州では同性婚がOKになったんだけど、カリフォルニア州では他の州から来たカップルの婚姻届けも受け付けてたため、同性婚が禁止されてる州に住んでる同性カップルがいっぱい押し寄せちゃった。その数、1万8000組。だから、経済効果もすごいことになった。

だけど、ここでの問題は、カンジンの住民たちの気持ちだ。だって、住民投票では、「同性婚はダメ」って考えの人たちのほうが多かったからだ。そして、この最高裁の判決の結果、ヨソの州からたくさんの同性カップルが押し寄せるようになったんだから、何のための州法なんだか分からなくなって来る。たとえば、住民の中に同性愛者がたくさんいて、他の人たちも同性愛に理解があって、住民投票で「同性婚はOK」ってことになったのなら、それはあくまでも住民のための法律ってことになる。たとえ、他の州から同性カップルが押し寄せても、もともとカリフォルニア州に住んでる人たちにもメリットがあるんだから、何も問題は起こらない。でも、そこに住む人たちの過半数以上が同性婚に反対してるのに、最高裁が住民の気持ちと反対の判決を出しちゃったもんだから、住民たちの気持ちは収まらない今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、今回、カリフォルニア州で行なわれた住民投票は、最高裁の「同性婚を禁止するのは州の憲法に反する」って判決を受けて、それなら州の憲法に「同性婚を禁止する」って項目を新設しようってものだった。憲法自体を変えちゃえば、最高裁の判決をくつがえすことができるからだ。そして、大統領選の影に隠れてコソコソッと行なわれた投票の結果、同性婚を禁じる憲法修正案に、52.5%が賛成したってワケだ。そりゃそうだろう。だって、5月の住民投票でも「同性婚はダメ」ってほうが多かったんだから。そして、この住民投票の結果を州政府が承認すれば、もうカリフォルニア州では同性婚はできなくなるってワケだ。

で、この日、今まで同性婚を認めてたカリフォルニア州だけじゃなくて、アリゾナ州とフロリダ州でも、コソコソッと同性婚禁止の州憲法修正案が採択された。これは、憲法に明確に「同性婚はダメ」って書いとかないと、いつカリフォルニアの二の舞になっちゃうか分からないから、同性愛に理解のない人たちが先手を打っとこうとしたものだ。でも、この問題について書き始めると、ものすごくメンドクサイことになる。それは、アメリカの州法って、コロコロ変わるコロラド状態だからだ。その上、ドメスティックパートナー法とか登録パートナーシップ法とかシビルユニオン法についても書かなきゃなんない。

だから、今回は、とりあえず、「カリフォルニア州では一度OKになった同性婚が住民投票によってダメになった」って結論だけに留める。それから、あたしの見解を簡単に付け加えておくと、昔から「きっこの日記」を読んでる人なら分かってるように、あたしは「人を好きになるのに性別は関係ない」って考えだ。だから、「同性婚」を認めるかどうかってこと以前の問題として、「不倫」と「近親相姦」以外の恋愛は、すべて同等だと思ってるし、そこらじゅうで「不倫」してるのに、「同性愛」には理解がない今のニポンって、まるで原始時代みたいな国だと思ってる。

だから、こないだのNHKの7時のニュースで、大統領に当選したオバマの演説を放送した時には、あたしは、NHKの偏向さに開いた口がふさがらなかった。オバマの演説は、全世界の人たちが涙を流したほど素晴らしいものだった。ミニーちゃんのとこで全文が読めるけど、最初のほうに、こんな言葉がある。


「老いも若きも、金持ちも貧乏人も、そろって答えました。民主党員も共和党員も、黒人も白人も、ヒスパニックもアジア人もアメリカ先住民も、ゲイもストレートも、障害者も障害のない人たちも。アメリカ人はみんなして、答えを出しました。アメリカは今夜、世界中にメッセージを発したのです。私たちはただ単に個人がバラバラに集まっている国だったこともなければ、単なる赤い州と青い州の集まりだったこともないと。私たちは今までずっと、そしてこれから先もずっと、すべての州が一致団結したアメリカ合衆国だったのです。」


原文は、こうだ。


「It's the answer spoken by young and old, rich and poor, Democrat and Republican, black, white, Hispanic, Asian, Native American, gay, straight, disabled and not disabled.Americans who sent a message to the world that we have never been just a collection of individuals or a collection of red states and blue states.We are, and always will be, the United States of America.」


で、NHKは、この部分を放送する時に、他の部分はすべて音声でもテロップでも和訳して放送したのに、「ゲイもストレートも」って部分だけを意図的に削除したのだ。起こった出来事を正確に伝えることがニュース番組の任務なのに、仮にも次期大統領の当選の演説を意図的にカットするなんて、どうしてこんなに愚かなんだろう。たとえば、ゲイの人たちを差別するような表現をカットしたってんなら理解できるけど、この文章の該当箇所の主旨は、「どんな人もみんな」ってことだろう。

それなのに、そこから「ゲイもストレートも」って部分だけを意図的に削除したってことは、NHKの考え方ってのは、「ゲイは『みんな』の中に入らない」ってことになる。「ゲイは人間じゃない」ってことになる。発言した本人の意図を無視してまで、一放送局がこんなことをして許されるのだろうか? NHKの担当者がゲイに偏見を持つのは自由だけど、そうした個人の考えをニュース番組にまで持ち込むってのは、あの頭のおかしいナントカ幕僚長のトンデモ論文とおんなじだ。

人は、どんな考えを持つことも自由だし、個人の意見として述べることも自由だけど、偏向的な個人の考えをNHKのニュースとして放送したり、自衛隊の幕僚長の肩書きで発表することは、あまりにも非常識だ。そういうことを言いたいのなら、NHKを辞めてから言え! 自衛隊を辞めてから言え!

‥‥そんなワケで、ここでサクッと車線変更して、大統領選の日にマサチューセッツ州で行なわれた「マリファナの個人使用くらい認めろ!」って住民投票だけど、こっちは、住民の90%もの人たちが「賛成」して、「1オンス(約30g)以下の所持は刑事罰にならない」ってことが決まったのだ。ちなみに、このマサチューセッツ州は、「同性婚はOK」って州なので、住民の意識も先進的だ。だからこそ、ニューヨーク州、カリフォルニア州、オレゴン州、アラスカ州、メイン州、コロラド州、オハイオ州、ミネソタ州、ミシシッピー州、ノースキャロライナ州、ネバラスカ州など、多くの州で、自分で使用するぶんの少量のマリファナの所持を刑事罰から外してるアメリカにおいて、「今どきマリファナを禁止してるなんてアホですか?」って住民たちから文句が出てて、どうすべきかを問う住民投票が行なわれたってワケだ。

ちなみに、今回、同性婚がダメになっちゃったカリフォルニア州でも、州知事がマリファナ大好きなシュワちゃんだから、ずいぶん前から個人使用と医療使用はOKだったんだけど、あと、ニューハンプシャー州とバーモント州でもそろそろOKになるから、ぜんぶで15の州でマリファナが吸えることになる。同性婚に関しては、宗教的な理由から眉をしかめる人たちも多いアメリカだけど、マリファナに関しては「自由の国」だけあって寛容だ。マリファナは、別に誰かに迷惑をかけるワケじゃないし、麻薬じゃないこともトックの昔に証明されてるし、体に害のないこともトックの昔に証明されてるし、他の強い薬物への入り口にならないこともトックの昔に証明されてるから、お酒やタバコよりも遥かに良く思われてる。中学生の息子が隠れてタバコを吸ってるとこを見つけたら、「そんなもの吸わないでマリファナにしろ!」って怒鳴って頭を叩くのがアメリカ人だ。

で、さっきチョコっと出て来た「医療使用」についてだけど、これはお医者さまが「あなたの病気の治療にはマリファナを吸ったほうがいいでしょう」って診断してくれれば、そこらじゅうにあるマリファナ薬局で買うことができる。正確に言うと、ちょっとメンドクサイ手続きがあって、カードを取得しなきゃなんないんだけど、ハッキリ言って、成人なら誰でも簡単に発行してもらえる。誰でもっていうか、お医者さまの前でノイローゼのフリでもして、「眠れない」とか「イライラする」とかって言えば、すぐにカードを発行してもらえるし、お医者さまのほうも、こっちがマリファナ目的だってことは分かってるから、向こうから「眠れないでしょう?」とか聞いて来る。

お医者さまの診察は、だいたい75ドルから100ドルくらいで、時間はわずか5分だ。ちょっと高いけど、これで半年から1年、マリファナが吸い放題のカードが手に入るんだから、好きな人にとってはタダみたいなもんだ。そして、このカードを持ってマリファナ薬局に行けば、アムステルダムのカンナビスカップにも出品できるレベルのワンダホーなマリファナずらりと並んだメニューを見せられて、好きなものをどかんと買うことができる。自分の好みを言って、薬局のマリファナ調合師にブレンドしてもらうこともできる。もちろん、ちゃんと認められてるんだから、吸っても持ち歩いても逮捕されない。ただ、持ち歩ける量は、8オンス(約250g)までって決められてる。でも、250gも持ち歩ければ、十分だよね。ちなみに、ロサンザルスだけでも200軒以上のマリファナ薬局があるから、足りなくなったらすぐに買うことができる。

‥‥そんなワケで、何でこんなにサクサクと行くのかって言うと、実は、このお医者さまが、マリファナ薬局の経営者でもあるからだ。ようするに、自分で診療所をひらいて患者さんを診察してるお医者さまが、その診療所のすぐ近くにマリファナ薬局を経営してるってパターンが、そこらじゅうにあるってワケだ。お医者さんは「マリファナを売ること」が目的なんだし、その診療所を訪れる患者さんは「マリファナを買うこと」が目的なんだから、どんな患者さんが来ようとも、「う~ん、あなたの症状にはマリファナが効くでしょう」って言って、カードを発行して、自分が経営してるマリファナ薬局へ行かせるってワケだ。

ニポンでは、公営以外のギャンブルは禁止されてるけど、パチンコで勝った時には、一度景品に交換してもらって、それを別の場所に持ってって、現金に換えてもらえる。どうしてこんなことが可能なのかって言うと、多くの人がご存知のように、警察官僚とパチンコ業界とが癒着してるから、暗黙の了解として特別扱いしてもらってるってワケだ。そして、カリフォルニアのマリファナ薬局も、これとおんなじことなのだ。ホントは、病気でも何でもなくて、ただ単にマリファナを吸ってハイになりたい人たちと、そうした人たちにマリファナを売ってるお医者さまとが、合法的に成り立っちゃってる。ビバ!カリフォルニア!

結局、このマリファナの「医療使用」ってのは、そりゃあ1000人に1人くらいは、ホントに病気の治療としてマリファナを処方されてる人もいるだろうけど、99%以上の人たちは、マリファナを合法的に楽しむために、このシステムを利用してるだけの平和を愛する人たちなのだ。そして、現在、医療マリファナが認可されてるのは12州だけなんだけど、次の大統領のオバマは、「アメリカのすべての州で医療マリファナを合法化する」って公約を掲げてるから、これからが楽しみだ。

‥‥そんなワケで、大統領選の影で行なわれた2つの住民投票だけど、カリフォルニア州で行なわれた「同性婚を禁止しろ!」って投票は残念な結果になり、マサチューセッツ州で行なわれた「マリファナの個人使用くらい認めろ!」って投票は素晴らしい結果になった。だから、悲喜コモゴモって感じだと思うけど、どっちにしても、その地域に住む人たちが投票した結果が法律として反映されるんだから、これこそが民主主義だろう。それに比べて、最初っから同性婚もマリファナも認められてないニポンに住んでるあたしとしては、こうした住民投票ができるってだけでもウラヤマシーし、それ以前に、国民が誰も選んだ覚えのない人間が平然と総理大臣のイスに座ってることが理解できない今日この頃なのだ。


★ 今日も最後まで読んでくれてありがと~♪
★ ニポンの総理大臣も国民投票で決めさせろ!って思った人は、ポチッとお願いしま~す!
   ↓   ↓
■人気blogランキング■

|

« 筑紫哲也さん亡くなる | トップページ | 無知は恥 »