本物の美しさ
あたしの気のせいなのかもしれないけど、最近、GyaOの映画コンテンツが、あんまり更新されない。ずっと楽しみに観てたVシネマの「真・雀鬼」も、清水健太郎がひき逃げでパクられたトタンに新作がアップされなくなっちゃったし、通常の映画も、どうしたワケか更新されない。それで、ゆうべ、久しぶりに映画を観る時間ができたんだけど、GyaOの映画コンテンツを見たら、やっぱりまったく更新されてなかったから、どうしようかと思って、YOU TUBEで、稲垣早希ちゃんの「関西縦断ブログ旅」の2週間ぶんを観直したりしつつ、久しぶりに「サクラ大戦」でも観ようかな?って思ったりもした。
でも、何が悲しくて「一度観たアニメをもう一度観なきゃなんないのか」とも思って、もう一度、GyaOにアクセスしてみた。それで、「昭和TV」ってコンテンツを見てみたら、ナナナナナント! 市川崑監督の「日本橋」がアップされてた! たぶん、もっと前からアップされてたんだと思うけど、今のGyaOって、メニューの表示が見にくくなった上に、映画でも古いものは「昭和TV」ってコンテンツに回されてるものとそうじゃないものがあって、イマイチ分かりにくいから、あたしが気づかなかったんだと思う。
で、市川崑監督の「日本橋」は、原作の泉鏡花の小説も好きだし、ずっと前から観てみたかった映画だったから、あたしは、ワクワクし始めた。それで、いつまで無料配信してるのか確認してみたら、12月1日までだったので、まだまだ時間的な余裕はあったんだけど、どうしてもすぐに観たかったから、もう夜中の2時だっちゅーのに、ふくよかなFカップのバストを二の腕で寄せながら、観てみることにした。あまりにも寒かったから、いただきもののニポン酒を2合ドックリにいれて、電子レンジで熱燗にして、これまたいただきもののダイコンとショウガの味噌漬けをオツマミにして、ドキドキしながら「日本橋」を観始めた今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、あたしは、久しぶりに、1本の映画をのんびりと楽しむことができたんだけど、何よりも主演の淡島千景さんが美しすぎて、最初から最後までメロメロだった。「日本橋」を知らない人のために簡単に説明しとくと、この物語は、清葉(きよは)とお孝(こう)という2人の芸者さんを中心にしたお話だ。そして、この映画では、凛とした美しさのある清葉を山本富士子が、その清葉をヤタラとライバル視する妖艶なお孝を淡島千景が演じてる。これから観る人もいると思うから、ストーリーに関しては書かないけど、「焼津の半次」の品川隆二がマジメな役だったり、船越英二がトンチンカンな警官だったり、若尾文子が芸者の見習いだったりと、配役も見どころが満載だ。
清葉は、その名の通り、清く美しい芸者だ。芸者に「清い」ってのもナンだけど、お母さんのために芸者になり、お母さんのために自分の恋もあきらめる、そんな女だ。一方、お孝のほうは、執拗に清葉をライバル視してて、清葉が振ったお客とカタッパシに寝ちゃう。ようするに、それまで清葉に入れ込んでたお客を自分に夢中にさせることで、「清葉に勝った」って思いたいんだろう。だから、人間的には最悪だし、芸者としても決してホメられたものじゃない。
だけど、美しい淡島千景さんが演じると、これがまたサイコーにステキなんだよね。山本富士子さんも、もちろん美しいけど、何と言っても淡島千景さんの美しさはハンパじゃない。お着物の着付け、衣紋の抜き方、立ち居振る舞い、どれをとってもサイコーで、言葉じゃ説明できないほど、あたしのツボだった。あまりにもステキで、あたしも芸者になりたいって思ったほどだ。
この映画は、昭和31年(1956年)の作品なので、大正13年(1924年)生まれの千景さんは、31~2才の時だ。年齢的にも、若いころの単なる美しさに、ようやく「艶」が備わって来るころだし、美女ウォッチャーのあたし的にも、一番好きな年齢だ。20代の美女は、どうしても青臭さが鼻につくけど、30を超えると、落ち着きや深みが付加されて来る。そして、柿のように熟して行く。
千景さんは、宝塚時代は娘役のトップスターだったけど、ほんの2~3回だけ男役をやったことがあるそうだ。そして、彼女の大ファンだった手塚治虫さんが、その男役の時のステージを観て、それをヒントにして描いたのが、あの「リボンの騎士」だそうだ。つまり、いつもは美しい娘役の千景さんが、たまたま男装したステージを観て、女性の体に男性の心を持って生まれたサファイア王子を思いついたってことらしい。
‥‥そんなワケで、1939年から1950年まで、戦火をまたいで宝塚歌劇団で活躍して、25才で宝塚を卒業してからは、200本以上の映画を始め、テレビドラマや舞台など、数えきれないほどの作品に出演して来て、80才を超えた今も現役の淡島千景さん。デビュー作の「てんやわんや」(1950年)で第1回ブルーリボン賞主演女優賞を受賞、森繁久彌とのやりとりがサイコーな「夫婦善哉」(1955年)で第6回ブルーリボン賞主演女優賞を受賞、他にも数々の賞を受賞して、1988年には紫綬褒章、1995年には勲四等宝冠章を受章した。
こうした流れを見ると、役者になるべくしてなった人のように思えるけど、ご本人が言うには、最初は「花嫁修業」として宝塚に入ったそうだ。東京生まれの千景さんは、昭和9年、10才の時に東京宝塚劇場ができて、お父さまと観に行って、あまりの美しさに感動した。そして、その後、女学校時代にお父さまが亡くなり、個別に花嫁修業をすることが経済的に難しくなったため、「宝塚の学校に入れば、お嫁に行くのに必要なことを全部習える」って思って試験を受けてみたら、受かっちゃったって言ってる。だから、千景さんの美しさは天性のものだけど、役者としての才能が開花したのは、「花嫁修業のために宝塚に入った」っていう偶然によるものだったのだ。
あたしは、有名な「夫婦善哉」はずっと前に観てたんだけど、今回、初めて「日本橋」を観ることができて、おんなじ芸者の役なのに、上方と東京、喜劇と悲劇っていう正反対のものをこれほどまでに演じ分けることができる千景さんて、今さらながらだけど、ものすごい女優さんだと思った。「夫婦善哉」の蝶子さんのキップの良さが印象的だったから、今回、「日本橋」のお孝を観て、あまりの違いにビックル一気飲みだった。それも、「夫婦善哉」が1955年、「日本橋」が1956年の作品なんだから、連続して正反対の芸者を演じたことになる。
‥‥そんなワケで、最近は、顔やスタイルは美しくても、演技力がゼロでセリフも棒読みっていう学芸会レベルの女優ばかりで、とてもじゃないけどテレビドラマなんか観る気になれない。演技派の女優なら素晴らしい人はいっぱいいるけど、あたしの好きな「美女」って括りになると、美しい上に演技力も素晴らしい女優なんてほとんど見当たらない。だから、「夫婦善哉」や「日本橋」の淡島千景さんを観ると、「これこそが本物の女優さんだ!」って思えて感動しちゃうんだと思う。産地偽装の食品に耐震偽装のマンション、漢字も読めない総理大臣に歴史も知らない航空幕僚長、盗作を繰り返す作家に演技力ゼロの役者と、世の中がニセモノだらけになっちゃった今だからこそ、すべての所作が美しく見える本物の女優の本物の演技を味わってみるべきだと思う今日この頃なのだ。
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