ダイナミック五郎
昭和50年代の東京は、政官業の癒着にドップリと浸かった自民党の長期政権によって、首都圏のあちこちで不必要な再開発が乱発していた。官僚や天下りと癒着した自民党の政策は、人々の生活を破壊するだけでなく、子供たちの遊び場をも次々と破壊して行った。ここ世田谷区の二子玉川でも、駅周辺の乱開発で、何十年も営んで来た歴史ある商店などが立ち退かされ、子供たちの遊び場だった空き地も1つ2つと潰されて行った。そして、最後に残った2丁目の空き地で、数人の子供たちが集まって、野球ごっこをしていた。
一平 「よ~し!行くぞ~!」
マサル 「来い!」
雑草を踏みならして作ったマウンドに立つ一平は、大の巨人ファンで、当然、YGマークの帽子をかぶっていた。そして、バッターボックスのマサルも巨人ファンなので、こちらもYGマークの帽子をかぶっていた。
一平 「悪太郎のドロップを受けてみろ!」
巨人の堀内の投球を真似て、大きなフォームからハデに帽子を落としてゴムボールを投げた一平。もちろん、ボールはドロップしない。
マサル 「こっちは王だ!」
王を真似た一本足打法で、バット代わりの塩ビの排水パイプを思いっきり振ったマサル。
パコーン!
マサルの打った打球はレフトへ高く伸びて行き、レフトとショートとサードを大ザッパに守っていた陽介が必死に追って行った。1塁の古タイヤを蹴って2塁へ走るマサル。
まどか 「マサルく~ん!がんばって~!」
ボールは、空き地の奥に積んであったドカンに当たって跳ね返った。それをキャッチした陽介が、サードに入ったピッチャーの一平に投げようとした瞬間、ふり上げた陽介の腕をむんずとつかむ者がいた。驚いて振り返った陽介の目に映ったものは、パンチパーマにサングラス、縦縞のダボダボのダブルのスーツという絵に描いたようなチンピラだった今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、子供たちが遊んでいた空き地に、場違いなチンピラがやって来たんだから、ここから先は、皆さんのご想像通りの展開ってワケだ。
チンピラ 「おい!ガキども!誰に断ってここで遊んでるんだ!」
陽介 「いたたたたたたた!」
陽介のもとに駆け寄る一平、マサル、まどかたち。
一平 「やいやい!陽介の腕を放しやがれ!」
チンピラ 「何だと?このガキ!ここはなあ、今日から俺たち田母神一家の土地なんだよ!ここに手抜き工事でオパホテルを建ててボロ儲けするんだよ!」
まどか 「そんなの知らないわよ!あたしたちの遊び場を取らないでよ!」
チンピラ 「生意気なガキだな!従軍慰安所に強制連行するぞ!」
チンピラは、まどかの腕もひねり上げた。
まどか 「キャーッ!」
その時であった。1台の真っ赤なユンボが、鉄条網の柵をなぎ倒して空き地に入って来た。
チンピラ 「何だ?日本は侵略国家じゃねえぞ?」
すると、ユンボのアームが大きく振りかぶり、バケットの代わりに装着していた2本の爪で、空き地の奥に積んであったドカンを持ち上げた。そして、アームを旋回させて、チンピラの頭上へと持って来た。
驚いたチンピラがユンボのほうを見ると、腰にバスタオルを巻いた毛深い裸の男が、屋根の上に仁王立ちしていた。目深にかぶった作業用ヘルメットには、サンゼンと輝く「D」のマーク。
チンピラ 「何だ?あいつは?中日ファンか?」
マサル 「ダイナミック五郎だ!」
一平 「ダイナミック五郎が来てくれたんだ!」
まどか 「五郎!助けて!」
五郎 「ガキども!助けてやるがな、年上には『さん付け』しろや!」
陽介 「ダイナミック五郎‥‥さん!」
マサル、一平、まどか 「五郎さん!」
五郎 「よっしゃあ~!」
チャンチャンチャチャ~ン♪ チャンチャンチャチャ~ン♪
チャラチャチャチャ!チャラチャチャチャ!タッタ~ン!
ダイナミ~ック! そうさ~俺は~♪
ダイナミ~ック! 名前の~割に気が小さい~♪
ダイナミック五郎! な~の~さ~♪
ウォウ ウォウ
悲しく~なったら~空を見あげよう~♪
下を~向かず~上を見れば~♪
涙だって~こぼ~れな~い~♪
上を~見ながら~道を歩こう~♪
道は~わからずとも~辿り着く~♪
ダ~イ~ク~マ~に!
世界の平和は~俺に任せろ~♪
アメリカの平和は~オバマに任せろ~♪
子供達が~呼んでいる~♪
(ごろ~~!!)
セリフ 「年上には『さん付け』しろや、ガキどもが!!」
女心は~わからない~正義の味方だ~♪
俺とお前と~ダイナミック五郎~♪
ヒゲは~濃いけど~寂しがり屋だ!
俺とお前と~ダイナミック五郎~♪
ダイナミ~ック! そうさ~俺は~♪
ダイナミ~ック! 名前の~割に気が小さい~♪
ダイナミック五郎!な~の~さ~♪
※「真・ダイナミック五郎のテーマ」(作詞 ダイナミックさやか)
‥‥そんなワケで、不敵の笑みを浮かべつつ、一服しながらテーマソングが終わるのを待っていたダイナミック五郎は、くわえていたタバコを携帯用灰皿できちんと消してから、大きくジャンプした。
五郎 「タバコのポイ捨ては‥‥ダメだぜ!トウッ!」
太陽を背にして空中で静止した五郎は、両手を翼のように広げ、高速で回転しながらチンピラの頭上へと急降下して行った。チンピラは、思わず陽介とまどかの腕を離した。その瞬間、五郎はチンピラの頭にヘッドシザーズを決め、腰のバスタオルがチンピラの頭を覆った。
チンピラ 「うおっ!生ぐせえ!」
そう、ダイナミック五郎は、バスタオルの下は何も身につけていないのだ。そのため、空中から敵を攻撃する時には、必ず太陽を背にして、逆光で股間のモロモロが見えないように工夫しているのであった。
五郎 「どうだ!まいったか!」
チンピラ 「うう‥‥」
バスタオルで周りが見えず、五郎の股間の匂い苦しむチンピラは、両手をバタバタさせながら、右へ左へとふらふらしていた。
五郎 「よ~し! こうなったら必殺技だ!」
五郎が両腕を胸の前でクロスさせると、ヘルメットの「D」のマークがピカッと光り、ガガガガガガと震動して、ガクッと顔の前まで落ちた。しかし、何も起こらず、マークは元の位置に‥‥と思ったら、またマークがピカッと光り、震動して顔の前まで落ちた。そして、この動きが4回繰り返されると、ヘルメット自体が金色に輝き始めた。
一平 「疑似連が4回だ!」
まどか 「大当たり確定ね!」
五郎 「む~ん! ダイナミ~ック・ボンバ~!」
バフッ!
チンピラ 「うおおおおおおお~!く、く、く、くせえ!」
バタッ!
恐怖の必殺技、ダイナミック・ボンバーがバスタオルの中で炸裂し、田母神一家のチンピラは気絶してしまった。五郎は、この必殺技の威力を高めるために、毎晩、ラッキョウをオツマミにして焼酎の「大五郎」を湯呑で飲んでいたのであった。
マサル 「五郎さん!」
一平、陽介 「五郎さん!ありがとうございました!」
五郎は、落ちていたバット代わりの排水パイプとゴムボールを拾い、子供たちに差し出した。
五郎 「さあ、みんな! もう安心して遊んでいいぞ!」
まどかがそれを受け取ろうと手を出した瞬間、チンピラとの戦いで外れかけていた五郎の腰のバスタオルがパラリと落ち、毛むくじゃらのバットとボールがむき出しになってしまった。
まどか 「キャー!」
一平 「うおおっ!OH砲だ!」
五郎 「王と張本か?」
マサル、陽介 「あははははは~♪」
‥‥そんなワケで、子供たちの遊び場を守り、町の平和を守ったダイナミック五郎は、真っ赤なユンボに飛び乗って、柵をなぎ倒して去って行った。夕日の中へと消えて行く五郎の背中には、子供たちの声がいつまでも響いていた。
ゆけ!ダイナミック五郎!
子供たちの笑顔のために!
ゆけ!ダイナミック五郎!
ダイクマに!
【第一部・完】
※「ダイナミック五郎」は、某雑誌のアイドル、さやかさんが考えたキャラクターであり、タイトル、テーマソング等の著作権は、すべてさやかさんに帰属します。また、「ダイナミック五郎」の姿を見たい人は、以下のさやかさんのブログに手描きのイラストがありますので、お楽しみください♪
「ダイナミック五郎」
http://yaplog.jp/magicalgirl/archive/261
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