ハタハタ迷惑とマヒマヒ迷惑
昨日、ネットニュースのインデックスを流し読みしてたら、「ハタハタを大量に不法投棄した人が摘発された」って記事があった。それで、ミョ~に気になったので読んでみたんだけど、三大新聞のうちの1つの記事だったから、自分たちが取材したワケじゃない伝聞記事で、イマイチ正確なことが分からなかった。それで、その中央紙がネタ元にしてる地方紙の記事を探してみたら、青森の「東奥日報」の記事が見つかった。
「大量不法投棄にハタハタ迷惑」 (東奥日報)
ハタハタ約百六十キロ(約五十箱分)を地中に埋めて捨てたとして、鯵ケ沢署は十八日、廃棄物処理法違反(不法投棄)の疑いで、会社員男性(45)と同僚男性(59)=ともに深浦町=を摘発した。二人は「知人から大量にもらい処分に困った」と容疑を認めている。
調べでは、二人は今月十五日午後二時ごろ、同町の山中に重機で穴を掘り、ハタハタ約百六十キロを捨てた疑い。会社員男性は知り合いからハタハタ約六百キロ(約二百箱分)をもらい、知人らに配っていた。捨てた百六十キロは「どうしても配りきれなかった分」だという。同僚男性は、処分方法を相談され、地中に埋めることを提案した。同署は二人を書類送検する方針。
県水産振興課によると、本県日本海側の今年のハタハタの水揚げは、昨年の約百四十五トンを上回る豊漁の見通し。水産関係者からは「信じられない」「もったいない」と不満の声も。三十年近い不漁続きから二〇〇二年に復活したハタハタだが、豊漁で一転、捨てられる始末。「魚にとっては、ハタハタ迷惑な話だろう」と、捜査関係者も思わず同情のコメント。(2008年12月19日)
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2008/20081219092038.asp?fsn=eb33f76037153e93cde084f7e7644d6f
もう、あまりにもイジリたいとこだらけで、どこからお箸をつけようか迷っちゃうほど大好物が山盛りなんだけど、「迷い箸」はマナー違反だから、出された順にいただいてく懐石方式で行こうかと思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、この記事のステキなとこは、何と言っても「ハタハタ迷惑」に尽きるだろう。「金魚が多すぎて金魚迷惑」とか、「旗を立てすぎてハタ迷惑」とかなら、林家三平ですら使ってた食傷気味の伝統芸だけど、この「ハタハタ迷惑」は、伝統にのっとりながらも斬新だ。だって、「はたはた、迷惑な話だ」って意味を本線にしつつも、その裏側に「はなはだ迷惑」ってニュアンスまでも匂わせてるっていう二重構造になってるからだ。
ま、そんなことは置いといて、この記事を読んで、あたしが意外だったのは、「こんなことで摘発するの?」ってことだった。だって、あたしは、「ハタハタを大量に不法投棄して摘発された」って言うから、てっきり、そこらへドバッと捨てたのかと思ったからだ。だけど、記事を読んでみると、重機で穴を掘って埋めたって書いてある。それも、ゴムだのプラスティックだのじゃなくて、お魚のハタハタなんだから、時間が経てば自然に還るものだ。
もちろん、その山が誰かの所有してる土地だったとか、いろんな問題はあるんだろうけど、摘発された理由は、あくまでも「廃棄物処理法違反」なんだから、山の中に穴を掘ってお魚を埋めるって行為が、モノの捨て方として違法だったってことになる。山の中に、古タイヤだとか壊れた家電だとか、挙句の果てには廃車まで棄ててるヤツラがいっぱいいるのに、そうしたヤツラはほとんど摘発しないでホッタラカシにしてるのに、わざわざ穴を掘ってお魚を埋めた人を摘発するなんて、なんだか片手落ちみたいな気がした。
それも、この人は、約600kgのハタハタのうち、75%に当たる約440kgは、知り合いに配ったり自分で食べたりして、何とか消費したのだ。そして、どうしても配り切れなかった残りの約50箱をこのままじゃ腐っちゃうし、どうしようもなくて、捨てることにした。でも、そこらに捨てるワケには行かないから、わざわざトラックと重機を借りて来て、会社の同僚と山奥へ運んで、重機で穴を掘って、そこへ埋めたってワケだ。
法律を知らないあたしの個人的な感覚だと、この人って、すごくちゃんとした責任感のある人のように思える。最近の無責任な人たちなら、わざわざトラックや重機なんか借りて来ないで、わざわざ山まで運ばないで、そこらにドバッと捨ててトボケちゃうと思う。そして、仮に山まで運んだとしても、わざわざ穴なんか掘らないで、崖みたいなとこにドバッと捨てちゃうと思う。そう考えれば、この人って、すごくちゃんとした人のように思えるのだ。
それにしても、いくらハタハタが豊漁だったからって、600kgものハタハタを人にあげちゃうっていう漁師さんもムヤミに太っ腹だけど、それをもらうほうの人も激しく無計画すぎる‥‥って思うかもしれない。特に、あたしみたく東京に住んでる人は、東京のスーパーだとハタハタって2匹とか4匹とかがパックに入って売られてるから、600kgなんて想像を絶する量に思えるだろう。だけど、青森や秋田だと、ハタハタは店頭でも箱で売り買いされてる。1匹が15~20cm、60~90gの小ぶりのお魚だから、「何匹」って単位では数えないで、「何kg」とか「何箱」とかって単位で数えてるのだ。
だから、青森や秋田の普通の家庭でハタハタを買う場合には、最低でも1箱を買うワケで、だいたい3kgくらい、35~40匹くらい入ってる。ハタハタは、焼いて食べたり、しょっつる鍋に入れて食べたりする他に、干物、塩漬け、味噌漬け、なれ寿司などの保存食にもするから、一般の家庭がたくさん買っても大丈夫なのだ。だから、今回のハタハタは、重さだけ見て「600kgかぁ~!」って思っちゃうと、ものすごい量に思えるけど、箱の数で「200箱」って思えば、2箱ずつ100人にあげる量とか、4箱ずつ50人にあげる量とかって感じになる。だから、今回の人も、「これくらいなら知り合いに配れば何とかなる」って思って、引き受けちゃったんじゃないかと思う。
ま、結果として、法を犯したことは許されないことだ。だけど、何の努力もせずに、ぜんぶを捨てちゃったんならともかく、200箱のうち150箱まではがんばって配って、それでもどうしても配りきれなかった残りの50箱だけを捨てたんだから、よくやったほうだと思う。それも、わざわざトラックや重機を借りて来て、山奥まで運んで、ちゃんと穴を掘って埋めたんだから、そんなに目クジラ立てるようなことじゃないと思う。むしろ、よくここまでがんばったと、ホメてあげてもいいくらいだ。
‥‥そんなワケで、今回のニュースは青森のことだけど、ハタハタって言えば、秋田のほうが有名だ。なんたって、ハタハタは秋田の県魚なんだし、有名な「秋田音頭」でも、「秋田名物~八森ハタハタ~男鹿で男鹿ブリコ~能代春慶~桧山納豆~大館曲わっぱ~♪」って歌ってるくらいだ。ちなみに、「ブリコ」ってのは、ハタハタのタマゴだ。つまり、八森ではハタハタそのものが名物だし、男鹿半島では「男鹿ブリコ」って呼ばれてるくらいハタハタのタマゴが名物だってことだ。だから、ハタハタって言うと、やっぱり秋田のイメージが強い。
逆に、青森の県魚はヒラメなんだけど、「ヒラメ」って聞いても、パッと「青森」なんて浮かんで来ない。つーか、ぜんぜん浮かんで来ない。だって、ヒラメなんて、東京湾でも獲れるからだ。さらには、全国的にどこでも獲れるから、北関東の茨木も、中国地方の鳥取も、ヒラメが県魚なのだ。こうなって来ると、ヒラメから特定の県をイメージすることなんて、「釣りバカ日誌」のハマちゃんでもムリだろう。
ま、そんなことは置いといて、今回みたいなこニュースを耳にすると、「不漁」も困るけど、「豊漁」もイイコトばかりじゃないってことが分かる。しばらく前に、サンマが獲れ過ぎて、何トンものサンマを畑のコヤシにしたなんてニュースもあったけど、あたしは、「それなら獲らなきゃよかったのに‥‥」って思っちゃう。だって、お魚だって生きてるワケで、あたしたちはその命をいただいてるんだから、感謝して残さずに食べるってことが最低限のモラルだからだ。それを獲れ過ぎたから畑に撒くなんて、お魚なのに犬死にじゃん。サンマだって浮かばれないよ。
でも、こうした「豊漁」に関するニュースの場合、単に豊漁を喜んでるニュースであれ、豊漁のお魚を粗末にしたっていうマイナスのニュースであれ、どっちにしても、そこには「不漁よりはいい」っていう空気がある。今回のハタハタのニュースにしたって、悪いことなのに「ハタハタ迷惑」だなんて面白おかしく報じてるのは、どこかに「不漁でハタハタが獲れないよりは、捨てるほど豊漁なほうがいい」って捉えてる報道姿勢があるからだろう。そして、これは、報道する側だけのことじゃなくて、こうした記事を読んで、どこか肯定的に受け取っちゃうあたしたちの側にも問題がある。これは、あたしたちが、人間にとっての良し悪しだけでモノゴトを見ちゃうことから起こる感覚だ。
人間の都合だけじゃなくて、すべての生き物の立場を考えて見回してみれば、自然界のピラミッドの中で、1つの種だけが極端に増えるってことは、極端に減るってことと同様に、あんまり良くないことなのだ。たとえば、去年、エチゼンクラゲが大量発生して、多くの漁師さんが苦労してた。網を上げるたびに、中はクラゲだらけで、とても漁にはならず、大変な思いをした人がいっぱいいた。テレビでも、このエチゼンクラゲを何とかしようと、ムリしていろんな料理にして食べてみたり、畑の肥料にならないか研究してみたりと四苦八苦してた。だけど、あれほど騒いでたエチゼンクラゲが、今年はパッといなくなった。別に、人間が何かの対策をしたワケじゃないのに、あれほど大量発生してたものが、一気に減少したのだ。
そして、4~5日前には、テレビ朝日の「報道ステーション」で、今年は北海道のニシンが大豊漁だってニュースをやってた。内容は、「今年は春も秋もニシンが大豊漁で、春も秋で400トン以上も獲れた」「今年1年だけで過去30数年の漁獲量の合計を越えた」ってもので、北海道の厚岸町の様子を放送してた。番組では、終始「喜ばしいニュース」として扱ってて、ようするに、最近の暗いニュースばかりの中に織り込む「当たり障りのない箸休め的なニュース」って位置づけだった。
ハタハタやニシンは、人間が食べる上に人気のあるお魚だから、豊漁なら漁師さんたちは潤う。そして、それに準ずる加工会社や物流なんかも潤う。だから、豊漁なら「良いこと」で、不漁なら「悪いこと」になる。だけど、お金にならないエチゼンクラゲが大量発生すると、それは「悪いこと」になる。つまり、1つの種の豊漁を喜ぶのは、単なる「人間の都合」なのであって、自然界全体のこととして見た場合には、ハタハタやニシンの豊漁も、エチゼンクラゲの大量発生も、おんなじ異変でしかないってことだ。
ハタハタやニシンの場合には、人間による乱獲が原因で、一時はほとんど獲れなくなった。そして、数年間の禁漁期間を設けたり、人工孵化させた稚魚を放流したりして、絶対量の拡大に尽力して来た人たちがいる。そして、ようやく、豊漁を迎えたワケだ。だから、完全に自然界の異変であるエチゼンクラゲの大量発生とは同列に考えることはできない。だけど、それなら、サケはどうだろうか。北海道のサケも、ずっと人工孵化させた稚魚を放流したりして、個体数を守るように努力してるのに、年々減少してる。そして、今年は、ものすごい異変が起こってる。それは、暖かい海に住むハズのシイラの群が、今年は、サケの住む寒い海にまで時期外れの北上をして、サケのテリトリーを荒らしちゃってるのだ。
シイラは、東京湾でも釣れるけど、カジキのトローリングの外道として釣れることからも分かるように、基本的には暖かい海に住むお魚だ。ハワイなら「マヒマヒ」、沖縄なら「マンビカー」って呼ばれてるけど、もっと南でも釣れる。そして、ニポンの近海のシイラは、春から夏にかけて北上して、秋から冬にかけて南下する「季節回遊」をしてるんだけど、通常の水温の時は、太平洋側なら三陸、ニポン海側なら山形あたりが北限だ。
だけど、例年よりも水温が上昇した年には、秋田とか青森とかもっと北まで北上するし、ものすごく暖かかった年には、北海道の知床半島の付け根にある標津(しべつ)沖にまで北上することがある。これが、ニポンで記録されてるシイラの北限だ。だから、標津沖でもシイラを釣ることはできるんだけど、これは、あくまでも、「春から夏にかけてシイラが北上した時」ってことで、時期で言うと、8月とか9月、遅くても10月が限界って感じだった。10月ころには、標津沖に残ってたわずかなシイラも、みんな南下しちゃうからだ。
それなのに、今年は、大異変が起こってる。12月の半ばになって、寒い海にはシイラなんて1匹も残ってないハズの時期なのに、標津沖のサケの定置網が、シイラの群で埋まっちゃってるのだ。北海道の地域ニュースによると、今年は、サケの定置網漁が不漁で、豊漁の時には5000匹以上も獲れる定置網に、1000匹程度しか入らないそうだ。そして、その1000匹のサケに対して、お呼びでないシイラは、3倍の3000匹も入ってるそうだ。これが、たまたま1回の話じゃなくて、網を上げるたびに、毎回毎回こんな具合らしい。漁師さんの中には、シイラなんか見たことのない人も多くて、気持ち悪いから最初は捨ててたんだけど、あまりにもサケが獲れないから、今は安く引き取ってもらってるそうだ。
‥‥そんなワケで、シイラは大きいもので1mを超えるから、最低でも1匹5kg以上あるワケで、それが3000匹もいるんだから、総重量は15トン以上ってことになる。ハタハタを160kg捨てたら大問題なのに、シイラならその100倍の15トン捨ててもOKって、この辺の感覚があたしには分からないし、おんなじお魚なのに、おんなじ命なのに、サケが豊漁なら「良いこと」で、シイラが豊漁なら「悪いこと」っていうのは、完全に「人間の都合」だろう。命を奪われた上に、食べてももらえずに捨てられるハタハタが「ハタハタ迷惑」だって言うのなら、シイラだって「マヒマヒ迷惑」だろう。そして、こんな「人間の都合」なんて後回しにして、少しでも自然界のほうに目を向けて考えてみれば、サケの不漁を危惧することよりも、暖かい海に住むシイラが、こんな真冬に大挙して北海道へ押し寄せてることの異常さこそ、あたしたち人間が真っ先に危惧すべき大問題だろうと思う今日この頃なのだ。
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