「ist」と「er」
あたしは、昔から疑問に思ってるんだけど、ロックバンドとかで、ボーカルをする人は「ボーカリスト」で、ギターを弾く人は「ギタリスト」で、ベースを弾く人は「ベ―シスト」で、キーボードを弾く人は「キーボーディスト」なのに、どうしてドラムを叩く人だけは「ドラミスト」じゃなくて「ドラマー」って呼ばれてるんだろう? 他の楽器でも、ピアノを弾く人は「ピアニスト」だし、バイオリンを弾く人は「バイオリニスト」だし‥‥って考えてったら、ふと気づいたんだけど、ボーカルは楽器じゃないから特別としても、他の楽器はみんな「弾く」ものだった。ギターもベースもピアノもバイオリンも、みんな「弾く」もので、ドラムだけが「叩く」ものだった。
だから、あたしは、弾く楽器の場合は「~ist」になって、叩く楽器の場合だけが「~er」になるのかな?‥‥って思ったのもトコノマ、木琴(シロフォン)や鉄琴(ヴィブラフォン)も叩く楽器だけど、「シロフォニスト」と「ヴィブラフォリスト」って言う。まあ、木琴や鉄琴の場合は、叩くって言っても、ドラムみたいなリズム楽器じゃなくてメロディー楽器だから、ジャンルが違う。でも、そしたら、ボンゴを叩く人は「ボンゴイスト」だし、コンガを叩く人は「コンガイスト」だし、みんなひっくるめてパーカッションを担当すれば「パーカッショニスト」だ。つまり、リズム楽器であろうとメロディー楽器であろうと、叩いて音を出す楽器の中で、演奏者の呼び名が「~er」になるのは、今のとこドラムだけってワケだ。
で、今度は、「弾く」でも「叩く」でもなくて、「吹く」楽器を見てみると、これが複雑なのだ。フルートを吹く人は「フルーティスト」なのに、トランペットを吹く人は「トランペッター」で、さらには、サックスを吹く人になると、「~ist」でも「~er」でもなくて、「サックス・プレイヤー」って呼ばれてる。細かいことを言えば、これも「~er」の部類に入るのかもしれないけど、あたし的には、ちょっとインチキっぽく感じる。だって、こんな方式もアリなら、めんどくさい呼び方なんかやめちゃって、みんな「ギター・プレイヤー」「ベース・プレイヤー」「ドラム・プレイヤー」「フルート・プレイヤー」「トランペット・プレイヤー」‥‥ってことにしちゃえば、まぎらわしくなくなると思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、マクラに書いたことを総括すると、その楽器の演奏者に対する呼び名が「~ist」になるのと「~er」になるのは、「弾く」とか「叩く」とか「吹く」とかの演奏方法の違いによって分かれてるワケでもなくて、「木」とか「金属」とかの楽器の材質の違いによって分かれてるワケでもないってことだ。で、普通に考えると、単なる「英単語の語呂」として、「~ist」にしたほうがシックリ来るものと、「~er」にしたほうがシックリ来るもので分かれてるって考えるのが自然だろう。だけど、そうすると、ここで大問題が発生しちゃうのだ。
それは、「キーボーディスト」だ。キーボードを弾く人が「キーボーディスト」なのに、スノーボードをする人は「スノーボーディスト」じゃなくて「スノーボーダー」って呼ばれてる。キーボードの「ボード」もスノーボードの「ボード」もおんなじ「ボード」なのに、何でキーボードのほうは「キーボーディスト」で、スノーボードのほうは「スノーボーダー」なんだろう?‥‥って、どうしても疑問だったから、アメリカ人のお友達に電話して聞いてみた。そしたら、英語圏では、キーボードを弾く人のことは「キーボーディスト」とも「キーボーダー」とも言うし、スノーボードをする人のことは「スノーボーディスト」とも「スノーボーダー」とも言うんだって。
それで、ついでに聞いてみたら、ニュアンスの問題として、「~ist」にすると、アーティストっぽいイメージ、インテリっぽいイメージになって、「~er」にすると、単なるプレイヤーっていう雑なイメージになるそうだ。で、キーボードの場合は、「鍵盤楽器」って意味の他に、パソコンのキーボードとかも指す言葉だから、「キーボーダー」って言い方だと「鍵盤楽器の演奏者」とは断定しにくくなる。それで、英語圏では、「キーボーダー」でも間違いじゃないんだけど、「鍵盤楽器の演奏者」ってことを明確にするために、アーティストっぽいイメージを持ってるほうの「キーボーディスト」って言い方を多様してるそうだ。
う~ん、母国語じゃないから、ニュアンスの問題って言われると、分かるような気もするし分からないような気もする。たとえば、オートバイに乗る人のことを「ライダー」って言うけど、これは「乗る」って意味の「ride」に「er」をつけただけだから、本来ならオートバイのことには限定されないハズだ。じゃあ、何でオートバイに乗る人のことを指す言葉として使われてるのかって言うと、この「ride」ってのが、もともとの語源が「馬にまたがる」って意味だったからで、かつては馬に乗る人のことを「ライダー」って言ってたからだ。そして、時代が流れて、馬の代わりにオートバイが登場して、オートバイのことを「鉄の馬」なんて形容するようになったことから、オートバイに乗る人のことも「ライダー」って言うようになったってワケだ。
ようするに、この「ライダー」って言葉は、オートバイに乗る人のことだけを指すんじゃなくて、「馬に代わる乗り物」に乗る人のことを指すワケだ。だから、エンジンのついてない自転車の場合でも、BMXとかマウンテンバイクとかのワイルドなイメージのある自転車に乗る人は「ライダー」って呼ばれてる。そして、細いタイヤのサイクリング車になると、スポーツタイプだけど荒々しいイメージはなくなるから、「サイクリスト」って呼ばれるようになる。ちなみに、あたしの場合は「ママチャリスト」だ(笑)
で、オートバイに乗る人でも、「ライダー」の他に、「バイク」に「er」をつけて「バイカー」って呼ぶ場合もあるし、「モーターサイクル」に「ist」をつけて「モーターサイクリスト」って呼ぶ場合もある。これこそニュアンスの問題で、あたしのイメージなら、「ライダー」って言うと、前屈姿勢で乗るロードレーサータイプのオートバイに、レーサーみたいな皮のツナギを着て、ヘルメットもグローブもブーツも、モトGPに出場しちゃうみたいな本格的な感じがする。そして、「バイカー」って言うと、アメリカンタイプのバタバタ走るオートバイに寝袋とかを積んで、背中にドクロの刺繍とかしてある袖を切ったGジャンを着て、まっすぐな埃っぽい道を走り続けてる感じがする。それから、「モーターサイクリスト」の場合は、トライアンフのヴィンテージの完全レストアとか、カワサキのW1にキャブトンマフラーとかで、リーバイスのジーンズに黒のダブルの皮ジャンで、都会をオシャレに乗りまわしてそうな感じがする。
ま、これは、あくまでもあたしのイメージだけど、フランク・ザッパに言えば、「er」がつく「ライダー」や「バイカー」のほうは、タイプは違ってもワイルドなイメージがして、「ist」がつく「モーターサイクリスト」のほうは、ワイルドってよりもオシャレなイメージが強くなる。だから、これが、アメリカ人のお友達が言ってた「ist」と「er」との「ニュアンスの違い」なのかな?って思った。
‥‥そんなワケで、この「ニュアンスの違い」ってことを前提にして考えると、楽器演奏者の呼び名の中でのマイノリティーである「ドラマー」と「トランペッター」には、他の楽器よりもワイルドなイメージがあるってことに気づいた。ドラムは思いっきりワイルドだと思うし、トランペットにしても、他の吹奏楽器よりもワイルドって言うか、とんがった感じの自己主張があるように感じる。たとえば、いろんな吹奏楽器で、おんなじ楽曲のソロを激しく吹きまくった場合に、トランペットが、どの楽器よりもワイルドで攻撃的な印象に聴こえそうな感じがするのだ。
でも、こうなって来ると、これまたヤヤコシイことになって来る。何でかって言うと、ロックのドラムに負けないほどワイルドで熱いニポンの「和太鼓」の場合、その演奏者のことを英語圏では「タイコイスト」って呼ぶからだ。ニポンの伝統楽器のほとんどは、世界的にも認知されてて、多くの国にファンがいる。だから、「三味線」にしても「尺八」にしても「お箏」にしても世界的に有名な楽器で、それぞれの楽器の演奏者のことは、「シャミセニスト」「シャクハチスト」「コトイスト」って呼ばれてる。だから、「和太鼓」の演奏者も、その流れて「タイコイスト」って呼ばれてるみたいなんだけど、あのワイルドさを加味すれば、「和太鼓」の場合は「ist」じゃなくて「er」だろう。まあ、「タイカー」ってことにしてもあんまりワイルドじゃないけど、少なくとも「タイコイスト」よりはマシだと思う。
あと、あたし的には、「三味線」は「シャミセニスト」でいいけど、激しい「津軽三味線」だけは「er」にして欲しい。でも、「ツガルシャミセナー」ってのも、どっかの自己啓発セミナーみたいでインチキ臭いから、「太棹」に「~er」をつけて「フトザオラー」ってのがいいと思う。怪獣みたいでカッコイイし‥‥って、ここまで書いて来て気づいたんだけど、「er」をつける場合には、濁音が入ってないとワイルドさが出ないみたいだ。「ドラマー」しかり、「ライダー」しかり、「バイカー」しかり、「フトザオラー」しかり、1音でも濁音が入ってると、ナニゲにワイルドな感じがする。だから、「トランペッター」はちょっと軽く感じてたし、「タイカー」は激しく軽く感じてたのだ。
「タイカー」に濁音を入れて「タイガー」にすればグッとワイルドになるし、もひとつ濁音を増やして「タイガー・ジェット・シン」にすれば、さらにワイルドになる。さらには、あと4つ濁音を増やして、「タイガー・ジェット・シン対アブドーラ・ザ・ブッチャー」にすれば、あまりにもワイルド過ぎて、想像しただけで流血しちゃいそうだ。だから、これからは、「和太鼓」の演奏者のことを「タイガー・ジェット・シン対アブドーラ・ザ・ブッチャー」って呼んで欲しいと思う。
‥‥そんなワケで、ヘアメークをナリワイとしてるあたしは、何よりも嫌いなのが、「メークアップアーティスト」って呼ばれることだ。だから、自分の名刺には、「Hair & Makeup」としか書いてない。今は、くだらないアイドル歌手までもが、何の臆面もなく自分のことを「アーティスト」って言ってハバカラナイ時代になっちゃったけど、あたしのツラの皮はそこまで厚くはない。だって、もしもあたしが「アーティスト」を自称しちゃったら、あたしが「主役」で、お客さまが「作品」てことになっちゃうからだ。あたしにとってのヘアメークとは、その人の内面の美しさを引き出すお手伝いをさせていただくことであって、主役はあくまでもお客さまだ。だから、あたしは、これからも、「ist」も「er」もつけずに、肩書きによるイメージなんかには左右されずに、ひたすら自分のスタイルを貫いて行こうと思う今日この頃なのだ。
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