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2009.01.12

派遣村について

今日は、まず、1通のメールをご紹介する。


お名前:TY
コメント:こんにちは、きっこ様。ほぼ毎日、読ませて頂いています。50代半ばの大阪のオッサンです。きっこさんの取り上げる話題の97%位は共感します。(中略)ただ、政治関連の話になると若干異論も有りますが、人それぞれ主義・主張が異なるのは仕方ないことだし議論も出来ないので省略します。さて、1・8の日記で、安江清治氏や坂本哲志総務政務官の発言を取り上げておられました。きっこさんは、当然、両氏の発言を問題視されておられるのでしょう。しかし、両氏の発言(安江氏のは少し乱暴な部分もありますが)は、本質を突いている点も有り、マスコミや野党が批判だけしているのでは、全体像を見誤る事になると思います。今回、世間的に耳目を集めている派遣村についての私の感想です。私は、派遣会社からの労働を永年やってきました。20代半ばから40歳過ぎまで、殆どが派遣会社からの工場労働で糊口を凌いできました。(中略)派遣会社と契約していて働いていれば、仕事が無くなったら寮から出て行くのは当たり前の話で、契約時に承知しているわけですから、”仕事も住むところも無い”といって、いかにも会社が酷い仕打ちをしているかのような言い方は間違っているし、甘えていると思います。そんな事は、百も承知で働いているんですから、仕事が無くなった時の準備、ある程度の貯えをしておかなければなりません。月々、些少でも貯金しておくのは当然として、仮に1円の貯えも無かったとしても、最後に貰う給料(最低でも数万円はあるでしょう)で、カプセルホテル、安宿に宿泊して、次の仕事が見つかるまで何とか凌ぐのです。実際、私はそうしてきました。年末に仕事が無くなったことも経験しています。この時は、三重県の食品工場の仕事でしたが、12月半ばに仕事が無くなり、名古屋駅前の1泊1500円だかの安ホテルに泊まっていましたっけ。勿論、十数年前と比較すると雇用状況が悪くなっているのは事実でしょう。でも、アルミ缶集めをしてでも生き延びようとすれば出来るのですから、そんなに深刻さを訴えるのはどうかと思います。今回、仕事が無くなった連中を支援している人たちですが、純粋に気の毒だと思って行動している人は立派だと思います。しかし、政治思想団体や組織が煽動して政権批判に利用している、というのも事実だと思います。(後略)


‥‥そんなワケで、TYさんは、とても長いメールをくださったんだけど、マクラの部分に収まるように、とりあえず1000文字以下に省略させていただいた。そして、省略した中からも、あとで部分的に紹介させていただこうと思う。TYさん、どうもありがとうございました♪‥‥ってことで、今回はレイアウトの点から「いかがお過ごしですか?」はナシにしてくけど、TYさんのメールを紹介させていただいたのは、他にも同様のメールを何通かいただいてるからだ。もちろん、坂本哲志総務政務官や安江清治市議の発言を批判するメールのほうが遥かに多く届いてるけど、反論‥‥ていうか、他の意見にこそ目を向けるべきだと思ったから、今回は、中立的な立場で冷静に書いてくださってるTYさんのメールを紹介させていただいた。

で、派遣村に集まった人たちに批判的なメールの意見をマトメると、「仕事がなくなれば切られることは最初から分かっていたハズだ」とか、「仕事がないと言うが、人手不足の職場はたくさんある。結局は仕事を選り好みしているだけ」とかって意見が多かった。なかなかモットモな意見だと思う。それから、TYさんが言ってる「仕事を切られた時のために少しづつでもお金を貯めておくこと」も当然だと思うし、それをしなかったのは本人の責任だと思う。

もちろん、大きな借金を抱えてたり、奥さんや子供がいたりして、収入のほとんどが右から左へ消えてって、とても自分のための貯金なんかできなかった人もいると思う。だけど、こうした理屈を正論とする人たちの感覚で言えば、大きな借金を作ったのだって自分の責任だし、仕事も安定してないのに結婚して子供を作ったのだって自分の責任てことになるんだろう。それを会社のセイや世の中のセイ、政府のセイにするのはトンデモナイことで、甘えてることで、派遣村に集まれば「傷をなめあってんじゃねえよ!」って安江清治市議から怒鳴られちゃうってワケだ。

‥‥そんなワケで、昨日の10日、埼玉県熊谷市の71才の女性の家が全焼した。この女性は、電気料金を払えなくて、5日に電気を止められちゃって、それからロウソクの明かりで生活してたそうだ。で、そのロウソクの火が原因で火事になっちゃったそうなんだけど、この女性は年金を支給されてなくて、離婚した夫からの月5万円~8万円の仕送りだけで生活してたそうだ。そして、猫を7匹飼ってて、お金に困ってて、前日の9日に、市役所に生活保護を受給できないか相談に行った矢先のことだったそうだ。

派遣村に集まった人たちに対して平然と批判的なことが言える人は、この女性に対しても、きっとおんなじように批判的だと思う。「料金を払わなければ電気を止められるのは当たり前だ」とか、「火事を起こしたのは自分の不注意だ」とか、「お金がないクセに猫を7匹も飼うな」とかって言うだろう。そして、これらの意見は、派遣村に集まった人たちへの意見と同様に、なかなかモットモな意見だと思う。スジも通ってるし、誰が見たって正論だから、反論する余地はない。

でも、あえて言うけど、あたしの感覚は違う。たとえ、その人に原因があったとしても、目の前に困ってる人がいれば、気の毒だとは思えるけど、決して厳しい口調で批判することはできない。たとえば、正社員になれる求職がいくつもあったのにも関わらず、自分から好んで自由気ままな派遣社員になった人だったとしても、別に大きな借金を抱えてたワケでもなく、奥さんや子供がいたワケでもなく、イザって時のために貯金をする余裕があったのに、お給料をもらうたびにキャバクラや風俗へ通ってムダ遣いを繰り返してた人だったとしても、それでも、突然、解雇されて、行くあてがなく、食べる物もなくて困ってれば、やっぱり気の毒だと思う。あたしにできることがあれば、何かしてあげたいと思う。

あたしは、目の前に自殺しようとしてる人がいれば、いくらその人自身に原因があったとしても、まずは思いとどまってもらうように説得する。その人が、ギャンブルや女遊びで莫大な借金を作って、それを苦に自殺しようとしてたとしても、あたしは、「自業自得だろ?トットと飛び降りろよ!」とは言えない。タバコの吸い過ぎで肺ガンになって余命宣告された人の病室まで行って、その人に向かって「自業自得だろ?ザマーミロ!」とは言えない。ギャンブルや女遊びで莫大な借金を作ったのも、タバコの吸い過ぎで肺ガンになったのも、どっちも自分自身に原因があるワケで、まさしく「自業自得」だろう。そして、それを指摘することは正論だろう。でも、あたしは、こうした正論を口にすることが、必ずしも正しいことだとは思えないのだ。

たとえ正論でも、あたしは、寒さと空腹で震えてる人に向かって、「お前は甘いんだよ!」なんて言うことはできない。たとえ正論でも、あたしは、家が全焼した女性に向かって、「自業自得だろ?」なんて言うことはできない。そして、こんなことを考えると、あたしは、「正論って何だろう?」って思えて来る。あたしは、正しいことと間違ってることがあれば、正しいことが好きだ。そして、あたしは、スジの通らないことが嫌いだ。そうすると、正論こそがあたしの求めてるもののハズなのに、こうした正論は、いくら頭で理解できても、あたしの心が理解できないのだ。

‥‥そんなワケで、マクラでメールを紹介したTYさんは、いろんな苦労をされて来た人だ。もちろん、自分では「苦労」だなんてヒトコトも書いてなくて、あくまでも自身の経験として淡々と書かれてるだけだけど、実際にいろんな経験をして来た人だからこそ、言ってることに説得力がある。TYさんは、こう言ってる。


「私は大阪の愛隣地区のドヤで1年半位生活していたこともあります。彼の地区においては、冬場でも路上で寝ている姿はしょっちゅう眼にします。そのまま凍死する人も何人かは出る。こういった地区ですが、支援する人々もいます。主にキリスト教関係の団体が、炊き出しをしたりしています。(ただ食事にありつこうとしたら、30分位の”説教”を我慢して拝聴しないとダメですが)同じ支援をするならば、こういう地区の無収入になった人たちや、全国各所に点在しているホームレスの人たちの支援の方が必要だと思います。派遣の仕事が無くなって困っている人々の支援よりも、切実さにおいては、より以上の境遇に置かれているのですから。」


TYさんは、20代半ばから20年近く、派遣会社からの工場労働で生活して来て、その間には、こうして愛隣地区のドヤ街で暮らしたこともある人だ。だから、そんなTYさんが、派遣村に集まった人たちを「甘えてると思います」って言うのは分かるし、また、言ってもいい立場にあると思う。そして、もっと困ってるのに支援されてない人たちが全国にたくさんいるってことへの言及も、まさしく的を射てると思う。

で、派遣村に集まった人たちに対して、おんなじことを言ってるのに、坂本政務官や安江市議の発言には「おいおい!」って思う反面、TYさんの発言はスンナリと受け入れられるのは、やっぱり、目線の高さの問題だと思う。坂本政務官や安江市議は、フロッピー麻生と同様に、所詮は高い場所から見下ろして言ってるだけなのに対して、一方のTYさんは、派遣村に集まった人たちとおんなじ目線の高さで意見を言ってるからだ。さらに言えば、TYさんの場合は、派遣村のような支援が無かった時代に、自分の力で生き抜いて来た。だから、おんなじ「甘えてると思う」って見方をしてても、TYさんの言葉には、どこか温かさを感じるのだ。これは、人の痛みが分かる人だけが持つ温かさなんだと思う。

そして、あたしの場合は、派遣労働者として工場で働いた経験もないし、ましてや、ドヤ街で暮らしたことも、ホームレスになったこともない。多摩川のホームレスのおっちゃんたちとは、タマにお酒を飲んだりすることもあるけど、あたし自身は、そうした暮らしをした経験がない。だから、あたしは、いくら正論だとしても、派遣村に集まった人たちに対して、「自業自得だろ?」って見方をすることができないんだと思う。おんなじ人間として、そこに困ってる人がいれば、やっぱり、何とかしてあげたいって思うほうが先だからだ。

‥‥そんなワケで、個人的な感覚の違いについては、いくら書いても仕方ないので、ここでリトル車線変更して、今回の派遣村の政治的背景について書きたいと思う。TYさんは、「今回、仕事が無くなった連中を支援している人たちですが、純粋に気の毒だと思って行動している人は立派だと思います。しかし、政治思想団体や組織が煽動して政権批判に利用している、というのも事実だと思います。」って言ってるけど、こんなふうにも言ってる。


「民主党の菅氏が派遣村に行って何か励ましとかしたそうですが、こんな行為は明らかにスタンドプレーだし、鳩山由紀夫氏の”政治災害だ”という発言を聞いても、お金持ちの坊ちゃんが下層階級の人間のことなど本当に同情しているわけも無く、単に政治利用しているのは歴然だと思いますがどうでしょう?」


まず、「お金持ちの坊ちゃんが下層階級の人間のことなど本当に同情しているわけも無く」ってのは、鳩山由紀夫本人をウソ発見機にでもかけなきゃ分かんないことだから何とも言えないけど、それを言うなら、フロッピー麻生を筆頭に自民党の議員のほとんどが、下層階級どころか、国民のことなんかぜんぜん考えてないんだから、おんなじことだと思う。そして、自民党が、国民のことよりも官僚や企業のことしか考えてない政策を続けて来たことが、今回の問題の根本原因である「派遣労働者の急増」っていう温床を作ったことは事実なんだから、「政治災害」って言葉は当たってると思う。だから、こうした状況を作った現政権に対して、野党が批判するのは当然のことで、「政権批判に利用している」って言われても、それが野党の仕事なんだから、別に間違ってないと思う。

だって、本来は政府がすべきことなのに、フロッピー麻生が何にもしないから、仕方なく民間が動いたってのが今回の派遣村でしょ? フロッピー麻生は、あれほど「スピードが重要だ」って言いながら、「1次補正予算で十分だ」って言って、2次補正予算案を先送りにしたんだから、もう、この時点で、困ってる人たちは国から見捨てられたってことになる。それで、仕方なく民間が動いたんだから、国民の代表として現政権の政策に異議を唱えてる野党が、派遣村の問題を与党批判の材料にするのは当たり前のことだと思う。

それに、今回の派遣村は、ただ単に「派遣切りにあって困ってる人たちに寝る場所と食べ物を提供しましょう」っていう、その場しのぎのボランティアだったワケじゃない。労働運動の連合体である連合、全労連、全労協の3団体が手を結んで、こうした状況を生み出した政治や企業の体質に対して労働者の人権を主張するために開村したんだから、厚生労働省に対して要望書を提出したりデモを行なったりするのは、現状を改善するための手立てとして当然の流れだろう。

もちろん、500人も集まったんだから、中には、そんなことはどうでも良くて、ただ寝る場所と食べ物さえ手に入ればいいと思ってた人もいたのかもしれない。これは、TYさんのメールにある、キリスト教関係の団体の炊き出しにありつくために、30分の説教をガマンして聞いてる人たちとおんなじだろう。だから、今回の派遣村を「政治利用」って言うのなら、こうしたキリスト教関係の団体の炊き出しは「宗教利用」ってことになっちゃう。「食べ物が欲しければ説教を聞け!」ってことになっちゃうし、さらに穿った見方をすれば、この中から何人かの人が入信してくれればいいと思って炊き出しをしてるってことになっちゃう。

だけど、あたしは、そうは思わない。ナンミョーみたいな悪質なカルト教団が2兆円のバラ撒きをしようとしてるのは、誰の目にも明らかなように「選挙での票集め」っていう「見返り」を狙っての愚策だけど、これこそが、ナンミョーがインチキ宗教だってことの証明なのだ。毎日お題目をあげれば幸せになれるだの、1人でも多く勧誘すれば幸せになれるだの、ナンミョーを始めとしたインチキ宗教の特色って、口じゃ「奉仕」だなんて言いつつも、やってることはすべてが「見返り」を求めてるのだ。普通に考えたら、「見返り」を求めてるものを「奉仕」とは呼ばないことくらい、小学生でも分かるだろう。

そして、マトモな宗教であるキリスト教の場合は、「奉仕」は純粋なる「奉仕」であって、何の見返りも求めていない。お腹を減らした人にしてみれば、ガマンしなくちゃなんない30分の説教はつらいかもしれないけど、これにしたって、食べ物に対する感謝の心を持ってもらうために、良かれと思ってやってることだ。その場に集まった人たち全員に神様の祝福があるようにと、良かれと思ってやってることだ。そして、別にキリスト教なんかに入信しなくても、「感謝する」って気持ちだけでも持つようになってくれれば、その人の残りの人生は、少なからず豊かなものになる。つまり、キリスト教関係の団体が炊き出しを行なってるのは、1人でも多くの人に幸せになって欲しいからであって、これは信者集めのための「宗教利用」なんかじゃないってことだ。

これとおんなじ理屈で、あたしは、派遣村に集まった野党の議員たちも、「政治利用」しようとして集まったとは思わない。たとえば、オムライス党のみずほたんの日記にも、1月4日付で、こんなことが書いてある。


「派遣切りにあって、神奈川で、自殺をはかろうとした人がいて、その人を助けた人が、警察に連れていったそうである。そしたら、派遣村を紹介をされて、派遣村にきたそうである。うーん。でも、死ななくていい、生きられる、ひとりじゃない、手を差し伸べたり、何とかしようとしている人たちがいるということは、心のなんとか支えになってくれないか。」


自由すぎる「みずほ文体」はイマイチ分かりずらいけど、ここには「政治利用」なんて心はミジンもないこと、困ってる人たちを助けたいっていう純粋な心しかないことが分かると思う。これは、キリスト教関係の団体の炊き出しに通じる精神だ。オムライス党からは、保坂展人さんが開村式に駆けつけて、年末年始を通して視察や協力を続けて来たし、みずほたんも年明けから毎日のように顔を出して、多くの人たちの話を聞き、元気づけて来た。これは、決して何かの見返りを求めた行為じゃなく、純粋に困ってる人たちをほっとけなかったからだ。

そして、マスゾエちゃんは、解雇されて寮を追い出された人たちに対して、厚労省が管理する公務員宿舎200戸を貸し出すって、まるで自分の手柄のようにノタマッてたけど、これにしたって、みずほたんからの申し入れを受けて、ようやく重い腰を上げたってだけなのだ。今の政府が、ホントに「国民のほうを向いた政治」をしてたんなら、こんなこと去年のうちにやっとくのが当たり前だろう。そうすれば、民間が派遣村なんかやらなくても済んだのだ。

‥‥そんなワケで、オムライス党は、こうして「今、困ってる人たち」のことを最優先しながらも、こうした状況を生み出した悪しき「コイズミ派遣法」を改善するために、改正法案を取りまとめて、民主党にも合意してもらった。これにしたって、「政治利用」って言われればそうなっちゃうけど、たとえ「政治利用」だと言われても、自民党や民主党のように企業からガバガバと献金を受け取ってる政党と違って、オムライス党のワンダホーなとこは「1円たりとも企業献金は受け取らない」っていう徹底したクリーンな姿勢だ。だからこそ、特定の企業にだけ有利な政策をする義務もなく、ホントに困ってる人たちのための政策を推し進めて行けるってワケだ。だから、あたしは、これからも、クリーンで見返りを求めないオムライス党を支持してくつもりの今日この頃なのだ。


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