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2009.01.02

母と娘のお正月

今年のお正月は、去年のお正月と違って母さんと過ごせるから、あたしは、大晦日も早めに帰って来た。いつもは、夜遅くまで働いて、帰りに車を運転しながらラジオで除夜の鐘を聴くなんてこともあったけど、今回は、晴れ着の着付けとヘアメークのお仕事を受けずに、夕方には仕事納めにした。で、6時過ぎには帰って来て、猫たちにご飯をあげてから、用意しておいた「年越しセット」を持って、愛車のフェラーリF2004(ママチャリ)で母さんのとこへ向かった。

あたしが用意しておいた「年越しセット」は、年越しそば用の「おそば、麺つゆ、長ネギ」、年の湯&初湯のための「登別カルルス」、お元日のための「おもち、カズノコ、銀嶺立山」、お元日に母さんと遊ぶための「秘密道具」などなどなんだけど、この中であたしが買ったのって、780円のカズノコだけだ。カズノコは、母さんもあたしも大好物なので、お正月ってことで、白醤油漬けの小さいパックのを1つ買っておいた。でも、おそば、長ネギ、登別カルルス、おもち、銀嶺立山は、どれも「きっこの日記」の読者やネット友達や俳句仲間からのいただきもので、感謝感激アメトーークだ。

で、これらの「年越しセット」を持って母さんのとこへ行き、まずはおそばを茹でて、恒礼の「大晦日だよドラえもん」を観ながら、年越しそばを食べた。おそばは美味しかったけど、母さんもあたしも、どうしても今のドラえもんの声にはナジメなくて、心から楽しむことができない。だから、テレビはつけてたけど、ほとんど観てなくて、ずっとおしゃべりしてた今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、これは毎年のことだけど、年末年始は観たいテレビ番組がほとんどないから、「ドラえもん」が終わったらテレビを消して、ラジオをつけた。TOKYO FMをつけたら、大晦日だってのに、いつもと変わらずに「Daily Planet」をやってた。そしたら、TOKYO FMをよく聴いてる母さんが、こう言った。


「ホリンキーさん、たしか今日が最後だよ」


「Daily Planet」の編集長のホリンキーは、12月31日までで、1月1日からは新しい編集長に代わるらしい。それで、あたしは、母さんと一緒に「Daily Planet」を聴くことにした。「Daily Planet」は‥‥って言うか、前の「Seven」の時もおんなじだったから、ホリンキーのスタイルなんだろうけど、会話のジャマにならないルーズなダブとか民族音楽とかを流しながら、合い間に時々しゃべる。ある程度のことをしゃべって、しばらく音楽だけが流れて、また続きをしゃべる。だから、1人で聴いてる時もいいんだけど、何人かでラジオを聴いてても、ホリンキーがしゃべり出したら耳を傾けて、音楽になったらみんなでしゃべる‥‥ってふうに楽しめる。

母さんとあたしも、お茶を飲みながら、こんなふうに楽しんだ。ホリンキーは、「日本はあと4時間で新年を迎えるけど、地球上で一番早く新年を迎えるクリスマス島は、もう5時間も前に1月1日になってる」ってこととか、「2009年になることに反発してる人たちのグループが、ずっと2008年のままでいるために、どこかの島に集合してる」ってこととか、いつもながらに面白い世界のニュースを伝えてくれた。母さんとあたしは、そうしたホリンキーのトークを楽しみながら、合い間の音楽のとこで、「へ~!」とかって言いながら、いろんなことをおしゃべりした。

で、ホリンキー最後の「Daily Planet」も終わったので、「年の湯」に入ることにして、登別カルルスを入れたお風呂に入った。狭いお風呂だけど、年に一度の「年の湯」だから、母さんの背中を流そうと思って、一緒に入った。そしたら、「あんた、そんなとこにピアスしたの?」って、新しいボディーピアスがバレちゃったよ(笑)

‥‥そんなワケで、あたしの大晦日の夜は、母さんと年越しそばを食べて、母さんとラジオを聴いて、母さんと「年の湯」に入って過ごした。それで、0時前にはお布団を敷いてゴロゴロしてたんだけど、母さんは登別カルルスのお風呂が嬉しかったみたいで、「もう1回お風呂に入る」って言い出した。それで、またまたあたしも一緒に入ることにしたんだけど、今度は、狭い湯舟に向かい合って2人で入ってみた。そしたら、お湯がザバーッとあふれて、ものすごくもったいなかったんだけど、何だかすごくゼイタクな気分になれて、2人で笑いが止まらなくなっちゃった。

それで、2人で「松葉くずし」みたいな体勢になってお湯に浸かってたんだけど、笑い終わって静かになったら、遠くで除夜の鐘が鳴ってるのが聞こえた。いくつ目の鐘なのか分からないけど、ちょうど0時になったころだと思うから、「年の湯」が「初湯」になっちゃったってワケだ。そしたら、しばらく目を閉じて除夜の鐘を聞いてた母さんが、こんな歌を詠んだ。


「新しき年の初めの初湯とて今日降る雪のごとき湯の色‥‥なんてどお?」


おおっ!ミゴトな本歌どり!サスガ、あたしの母さんだ!この歌の本歌は、もちろん、「万葉集」のラストを飾る大伴家持のこの歌だ。


 新しき年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事  家持


ちなみに、「新しき」は、「あたらしき」じゃなくて、「あらたしき」って読む。現代は「新しい」を「あたらしい」って読むけど、この時代は、「あたらしい」って言うのは「惜しい」って意味になっちゃう。今で言う「あたらしい」って意味の言葉は、当時は「あらたしい」だった。ようするに、古いものが新しいものに「改まる」って意味なのだ。今でも「新た」って書いて「あらた」って読むけど、この読み方こそが、「新」ていう漢字の本来の読み方だった。だから、母さんも、ちゃんと「あらたしき年の初めの~」って詠んだのだ。

家持の歌は、年も改まったお元日に、降り積もる雪の様子を詠んでる。万葉の時代には、お元日の雪は「吉兆」、つまり、「良いことの兆し」とされてて、お元日に雪が降ると、その年は豊年になるって言われてた。「吉兆」なんて言うと、今でこそ、他のお客の食べ残しを別のお客に出すようなインチキ料理屋の代名詞であり、恥も外聞もない「ささやき女将」の顔が浮かんできちゃうけど、昔は素晴らしい言葉だったのだ。

それから、家持の歌の「いやけし」ってのは、漢字で書くと「いや重し」ってことで、「ますます重なる」って意味だ。で、何が「ますます重なる」のかって言えば、「吉事(よごと)」、つまり、「良いこと」なワケだ。だから、フランク・ザッパに訳せば、「年も改まったお元日に、良いことの兆しと言われてる雪が、こんなにもどんどん積もって行く。この雪のように、今年は良いことが次々と重なって行くといいなあ」って感じだ。

だから、母さんは、この家持の歌の本意を踏まえた上で、「東京には吉兆を表わす雪は降らなかったけど、まさにお元日に降る雪のような色の初湯に入ったんだから、今年はきっと良いことが重なって行く年になるだろう」って詠んだのだ。単なる語呂合わせだったり、元の歌の本意を無視した本歌どりが多い中、こうしてキチンと本意を踏まえた本歌どりを即興で詠んじゃうなんて、やっぱりあたしの自慢の母さんだ。

‥‥そんなワケで、親子で、裸で、狭い湯舟の中で新年を迎えたあたしは、母さんとお布団を並べて寝た。そして、お元日の朝は、のんびり起きて、お雑煮を作り、母さんが炊いてくれた黒豆と、あたしの買ってったカズノコを並べて、お屠蘇に銀嶺立山を飲んだ。それから、母さんの髪とメークをしてあげて、あたしもチャチャッと済ませて、近所の小さな神社に初詣に行った。

それで、帰って来てからは、いよいよあたしの持ってった「秘密道具」の登場だ。それは、ハンドメイドの「投扇興(とうせんきょう)」だ。「投扇興」ってのは、「枕」っていう台の上に乗せた「蝶」っていうお飾りに向けて扇子を投げて、ぶつかって落ちた時の形によって、2人で順番に得点を競ってく昔の遊びだ。普通に買うと何万円もしちゃうけど、あたしのは自分で作ったものだ。台は、テキトーな箱に重りを入れて安定を良くして、周りに千代紙を貼った。扇子は、使わなくなった安モノだ。そして、問題の「蝶」は、壊れた置物の足の部分をベースにして、釣り具の上州屋で買って来た釣り用の小さな重りを利用して作った。文章だけで説明するのは難しいから、興味のある人は、「投扇興」で検索して、画像を見てみて欲しい。

「投扇興」の得点は、「百人一首」式のものと、「源氏物語」式のものと、もう1つ、別のものがある。「百人一首」式のものは、それぞれの役の名前が、「秋風」とか「有明」とかって「百人一首」の歌にちなんだものになってて、「源氏物語」式のものは、「空蝉」とか「夕顔」とかって「源氏物語」の登場人物とかの名前になってる。これは、流派によって変わるもので、つまり、枕と蝶と扇子とがおんなじ形になっても、「百人一首」式を導入してる流派と「源氏物語」式を導入してる流派とでは、その役の呼び名が変わるってワケだ。だけど、「百人一首」式にも「源氏物語」式にもいくつかの種類があるから、なかなか複雑なのだ。

それで、あたしは、「源氏物語」式の中から、ワリと覚えやすそうなタイプのをやってみようと思って、役の一覧表をコピーして持ってった。だけど、専用の扇子じゃないから、うまく飛ばなくて、何回投げても、扇子が何にも当たらない0点の「手習(てならい)」にしかならない。それで、インチキをして、自分の位置をズラして的までの距離を近くにしたら、3回に1回くらいは当たるようになった。でも、あたしの作った蝶のバランスが悪かったみたいで、枕から蝶が落ちるだけの「末摘花(すえつむはな)」(2点)と、枕の上で蝶が倒れるだけの「松風」(4点)しか出ない。一覧表に載ってる高得点のワザ、たとえば、落ちた蝶が立って、その蝶と枕とに扇子が橋みたいにかかる100点の「夢浮橋(ゆめのうきはし)」とか、枕に扇子が逆さ向きに立て掛かって、そこに蝶が引っ掛かってぶら下がる95点の「御法(みのり)」なんて、1万回くらい投げなきゃ出そうもない。

だけど、母さんはだんだんにコツをつかんで来たみたいで、2回に1回は扇子がグライダーみたいに飛ぶようになった。そして、1回だけ、落とした蝶の上に扇子も落ちて、蝶を扇子が覆い隠す8点の「夕霧」を出した。これが決定打になって、初めての「投扇興」の勝負は、母さんが勝利を飾った。でも、ちゃんとしたルールにのっとって、決められた回数を順番に投げたんじゃなくて、2人で大騒ぎしながら扇子を投げまくって、得点の出た時だけ紙につけてったっていう激しくアバウトな勝負だった。

それにしても、「箱の上の飾りに向かって扇子を投げる」ってだけの極めて単純な遊びなのに、投げるものが「広げた扇子」っていう不規則に飛ぶものだから、ものすごく奥が深い。まっすぐ飛ぶボールとかなら、コントロールのいい人が高得点を出すことになるけど、扇子はまっすぐに飛ばないから、ある程度までは練習でうまくなるけど、最終的には「運」が左右する。つまり、ビギナーズラックや大逆転ていうギャンブル性があるワケだ。だから、あたしは、マジメに「投扇興」に取り組んでる人たちからは邪道だって言われちゃいそうだけど、コレ、お金を賭けてやったら熱くなりそうな気がした(笑)

‥‥そんなワケで、母さんとあたしは、ナンダカンダと1時間以上も「投扇興」で遊んじゃって、気がついたら午後1時半。それで、お腹も空いて来たし、お元日と2日は、午後2時からNHKの教育テレビで「新春桧舞台」をやるから、あたしはご飯の支度をすることにした‥‥って言っても、おもちを焼いて磯部巻きにしたのと、母さんが作ったダイコンとイカの煮物を温め直したのと、朝の黒豆とカズノコの残りだ。それで、お茶をいれたら、ちょうど「新春桧舞台」が始まった。

今年のお正月は、いつもに増して観たいと思う番組がないから、ずっとテレビはつけなくてもいいと思ってたんだけど、母さんが「新春桧舞台だけは観たいわ」って言ってて、演目を見たらあたしも観たくなった。何しろ、「新春」て銘打ってるだけのことはあって、長唄舞踊の「三升猿曲舞(しかくばしらさるのくせまい)」、お筝の「越後獅子」、長唄の「鶴亀」、そして踊りの「梅の春」や「京人形」と、お元日にふさわしく、おめでたい演目がメジロ押しだ。それで、ちょっと遅いお昼を食べながら観たんだけど、どの演目もホントに素晴らしかった。

特に、去年、人間国宝に選ばれた米川文子さんを中心としたお箏、「越後獅子」は壮観だったし、市川團十郎さんと、お嬢さんの市川ぼたんさんの「京人形」も素晴らしかった。そして、番組の最後には、ゲストの加藤武さんが、今日の感想を俳句にして、「泣き初めは獅子に噛まれし縁起かな」なんて詠んでくれた。ベタな句だけど、この「ベタさ」がお正月らしくていい。これは、明日の放送も楽しみだ。母さんもすごく楽しんでて、「元気になったら歌舞伎を観に行きたい」って言ってたから、あたしの楽しみの中に、「母さんを歌舞伎に連れて行く」っていう項目が、また1つ増えた。

‥‥そんなワケで、お元日の夜は、あたしはいったんコマーシャル‥‥じゃなくて、いったんマンションに帰って来た。そして、明日は、今度は母さんがあたしのマンションに泊まりに来ることになってる。何でかって言うと、2日の夜は、マンションの屋上で、一緒に「しぶんぎ座流星群」を観ることになってるからだ。7月から8月にかけて観られる「ペルセウス座流星群」、12月に観られる「ふたご座流星群」と並んで、お正月に観られる「しぶんぎ座流星群」は三大流星群の1つだけど、あたしは、お正月はいつも忙しいのと、あまりにも寒いのとで、あんまりちゃんと観たことがなかった。だけど、今年は、時間もタップリあるし、そんなに寒くないから、ホカロンを貼って着膨れして、母さんと一緒に観る約束をしてたのだ。「しぶんぎ座流星群」は、2日の夜から5日の朝まで観られるから、母さんと一緒に流れ星を観て、流れ星に一番大切なことをお願いしようと思ってる今日この頃なのだ。


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