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2009.02.09

チェシャ猫は実在した!

あたしのマンションの駐車場に来る猫たちの中で、現在、ハナコ、マイケル、小林君、マックス、ジジ、ペペロンチーノ、カルボナーラ、もんじゃの8匹は固定メンバーだけど、他にも、いろんな猫が顔を出す。何年も前にさかのぼると、白黒カラーのマックスとウリふたつの偽マックスとか、黒猫のジジとソックリの黒猫3兄弟とか、ちょっと前には、ガリガリに痩せてて死にそうだったコマイケルが、元気になるまで顔を出してた。他にも、覚えてないくらいたくさんの猫が来たけど、たった一度だけご飯を食べてった子もいれば、一度だけご飯を食べに来て、それから何ヶ月もして、忘れたころにまた顔を出す子もいる。

こうした子たちには、もちろん、ちゃんとした名前はつけてないんだけど、タマに顔を出す子には、自然とニックネームみたいなものがつく。まあ、猫の名前なんて、本名もアダ名もニックネームもないようなもんだけど、たとえば、月に一度くらい顔を出すシッポの曲がった茶トラの猫を「シッポ曲がり」って呼んだり、すごくタマに来る大きな黒猫を「大黒マキ」って呼んだり‥‥って、ほとんどが見かけの特徴から自然とニックネームがつく。これは、マンションの住人同士で会話する時に、「さっき、●●さんの車のボンネットの上でマイケルが寝てたから、近づいてったらマイケルじゃなくてシッポ曲がりだったのよ」「シッポ曲がりなら、ゆうべも来てたわよ」‥‥なんてふうに使うためだ。

で、こうした「ビジター猫」って言うか、「ゲスト猫」って言うか、タマに顔を出す猫たちの中に、あたしが「チェシャ猫」ってニックネームで呼んでる変わった猫がいる。そう、「不思議の国のアリス」に出て来る、あの「チェシャ猫」だ。とにかく、あの不思議な「チェシャ猫」をホーフツとさせる変わった猫で、子供のころから数えきれないほどの猫を見て来たあたしでも、こんな猫を見たのは生まれて初めてだ。たくさんの猫の写真が投稿されてるどんな猫雑誌を見ても、どんな猫サイトを見ても、未だかつて、この子に似た猫は見たことがない今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、あたしが初めて、この「チェシャ猫」と出会ったのは、去年の9月の初旬だった。駐車場の周りの植え込みの薄暗いとこに猫がいたから、「誰かな?」って思って近づいてったら、家の子じゃなかった。ヤタラと黒っぽいマダラみたいな模様で、顔の模様もグチャグチャしててよく分からない。薄暗い場所にいたセイもあったんだけど、目だけが大きく光ってて、あたしのことを威嚇するみたいに睨んでた。それで、あたしは、「風の谷のナウシカ」が、ユパさまからキツネリスのテトをもらった時の雰囲気を全身から醸し出しつつ、「恐くない‥‥ほら、恐くない‥‥」って言いながらソッと手を出してみたら、ソッコーで勝俣州和みたいに「シャー!」って言われちゃった(笑)

でも、きっとお腹が空いてるんだと思ったから、あたしは、ビジター用の器にカリカリを入れて、その植え込みのとこに置いて、そのままお部屋に戻った。それで、何時間かして様子を見に行ったら、器がカラッポになってたから、「よかった、よかった」って思って、その日はそれだけで終わった。そして、この2~3日後のこと、もんじゃがいる空き地の前を通ったので、習慣的に「もんじゃ、いるかな?」って思って中を覗いたら、もんじゃの代わりに変な猫がいた。ヤタラと黒っぽいマダラみたいな模様で、あたしと目が合ったら、目を光らせて険しい表情で威嚇のポーズを取った。その瞬間、あたしは、「こないだの子だ!」って分かった。

で、この時、あたしは初めてこの子の全身をちゃんと見ることができたんだけど、これが、今までに見たことがない不思議な柄の猫だったのだ。顔からシッポまで、全体的に黒とコゲ茶なんだけど、胴体が黒とコゲ茶のミゴトなボーダーだったのだ。普通のバニラのロールケーキと、チョコのロールケーキを用意して、両方とも3~4cmの幅に切る。そして、それをバニラ、チョコ、バニラ、チョコ、バニラ、チョコ‥‥って順番に10個並べたような、ミゴトなシマシマ模様だったのだ。黒とコゲ茶っていう濃い色同士だから、バニラとチョコみたいなメリハリはなかったけど、とにかく、首からお尻まで胴体がぜんぶ、まるで輪切りにした太巻き寿司を並べたみたいに、ミゴトに太いボーダー柄になってたのだ。

猫って、犬と違ってシマシマ柄がある。猫にも犬にもブチ柄はいるけど、シマシマ柄は猫だけだ。でも、それは、トラみたいな柄のシマシマだから、茶トラにしろ、キジトラにしろ、サバトラにしろ、そのシマシマは細かいし、独特のデザインになってる。フランク・ザッパに言えば、頭から背中にかけてはタテのシマシマが数本流れてて、そこから胴体の両サイドに細いシマシマが何本もあって、トラの柄をもっと細かくしたみたいになってる。そして、前足や後ろ足へと流れてって、美しい曲線を描いてる。

また、アメリカンショートヘアーの血が混じってる子なら、横に独特の渦巻き模様があったりもする。ようするに、シマシマって言っても、その幅は細いものだし、体の部位によってなめらかなラインを描いてるから、とてもボーダーとは呼べないものだ。だけど、今回の子の場合は、通常の茶トラやキジトラとはまったく違う模様で、背中からお腹までグルリと太い幅の輪っかをはめてるように、等間隔の帯が並んでた。それで、あたしは、瞬間的に「チェシャ猫だ!」って思ったのだ。「不思議の国のアリス」に出て来る「チェシャ猫」は‥‥って言うか、正確には、ディズニーのアニメの「不思議の国のアリス」に出て来る「チェシャ猫」は、ピンクと紫のボーダーだから、色は違うけど、そのシマシマ具合はソックリだった。

‥‥そんなワケで、あまりにも不思議な模様の猫と出会ったあたしは、何のタメライもなく、この猫に「チェシャ猫」ってニックネームをつけた。だけど、ものすごく根本的な問題が発生しちゃった。それは、言葉の意味の問題だ。「チェシャ猫」の「チェシャ」ってのは、「不思議の国のアリス」の作者、ルイス・キャロルの出身地のイギリスはチェシャー州のことで、ようするに、「チェシャー州の猫」って意味だ。だけど、これは、直訳であって、ホントの意味は違う。

英語には、いろんな慣用句があって、たとえば、有名なとこでは、「cats and dogs」って言葉がある。これを直訳すれば「猫と犬」って意味だけど、慣用句としては「土砂降り」って意味として使われる。これは、「It's raining cats and dogs.」ってふうに使われるんだけど、雰囲気としては「猫と犬がケンカしてるみたいに激しい雨」って感じなんだろう。

で、これとおんなじように、英語で「Cheshire cat (チェシャ猫)」って言うと、これは「ニヤニヤする」って意味の慣用句なのだ。説はいくつかあるんだけど、一番有力な説は、チェシャー州は牧場が多くて、乳製品の名産地なので、チーズもたくさん作られてる。それで、そのチーズを狙ったネズミもたくさんいるから、猫にとっては楽しい場所だ。それで、チェシャー州の猫は、いつもニヤニヤしてる‥‥ってものだ。そして、ここから、「grin like a Cheshire cat (チェシャー州の猫のようにニヤニヤする)」って言い回しが生まれたのだ。だから、作者のルイス・キャロルは、もともとあった慣用句から、いつもニヤニヤしてる「チェシャ猫」ってキャラを作って、自分の作品に登場させたってワケだ。

「不思議の国のアリス」には、他にも、こうした慣用句から生まれたキャラがいる。たとえば、アリスよりも大きくて態度もデカい「三月ウサギ」も、「mad as a march hare (3月のウサギのように気が狂ってる)」っていう慣用句から生まれたキャラで、これは、3月に発情期を迎えるウサギの様子から作られた慣用句だ。また、頭のイカレた「帽子屋」も、「mad as a hatter (帽子屋のように気が狂ってる)」っていう慣用句から生まれたキャラだ。今、こんな慣用句を使うと、帽子屋さんに怒られちゃいそうだけど、「不思議の国のアリス」が書かれた100年以上も前の時代では、帽子を作る工程で水銀を使ってて、そのため、長く帽子屋さんをやってると、水銀の影響で病気になる人が多かったそうだ。

ちなみに、来年公開予定のティム・バートン監督の「不思議の国のアリス」では、ジョニー・デップが、このイカレた「帽子屋」の役をやるそうで、どんな演技を見せてくれるのか、今から楽しみだ‥‥なんてプチ情報も織り込みつつ、この「不思議の国のアリス」には、たくさんのキチガイが登場する。つーか、アリス以外は全員がキチガイだ。だから、「三月ウサギ」にしても「帽子屋」にしても、「気が狂ってる」っていう慣用句から生まれたキャラなのだ。

‥‥そんなワケで、うさぎの穴に落っこちて、不思議の国に迷い込んだアリスが、初めて「チェシャ猫」と出会ったのは、飼い主である侯爵夫人の屋敷だった。炉辺でニヤニヤしてる猫を見つけたアリスは、侯爵夫人に、「あなたの猫はどうしてあんなにニヤニヤと笑っているんですか?」って聞くと、「チェシャ猫だからよ!この豚!」って言われちゃう。ようするに、最初から「チェシャ猫=ニヤニヤしてる猫」っていう大前提があるワケだ。そして、この理屈で行けば、最初から「気が狂ってるウサギ」が「三月ウサギ」なワケで、最初から「気が狂ってる帽子屋」が「帽子屋」ってワケなのだ。

で、侯爵夫人の屋敷を出て森に入ったアリスは、フタマタに分かれた道のとこで、今度は木の枝の上にいる「チェシャ猫」を見つける。そして、話しかける。


「あの、チェシャ猫ちゃん、あたしはどっちの道へ行けばいいのかしら?」

「そりゃあ、お前がどこへ行きたいかによるニャ~」

「どこでもいいんだけど‥‥」

「それなら、どっちへ行ってもいいのニャ~」

「どこでもいいの、どこかに着けば」

「そりゃあ、どこかに着くニャ~。着くまで進めばニャ~」

「このあたりには、どんな人たちが住んでるの?」

「こっちへ行けば帽子屋、こっちへ行けば三月ウサギが住んでるニャ~。どっちでも好きなほうへ行くといいニャ~。どっちもキチガイだからニャ~」

「あたし、キチガイのところなんか行きたくないわ」

「そんなこと言ったって、ここに住んでるのはみんなキチガイなんだから、どうしようもないニャ~。オレもキチガイだし、お前もキチガイだしニャ~」

「ひどいわ!何であたしまでキチガイなの?」

「ここへ来たってことが、キチガイだってことなのニャ~」

「じゃあ、あなたはどうしてキチガイなの?」
 
「犬は、怒った時に唸り声をあげて、嬉しい時にシッポを振るから、キチガイじゃないニャ~。でもオレは、嬉しい時に唸り声をあげて、怒った時にシッポを振るニャ~。だからキチガイなのニャ~」


‥‥そんなワケで、登場するキャラがキチガイだらけの「不思議の国のアリス」だけど、本も面白いしディズニーのアニメも面白い。あたしは、ミッキーマウスやドナルドダックとかのディズニーのキャラが大嫌いで、ディズニーランドにも絶対に行かないし、ディズニーの映画もほとんど観ないけど、この「不思議の国のアリス」だけは大好きで、ビデオも持ってる。で、本の挿絵の「チェシャ猫」を見ると、口は左右に大きく裂けてるけど、体の模様は細いシマシマで、普通のキジトラみたいなんだよね。シッポの先もスッと細くなってるし、顔以外は普通の猫なのだ。だから、不思議なボーダー模様になってるのは、ディズニーのアニメの「チェシャ猫」だけなワケで、ようするに、あの特殊な柄の猫は、ディズニーが原作を無視して勝手に作ったものだってワケだ。

あたしが、生まれて初めて「チェシャ猫」を知ったのは、小学校1年生の時に、このディズニーのアニメの「不思議の国のアリス」を観た時だ。ちっちゃい時から猫が大好きだったあたしは、木の枝の上でニヤニヤと笑いながら、トンチンカンなやり取りでアリスを困らせ、優雅なポーズを取ったりしながら、「この~オレは~摩訶不思議~魔力を持った猫だ~♪ そこら~のヤツラとは~偉さが~違うよ~♪」って歌う不思議な猫を見て、たまらないほど気に入った。体が消えたり現われたりして、最後には笑ってる口だけ残して消えたりして、ホントに不思議だった。そして、何よりも衝撃的だったのが、ピンクと紫のシマシマの模様だった。それまで、猫って言えば、白とか黒とか茶色とかだと思ってたから、ピンクと紫のシマシマだなんて、あまりにも意外だった。

だから、小学5年生か6年生の時に、初めて本を読んで、挿絵の不気味な「チェシャ猫」を見て、あたしは激しいショックを受けた。カラフルで可愛かったそれまでの「チェシャ猫」のイメージが、ガラガラと音を立てて崩れて行った。いくら子供でも、小学校の高学年になれば、本のほうが原作で、アニメはあとから作られたものだってことくらい分かるから、挿絵のペン画の不気味な「チェシャ猫」ことが本物なんだって知って、あたしはホントにショックだった。これは、先にテレビのアニメの「ムーミン」を観て、ムーミンや他のキャラのことを可愛いと思ってたのに、あとから原作の「たのしいムーミン一家」とか「ムーミン谷の仲間たち」とかを読んで、不気味な挿絵を見てショックを受けたのとおんなじだった。


Cn2‥‥そんなワケで、何でも原典にあたってみることをポリシーにしてるあたしだけど、この「チェシャ猫」に関しては、あとから勝手に作られたディズニーのキャラのほうを「本物」として、ムリヤリに認識するようにしてる。やっぱり、幼いころに刷り込まれちゃったイメージって、修正することが難しいし、何よりも、あれほど衝撃的なキャラを否定することなんてできないからだ。それに、現実にはアリエナイザーだと思ってたボーダー猫にも出会えたことだし、ピンクと紫のディズニーの「チェシャ猫」を本物に認定したいと思う。ただ、最初に「ものすごく根本的な問題が発生しちゃった」って書いたけど、「チェシャ猫」が「ニヤニヤしてる猫」って意味なのに対して、あたしが出会った猫は、いつでも「シャー!」とか「フー!」とか威嚇して怒ってるんだよね。つまり、体の模様は似てるのに、名前の意味が正反対なのだ。だから、これから時間をかけて、ニヤニヤ笑ってもらうのはムリだとしても、せめて威嚇だけはやめてもらうように、ジワジワと仲良くなって行こう‥‥なんて思ってたら、昨日、また空き地で会っちゃって、今回はケータイで写真を撮ることにも成功しちゃった今日この頃なのだ♪


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