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2009.03.30

レギュレーションと戦う男たち

う~ん、今シーズンのF1、どうなることか予想もつかなかったけど、今日の開幕戦を観た限りじゃ、意外にもなかなか面白かった! とりあえず、先に結果を書いちゃうので、まだ録画を観てない人は、シューマッハでこの画面を閉じてちゃぶだい!‥‥ってなワケで、午後4時からのテレビしか観てない人は、トヨタのトゥルーリが3位だと思ってるだろうけど、こっちがホントの順位なので、よく見てちゃぶだい。


「オーストラリアGP 決勝結果」

1位 バトン(ブラウン)
2位 バリチェロ(ブラウン)
3位 ハミルトン(マクラーレン)K
4位 グロック(トヨタ)
5位 アロンソ(ルノー)K
6位 ロズベルグ(ウイリアムズ)
7位 ブエミ(トロロッソ)
8位 ボーデ(トロロッソ)
9位 スーティル(フォースインディア)
10位 ハイドフェルド(ザウバー)K
11位 フィジケラ(フォースインディア)
12位 トゥルーリ(トヨタ)
13位 ウェバー(レッドブル)
14位 ベッテル(レッドブル)
15位 クビサ(ザウバー)
16位 ライコネン(フェラーリ)K
R マッサ(フェラーリ)K
R ピケJr(ルノー)K
R 中嶋(ウイリアムズ)
R コバライネン(マクラーレン)K

※チーム名の後の「K」は「KERS搭載車」です。


テレビの放送では、1位のバトンと2位のバリチェロと3位のトゥルーリが表彰台でシャンパンファイトをしたとこで終わったけど、レース後の審議で、レース終盤のセーフティーカー導入中に、トゥルーリがハミルトンを抜いてポジションアップしたってことが「25秒加算」のペナルティーになっちゃって、12位へと転落しちゃって、4位だったハミルトンから12位だったフィジケラまでが、それぞれ1つずつランクアップした今日この頃、トヨタの関係者の皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、予選じゃ6位と8位に入りながら、リアウイングのレギュレーション違反でタイムを取り消しにされて、最後尾からのスタートになり、それでもがんばって3位に入賞したら、こんなイチャモンをつけられてポイント圏外に落とされちゃうなんて、トヨタチームは、派遣切りにあった何千人もの非正規労働者たちの怨念でも憑りついてるんじゃないだろうか? だって、トゥルーリがハミルトンをパスしたのは、もともとはトゥルーリのほうが前を走ってて、セーフティーカー導入時に、トゥルーリがコースアウトしちゃってハミルトンが前に出ちゃったのだ。だから、トゥルーリは、セーフティーカーが入る前の元の順位に戻すために、ハミルトンをパスしたワケだ。

もちろん、一番いけないのはコースアウトしたトゥルーリだけど、「セーフティーカー導入中に前のマシンを抜いちゃいけない」ってルールは、ようするに「順位を変えちゃいけない」って意味なんだから、トゥルーリがコースアウトによって下がった順位を「元に戻すため」に前のマシンを抜いたってことが、ペナルティーに該当するとは思えない。あたしは、トヨタは嫌いだからあんまり力説はしたくないけど、いくら嫌いなチームでも、裁定が理解できない場合には、軽くツッコミを入れたくなる。

で、言うことも言ったので本題に入るけど、今シーズンからのマシンに関するレギュレーションの変更は、大きなとこだと3つ、「空力の大幅制限」と「スリックタイヤ」と「KERS搭載」だ。これらは、すべて、もっとハラハラドキドキするレース展開を目指すために、オーバーテイクを増やすように考えられた変更で、今日の開幕戦を観たあたしの感想としては、何と言っても「KERS(カーズ)」にコーフンした。「KERS」は、「藤原とうふ店」の頭文字D‥‥じゃなくて、「Kinetic Energy Recovery System」の頭文字で、ニポン語だと「運動エネルギー回生システム」って訳されてる。ブレーキを使う時に発生する熱を電気エネルギーか機械式エネルギーとして蓄えといて、それを運動エネルギーとして一気に放出するってシステムだ。

分かりやすく言うと、映画の「マッドマックス」で、メル・ギブソンが車の中のスイッチを入れると、ドバーッて加速するやつ、あんな感じだ。あれはスーパーチャージャーだし、あたしが自分のパンダに付けたいのは「NOS(ナイトラス・オキサイド・システム)」だけど、ここまで野蛮なモノは紳士のスポーツであるF1には付けられないから、エコの観点からも、この、ブレーキの熱をエネルギーとして再利用する「KERS」が使われることになったのだ。

「KERS搭載」は、「空力の大幅制限」や「スリックタイヤ」と違って、まだ義務づけられてはいない。開発にコストが掛かることもあって、「積みたいチームは積んでもいい」ってことなので、まだ海のものとも山のものとも分からないから、ワークスチームを中心にした数台のマシンしか「KERS」を搭載してない。マクラのとこに書いた決勝結果の一覧で、チーム名の後ろに「K」って書いてあるのが「KERS」を搭載してるマシンだ。だから、この一覧を見れば分かるように、ザウバーみたく、1台だけに搭載して様子を見てるチームもある。

‥‥そんなワケで、ニポンでは「ETC」の搭載でパニックが起こってるけど、F1の世界では「KERS」の搭載でプチパニックが起こってるワケだ。今回の順位を見る限りでは、1位と2位のブラウンのマシンは「KERS」を搭載してないし、搭載車で3位に入ったハミルトンにしても、非搭載車のトゥルーリがペナルティーで降格になったからの繰り上げ当選だ。その上、リタイヤした4台のマシンのうち3台が搭載車だったってことも踏まえれば、「ETC」とおんなじで、搭載しても意味がないどころか、搭載するとマイナスになるのかもしれない。「ETC」の場合は、もしも5月に選挙が行われて政権交代が実現したら、民主党は「全国の高速道路をすべて無料にします」って言ってんだから、今回のドタバタでETCを買った人たちは、みんなモトを取る前に「無用の長物」になっちゃうからだ。

ま、そんなことは置いといて、カンジンの「KERS」のほうだけど、搭載車のオンボード映像を観る限りでは、コーナーの立ち上がりとかでギュイーン!って加速してて、なかなかカッコ良かった。だから、このシステムを積むと約35kg重くなるってこととか、1周あたり約6.7秒しか使えないってこととか、いろんなメリットやデメリットを考えた上で、積むか積まないかを選択すべきたろう。せっかく莫大な開発費を掛けて搭載しても、そのトタンに、新たな変態スキャンダルでモズレー会長が失脚して、F1界でも政権交代が実現して、すぐに「KERS禁止」なったりするかもしれないからだ。

とにかく、ジョジョとの対決では、リサリサを人質にするようなヒキョ~者の上に、石仮面で究極の生物へと進化しちゃった「カーズ」だから、ヘタに焦って搭載したりすると、宇宙空間までふっ飛ばされちゃって、二度と地球に戻れなくなっちゃうオソレもある。そしたら、鉱物と生物の中間の生命体になって、永遠に宇宙をさまようしかなくて、死にたいと思っても死ねないから、考えることすらやめるしかなくなっちゃう。

‥‥そんなワケで、まるで、自民党にとっての「西松建設事件を利用した国策捜査」みたいに、「両刃の剣」って感じの「KERS」なので、まだしばらくは様子を見たほうがいいかもしれない。今シーズンから応援することにしたレッドブルにしても、「KERS」の開発中に出火して火事が起こり、有毒ガスが発生して、スタッフが全員、慌てて避難したそうだ。だから、レッドブルは、まだ「KERS」は搭載してなくて、ドライバーがレッドブルを飲んでがんばってるワケだ。だけど、あたし的には、トロロッソからベッテルが移籍して来たし、死ぬほどカッコ悪くなっちゃった今シーズンのマシンの中で、唯一、何とか見られるのが、レッドブルのマシンだから、ナニゲに応援してこうと思ってる。

何しろ、今シーズンからの「空力の大幅制限」は、1983年から1994年まで実施された「フラットボトム」っていう、マシンの底の形状を平らにしなきゃならないレギュレーション以来、25年ぶりの大幅な変更だ。だから、すべてのチームが、イチからマシンを作ったワケで、平たくて幅の広いフロントウイングと、ちっちゃくて幅の狭いリアウイングと、細くてアリクイの顔みたいなノーズとで、F1の歴史上、もっともカッコ悪いマシンが出来上がっちゃったってワケだ。とにかく、1月13日の日記、「F60のダッフン具合」の中で、気持ち悪い生物の「コウガイビル」みたいだって指摘したほど、そりゃあもう気持ち悪い。

Redbull_001だけど、そんな中でも、レッドブルの「RB5」は、細くてダサいノーズをさらに細くしたことと、紺色のボディカラーとの効果で、ワリと近未来的に見える。このマシンをデザインしたのは、エイドリアン・ニューウェイっていう有名なF1エンジニアで、空力のスペシャリストだ。もともとはウイリアムズにいて、それからマクラーレンを経て、現在のレッドブルへ来た人だ。で、すごくマニアックなことを言うと、1994年の第3戦、サンマリノGPで、アイルトン・セナが事故死した時のマシン、ウイリアムズFW16も、このニューウェイがデザインしたマシンなのだ。

1994年は、今回みたいに大幅なレギュレーションの変更があって、特に大きかったのが、それまでの「アクティブサスペンション」や「TSC(トラクション・コントロール・システム)」や「ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)」なんかのハイテク技術が禁止になったことだった。これで、各チームのマシンは前年度までよりグッと安定性が低くなって、開幕前から安全が疑問視されてた。開幕前の走行テストでは、J・J・レートやジャン・アレジがクラッシュして負傷したし、この第3戦では2人も事故死したし、このあとのレースでも、カール・ヴェンドリンガー、ペドロ・ラミー、アンドレア・モンテルミーニなどが、意識不明や両足骨折などの大事故に見舞われ、結局、シーズンの途中でレギュレーションが変更になるっていう異常事態になった。

セナの事故死の原因は、複数の説が挙げられてるけど、コーナーから真っ直ぐにコンクリートウォールに突っ込んでることから、セナ自身のミスは考えられず、マシンに何らかのトラブルが発生したって言われてる。マシンをコントロールできずに突っ込んでることから、ステアリング関係のトラブルが有力視されてるんだけど、このマシンを設計したニューウェイも、当時、ウイリアムズの代表のフランク・ウィリアムズやパトリック・ヘッドと一緒に、イタリア当局からセナを死亡させた過失を問われたのだ。この裁判は、事故から10年後の2005年に、ようやく「関係者に過失はなかった」っていう判決が出て、ニューウェイたちは無罪になったけど、こんなことがあったから、ニューウェイは、自分の直属の上司で、自分をレイトンハウスから引き抜いた恩師でもあるパトリック・ヘッドとの間に亀裂が入っちゃって、ウイリアムズを去ることになった。

だけど、セナの事故死だけじゃなくて、数多くの重大事故が相次ぎ、たくさんの重傷者が出て、結果、シーズン中のレギュレーションを変更するんていう異常事態になったことから考えれば、数々の事故の原因は、この年の「ハイテク禁止」っていうレギュレーションであり、セナを殺したのは、こんな危険なレギュレーションを導入したモズレー会長だったってことになる。少なくとも、多くのF1ファンは、そう思ってるだろう。

‥‥そんなワケで、長々と書いてきちゃったけど、セナの事故死がキッカケになり、ウイリアムズを去ることになった天才エンジニア、エイドリアン・ニューウェイは、それから15年後の今、おなじくモズレー会長が独断で決めたアホなレギュレーションに合わせて、レッドブルのマシン、「RB5」を作り上げた。そして、結果こそ、ウェバーが13位、ベッテルが14位だったけど、ベッテルは、ラスト3周まで、2番手を走ってたのだ。そして、このまま行けば表彰台は間違いないって時に、3番手のザウバーのクビサが、何をトチ狂ったのか、コーナーで突っ込んで来た上に、ベッテルの前に回り込むような形でスピンして、2台とも、ジ・エンド。56周まで走ってたから、2台とも完走扱いにはなったけど、最後の最後にクビサが発狂しなければ、優勝したバトンとともに、ベッテルとクビサが表彰台に上がってた可能性が高かったのだ。ま、そのオカゲで、あたしの大好きな「F1界の釣りバカ日誌」こと、バリチェロが2位に繰り上がったんだけど、あたし的には、レッドブルが2位っていう前代未聞の光景も見てみたかったし、何よりも、「RB5」を手掛けたニューウェイの喜ぶ顔を見てみたかった今日この頃なのだ。


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