設定年齢とイメージ年齢
最近、テレビのCMでもインターネットの広告でも、パチンコの「CR天才バカボン」をチョコチョコと目にする。キャビンアテンダントのお姉さんや、朝丘雪路さんがバカボンのパパに扮してるアレだ。で、今度のバカボンて、「41才の春だから」っていうサブタイトルがついてる。これは、もちろん、赤塚不二夫さんが作詞して、こおろぎ'73が歌ってた「元祖天才バカボン」のエンディング曲、「元祖天才バカボンの春」の中の印象深いフレーズから名づけられたサブタイトルだ。
それで、あたしは、このCMで「41才の春だから」ってセリフを耳にするたびに、何とも言えない複雑な心境になる。それは、子供のころ、あたしの父さんや母さんよりもずっと年上の「おじさん」だと思ってたバカボンのパパが、今は、あたしとたった5才しか違わない年齢だってことを再確認しちゃうからだ。さらに言えば、あのころのあたしとおんなじくらいの子供から見られたら、あたしもバカボンのパパも似たような年齢ってふうに見られるんだと思う。
これは、子供のころから、ずっと「おばさん」だと思ってたサザエさんが、あたしが大人になってから、実は「24才」だったってことを知った時にも、おんなじ心境になった。それも、サザエさんの場合は、「11月22日生まれの24才」っていう設定で、あたしとおんなじお誕生日だったのだ。だから、ヨケイに自分と比べちゃって、ものすごく複雑だった。こんなこと言っちゃ申し訳ないけど、サザエさんて昔のマンガだから、あのヘアスタイルやファッションを始めとして、全体的に今の流行とはカケ離れてて、そのぶん、設定年齢よりも上に見えちゃう。だから、あたしが25才になった時には、「とうとうサザエさんよりも年上になっちゃったよ‥‥」って、ずいぶんトホホな気分になった今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、アニメの中のキャラたちは、特別な例を除いて、基本的には誰も年をとらないから、カツオやワカメは何十年も小学校に通ってて、永遠に卒業することはない。だから、あたしが小学1年生や2年生の時には、テレビで「サザエさん」を観ると、5年生のカツオのことを「うんと年上のお兄さん」だと思ってたし、3年生のワカメですら「お姉さん」だって思ってた。そして、サザエさんやマスオさんは「おばさん」や「おじさん」に見えたし、波平さんやフネさんは「おじいさん」や「おばあさん」に見えた。
だけど、いつまでも年をとらないアニメのキャラとは違って、あたしは毎年ひとつずつ年をとってくワケだから、自分が中学生になれば、今まで年上として見てたカツオやワカメを年下として見るようになる。こうした瞬間に、ふと「自分が年をとった」ってことを再確認しちゃうんだけど、やっぱり、その衝撃が一番大きかったのが、サザエさんの年を超えた時だった。
男女で感覚の差もあると思うけど、少なくとも女性の場合は「異性からチヤホヤしてもらえる旬の年齢」が男性よりも低いから、25才を超えちゃえば、あとは、アッと言う間に年をとってく。まさしく、「Like a rolling stone」って感じで、ハッと気づけば三十路に突入してるし、ハッと気づけば35才のヘアピンカーブをコーナリングしちゃってる。そして、アッと言う間に36才になっちゃったあたしは、すでにサザエさんよりもひとまわりも年上になっちゃったってだけでも複雑な心境なのに、ここに来て、「バカボンのパパとそれほど変わらない年」だなんてことに気づいちゃったもんだから、サスガに「これでいいのだ!」とは言えない気分なのだ。
‥‥そんなワケで、サザエさんが24才なら、「ヤッターマン」のドロンジョ様も24才ってワケで、高校時代のアダ名が「ドロンジョ様」だったあたしとしては、高校時代に「ずっと年上」って思ってたドロンジョ様にも、すでにひとまわりもの差をつけちゃったってワケで、これまた複雑な心境だ。ちなみに、タイムボカンシリーズの悪役トリオの女ボスの設定年齢は、最初の「タイムボカン」のマージョ様が30才、「ヤッターマン」のドロンジョ様が24才、「ゼンダマン」のムージョ様も24才、「オタスケマン」のアターシャ様が33才、「ヤットデタマン」のミレンジョ姫が27才、「イッパツマン」のムンムン様が26才、「イタダキマン」のヤンヤン様が25才、「きらめきマン」のルージュ様が27才で、ドロンジョ様はムージョ様と並んで最年少なのだ。
細かいことを言うと、最後のルージュ様だけは、それまでのセクシー路線とは違ったキャラなので、イッショクタにすべきじゃないんだけど、一応、小原乃梨子さんが声をやってるキャラってことで加えてみた。で、こうしてタイムボカンシリーズの女ボスの年齢をあらためて書き出してみると、最年長のアターシャ様でさえ33才で、あたしよりも年下だってワケで、これも凹むよね‥‥つーか、今やってるらしい実写版の「ヤッターマン」、何で深田恭子ちゃんがドロンジョ様なの? あたしは、「ヤッターマン」も大好きだし、深田恭子ちゃんも大好きだけど、サスガに、これほど最悪なキャスティングの映画は、ぜんぜん観る気が起こんない。
だって、深田恭子ちゃんにドロンジョ様をやらせるなんて、あまりにもイメージがカケ離れ過ぎてるからだ。まず、キャラがぜんぜん違い過ぎる上に、体型もぜんぜん違い過ぎる。お魚に喩えるなら、ドロンジョ様の体は「アユ」で、恭子ちゃんの体は「マグロ」だ。まったく違う。その上、ドロンジョ様のスタイルの最大のポイントは、何と言ってもウエストのくびれなんだから、最低でも熊田曜子ちゃんくらいのウエストの人をキャスティングしなかったら、原作のイメージが崩れちゃう。
それでも、あたしは、もしかしたら恭子ちゃが、がんばって演技力でドロンジョ様になりきってるのかな?って思ったんだけど、こないだ、「堂本兄弟」でドロンジョ様のお披露目をしたのを見て、あまりにも「深田恭子そのまんま」だったから、全身が脱力しちゃった。アレは、あまりにも酷すぎる。言うなれば、昨日の日記の続きみたくなっちゃうけど、タヌキにキツネの役をやらせるみたいなもんだ。
恭子ちゃんは可愛いし、独特の世界観を持ってるから、映画の「下妻物語」やドラマの「富豪刑事」みたく、恭子ちゃんのイメージを活かせる役にハマれば、誰にもマネできない素晴らしい作品を生み出すけど、自分の世界観が強すぎるから、ハマらない役は最悪だ。そして、その最たるものが、今回のドロンジョ様だろう。だから、「ヤッターマン」には興味がなくて、単に恭子ちゃんのファンてだけの人なら、この映画を観てもそれなりに楽しめると思うけど、あたしみたいに「ヤッターマン」も大好きな人には、ちょっと厳しすぎると思う。
ちょうど、今、「ドラゴンボール」も実写化されてるから、この2作をアレコレと比較することも多いみたいだけど、「ドラゴンボール」のほうは、マンガやアニメの「ドラゴンボール」を下敷きにして作られた「別モノの作品」として、割り切って楽しめばいいワケで、何も問題はない。「原作のイメージが壊れた」とか言うこと自体がバカバカしくなるほど原作を無視してるんだから、最初から別モノとして観ればいいワケだ。でも、「ヤッターマン」のほうは、原作に忠実に作られてるぶん、メインキャラのドロンジョ様がイメージぶち壊しのキャスティングだったってことが、より目立っちゃってるんだと思う。このアホなキャスティングのセイで、映画そのものが台無しになったってだけじゃなくて、恭子ちゃんにもかわいそうな結果になっちゃったと思う。どんなに演技力のあるタヌキだって、やっぱりキツネの役をやらせるのはムリがあるからだ。
‥‥そんなワケで、あたしの感覚だと、実写版のドロンジョ様をやらせるなら、年齢的にリトル厳しいけど、やっぱり夏木マリさんだと思う。夏木マリさんほど、ドロンジョ様のイメージそのものの女優さんは他にいないだろう。そして、ちょっと譲っても、せめて杉本彩さんだろう。さらに言えば、イメージぶち壊しの深田恭子ちゃんにやらせるくらいなら、イッソのこと、黒柳徹子さんでもいいと思う。原作のイメージを壊さないって点だけで言えば、恭子ちゃんよりは黒柳徹子さんのほうが遥かにマシだろう。
他にも、あんがいテンションの高い役も巧くこなす米倉涼子ちゃんでも行けそうだし、「炎神戦隊ゴーオンジャー」のケガレシア役で新たな才能を開花してくれた及川奈央ちゃんでもいいと思う。奈央ちゃんの場合は、体がすごく細くて、くびれのラインが美しいから、すごく衣装映えすると思う。さらには、もっとアダルト方面に目を向ければ、紅音ほたるちゃんを始めとして、ドロンジョ様にピッタリのイメージの女の子はいっぱいいる。
さっきも書いたように、ドロンジョ様は24才って設定だけど、ドロンジョ様の声をやってる小原乃梨子さんは、ずっと年上だ。30年前の「ヤッターマン」の時でも、小原乃梨子さんは42才だったし、今の「ヤッターマン」では、もう70才を超えてる。それでも、「タイムボカン」のマージョ様から「イタダキマン」のヤンヤン様まで、このシリーズの悪役トリオのセクシーな女ボスと言えば、何と言っても小原乃梨子さんのアフレコによるイメージが強い。つまり、これらの女ボスたちに、常に共通のイメージを持たせて来たのは、小原乃梨子さんの魅力ってことになる。
そう考えると、ドロンジョ様の設定年齢だけを重視してキャスティングするよりも、ドロンジョ様のキャラを不動のものにした小原乃梨子さんのアフレコのイメージこそを重視したキャスティングのほうがいいってことになる。だから、あたしは、ドロンジョ様の設定年齢に近い26才の深田恭子ちゃんよりも、2倍以上の56才だけど、夏木マリさんのほうが絶対に良かったと思う。夏木マリさんは、今も十分すぎるほどセクシーだし、斎藤ノブさんと結婚してフェロモン出しまくりだし、声の質感やスタイルもドロンジョ様にピッタリだし、「千と千尋の神隠し」では湯婆婆のアフレコをやって新たな魅力をみせてくれたし、まさに最適だったと思う。
たとえば、「エヴァンゲリオン」の綾波レイや惣流アスカは、14才って設定なんだから、とても大人の男性が恋愛対象にする年齢じゃないし、現実の世界なら、誰が見ても「子供」の年齢だ。だけど、もしも実写版の「エヴァンゲリオン」を作るとした場合に、綾波レイや惣流アスカの役を誰にやらせるかってことになると、ほとんどの人が、10代後半から20代の女性タレントや女優の名前を挙げる。逆に、ホントに14才の女子中学生を集めてオーディションでもして選んだら、原作のファンが納得できるような作品は作れないだろう。原作のキャラのイメージを崩さないようにするためには、設定年齢を無視したキャスティングが必要だってことだ。
そう言えば、前に「創聖のアクエリオン」のパチンコを打った時に、誰がどう見ても20代にしか見えない主人公のアポロって人が、大当たりラウンド中のキャラ紹介で13才だったってことを知って、あたしはイスからズリ落ちるほど呆れ返っちゃったことがある。芸能人に喩えると、「池袋ウエストゲートパーク」に出てたころの長瀬智也みたいな外見なのに、それが13才だなんて、あまりにもメチャクチャだ。そして、「創聖のアクエリオン」は、他のキャラも、ほとんどが10代前半の設定になってるのに、見た目はみんな大人にしか見えない。だから、もしも「創聖のアクエリオン」を実写版で作るとしたら、設定年齢に合わせてキャスティングしたら、原作とはぜんぜん違うイメージになっちゃうだろうし、原作のイメージを壊さないようにするのなら、大人の役者に子供の役をやらせるしかないだろう。
‥‥そんなワケで、深田恭子ちゃんのドロンジョ様とは正反対に、あまりにも原作のイメージそのもののボヤッキーとトンズラーは、25才って設定のボヤッキーをやってるのが48才の生瀬勝久さんだし、30才って設定のトンズラーをやってるのが36才のケンドーコバヤシさんだ。まあ、ケンドーコバヤシさんの場合は、31才の時に「パッチギ!」で高校生の役もやってるくらいだから、実年齢よりも若く見られるんだと思うけど、ボヤッキー役の生瀬勝久さんの場合は、キャラの設定年齢の2倍近い年齢だ。バカボンのパパより7才も年上のおじさんが、25才の役をやってるってワケだ。
それでも、あんなに似てて違和感を感じないのは、衣装やメークや生瀬勝久さんの演技力もさることながら、何よりのポイントは、原作のボヤッキーが「年齢不詳」のイメージだからだ。25才ってのは、あくまでも資料上の設定であって、アニメを観てる子供たちは、みんな「おじさん」だと思って観てるハズだ。これは、あたしが子供のころに、24才のサザエさんのことを「おばさん」だと思って観てたのとおんなじことで、ここに、アニメのキャラの「設定年齢」と、観てる人たちが感じてる「イメージ上の年齢」との誤差があるってワケだ。だから、24才って設定のドロンジョ様にしても、小原乃梨子さんのアフレコの素晴らしさによって、とても24才の小娘とは思えないような、もっと年上の女性の妖艶さを醸し出してるってワケだ。
それなのに、いくら可愛くても、まったくイメージが正反対な深田恭子ちゃんを連れて来て、似たような衣装だけ着せてみたって、あのお色気が出せるワケがない。ここは、やっぱり、酸いも甘いも噛み分けた大人の女性にやらせなかったら、わざわざ実写版なんかにした意味がない。逆に、長い歴史と数えきれないほどのファンを持つ原作に対して失礼だ。原作をリスペクトする気持ちがミジンでもあるのなら、キャラの「設定年齢」よりも、「イメージ上の年齢」のほうを重視したキャスティングをすべきだったのだ。
‥‥そんなワケで、あたしは、パチンコの「CR天才バカボン~41才の春だから~」のCMのセイで、バカボンのパパが41才だったってことを思い出しちゃって、自分がバカボンのパパの年齢に近づきつつあるってことに気づいちゃったワケだ。そして、あと5年したら、バカボンのパパよりも年上になっちゃうワケで、これはあまりにも衝撃的な事実ってワケだ。だけど、ここまで繰り返して来たように、年齢ってものには、実際の年齢である「設定年齢」の他に、周りから何才くらいに見られてるかっていう「イメージ上の年齢」ってものがあるワケだ。そして、どっちが重要なのかって言えば、「設定年齢」よりも「イメージ上の年齢」なのだ。そう考えてみると、あたしの大好きなクロマニヨンズの甲本ヒロトさんは、45才でパンクロッカーをやってるし、横浜ベイスターズの工藤公康投手も、45才で現役だ。あたしは、サッカーのことはよく分かんないけど、42才の三浦知良選手が、PKを決めて、Jリーグの最年長得点記録を更新したそうだ。これらの人たちは、みんなバカボンのパパよりも年上だけど、「イメージ上の年齢」は、みんな若く見える。それは、外見だけじゃなくて、これらの人たちが、みんな現役でがんばってるからだと思う。それに、なんたって、ドロンジョ様の声をやってる小原乃梨子さんが、70才を超えても、あんなにセクシーでステキなアフレコを続けてるんだから、あたしも、バカボンのパパの年齢を超えることを恐れずに、いつまでも現役でがんばってこうと思う今日この頃なのだ。
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