ダブルデッカーな日々
世の中から「猿岩石の片方」としか認識されてなかった有吉弘行は、周りのタレントに「おしゃべりクソ野郎」とか「出たがり豚野郎」とかのアダ名をつけて知名度を上げたし、ナンミョ~亭の泰葉は、小朝師匠のことを「金髪豚野郎」って呼んでプチブレイクした。だけど、自民党の鳩山邦夫は、草なぎ容疑者のことを「最低の人間」て言って、ブーイングの嵐を巻き起こしちゃった。おんなじ悪口でも、シャレで済むレベル、お笑いのネタとして通用するレベルもあれば、反感を買っちゃうレベルもあるワケで、悪口を言う場合には、この辺のサジ加減が難しいワケだ。
それにしても、自分が飲み過ぎたことをちゃんと認めて謝罪した草なぎ容疑者が「最低の人間」だって言うんなら、あれほどベロベロに酔っぱらってたのに「風邪薬を飲んだだけ」だの「疲れが溜まってた」だのって大ウソをつきまくり、二重、三重に恥の上塗りをした自民党の中川昭一は、いったいどんな人間になるのか、鳩山邦夫に教えてもらいたいもんだ。サスガ、友達の友達にアルカイダがいるオヤジは、口をひらくたびにテロ並みのトンデモ発言が飛び出しちゃうワケで、ホントに脳みそが入ってるかどうか、頭を2つに割って確認してみたくなる。ま、あんな「潰れた人形焼き」みたいな顔をしてるんだから、脳みその代わりに「アンコ」が入ってそうだけど。
で、先週の17日、マレーシアGPの予選が始まった時のこと、ルノーのフラビオ・ブリアトーレは、開幕戦でワンツーを決めたブラウンのバトンとバリチェロに対して、有吉弘行をホーフツとさせる激しいアダ名で侮辱した。優勝したバトンのことを「道端の標識」、バリチェロのことを「引退直前のドライバー」って言ったのだ。ま、バリチェロが「引退直前」てのは、ファンのあたしも宇奈月温泉だし、バトンに対しての「道端の標識」ってのも、「失礼なんじゃない?」って感じが50%で、「言い得て妙」って感じが50%だ。だから、あたしは、それほどムカついてはいないんだけど、やっぱり、ファンであるあたしがバリチェロの引退の可能性を口にするのと、ヨソのチームのオヤジが悪意を持って言うのとじゃ大きく意味が違う。だから、あたしは、仕返しとして、フラビオ・ブリアトーレに「西洋みのもんた」ってアダ名をつけてやった今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?(笑)
‥‥そんなワケで、フラビオ・ブリアトーレのことを知らなくて、あたしのつけたアダ名で爆笑できなかった人は、今すぐに「フラビオ・ブリアトーレ」で画像検索してもらうとして、何でブリアトーレがこんな悪口を言ったのかっていうと、今シーズン、ブラウンとトヨタとウイリアムズが採用してる「ダブルデッカーディフューザー」がOKになっちゃったからだ。「ディフューザー」ってのは、直訳すると「拡散板」てことで、マシンの後部につけてダウンフォースを得るためのエアロパーツだ。それが、「ダブルデッカー」、つまり「2階建て」になってるワケだ。
開幕戦から、この3チームは成績がいいし、逆に、フェラーリ、マクラーレン、ルノーっていう去年までのトップチームは、ぜんぜんパッとしない。それで、ブリアトーレを始めとした「負け組」の皆さんが、「あいつらの使ってる2階建てのディフューザーはレギュレーション違反じゃないのか?」ってFIAに訴えてたんだけど、FIAは「問題なし」って答えたのだ。それで、ブチ切れちゃったブリアトーレは、イタリアの「ガゼッタ・デロ・スポルト紙」のインタビューで、こんなことをノタマッちゃったのだ。
「私のチームのルノーにも、フェラーリやマクラーレンにもワールドチャンプがいるのに、今シーズンのチャンピオンシップは、ブラウンの引退直前のドライバーと道端の標識のようなドライバーがタイトルを争ってる」
ちなみに、「道端の標識」ってのは「きっこ訳」で、ブリアトーレは、実際には「paracarro(パラカロ)」って言ってる。これは、道路の脇に何マイルおきかに立てられてる石柱のことで、距離を示す「マイル標識」って感じのものだ。だけど、「道路脇のマイル標識」なんて訳しても分かりずらいから、あたしは、最初は「路肩の標識」って訳した。だけど、バトンが道端ジェシカとラブラブだってことを思い出したから、「道端ジェシカに対して股間の石柱を立ててる男」っていう下ネタも匂わせつつ、「道端の標識」って訳にしてみたワケだ。さらに、ちなみに、スペルは違うけど、ギリシャ語だと「パラカロ」ってのは「いらっしゃい」とか「どうも」とか「どういたしまして」とかって意味の日用語になるから、ぜんぜん意味が違って来る‥‥とかプチ情報を織り込みつつも、ブリアトーレは、こんなふうに続けてる。
「このまま行けば、ダブルデッカーディフューザーを使ってるチームだけで優勝争いをすることになってしまう。ブラウンのバトンとウイリアムズの中嶋がチャンピオンシップ争いをするようなことになったら、F1のファンは誰もテレビを観なくなり、他の番組にチャンネルを替えるかラジオを聴くだろう」
サスガ、「西洋みのもんた」、なかなかの毒舌だけど、これに対して、「パラカロ」って言われちゃったバトンはと言えば、それなりに紳士的に反論してる。
「ブリアトーレは完全にキレちゃってるみたいだね。彼は自分が一番じゃないと気が済まない男なんだよ。どこのチームであれ、その時にトップに立ってるチームに対してケチをつけるんだ。僕のことを悪く言ったそうだけど、今シーズン、彼は僕と契約しようとしたことを忘れたのかね?僕らのマシンが速いのは、スタッフが必死に努力した結果であり、自分のチームのマシンが勝てないからって、僕らに対して文句を言うのはスジ違いだよ」
‥‥そんなワケで、今シーズンの開幕戦で、ブラウンのバトンとバリチェロがワンツーを決めたのは、ホンダが去年1年のレースを捨てて、今シーズンのマシンの開発に力を注いで来たからだ。さらに言えば、この「ダブルデッカーディフューザー」ってのは、資金不足からF1を撤退したスーパーアグリの空力デザイナー、ベン・ウッドが考案したもので、ベン・ウッドと言えば、もともとはトロロッソの前身のミナルディーにいたデザイナーだ。それで、スーパーアグリの撤退が決まり、このアイデアがホンダチームに受け継がれて、そのホンダも撤退することになって、今のブラウンに受け継がれたってワケだ。
ま、ホンダの名前こそ消えちゃったけど、ホンダは、2年間チームを牽引して来てくれたロス・ブラウンに、たったの1ポンド(約147円)でチームを売却した上に、約2億ドル(約196億円)に相当するファクトリーを始めとしたすべての資産をプレゼントし、さらには、約4800万ドル(約47億円)もの負債を肩代わりしたんだから、これは、「自分たちの意志を継いで欲しい」ってことだろう。普通にチームを解散してれば、固定資産を売却して負債を相殺することもできたのに、あえて金銭的に厳しい道を選んでも、自分たちの夢をロス・ブラウンへ手渡したのだ。
そして、「人生~楽ありゃ~苦もあるさ~♪」って水戸黄門の歌みたいに歩んで来たチームは、「ブラウンGP」として新装開店して、それまで関わって来た多くの人たちの夢を乗せて走りだした「BGP001」が開幕戦でワンツーを決めて、「涙のあとには~虹も出る~♪」ってことになったのだ。だけど、この結果は、皮肉なことにも、ホンダがF1から撤退して、メルセデスの強力なエンジンを得たことが最大の勝因なんだから、ホンダ的にはビミョ~なとこだろう。
でも、あたしなんかの頼りないフォローで申し訳ないけど、メルセデスのエンジンを積んでるのは、何もブラウンだけじゃない。フォースインディアだってメルセデスのエンジンだし、何と言っても、メルセデスのワークスって言っても過言じゃないマクラーレンがいる。それなのに、ダントツの速さを誇ってるのがブラウンなんだから、これは、スーパーアグリのベン・ウッドが考案した「ダブルデッカーディフューザー」によるダウンフォースのオカゲ、つまりは、スーパーアグリの亡霊やホンダの守護霊がブラウンのマシンを上から押さえつけてる力による勝利ってことになる‥‥って、「らせつの花」の日向羅雪に似てるあたしが言ってんだから間違いない。
ま、メルセデスのエンジンに頼ってるっていう皮肉な一面がありつつも、去年1年を捨ててまで開発したマシンが結果を出したってことは、ロス・ブラウンにとっちゃ激しく嬉しいワケで、これは、今をさかのぼること15年前にも、おんなじことがあった。当時、ベネトンチームに在籍してたロス・ブラウンは、売り出し中のシューマッハ兄をワールドチャンプにするために、1993年のレースを捨てて翌年のマシンの開発に専念して、ミゴトに優勝させたんだよね。そう言えば、この時も、ホンダがF1から撤退して、ベネトンのマシンは、ホンダのエンジンからフォードのエンジンに変わったんだよね。てことは、ホンダのエンジンは鬼門なのか?‥‥つーか、ジョーダンからシューマッハ兄を引き抜いて来たのも、天才デザイナー、ジョン・バーナードを引き抜いて来て、当時のベネトンのマシンを設計させたのも、みんなフラビオ・ブリアトーレじゃん(笑)
なんて因果なんだろう? 15年前に、おんなじチームで協力してシューマッハ兄っていうスーパースターを生み出したフラビオ・ブリアトーレとロス・ブラウンなのに、今は、そのロス・ブラウンのチームのドライバーのことをブリアトーレが「道端の標識」って罵ってるんだから、世の中は広いんだか狭いんだか分かんない。ちなみに、シューマッハ兄とロス・ブラウンは、このあとフェラーリに移籍して、ブリアトーレは、ナンダカンダで、ルノーでアロンソをワールドチャンプにしたんだから、やっぱり、「西洋みのもんた」にはかなわない。
‥‥そんなワケで、話はクルリンパと戻って、ブリアトーレがキレちゃってる「ダブルデッカーディフューザー」だけど、F1の空力パーツって、レギュレーションによって、それぞれ縦と横と高さが細かく決められてる。だけど、このレギュレーションの文章の「●●から何mm」の「●●」の部分の解釈によって、ビミョ~に違って来る場合がある。それで、ホンダやトヨタやウイリアムズは、フェラーリやマクラーレンやルノーよりも、高さを25mmほど多く解釈して、その数値でディフューザーを開発した。
そしたら、わずか25mmの違いなのに、これは「高さ」のことだから、面積にすればそれなりに大きくなるワケで、ダウンフォースは15~20%も大きくなる。その結果、ブラウンのマシンが開幕戦で勝ったワケだし、今日のバーレーンGPの予選ではトヨタのマシンがフロントローを独占したワケだ。そして、前回の中国GPでは、「ダブルデッカーディフューザー」こそ採用してないけど、どのチームのマシンよりも空力に優れてるボディのレッドブルが勝ったんだから、今シーズンは、空力が勝敗を分ける大きなカギになってるってワケだ。
で、何度も何度も「ダブルデッカーディフューザー」って書いて来たのに今さらだけど、ブラウンのディフューザーって、ダブルデッカーって言うよりも、「U字型ディフューザー」って感じなんだよね。ま、細かいことはいいんだけど、この「ダブルデッカーディフューザー」を「非合法だ!」って騒いでるブリアトーレたちって、「KERS」に対してはどう思ってんだろう? 「ダブルデッカーディフューザー」に対して騒いでるフェラーリやマクラーレンやルノーは、ボタンを押せば爆発的に加速する「KERS」を積んでるワケで、今までのテクニカルコースはともかくとして、ホームストレートの他にバックストレートがあるようなコースになれば、「KERS」を積んでるマシンのほうが絶対的に有利になる。非搭載のマシンが空力を駆使してコーナーで抜いても、すぐにストレートで抜き返されちゃうんだから、こっちのほうがヒキョ~な気がする。
とにかく、「ダブルデッカーディフューザー」をOKだとする正式な判定が出たんだから、シーズン中のテストが認められてない以上、フェラーリやマクラーレンやルノーにとっては、今年は厳しいシーズンになるワケで、だからこそ、ブリアトーレがキレちゃったんだろう。でも、あたし的には、ブラウン、トヨタ、ウイリアムズの「ダブルデッカーディフューザー軍団」と、エイドリアン・ニューウェイによるレッドブルの「RB5」を駆るベッテルとウェバーとの空力戦てワケで、ものすごく楽しめる。ブリアトーレが言うみたいに、チャンネルを替えたりラジオを聴いたりする可能性はゼロだ。
明日のバーレーンGPの決勝だって、トゥルーリとグロックのトヨタの2台がフロントローで、続く3番グリッドがレッドブルのベッテル、そして、ブラウンのバトン、マクラーレンのハミルトン、ブラウンのバリチェロって続いてるんだから、これほどワクワクするレースはない‥‥なんて言ってたら、メル友の石川喬司先生からメールが届き、作家のJ.G.バラード氏が亡くなったことについて、30年ほど前にイギリスでバラード氏と会った時の思い出が綴られてた。そして、その中に、こんな一節があった。
そのあと、通訳兼カメラマンのF氏が「イギリスには美味いものがありませんが、これだけはお勧めできます」とダブルデッカーというハンバーグをご馳走してくれましたが、その味たるや、当時のフランスのスパイ小説の主人公がイギリスで飲まず食わずの大活躍を終え、現地の知人から「女房が食事の用意をしてあるから」と誘われ、大慌てでお腹を抑え、「いや、残念ですがさっき食べたばかりなので」と腹ペコで飛行場に逃げ出すシーンを連想させるものでした。
‥‥そんなワケで、F1マシンの空力パーツとしては、素晴らしいダウンフォースを生み出してくれる「ダブルデッカー」だけど、イギリスのハンバーガーの「ダブルデッカー」は、どんなに腹ペコでも、お腹に両手でダウンフォースを与えながら逃げ出したくなるほどの味だったってワケだ。やっぱり、狂牛病でオナジミのイギリスに行ったら、ハンバーガーの「ダブルデッカー」は遠慮しといて、2階建てのバスの「ダブルデッカー」に乗るだけにしといたほうが良さそうだと思った今日この頃なのだ(笑)
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