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2009.06.22

濡れ衣を着せられた人たち

高知の白バイ事故しかり、御殿場事件しかり、警察と検察がグルになった悪質極まりない「犯人デッチアゲ」は今も当たり前のように繰り返されてるけど、こうした冤罪事件による悲劇の1つとして、無実の罪で17年半も刑務所に服役させられ、ご両親の死に目にも会えなかった、足利事件の菅家利和さんのケースがある。新たなDNA鑑定の結果、無実が証明され、6月4日に釈放された菅家さんは、釈放された翌日から、これまで二人三脚でがんばって来た弁護士の佐藤博史さんと一緒に、各局のテレビに出まくった。

釈放された翌日、日本テレビの「情報ライブ ミヤネ屋」に中継で出演した菅家さんは、17年半もの刑務所生活の重みがまったく分かってない宮根誠司から、軽々しく「今度一緒に酒でも飲みましょう!」と言われて、困惑した表情で「私は酒は飲めないのです」と答えていた。そして、「私はコーヒーが好きなんです」と言って、中継場所に用意された17年半ぶりのコーヒーをしみじみと味わうように飲んでいた。

この番組を見た人もいると思うし、別の番組で菅家さんのことを見た人も多いと思うけど、誰もが分かるように、菅家さんはクチベタだ。クチヘタで、人がよくて、気が弱くて、人の話をさえぎってでも「俺が!俺が!」と前に出て来るような人種とは正反対の謙虚な人だ。だから、この17年半、自分がどれほどつらい思いをしたのかも、自分から進んでは話さない。そのため、こうしたテレビ番組でしか菅家さんのことを見てない人たちは、「ああ、17年半も刑務所に入れられて、自由を奪われた生活をさせられてたなんて、ホントに気の毒だな」って思った程度だろう。

実際、あたしもそうだった。刑務所に行ったことのないあたしは、タマに放送されるテレビの特番での刑務所の様子しか知らなかったから、服役してる人たちは、厳しい監視下に置かれて、自由のない生活をしてるもんだと思い込んでた。だから、菅家さんも、そうした状況に17年半も置かれてたんだと思って、多くの人たちとおんなじに、「気の毒だな」って思った。だけど、こうしたテレビの特番てのは、刑務所の「いい部分」だけを見せるためのヤラセ番組であって、実際の刑務所では、あまりにも酷いことが公然と行なわれてるってことを知った今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、あたしの大好きな「しょこたん」こと江川紹子さんが、オフィシャルサイトの「Egawa Shoko Journal」で、13日と16日に分けて、今回の足利事件についてのエントリーをアップしてくださった。それで、さっそく読みに行ったあたしは、紹子さんによる菅家さんのインタビューを読んで、愕然とした。そこには、菅家さんが決してテレビでは語らなかった、刑務所内でのあまりにも酷い暴力の数々について、ハッキリと書かれてたからだ。

無実の罪で刑務所へ送られた菅家さんは、その日から、同室の「元暴走族」だという無期懲役の男から、新入りに対する恒例だというイジメに遭う。菅家さんは、何度も殴られ、肋骨を2本も折られた上に、水を入れた洗面器を顔を押しつけられ、殺されかけたそうだ。それでも、こんなことを刑務官に訴えたら、ホントに殺されちゃうから、ずっとガマンし続けたそうだ。さらには、真冬の12月の夜に、全裸にされ、そのまま朝まで便所に入れられたり、便器の横に置かれてるタワシの容器に溜まってる小便を飲めと命令されたり、しまいにはウンコを食えとまで言われたそうだ。

詳しくは、紹子さんのインタビューを読んでもらうとして、こうした事実を知ると、菅家さんの17年半が、単に「自由を奪われた時間」なんかじゃないってことが分かる。自らが犯した犯罪を反省するための施設でありながら、刑務所の中には、「重い犯罪を犯したほうが偉い」っていう小学生レベルの本末転倒なシキタリがある。そして、まだまだずっと中にいなきゃならない長期刑の服役囚は、こうして新入りをイジメたり、気の弱そうな人を見つけちゃストレス発散のために暴行し続けてるのだ。

何の罪も犯してない無実の人間が、警察と検察と裁判官によって犯罪者に仕立て上げられ、こんなキチガイみたいなヤツがいる牢屋の中へ叩き込まれ、来る日も来る日も殴る蹴るの暴力を受けて来た。こんな17年半に、あなたは耐えられるだろうか。紹子さんのエントリーによると、再審で菅家さんの無罪が確定すれば、菅家さんには「1日あたり1000円以上12500円以下」の刑事補償が支払われるそうで、菅家さんの場合は最高額の「12500円」になる可能性が高いという。

だけど、すべての自由を奪われた上に、唯一の嗜好品であるコーヒーを飲むことも許されず、ご両親の死に目にも会えず、挙句の果てには、毎日、拷問のような暴行を受け続けて来たのだ。もちろん刑務官は見て見ぬふり。これで「日当12500円」と言われて、自分から進んで就職する人がいるだろうか。

これは、朝の9時から夕方の5時まで働いて、あとは自宅でのんびりできる仕事とは違う。昼間は刑務官から厳しく監視され、夜は同室のキチガイから暴行され、24時間ずっと苦しみ続けて来たことに対する日当なのだ。つまり、時給にすれば、たったの520円だ。紹子さんは、「刑事補償は失われた財産を補填するという趣旨で行われるもので、警察や検察、裁判所などの誤った権力行使に対する償いとは異なる。失われた17年半を取り戻すのは不可能でも、せめて一定の賠償金を支払って、償いの意思を示してもらいたい。」って書いてるけど、ホントにその通りだと思う。

‥‥そんなワケで、もう1つ、紹子さんが指摘してることが、菅家さんに対する謝罪の問題だ。栃木県警の石川正一郎本部長は、17日、宇都宮市の県警本部で菅家さんと面会して、菅家さんに直接謝罪した。まるで演劇のような節回しで、「これでもか!」ってほど感情を込めたセリフで、「菅家さん‥‥長い間‥‥つらい思いをさせましたことを‥‥心からお詫び申し上げます‥‥」って言って、深々と頭を下げた。もちろん、テレビカメラが回ってたからだろう。

そして、菅家さんはと言えば、17年半も人間扱いされて来なかったから、制服を着た立派に見える人から謝罪されたことで、逆に恐縮しちゃって、「ありがたいお言葉、本当にありがとうございます」ってお礼を言ってた。普通なら「ふざけんな!バカ野郎!」って怒鳴りつけてもいいくらいの場面なのに、こんなとこにも菅家さんの人のよさが表われてた。

だけど、この石川正一郎って人は、あくまでも「今の本部長」であって、菅家さんが濡れ衣を着せられた17年前の本部長じゃないんだよね。そして、菅家さんを刑務所へ叩き込んだ当時の本部長を始め、捜査を担当した刑事たちは、誰1人として謝罪してないんだよね。その中でも最悪なのは、菅家さんを犯人に仕立て上げるために陣頭指揮をとってた当時の刑事部長、森下昭雄の対応だ。森下昭雄は、去年、菅家さんの再審請求が棄却された時に、自分のブログに「最善の捜査を尽くしたもので、誤りでないことを再確認していただいた」って感想を書いてた。で、今回、菅家さんが釈放されたことを受けて、多くの人たちが「謝罪すべきだ」「人の人生をメチャクチャにした責任をとれ」ってコメントして、このブログが炎上した。そしたら、森下昭雄は、このブログを削除した上で、マスコミの取材に対して、こうノタマッたのだ。


「(釈放されたと言っても)無罪が確定したわけではない。問題はこれからだ。我々は法律に基づいて妥当な捜査をし、本人の自供も得ている。今でも(菅家さんが)やったと信じている」


人のいい菅家さんは、事件とは無関係な現在の本部長が謝罪しただけで恐縮しちゃってるけど、その菅家さんを犯人に仕立て上げて人生をメチャクチャにした元凶である当事者たちは、謝罪するどころか、全面対決の姿勢を示してるのだ。それなら、今後の裁判で菅家さんの無罪が確定したら、森下昭雄を始めとした当事者たちは、いったいどうするつもりなんだろう。その時は、全国民の前に出て来て、菅家さんに対して土下座でもしてくれるんだろうか。もちろん、菅家さんに謝罪すべきなのは、当時の刑事たちだけじゃない。検察も、裁判官も、全員が横一列に並んで、土下座して謝罪すべきだろう。ちなみに、紹子さんは、こんなふうに書いてる。


「私が冤罪事件で最も責めを負うべきだと思うのは、裁判官である。今回の事件で言えば、とりわけ菅家さんの上告を棄却し、無期懲役刑を確定させてしまった最高裁の裁判官たちだ。具体的に言うと、亀山継夫裁判長と、河合伸一、福田博、北川弘治、梶谷玄ら4裁判官である。弁護団は、最高裁の段階で菅家さんの髪の毛を使って独自のDNA鑑定を行った。その結果が科警研の鑑定と違っていることから、再鑑定を請求すると共に、鑑定試料(被害者の衣服)を適切に保存するよう要請した。ところが、再三にわたる弁護側の請求を最高裁は無視し続け、上告から5年半後に菅家さんの無実の訴えを退けた。最初の上申書が出されたのは1997年10月で、菅家さんの逮捕からは5年10ヶ月後だ。この時に、再鑑定を行っていれば、もっと早くに菅家さんの無実は明らかになった。菅家さんの失われた17年半のうち、少なくとも11年間は最高裁の5人の裁判官(及び調査官)の責任だ。」


高知の白バイ事故でも、現実にはアリエナイザーなスリップ痕を捏造され、数多くの「スクールバスは完全に停止していた」っていう証言を無視されて、被疑者からの上告を簡単に棄却した最高裁。御殿場事件でも、被害を受けたと言ってる少女の証言が二転三転し、挙句の果てには台風が来てて土砂降りだった屋外で2時間も暴行を受けてたハズの少女の衣服が1ピコグラムも濡れてないっていう不可思議な問題点をスルーして、被疑者からの上告を簡単に棄却した最高裁。そして、これらの事件の被疑者は、現在、刑務所に服役中だ。家族や支援者たちが必死になって努力して、何万人もの人たちから署名を集め、新たな証言や証拠をそろえて、そして上告したってのに、ロクに目も通さないで「棄却」だなんて、これじゃあ、何のために最高裁があるのか、何のための三審制なのか、まったく法治国家の体をなしていない。

‥‥そんなワケで、無実の菅家さんに濡れ衣を着せたヤツラは、すべて自分たちの間違いで、何の罪もない一般市民に耐えがたい苦痛を与えたんだから、ホントなら、刑事も検事も裁判官も、全員マトメて刑務所へ叩き込み、最低でも17年半は同室のキチガイから殴る蹴るの暴行を受けてもらわないとツジツマが合わない。だけど、現実的には、そんなことはできないし、人のいい菅家さんは、そんなことは望んでないだろう。事件とは無関係の現在の本部長が謝罪しただけで、「すべてを許そうと思いました」だなんて殊勝なことを言ってる菅家さんなんだから、森下昭雄を始めとした当時の刑事たち、亀山継夫を始めとした当時の裁判官たちは、1日も早く自分たちの犯した過ちを認め、菅家さんのとこへ謝罪に行くべきだと思う今日この頃なのだ。


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