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2009.08.18

うちの嫁

あたしは、すごく前から気になってるんだけど、関西の男性の芸人で既婚の人が、自分の奥さんのことを「うちの嫁が」って言うでしょ? アレ、絶対におかしいよね。たとえば、泉ピン子が出てる「隣りの芝生」的なホームドラマで、泉ピン子が、自分の息子の奥さんのことを指して「うちの嫁はどうしようもない嫁でねえ」とかって使うのが正しい使い方なんじゃないの? 自分の奥さんのことを言うんなら、「私の嫁が」とか「俺の嫁が」とか言わないとおかしいと思う。

関西の女の子は、自分のことを「うち」って言う場合がある。だから、関西圏で婿養子をとった家庭の場合なら、奥さんが自分のダンナのことを「うちの婿が」って言っても、この「うち」が「私」って意味だと解釈すれば、文法上は間違いにはならない。だけど、関西で自分のことを「うち」って言うのは、女性に限った一人称で、男性は自分のことを「うち」とは言わない。だから、男性が「うちの嫁が」って言う場合の「うち」は、どう考えても「家」のことで、そうなると、やっぱり、この言い方はおかしい。

「うちの嫁が」ってのは、泉ピン子の例みたく、親が自分の息子の奥さんのことを第三者に話す時に使う言い回しであって、自分の奥さんに対して使う言い回しじゃない。自分の奥さんのことを「俺の嫁が」って言うなら分かるけど、「うちの嫁が」って言ってると、その男性は、自分の息子が大人になって結婚したとしたら、その奥さんのことは何て呼ぶんだろう? そうなったら、自分の奥さんも息子の奥さんも、両方とも「うちの嫁」ってことになっちゃうじゃん。「うちの嫁がねえ~」なんて話されたお友達は、その人が自分の奥さんのことを言ってんだか息子の奥さんのことを言ってんだか分かんないじゃん‥‥って思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、こんなあたしの疑問とはウラハラに、最近じゃあ、関西芸人と一緒のバラエティー番組に出てる他の地方の芸人たちにも、この「うちの嫁が」ってのが感染しつつある。あたしの聞いたとこだと、家電芸人の土田晃之とかも、ここ1年くらいで、自分の奥さんのことを「うちの嫁が」って言うようになった。テレビのバラエティー番組の出演者は、関東も関西も関係なく、芸人は芸人ていうククリでブッキングするから、言葉の言い回しを始めとして、いろんなものが感染しちゃうんだろうけど、今までは「関西の人間だけが使う方言」てことでスルーしてたのに、他の地方の人間までもが「うちの嫁が」って言うようになって来たことが、ものすごく引っ掛かる。

家電芸人の土田晃之って、ヤタラと感化されやすいタイプみたいで、一緒に出演してる他の芸人たちの言い回しとかが感染することが多い。1年くらい前には、「ま~~~」って言うのが感染してた。雛壇芸人がワレ先にツッコミを入れてる時とかに、一拍遅れて「ま~~~どいつもこいつもガツガツしやがって!」とかって使うんだけど、最初、関西芸人の誰かが使ってたら、すぐに「オイシイ」と思ってパクッたのか、それとも単に感化されたのかは知らないけど、他の番組で、この「ま~~~」を連発するようになった。

ま、それは置いといて、カンジンの「うちの嫁が」なんだけど、「私の嫁が」とか「俺の嫁が」とか、一人称を明確にすることで正しい言葉になるけど、もう1つのパターンとして、「嫁」のほうを変更するパターンもある。それが、「刑事コロンボ」でオナジミの「うちのかみさんが」だ。この場合は、「うちの」のほうは曖昧だけど、「かみさん」のほうが明確だから、男性が「うちのかみさんが」て言えば、その人の奥さんのことだってちゃんと分かる。ようするに、「うちの奥さんが」とか「うちの妻が」って言うのとおんなじってことだ。

実際、「刑事コロンボ」の映画を字幕版で観ると、コロンボは普通に「My wife」って言ってる。直訳すれば「私の妻」ってワケで、意味は正確だけど、このままじゃぜんぜん面白くない。「刑事コロンボ」のシリーズが他の刑事モノや推理モノと違うのは、最初に殺人を犯すシーンがちゃんと映るため、誰が犯人なのかが初めから分かってるってことだ。ほとんどの刑事モノや推理モノは、観てるあたしたちは犯人が分からなくて、最後に海に面した崖の上で船越栄一郎や片平なぎさが犯人を追いつめるワケだけど、「刑事コロンボ」の場合は、「あたしたちは犯人を知ってるのに、コロンボだけが犯人を知らない」って形なのだ。そして、コロンボが1人で謎解きをして犯人を追いつめてくワケだけど、その流れが面白いワケで、そこで多用されるのが、この「うちのかみさんが」ってワケだ。

天性のカンで、有名な俳優に疑いを持ったコロンボが、その俳優のとこへ行き、「うちのかみさんがね、あなたの大ファンなんですよ。ほら、何て言いましたっけ? あの映画‥‥」なんてふうに切り出す。毎回、必ず何度か登場する「うちのかみさんが」ってセリフだけど、その「かみさん」自体は一度も登場しない。これがまた面白いとこで、毎回楽しみに観てるファンは、「いったいどんな奥さんなんだろう?」って、どんどんイメージが膨らんでく。一度でも奥さんの顔を見せちゃうと、それ以上はイメージが膨らまなくなっちゃうから、これはホントにうまく考えられた演出だと思う。

そして、何よりのイメージ喚起力になってるのが、この「うちのかみさん」ていう言い方なんだよね。これが、実際のコロンボのセリフの「My wife」を直訳した「私の妻」だったとしたら、あんまりイメージは膨らまない。ただ漠然とした奥さん像が浮かぶだけで、雲をつかむような感じになっちゃう。だけど、あの風体のコロンボが「うちのかみさんがね」って言うと、そんなに美人でもなく、そんなにスタイルも良くなく、流行には無頓着の服を着て、髪にはカーラーが巻いたままになってるような、ある程度の具体性を持った奥さん像が見えて来る。だから、一度も顔を見せなくても、ヤタラとリアリティーがあるのだ。

だから、原作の「My wife」を「うちのかみさん」て訳したことがワンダホーなんだけど、これは、あたしのリスペクトしてる翻訳家、故・額田やえ子さんの名訳だ。額田やえ子さんは、「刑事コロンボ」の他にも、もっと昔の「逃亡者」や「コンバット」から、「刑事コジャック」「マイアミバイス」「ジェシカおばさんの事件簿」なんかの翻訳も担当してた。「逃亡者」や「コンバット」は、サスガにあたしは観たことがなかったけど、うちのかみさん‥‥じゃなくて、あたしの母さんが「刑事コロンボ」と「鬼警部アイアンサイド」が大好きだったから、あたしは両方ともビデオでぜんぶ観た。

それから、「逃亡者」は、あたしが幼稚園の時に、父さんに連れられて競馬を観に行って、そこで1着になった真っ白な馬、ホワイトフォンテンのことを忘れられないでいたら、メル友の石川喬司先生が、そのホワイトフォンテンに「白い逃亡者」っていうニックネームをつけたのが、石川先生の競馬仲間だった故・寺山修司さんだってことを教えてくださった。ちょうどそのころ、テレビで「逃亡者」が大ヒットしてて、2番手以下の馬たちに大差をつけてゴールを駆け抜けるホワイトフォンテンの姿が、まさしく「逃亡者」そのものだったみたいだ。だから、テレビドラマの「逃亡者」は、あたしのリスペクトしてる額田やえ子さんの翻訳も聞きたいし、あたしの好きだったホワイトフォンテンのニックネームのモトにもなってるので、機会があれば観てみたいと思ってる。

ちょっとダッフンしちゃったけど、額田やえ子さんは東京生まれの翻訳家だったから、「刑事コロンボ」の「My wife」を「うちのかみさん」て訳したけど、もしも大阪生まれだったら、「うちの嫁」って訳してたかもしれない。そしたら、コロンボの印象も大きく変わってただろう。「うちの嫁がね、あんさんの大ファンなんやよ。ほら、何て言うたんやっけ? あの映画‥‥」って、あたしの知識じゃ正しい関西弁はムリだから、「関西弁変換システム」を使って翻訳してみたんだけど、このセリフがコロンボの口から出たら、イメージはぜんぜん違うものになってただろう。

ま、コロンボのイメージの問題はいいとしても、このセリフを関西圏以外の人が聞いたら、コロンボの奥さんがこの俳優のファンなんじゃなくて、コロンボの息子の奥さんがこの俳優のファンなんだって思っちゃう。ようするに、意味が正しく伝わらないってワケだ。これは大問題で、やっぱり、関西圏の人は「方言」てことで仕方ないとしても、それ以外の地域の人たちは、正しく「うちのかみさん」とか「うちの奥さん」とか「私の嫁」とか「俺の嫁」とかって言って欲しい。そして、ニポン文化のカラーを強調するのなら、「うちの愚妻が」なんて言い方もある。

この「うちの愚妻が」ってのは、一見、東京都知事フレーバーの男尊女卑っぽい雰囲気がマンマンだけど、これはそうじゃなくて、「自分のほうがへりくだることによって相手をうやまう」っていうニポン独特の文化だ。だから、人前で自分の奥さんのことを褒めたたえるのがマナーになってるレディーファーストな国の人たちからは、ニポンの「うちの愚妻が」って言い回しに関して、よくツッコミを入れられる。わざわざ持ってったお土産を「つまらないものですが」って言って渡すのも、よく西洋人からツッコミを入れられるけど、アレとおんなじで、これらの言い回しは、ニポン独自の「おくゆかしさ」っていう文化なんだから、この感覚が理解できない外国人は黙ってて欲しいと思う。

‥‥そんなワケで、しばらく前に、「刑事コロンボ」のピーター・フォークさんが、もう80才を超えてて、アルツハイマーが進行しちゃって、ビバリーヒルズの自宅付近を徘徊してて警察に保護されたとか、家族の顔も判別できないほどだとか、自分が「刑事コロンボ」をやってたことすら覚えてないなんていう悲しいニュースがあった。それで、今はどんな状態なのか気になったので、ピーター・フォークさんのオフィシャルサイトを探して覗いてみた。そしたら、すべてのコンテンツが削除されてて、唯一、「PRESS RELEASE from Mrs.Peter Falk」っていう、本物の「うちのかみさん」からのメッセージだけがポツンとあった。読んでみたら、アルツハイマーで自分の財産管理ができないピーター・フォークさんの後見人をどうするかって問題で、ずっと疎遠にしてた娘のキャサリンが財産目当てに現われて、奥さんと法廷で争った。裁判所は奥さんを後見人に指名したのに、娘のキャサリンはピーター・フォークさんの病状をマスコミにペラペラとしゃべりまくってる‥‥なんていう、何とも目にしたくない内容が、今年の6月4日付で書かれてた。「うちの嫁」、つまり、「自分の息子の奥さん」ならともかく、「実の娘」がこんなふうになっちゃうなんて、サスガの名刑事も、まったく推理できなかったと思う今日この頃なのだ。


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